ハイスクールD×D 精霊と龍神と   作:きよい

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 お久しぶりです。
 最新話を投稿する前に、話しを書き出して結構経ったため、矛盾点を解決しながら再投稿の形をとっていこうかと思います。
 最新話に追いつくまでしばらくかかるかと思いますが、読み返しながら待っていていただけると幸いです。


プロローグ
プロローグ


 教室は今日も騒がしい。

 誰も彼もがおしゃべりしたり、ふざけ合ったり。放課後も他人の声が途絶えることがない。

 特に騒がしいのは、男子三人のグループだ。

 兵藤一誠と松田。それに元浜。

 この三人は騒がしい教室にあっても異質だった。もちろん、悪い意味で。

「いいもん手に入ったぞ」

 松田が鞄を開け、中身を机の上に広げていく。

 それは見るからに卑猥な本やDVDだ。それも、一本ではない。何十本と出てくる。

 いったい鞄のどこにそれだけの量が入るのやら……。

 是非とも家の同居人には見せたくない類だ。あいつには純粋でいてほしい。

 三人の近くを通りかかった女子生徒は、「ひっ」と悲鳴を上げて早足に去っていった。

 当然の事だと思う。あそこに嬉々として入っていけるのなぞ、うちの黒猫くらいだろうな。

「よし、今日はこれを松田の家で鑑賞しようぜ」

 元浜が一誠を誘う。が、

「悪いな。俺は今日デートなんだよ」

「なっ……」

「……馬鹿な事が…………」

 一誠の一言に、松田と元浜の動きが止まる。

 しかし、硬直はすぐに溶け、二人の顔は憤怒に染まった。

「一誠。なあ一誠よ。今ここでデートに行けない身体になるのがスジだろぉぉぉぉぉ!!」

「そうだぁぁぁぁぁ!! 俺達は運命共同体だろ!!」

 よくわからない理屈を述べ二人は一誠に襲い掛かる。うはー、うるさい連中だよ。

「ちょ、おいッ!?」

 たまらず一誠は二人の突撃をかわし飛び退く。その際、近くの机が揺れた。

 突撃先にあった机――そう、俺の席だ。

「おい……」

 声をかけると、一誠と視線が合った。

「わ、悪い! バカ二人とちょっとな……」

「はあ……」

 思い返せば、一誠自体に非があったわけじゃないことはわかる。人の恋路を汚そうとした奴らが悪い。

 俺は自分の中でそう結論づけた。

「わ、悪かったって。機嫌直してくれよ、カイト」

 一誠は俺――月夜野カイトに手の平を合わせ、謝るポーズを取る。三人でつるんでいる光景ばかり見ているからわからなかったが、一誠ひとりでなら、思ったより付き合いやすい人柄に思える。

「あんまり教室内で騒ぐなよ? 被害者が俺だからいいものの、女子とかだと大変だろ?」

「ああ……」

「わかってくれればいいよ。後はこのぶつかってきた二人を怒るから。一誠はもういいよ」

 そう言い、一誠を解放した。

 にしてもあの一誠がデートねぇ。松田と元浜とつるんでて、校内じゃエロくて有名だったと思ったけど。……物好きもいたもんだな。

 なんて、三人いっしょくたに見てたら思ってたんだろうな。あいつ個人を見てくれる人がいたなら、それはどうなるかわからねいや。

「クッ……おのれイッセー。我々は同士ではなかったのか!」

「夜道には気をつけろよイッセーェッ!」

 教室から出て行くあいつの後ろ姿を眺めていると、バカが二人立ち上がった。

 こらこら、おまえら一誠を追えると思うなよ? これから俺と楽しいお話をしようじゃないか。

「ヒッ!?」

「お、おまえは月夜野カイト!?」

 無言で二人の肩に手を置く。

「人の顔を見て驚くなんて、ちょっと失礼すぎないか? それと、俺の机に突っ込んできた件について、すこーしつきあってもらおうか!」

 

 余談だが、この日教室中で女子の歓声と、男子二人の悲鳴が響き渡った。

 

 

 

