ハイスクールD×D 精霊と龍神と   作:きよい

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4話

 何日の間、裏街に居たのだろうか?

 俺は八坂との修行を終え、部長から教えられていた山へと来ていた。

 なんでも、この山で部員のみんなは修行しているらしい。

 他の一般人が入ってこないし、案外いい修行場所かもしれない。

「ああ、火の赤色に染まった目には優しいな、新緑って」

 周囲の自然豊かな景色に俺の視界が癒されていく!

 俺は土肌の山道を歩きながら、目的地である別荘へと向かっていた。八坂との修行から休まずここまで来たが、疲れは感じない。俺自身の体力も、修行中に増えたみたいだ。

 あれだけ火の玉を避け続ければ自然と体力はつくかもしれないな……。ああ、何回焼かれたんだろ?

 今日だって、戻る前に最後の仕上げとしていままでの倍の火の玉に襲われた。その所為か、服の所々が焦げている。いや、服が焦げただけで済んでよかったと言うところか?

 俺が修行の日々を思い出しながら山道を歩いていくと、突如異音が響いた。

 ドッゴォオオオオオオオオオオオオンッッ!!

 音と同時に俺の視界に飛び込んできたのは、隣の山を吹き飛ばす魔力の塊だった!

「な、なにが起こったんだ? まさか、修行中に誰か襲われたのか!?」

 ゆっくり歩いていた足に力を込め、一気に山道を駆け上る。

 程なくして俺が目撃したのは、手を前に突き出したまま隣の山を見ているイッセーの姿だった。

 少し距離を開けた所に祐斗の姿も確認できる。模擬戦の最中だったのか?

 ……あれ? というか、格好からして――もしかして犯人イッセー?

 手は消し飛んだ山の方を向いている……。なるほど、うん。俺の労力返せよ……。

 前より感じる力が強いのは修行の成果かな。

『Reset』

 イッセーの籠手から音声が発せられる。途端、イッセーから感じた力は消失した。

 そうか、倍加の力を使っていたのか。それでも大きな進歩が見られた。

「大分、成長したんじゃないか、イッセー」

 俺は一区切りついただろうと思いイッセーの方へ近寄る。

「か、カイト!? おまえ戻ってきたのかよ!」

「ああ、ついさっきな。どっかの誰かさんが山を消し飛ばすなんてことをするから急いで走ってきたわけだが」

 俺は静かにイッセーへ視線を固定していた。

「あ、いやーアハハ……。俺もまさかあんなことになるなんて思わなくてさ……」

 イッセーは額に汗を浮かべていた。どうやら本人もここまでの結果が出るとは思ってなかったようだ。

「お疲れ様、二人とも。さて、祐斗に感想を聞く前に。おかえりなさい、カイト」

「はい、無事帰って来れました」

 俺は部長へとあいさつを済ませる。

「修行は上手くいったのかしら?」

「ええ、まあ。何度か死を体験しそうになりましたけど」

 部長が服の焦げ目を見つける。

「……そう、大変だったのね。巻き込んでしまって申し訳ないわ」

「気にしないでください。俺は俺でライザーを殴り足りないんですから」

 俺は笑って、この話を打ち切った。もうこの件を問題にするのはいだろう。

「それより、いまはイッセーと祐斗が戦っていたんですよね? どうだったんですか?」

「そうね、それは祐斗から聞きましょうか」

 部長に視線を向けられた祐斗が話し始める。

 どうやら祐斗の一撃はイッセーの強化された身体にダメージを与えることはできなかったらしい。魔力で強化した木刀よりも、イッセーの身体の方がよほど硬いようだ。倍加中は、だけど。

