ハイスクールD×D 精霊と龍神と   作:きよい

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今回の話は読まなくても、次の話の内容はわかるかもしれません!
日常の1コマに近いといいますか、それが京都に移っただけです。
それでもこの話はやります。それでは、どうぞ!


3話

 ライザーとのレーティングゲームを十日後に控えた俺は、共に戦う部員のみんなとの修行は後に回し、個人的修行のために京都までやってきた。

 京都に居る勢力と言えば、妖怪が主だ。

 俺が足を踏み入れたのは、その妖怪たちの暮らす裏街だ。

 江戸時代の街並みのように古い建物が並び、扉から窓から通り道から、面妖な生き物が顔を覗かせる。車輪に顔がついた奴や、緑色をした人型の生き物。変わった奴ばかり居るのがこの裏街だ。

 金閣寺の人気のない場所に設置してある鳥居を潜れば、ここに来れる。

「ここはあまり変わってないな」

 案内してくれている女性に話しかける。 

 彼女もここの妖怪で、頭部に獣耳を生やしている。今朝、裏街にいる姫に連絡を入れた際に迎えを寄越してくれたのだ。それが目の前にいる彼女なのだが。

「そうですね。あなたが初めて来たのが五年前ですから。私たち妖怪は五年程度では特に変わりませんよ」

「……そうか、もう五年経ったか。まあ、最後にここに来たのはニ年前なんだけど」

「毎回、あなたが帰る時は姫様が機嫌を悪くされて大変なんですよ? 拗ねたり泣いたり」

 ああ、まだ小さいからなぁ、ここの姫様は。小さい子は周りにいる人がいなくなると不安になるのかね。

「けどまあ、そこもまた可愛いところじゃないか。もう少ししたら、生意気なだけになるかもしれないだろ?」

「その可能性を否定できないのが辛いです」

 女性は苦笑いしていた。

「おい、またあの人間が来たぞ」

「……一人か? 前は五人くらいいなかったか?」

「いや、もっと大勢で来た時もあったぞ」

「あやつも早く姫様とくっつけばいいものを……」

 妖怪たちの話声が聞こえる。彼らとは何度か訪れた際に話している。

 それにしても好き勝手なことを言ってくれるな。笑顔なのがまたなんとも。

 親しき仲にも礼儀ありだろう?

 家屋が建ち並ぶ場所を抜けると、小川を挟んで林に入る。そこをさらに進むと巨大な赤い鳥居が出現した。

 その先に屋敷が建っている。

 そして、鳥居の前に今回世話になる人物を発見した。

「それでは、私はお店もあるのでここで失礼します」

「ああ、ありがとう。また頼むよ」

 案内してくれた女性は林の中へ消えていった。

 俺はそれを見送り、鳥居にいる人物へ声をかける。

「やあ、久しぶり。急な訪問で悪いな。今回は頼むよ?」

「ふふ、今回は長かったな。丸二年も来ないとは思わなかったぞ?」

 俺は彼女、八坂から非難の視線をもらった。八坂は九尾の御大将で、この京都を仕切る妖怪の統領だ。そんな方に非難されては仕方ない。

「わ、悪かったよ。その……いろいろあってな」

「そのいろいろとは、お主と一緒にいた仲間が共に来ておらんことに関係があるのか?」

「…………」

「そうか。なにがあったかは聞かんよ」

 八坂は優しい笑みを浮かべると俺の頭をポンポン、と撫でてくれた。

「さて、今回の修行の件だが、お主には三年前の恩義と、友好があるでな。引き受けるのじゃ」

「ありがとう。それじゃあ早速――」

 俺がすぐにでも修行に入ろうとすると、八坂に止められた。

「まずは、九重に会ってからにするのじゃ。あの子がお主に一番会いたがっているからのう」

「それもそうだな。俺も会ってなかったし、会いたいな」

 九重は八坂の娘で、狐の耳と尻尾が生えている金髪美少女だ。

「そう思って、時間を取ってある。まずは九重も交えて、楽しく過ごそうではないか」

「ああ、そうさせてもらうよ。……って、今回あまり滞在できる時間ないんだよ! 九重も一緒にいてくれていいから、修行させてくれ!」

 俺、頑張らないとライザー相手に炭にされちゃう!

「ならば仕方ないか。九重も連れて修行に入るか」

 八坂は九尾として、狐火も得意とする。ライザーの炎とは違うが、龍王にも近い力を有している彼女相手ならば、なにか突破口が見えるかもしれない。

 今回の修行は、ただひたすら八坂の炎からの回避、反撃の対策を練ることだ。

 それよりも先に、いまは九重に会いに行くんだけどさ。

 