「今日もやっと家に帰れるな」

 放課後になり、学校から開放された俺の機嫌は良かった。

 なにせ家に帰れるのだ。家に居るのが一番嬉しいことである俺にとっては最高だ。

 と、何気なくいつもと違う道に入っていくと、噴水のある町外れの公園に出た。

「あれは……一誠? ってことはあの娘が彼女か。へぇ……かわいいじゃん」

 黒髪なのはポイント高いな。まあ、あいつと比べるのは酷か。

「邪魔しないようにそっと抜けてくか」

 そう思った矢先、一誠の隣にいる彼女から発せられた一言によって、歩みを止められた。

「死んでくれないかな」

 瞬間、彼女の背中から黒い翼が生える。

 バサバサッと羽ばたきすると、数枚の黒い羽が俺の方まで舞ってきて足元に落ちた。

 ……堕天使? なんでこんな所に!

 一誠の彼女だった堕天使は手元に一本の光の槍を作り出し、躊躇する事なく一誠に投げた。

 当然、ただの一高校生がかわせる事もなく、彼は容易く貫かれた。

「ゴメンね。あなたが私達にとって危険因子だったから、早めに始末させてもらったわ。恨むなら、その身に神器を宿させた神様を恨んでちょうだいね」

 危険因子――。

「なるほど、そういう事か。理解できたよ」

「――ッ!?」

 堕天使がここに居る理由に合点がいった。

 笑いながら一誠の前まで歩み寄るが、やはりこいつはすでに死にかけ。治癒の力を一切持たない俺に命は繋げないと悟る。

「人間? 悪いけど、見られたからにはあなたも死んでもらうわ」

 堕天使は再び光の槍を手元に作り出し、関係の無い人間にも躊躇う事は無かった。

 躊躇なさすぎて困るわ。

 ヒュッ。

 風を切るように、槍が迫る。

「今から夕飯の準備あるんだから、邪魔すんなよ。――<真実を貫く剣>!」

 左手に漆黒の闇をたたえた剣を出現させ、正面から槍を斬り裂く。

 脆いな、堕天使の光ってのも。

「神器……ッ!?」

 お、やっぱわかっちゃうか。隠すほどのものでもないけど。

「まあ、そうだけど? まだやる? 俺いまから夕飯の準備だから退くなら追わないよ」

 堕天使は顔を屈辱の色に歪めたが、やがて踵を返し、夕暮れの空に消えていった。

「さて、一誠はどうしようか」

 左手から剣を消し、彼の側でしゃがみ込む。

 どうしたものかといった時、魔方陣が浮かび上がり、紅い髪の女性が現れた。

 それは、俺の通う駒王学園のお姉さまと称されている先輩。

「リアス先輩?」

「あなたね、私を呼んだのは」

 俺? まったく覚えがないことを言われても困るのですよ。

「い、いえ。俺は何もしてません。たぶん先輩に用事があるのはそこで倒れてる一誠じゃないですかね」

 一誠の方を指指し、リアス先輩への間違いを訂正する。

「死にそうね。傷は……へぇ、おもしろいことになっているじゃないの。そう、あなたがねぇ……。本当、おもしろいわ」

 クスクスと興味ありげな含み笑い。

 ……なにが面白いって言うんだ? 一誠の神器はそんなに強力なモノなのか?

 興味の湧く話であるが、わざわざ入っていきたいとは思えない。

「どうせ死ぬなら、私が拾ってあげるわ。あなたの命。私のために生きなさい」

 そう言い、リアス先輩は一誠に向け、八つの駒を差し出した。

 悪魔の駒。やっぱり持っていたのか。

 それらは一誠の身体に入っていき、次第に見えなくなった。

「さて、それであなたは何者なのかしら?」

「ただの学校の後輩ですよ」

 即答してやった。

 あらかじめこの質問が来る事がわかっていたから、前もって答えを考えていたのだ。

 考えていたのならもう少しマシな答えにしてほしかったとか言わない。

「すいません、そろそろ帰らないと家の同居人が暇を持て余して部屋を滅茶苦茶にするんで!」

 時間を確認すると、普段なら帰っている時間を過ぎていた。クソッ、今日はまだ買い物すら終えてないのに!

