ハイスクールD×D 精霊と龍神と   作:きよい

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番外編1

 アーシーアがオカルト研究部に加わって少し経った頃。

 俺は今日もソファーで寝転がってるだけだし、ここ最近は特になにもなかった。

 ああ、寝ていられるとか平和でいいよね。家に居ると黒猫やら龍様が寝かしてくれないからな。あいつら一人でいるの暇なのか? いや、俺は俺で寝ているのが一番好きなんだけど……。

 こうしてると、だんだん……ねむくなって…………。

 

「ふふ、よく眠っていましたわね」

 ……どういうことだ? 眠くなって、俺はソファーで一人で寝てたんだよな。

「おはようございます。朱乃さん、膝枕とはどういうことですか?」

「あらあら、おどろいたりしないんですね。もう少し慌ててくれた方が好みですわ」

「……悪戯の一種ですか」

 おかげで気持ちよく寝れましたけど。ソファーより全然柔らかい感触がありましたから。

「いえいえ、ただの興味本位ですわ。まあ、部長からの話もありましたし」

「なんのことですか?」

「なんでもありませんわ。せっかくですから、もう少し横になっていてください」

「……そうですか」

 じゃあお言葉に甘えてもう一眠りしようか。

「こんちはーっス! ってカイト!? おまえなに朱乃さんに膝枕されてるんだ! ズルいだろ!」

「……イッセー? すまん、いま眠いんだけど」

「うるせえな! 俺だって、俺だって膝枕されたいんだよぉ!!」

 涙を流しながら叫ぶイッセー。

「朱乃さん、俺はいいですからあいつにしてやった方が」

「あら、私はカイトくんにしている最中ですから、部長にやってもらうのがいいですわ」

 そう言い、イッセーと共に部室に入ってきた部長へと視線を向ける。

 その際、なにやらアイコンタクトを取っていたように見えたが、なんなのだろう?

 一瞬俺にも視線を向けていたし?

 しかしそれには触れず部長はイッセーの方へ向く。

「そうね、イッセーがしてほしいならそれくらいしてあげるわ」

 部長、下僕に対してやっちゃっていいんですね。

 グレモリー眷族ってすごく仲いいというか、仲間思い? いや、でも部長がそんなことするのはイッセーくらいだよな? あれ? これってどうなんだろ……。

「い、いんですか? ぶ、部長がいいと言ってくださるのなら、俺は――」

 イッセーは涙を流していた。今度は哀しみではなく嬉涙のようだ。

 今日も平常運転中です。

 

「使い魔……ですか?」

 イッセーは訝しげな物言いだった。

「そう、使い魔。あなたとアーシアはまだ持っていなかったわよね」

 使い魔っていうとあれか。悪魔の手足となる使役する存在だ。悪魔の仕事でも役に立つんだっけ?

 持ってないのはイッセーとアーシアだけなのか。

「使い魔は悪魔にとって基本的なものよ。主の手伝いから、情報伝達、追跡にも使えるわ。臨機応変に扱えるから、イッセーとアーシアも手に入れないといけないわね」

 それはいいなぁ。……俺も使い魔手に入らないかな?

 (あら、カイトなら手に入ると思うわよ)

 レスティアか。

 俺でも手に入んの?

 (カイトは魔王の役割を担うべき人なのよ? 使い魔くらい手に入れてくれないと困るわ。過去魔王となって覚醒した私の所有者は一人で七十二の魔を使役していたわよ)

 ……それは覚醒した者の話だろ? 俺はまだ覚醒してないぞ。

 それに、覚醒しちまったら……俺は……。

 (大丈夫。闇に溺れないでね、カイト。そうすれば私があなたを誤って導いてしまうこともないわ。……さて、この話は終わりましょう。とりあえず、今回は一体くらい使い魔をゲットしてきなさい)

 できたらな。俺と契約を結んでくれるような奴がいるといんだけどな。

 (……。……それは必要のない心配だと思うわ)

 なんでだ?

 (あなたは昔から、人間以外の存在からはありえない程好かれやすいもの)

 ……ああ、そうだな。確かに、いらない心配なのかもな。

「部長、俺も行っていいですかね?」

 そうと決まれば俺も行かないと。

「カイトが? それはいいけどあなたに使い魔は――」

「その点は大丈夫ですよ! ほら、見学込みで」

「そうね、カイトの実力なら問題ないわね。いいわ」

「ありがとうございます」

 さて、これで大丈夫そうだな。

 いつ行くかは知らないけど、準備しとかないと!

 やる気が出てきた俺だが、部室の魔方陣が光りだしてしまう。何だ? 誰か来るのか?