 久々に会った九重は、戦国時代のお姫さまが着るような豪華な着物に身を包んでいた。

 妖怪のみんなは姫さまって呼んでるけど、こうして見ると確かに姫さまだ。小さな姫さま、だけど。

「九重、久しぶりだな。会わない間に少し背が伸びたか? いまだに小学校低学年くらいだけど」

「うむ、少し伸びたぞ! カイトは二年も来なかっではないか! 少し、寂しかった……」

 狐耳を垂れ下がらせる九重。

 この子もまだ小さい子供だ。あんなことがあったけれど、やはり会いに来るべきだったな……。気を遣わせるのも悪いし、この二年間のことは話さずにおこう。

 小さい子は笑顔でいた方がいいんだ。

「ごめんな。どうしても、外せない用事があって、そっちに掛かりきりだったもんで」

 俺は九重の頭をゆっくりゆっくり撫でながら話す。

 九重はくすぐったそうにしていたが、笑顔になり撫でられていた。

「でも、もう大丈夫……だと思う。もう、その用事で俺が縛られることも無くなった。だから、これからはまた定期的に会いに来るよ」

「本当じゃな? 今度はしっかり、約束じゃぞ? 約束!」

 顔を近づけてきて俺の目をしっかりと見てくる。嘘かどうか確かめたいのかな? つく気は元から無いんだけど。

「ああ、約束な。今回は五日間くらいしか居れないけど、その間にたくさん話そうな。そんで夏が来たらまた来るし、その後も何度も来るよ」

「それならよいのじゃ!」

 九重は嬉しそうに首を縦に振っていた。

「お主にも苦労をかける」

 後ろから俺たちの様子を見ていた八坂に声をかけられた。

「なんのことだ?」

「いや、カイトが我らの同胞を仲間に加えていたことは知っている。その縁もあり、ここに来るようになったのだからな。でも、もうその同胞もいないのであろう? なのに、よくここまで来てくれた」

 八坂の言っていることがなにを指しているのか、すぐにわかった。

 俺は二年ほど前まで、いろんな種族の捨てられ子や外れ者を仲間に入れ、面倒を見ていた。その種族の中には悪魔、堕天使、魔物、妖怪。多くの種族がいたものだ。その所為か、俺はそいつらから各勢力の話をよく聞いていた。その仲間の一人の妖怪の縁もあり、ここの八坂たちとも会うようになったわけだ。

「ああ、そうだ。確かに、俺の仲間はみんなもういないな。アンラ・マンユ……アイツ…………」

 つい最近出会ってしまった邪神のことを思い出す。闇、か。いまも姿を変え、俺を見ているんだろうか? そう思うと、途端に寒気が襲った。

 手が震えるのがわかる。俺は、俺はあいつが怖いんだ……。あの得体の知れない邪神が……。

「カイト、大丈夫か? 九重がついておる。しっかりするのじゃ!」

「やけに震えているようじゃな。大丈夫、ここは安心してよいところだ。九重だっておるじゃろ?」

 側にいた二人が俺の手を握る。

 二人の温もりを感じていると、次第に身体に温かみが戻ってきて、震えが収まった。

「……。……ありがとう、二人とも。大丈夫、もう大丈夫」

 俺はいまできる最高の笑顔を浮かべ二人へ視線を移した。

 そうだ、大丈夫だ。あの闇は俺が俺の中にいる二人や、仲間といる限り、決して俺を闇へは誘えない。

「八坂、さっきの話はここで止めておこう。確かにもう仲間は居ないけど、それとおまえたちに会いに来ることは別の話だよ。たとえいなくなっても、俺はおまえたちと縁を切るつもりはないよ」

「そうか、それは嬉しいことじゃ」

「カイトはいつだってここに来ていいのじゃ!」

 ここの妖怪は俺に優しいな。俺はいつからここまで九重に懐かれたのか。不思議だ。

 俺はそれからしばらく九重を撫でたり、三人で街をぶらついたりと、楽しい時間を過ごした。

 八坂の九尾を枕に寝かせてもらったり。ふわふわしてて気持ちよく眠れた。一家に一人欲しいところだ。九重は膝に座ってきたり、ことあるごとに撫でたりと、存分に甘やかした。

 そんな時間も終わり、夜になった。

 八坂について行き、たったいま目的地についたみたいだ。

「さて、そろそろよいじゃろ。カイト、神器を出せ」

 八坂から指示が出される。

 神器を出せということは、始めるということだろう。周りには、少し離れたところに九重がいるだけだ。邪魔な遮蔽物もなく、辺り一面平地だ。

「さあ――始めようか」

 八坂の合図に呼応して、その周りに無数の火の玉が現れ始める。

 逃げる隙間が無い程だ……。

「まずはこの火の玉に慣れてもらう。大丈夫、触れても熱い程度のやけどで済む。ただ、これから順に力を上げていくから。死にたくなければ本気で生き残る術を見つけるのじゃぞ!」

 どうやら、ライザーとのレーティングゲームに備えるはずの修行で、とりあえず地獄を見るようだ。ハハッ、まだライザー本人と戦ってないのに。

 というか、部長たちに合流できるかな、これ……。

「八坂、あのー、この火の玉の数は一体?」

「気にするな。なぁに、大丈夫じゃろ。お主ならなんとかできる!」

「カイト、頑張るのじゃ!」

 八坂、九重から笑顔でエールをもらう。

 八坂に至っては、手加減する気はあまり無いようだ。その方が、案外追い詰められていいのかもしれないが。

「さあ、修行開始じゃ」

 その言葉を最後に、俺の視界は赤色に染まった。

 




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