「ま、待ちなさい! ……ああ、もうっ! 後日ちゃんと話を聞かせてもらうわ!」

 前を向きながら、後ろにいるであろう先輩に向かって右手を軽く上げた。

 

 

 

「ただいま」

 ドアを開け、リビングに入る。

「……カイト、帰った」

 出迎えてくれたのは、長く伸びた黒髪を垂らした少女だった。

 黒が似合う、かわいいくせに何を考えているのかいまいち読み取れない少女。でも、俺にとっては恩人であり、最後の家族。

「ああ。少し遅くなったな。夕飯すぐ作るから待っててくれ」 

 言うが早いか、キッチンへと向かい調理を始める。

 その間、彼女は俺から目を離さなかった。正直ちょっとくらいは視線を外してくれないとやりづらい。

 でも遠ざけるのもなぁ……。

 この辺りの扱いは難しいもんだと、改めて時間させられる。

 

「ごちそうさまでした」

「……ごちそう、さま」

 夕飯を食べ終えたあとは、だらだらとテレビを付けながら過ごしていた。

 付けながらと言うのは、ほとんど見ていないからだ。

 彼女は俺に膝枕をされ、先程から撫でられ続けている。こんな姿を見られたら、ロリコン一直線だな。

 笑い話ですまない光景が浮かぶが、そこはスルーしておいた。

「そういえば、今日悪魔と堕天使に会ったよ」

 帰りの光景が浮かんでくる。

「そう……。この辺り、いろんな力で乱れてる。カイトも、気をつけて」

 少女は興味なさげだったが、心配しているように見える表情をしていた。

「わかってる。俺はいつだって――」

「いつだってなにかにゃん?」

「……」

 第三者から口を挟まれ、仕方なく、そちらへと視線を移した。

「なんの用だ、黒歌」

 頭部に猫耳を生やした、黒い着物に身を包んだ女性がすぐ後ろにいた。

「ちょっと退屈だから来ただけ。それより、なんの話してたの?」

「遠慮なく人のプライバシーを覗こうとするなよ」

「それだと私がつまらないにゃー」

 手を猫みたいにして可愛くウインクする黒歌。

「……お前のために俺のプライバシーが脅かされてたまるか」

「怒ってるのかにゃ? そのわりに怒気を感じないけど」

 指摘されたので、当然のように答える。

「当たり前だ。今寝てるこいつを起こすわけにもいかないだろ」

 優先順位は、黒歌ではなく寝ている少女の安眠の方が上だ。

「相変わらずだけど、カイトは甘いにゃん。というか、優しい」

「いいだろ別に。それより、今日面白い事があったんだけどさ」

 そこで一度話しを区切った。

 不思議に思ったのか、黒歌は首を傾げる。

「どうかしたの?」

「いや、こいつも俺の中にいる二人も興味なくてさ。話相手が欲しかった時にちょうどお前が来たもんだからな」

「それはそうにゃ。カイトの中にいる娘達はカイト優先。それに、今寝てる娘はほとんどの事に興味ないにゃん」

 ガックリと項垂れる。なんだかんだで話すのは好きな方なのだ。

 話相手が居ないと寂しくていつかは死んでしまうレベル。いや、それはないか。うん、ないな。

 話相手は自分の中にも居るし。たまに出てくるし。けど話となると喧嘩の多い二人だ。平和な話はできなくなることが容易に想像できてしまうため、話し相手には向いてない。

 ただ彼女達は俺の事にしか基本的に干渉しないだけなのだ。

「それじゃ、楽しくお話でもするかにゃん?」

「ああ、しようしよう」

 そう言うと、黒歌は俺の首へと手を回してきた。

「じゃあまずは、ご飯作ってにゃ。猫まんまでいいから」

「……こいつ布団に寝かしてくるから少し待ってろ。というか、お前らは俺の家を休息地にするんじゃねえよ」

 最後に不満の一言を漏らし、寝てしまった彼女を運びだした。

 部屋に戻ってくると、黒歌が暇つぶしのように魔法陣の中からいろいろなモノを取り出し眺めていた。

「なにそれ」

「んー……昔の思い出みたいな何か?」

「曖昧だな」

「そんなもんにゃー」

 確かにな。俺も、あいつらとの思い出の品なんて何があったかわからんし。

 そんなことより、飯でも作ってやるか。

 

 その後、日が昇るまで会話は弾んだ。




 そういえば、『デート・ア・ライブ』の話も新しく書き出したので、そちらもよければ読んでやってください。

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