探偵法   作:冷凍レモン

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集う探偵たち

私は中の様子をのぞき込んで思わず顔をしかめてしまう。その部屋の中に血だまりがあったというわけではない。むしろ既に血は乾き黒く変色している。また一番赤黒いところには人型のハクボクが残されており、そこに被害者が倒れていたことが分かる。いやこの部屋で殺された人物なんて推理するまでもない。老人は私たちを見まわして告げる。

「会長が殺されました。今回は皆さまにこの事件を解決していただきたいのです。」

 老人が何か続けて言う前にイケメン(私は好きではないが)探偵と中年のおっさん探偵がどこから出したのか白い手袋をはめドカドカト現場に入っていく。どうせDNAの鑑識課によって現場検証は終わっているのだろうがどうもこういうタイプの人間は苦手だ。ただ、いちばん最後にやって来たあまりぱっとしない男(探偵には見えない)は扉の前で固まってしまっている。大方あまり血を見たことがないのだろうと勝手に結論付け、顔を輝かせながら手袋もなしに現場に突入せんとする馬鹿をげんこつで始末した後老人に質問する事にした。

「その、失礼ですがあなたは?」

「夏樹探偵ですね。申し遅れました。私は会長様の身の回りのお世話や様々な事務のお手伝いをさせていただいている水上と申します。普段はこの本部の一室をお借りしてそこに住んでいるのですが、昨日は急用で出かけておりまして深夜の2時ごろにこちらに戻って参りました。そこで部屋の電気がついている事に気がつきましたので中をのぞいてみた所このような状況に。私がこの部屋に入った時にはすでに亡くなっていました。」

水上は聞いてもいない事までぺらぺらとしゃべる。それまで溜めこんでいたものがあふれ出たのかもしれない。彼が自分自身を責めてしまうのも無理のない事だろう。だがあいにく私は彼に同情するだけでそれ以上は何もない。彼も重要な容疑者であることは変わりないのだから。

 「それで詳細な現場の状況のデータはあるんですか?」

「私としたことがまだお渡ししていませんでしたね。彼は右のポケットからスマフォを取り出すと慣れた手つきで操作する。ほどなくしてまた例の着メロがなったが無視して馬鹿の携帯をとり上げると現場の写真が入っているフォルダを開く。そこには体中に無数の刺し傷を受けた会長の姿があった。会長が死亡した後もさし続けたに違いない。資料を見ていると刃渡りが異なる傷あとまであるという。複数犯の可能性もあるかもしれない。オリエント急行みたいに恨みを持った人全員がナイフで刺した。2時間ドラマとしたらとても面白いが現実はそうはいかない。

「先程お送りした資料の中には鑑識の情報も入っておりますのでご確認ください。」

水上は誰に行っているのか分からないが語りかける。

「今回の捜査権はSクラス相当となっておりますので、皆さん頑張ってくださいね。あなた方は選ばれた探偵なのですから。」

水上はそう言い終えると仕事は終わったとばかりに足早にその場から退出した。今度こそ現場にと意気込む部下を引っ張りながらスマフォを操作して資料を読んでいる冴えない探偵に声をかける。他の探偵に聞こえないように耳元で。

「ねえ、あなた私たちと組む気はない?」

 

 

 

 

 「……………というわけで密室の完成♪こんなことができんのってあなただけだよね、奥さん。」

「………。」

私の完璧な推理の前に犯人は何も答える事が出来ず黙ってしまう。仕方がない。自他共に認める名探偵の私の近くで事件を起こしたのだから。運がなかったという事だろう。この時ばかりは探偵をやっていてよかったと本当に思う。これこそミステリーの醍醐味だ。さて次の事件はどんなものだろうか。本部に行くなんて本当に久しぶりだから楽しみだ。まあ美少女高校生探偵の私が捜査するのだから華麗に解決できるだろう。

 


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