ハイスクールD×D 精霊と龍神と   作:きよい

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最近にしては少し短めです。


7話

 二十五連にも及んだ剣撃はすべて邪神の額に浮かび上がっていたダワーエへと炸裂した。

 だというのに……。

「どういう、ことだ……?」

 邪神が消えなければ、ダワーエもまた、凶暴な笑みを浮かべながら存在していた。

「ふふ……フハハハハハハッ! 焦って損をしたようだ。その程度の一撃、どうとでもないわ!」

「なんで……」

「最後の最後で剣に頼ったのが悪かったな! 光だけでくればいいものを、剣になぞ纏わせるから威力が半減したのだ! もとより光はそれ単体で最高の出力だというのに、他と混ぜ合わせては出力も劣るだろうさ」

「うおっ!?」

 ダワーエの背から生えた触手に弾かれる。

 ズシャァァァァ。

 地面への着地。先ほどよりも闇が広がっている。この地面でさえ、闇に呑まれかけてる。

 マズイな。もうこの空間も闇に沈むぞ。

 時間的にも余裕はない、か。

「次の一撃が最後ってところか?」

 もう一度ダワーエのところまでたどり着くことを考えれば、自然と一撃分しか余裕がないとわかる。またここまで落とされれば、そのまま邪神の闇に呑まれて空間ごと消滅するだろう。

 剣なんか使うから半減したなんて言われたらなぁ。

「どこまでも人の相棒をバカにする奴だ」

「事実だ。貴様の剣では俺まで届かん」

 このっ! まだ言うか! 次こそこの剣の強さ教えてやる!

(いいえ、くやしいけどあいつの言っていることは正しいわ)

(今回ばかりは私たちのことでこだわっている場合ではありません、カイト)

 おまえら……。

 使うなって言うのか?

(仕方ないでしょう。いまこんなところで負けるよりはマシよ。最善を尽くしなさい。勝つための最善を)

(カイトにはやるべきことがあるはずです。意地を通すのもいいですが、ここは通すべき意地を間違えないでください) 

 勝つための最善……。通すべき意地……。

 威力が減るなら使うべきではない。悔しいが、その通りだ。

 剣を使って倒そうとして負けるのはダメだ。あいつを倒して帰らないといけない。

 悪いな、二人とも。

 音もなく、両手に握る剣が溶けて消える。

「なんだ、勝負を投げたか?」

「ふざけるな。ここからは、素手で相手をしてやるよ」

「あれだけ剣をバカにされて、悔しくはないのか?」

 安い挑発だ。

 あいつももう、この空間が自分に呑み込まれるのを悟っている。

 俺に無駄に時間を費やさせたいのだろう。

「悔しいさ。悔しいけど、いまはおまえを倒すことだけを重視する。次邪神が出てきたときに、剣で倒せばいいさ。今回はとりあえず、倒す」

「そうか、ならば仕方ない。来るがいい。これで全てに決着をつけよう!」

 闇が空間を完全に呑み込むまであと少し。

 邪神を倒してロキ戦に行くとするか!

「いいだろう。ここから先は小細工なしだ! 突っ込ませてもらうぞ!」

 さあ、これで最後だ。もう少しだけあんたたちの希望、俺に預けてくれ。

 この地に眠る人たちの希望を、もう少しだけ強く!

「絶望し、光を消し去れェェェェッ!」

 今日一番の威力を誇る青白い光線が邪神から放たれる。

「前にも言ったはずだ! どんな絶望の中でも、人の心から、光が消え去ることはない!」

 走りだすと同時に、光線が俺に直撃した。

「……終わりか」

 煙があがるなか、姿の見えなくなった邪神がつまらなそうな声で言う。

 ここからが本番だって言うのに、なにほざいてんだよ。

「本当の戦いは、ここからだ!」

 煙が掻き消える。

「光……。全身が、光につつまれているだと!?」

 俺の全身を見た邪神がこぼした。

 全身?

 不思議に思い、自分の体を見回してみるが、なるほど。確かに全身に光を纏っている。いや、まるで全てが光になった思いだ。

(私たちもよ)

(はい。私たちのすべても、光の中に――)

 レスティアとエストもか。それだけじゃない。多くの人の暖かさを感じる。

 いまの俺は、本当の意味で全ての希望を背負っていると言ってもいい。その気持ちさえ、受けとめて。

「なぜ、なぜ貴様らは絶望を、闇を光に変える! なぜ闇を受け入れない! 光光光光!! そんなに光が大事かァァァァッッ!!」

「わからないだろうさ。おまえには絶対にわからない。人々に絶望を与えるような存在には決して!」

「うるさい、うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!! そんな光なぞ、消せばただのガラクタだ!」

 なにを焦ったのか、青白い魔力の塊を無数に放ってくる。

 細かすぎてかわせない。先ほどと似たような光景だ。

 けれど、違うのは俺の変化だ。このまま、駆け抜ける!

 無言のまま、邪神に向かいただ走る。

 当たってくる魔力の塊は、不思議とダメージが通らない。光の前では無力だ。

「おまえにこの光を消すことはできない! 一度目のあのときのようにはならない! いまの『光輝』なら、おまえを倒せるだけの力がある!」

「グリッター……」

 魔力の塊が撃ち出されるのが止み、俺はその身を邪神のもとまで跳躍させる。

「認めない! そのような光、断じて認めん! この世は全て、闇で包まれていればいいんだ!」

 ダワーエの背から生えていた触手が、邪神から生えてくる。

「この!」

 触手が手や足、胴にまとまりついてくる。

「フハハハハッ! これで終わりだ!」

 邪神がその口を開き、触手ごと俺を口内へと導こうとする。

「やらせるか!」

 手元から光を魔弾に練りこみ放出する。

 食われる寸前に魔弾で口を閉じさせることに成功した!

「無駄だ。この身は闇。口なぞただの形に過ぎぬ!」

「はい!?」

 触手はそのまま俺を引っ張り続け、額の辺りから邪神の中へと引きずりこんだ。

 気持ちの悪い感触が体を包む。

 俺の全身は、完全に邪神の体内へと吸収された……。

 気持ちの悪い感触から解放されてみれば、そこはただ暗いだけのなにもない空間が広がっていた。

「ここは永遠に続く絶望の空間。永久に途切れることのな闘争の世界へようこそ」

 邪神の声が途切れるのと同時に、空間に変化が起きた。

 ただ一人。ダワーエが俺の前に姿を現した。

 

 


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