「あのままやっていたら僕は得物を失って、逃げ回るしかなかったですね」

 祐斗は折れかけの木刀を見せながらそう締めくくった。

「まさか祐斗がそう言うなんてな」

 俺は内心少し驚いていた。この短期間でイッセーがこうも変わるとは。

「そうだね、僕も最初の一撃で終わると思っていたんだけど結果はこの様だよ」

 肩を竦めそてそう言った。

 イッセーも倍加さえあれば戦力になるってことか。

「イッセー、ブーステッド・ギアを発動していなければあなたは弱いわ。けれど、籠手の力を使うあなたは次元が変わる」

 部長が吹っ飛んだ山を指差す。

「あの一撃は上級悪魔クラス。あれが当たれば大抵の者は消し飛ぶわ。基礎を鍛えたあなたの体は、莫大に増加していく神器の力を蓄えることのできる器となったわ。現時点でも受け皿としては相当なものよ。ね、言ったでしょ? あなたは基礎能力を鍛えれば最強になっていくの。始まりの数字が高いほど、増大していく力も大きいのよ。源の体力『一』が『ニ』になる。あなたにとってはそれだけでも強大な成長よ」

 そうか、基礎能力を底上げしたのか。それで増加できる限界も高まっていると。

 なら、このまま鍛え続けていくことがイッセーの課題か。イッセーの性格からして、続けるんだろうな。悪魔ってあまり地味な修行するイメージなかったけど、する悪魔もいるってことか。

「俺の力は……凄い、のか?」

 イッセー自身はあまり自分の力を信頼してないようにも見えるけど。

 そのイッセーに部長が自信満々に言う。

「あなたはゲームの要。イッセーの攻撃力が状況を大きく左右するの。あなた一人で戦うのなら、力の倍加中は隙だらけで怖いでしょうね。けど、勝負はチーム戦。あなたをフォローする味方がいる。私たちを信じなさい。そうすれば、イッセーも私たちも強くなれる。勝てるわ!」

「それに、カイトくんも協力してくれますしね」

 朱乃さんが俺を見ながらみんなに言う。

 そうだ、俺もやらなければ。

「そうですね。俺自身もライザー戦のために準備はしてきましたし、あの眷族たちに負けたりしませんよ」

「ふふふ、心強いですわ」

 朱乃さんがいつも通りの笑顔を浮かべる。

「そうね、カイトにも頑張ってもらうわ。もう弱気なことは言ってられないもの。――頼むわね」

「はい、部長!」

 部長は最後に視線をイッセーに移した。

「イッセー、あなたを馬鹿にした者に見せつけてやりましょう。相手がフェニックスだろうと関係ないわ。リアス・グレモリーとその眷族悪魔がどれだけ強いのか、彼らに思い知らせてやるのよ!」

『はい!』

 全員が力強く返事をした。眷族ではないが、当然俺も返事をした。

 あたりまえだ。仲間として、ここに居るのだから。

 

 さあ、ライザーを倒すためにとりあえずもっと強くならないと。

「祐斗、とりあえず模擬戦しないか? 剣の腕、もっと上げたいんだ」

「うん、やろうか。僕ももっと強くならないといけないしね」

 祐斗は爽やかな笑顔で了承してくれた。

「あらあら、ならカイトくんはその後私と修行しましょうね」

「……次は私と」

 それを聞いてか、朱乃さんと小猫まで参加することとなった。

 なんで俺となんだろうか?

「カイト先輩が一番接近戦が得意そうなので」

「一度、カイトくんの実力を把握しておきたいですわ」

 そういうことらしい。

「わかりました、なら祐斗の後で。あ、そうだ。イッセー! 最後はおまえ俺とやろう! 神器の扱い方にもっと慣れるためにな」

 俺はイッセーにそれだけ言い残し祐斗との模擬戦を開始した。

 

 その後数日間、俺たちの山籠り修行は続いた。お互い手加減していたとはいえ、祐斗との模擬戦は全勝だった。朱乃さんや小猫との修行も順調に進み、イッセーとも神器のことで話たり、俺が居なかった間の話も聞いた。いずれ、この時の話もしたいものだ。

 

 

 

 

 

 そして、俺たちは決戦当日を迎えた。

 

 




はい、このときのカイトの修行の話も、また時間があったら書きたいと思います。

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