「部長、準備整いましたわ」

 朱乃さんが部長へ報告する。準備? 今日って何か予定あったっけ? 聞いてないけどな。

 イッセーとアーシアも怪訝そうにしていた。だが、部長は笑顔で告げてくる。

「というわけで、さっそくあなたたちの使い魔をゲットしにいきましょうか」

 有限実行。それが部長だったか。

 俺の準備、何もできてないんだけど。まあ、いいか。

 よほどのことは起きないだろ。 

 

 

「ここは悪魔が使役する使い魔のたくさん住みついている森なのよ。ここで今日、イッセーとアーシアには使い魔を手に入れてもらうわ」

 転移魔法でやって来た森は、やたら背の高い巨木が周囲に生えていて、日の光もあまり届いていない。

 湿気も感じるし、なんだかうっそうとした森だな。

 まさに使い魔を手に入れるのにうってつけだな。なにが出てきても不思議じゃないな。

「ゲットだぜ!」

「なっ!」

「きゃっ!」

「思ったそばから変なの出てきやがった!」

 突然の大声にイッセーとアーシアは驚いていた。見事にフラグを回収した俺はげんなりした。

 なにこの帽子を深く被ってラフな格好をした男……。

「俺の名前はマダラタウンのザトゥージ! 使い魔マスターを目指して修行中の悪魔だ!」

 悪魔……? え、これ悪魔なの? 絶対違う道に走ってるな。

「ザトゥージさん、例の子たちを連れてきたわ」

 部長がイッセーとアーシアを使い魔マスターに紹介した。

「部長、俺忘れてません?」

「あら、カイトは使い魔なんて――いや、いいわ。ザトゥージさん、彼も一応お願いしていいかしら」

「へえ。さえない顔の男子と金髪の美少女さん。それに……人間とは珍しいぜ。黒髪イケメンときたが何処か女性らしさがあるな」

 うるさいな! 女性らしいとか言うんじゃねえよ!!

 俺は珍しいのか。まあ、人間が使い魔とか普通ないよな。

「人間だけど、もしかしたら悪魔より強いかもしれないわよ。それで、いいかしら?」

「OK! 任せてくれ! 俺にかかればどんな使い魔でも即日ゲットだぜ!」

 このマスターさん、やけに「ゲット」のとこ強調したな。なにかあるのだろうか。

「彼は使い魔に関してのプロフェッショナルよ。今日は彼にアドバイスをもらいながら、この森で使い魔を手に入れるの」

 イッセーの使い魔ってどんなのなんだろ? 変なの選ばないといいな。

「さて、どんな使い魔がご所望かな? 強いの? 速いの? それとも毒持ちとか?」

 ザトゥージさんがイッセーとアーシア、俺に聞く。

「いきなり毒持ちとか危険極まりないこと言わないでくださいよ。で、どんなのがオススメですかね?」

 この質問にザトゥージさんはニヤリとしながらカタログを取り出した。

 彼が指指すのは見開きいっぱいに迫力のある絵で描かれた一匹の獰猛そうな獣。

「俺のオススメはこれだね! 龍王の一角――『天魔の業龍』ティアマット! 伝説のドラゴンだぜ! 龍王唯一のメスでもある! いまだかつてゲットされたことはないぜ! なんでも魔王並みに強いって話だからな!」

 魔王並みとかなんだよそれ! 絶対に遭遇したくねぇじゃん……。

 イッセーはイッセーで隣で部員のみんなから伝説のドラゴン同士気が合いそうとか言われてる。口々に使い魔にしようって話が聞こえてくる。

 もちろん冗談なのだろうが。みんな笑顔でイッセーを弄っている感じか。

「無理っスよ! お、俺を殺す気ですか!」

 大変だな、『兵士』って。

 (あら、ならあなたが使い魔にしたらどうかしら?)

 ……大変だな、魔王の剣を宿してる人も。

 (現実を見てほしいわ。あなたに言ってるの、かいと)

 遠慮しときます。

 (そう言わずに試してみましょう)

 ……。………………機会があったらな。

 こんなに広い森なんだ、俺たちが会う機会なんて絶対にないよ!

 俺は俺で、周りに何匹もの生き物が寄ってくる。小さな蛇のような魔物だったり、小型の龍だったり。火を纏った猫に、少し大型の怪鳥。

「あの、なんかたくさん寄ってきて歩きにくいんですけど……」

「おどろいたぜ。人間のにいちゃんは魔物が寄りやすい体質なのかね? なんにしろ、それだけ来るなら選び放題だぜい」

 そうか、逆に考えればいいのか。でも怪鳥はちょっと怖いんですけど。

「……なんだか、さっきから風が吹いてませんか?」

 そう言うのはアーシアだ。

「風くらい吹くだろ? なにも変わったことなんて」

「いや、おかしいぜ! この風、どんどん風圧が増してるぜ! 他の魔物の様子もおかしい! さっきまでいた魔物たちの姿がほとんど見えないんだぜ!」

 どういうことだ? 

 使い魔に関しての知識のない俺には起きてることがさっぱり理解できない!

 ただ周囲を確認してみると、確かに俺の周りにいた魔物たちの姿が見えない。残っているのは火猫くらいか。

「こいつはマズイぜ!」

 ザトゥージさんが焦ったように言ってくる。

「なにが、マズイんですか?」

「ああ、それがな――」

 ザトゥージさんの声が聞こえなくなる。一層強さを増した風に阻まれたんだ!

 俺は火猫を抱いて、飛ばされないように守る。

 思ったより風が強いな……。自然にこんな強風吹くのか!?

 しばらくして、風がやんだころ。ザトゥージさんが再び口を開いた。

「遅かったぜ……。来ちまった、ティアマットが!」

 目の前、上空には、青と銀色に輝く龍が、俺たちを見下ろしていた。

 


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