Δデルタ「皆さん、如何もすいませんでした!こんなに間が空いてしまい何と申せば良いか」
のび太「本当だよ!何やってんのさ!」
Δデルタ「いや、もう本当にすいませんでした!」
ドラえもん「僕らからも謝ります。すいませんでした」
郎夜「てか、何で遅れたんだよ」
Δデルタ「いや、あのさ、テストだったり部活だったりで時間が取れなかったと言うか」
奈々「何か言い訳がましいですね…」
Δデルタ「うっ、それは…」
のび太「取り敢えず、始めていこうか」
ドラえもん「そうだね。では、真・のび太の恐竜2006 エピソードFINALを…」
全員「どうぞ‼︎」
ディケイド(コンプリート)達はバイクに乗ったり、飛行したりして出口を目指していた。
ディケイド(コンプリート)「くっ!さっきより崩れるペースが早まってる⁈」
白い魔法使い(テンペスト)「そろそろ本格的に不味いらしいな…」
サイガ「急がないと!」
ディケイド(コンプリート)達は崩れ行く基地の様子を見ながら、急いだ方が良いと判断し速度を上げる。だが、三人は出口付近に近付いた時、一斉に止まる。
サイガ「これって…⁉︎」
白い魔法使い(テンペスト)「不味いどころじゃなかったな…」
ディケイド(コンプリート)「くそっ!一体どうしたら…」
三人は瓦礫や岩などによって塞がれた出口を見ながら、嘆く。その時、白い魔法使い(テンペスト)があることに気付く。
白い魔法使い(テンペスト)「そうだ…!。のび太!此処は奴らの基地なんだよな?」
ディケイド(コンプリート)「当たり前ですよ!こんな時にn…」
白い魔法使い(テンペスト)「だったら、奴らの飛行船とかもある筈だろ。それを使えば!」
ディケイド(コンプリート)「!そうか!それなら!」
サイガ「でも、そんなのどこにあるかなんて…」
ディケイド(コンプリート)「大丈夫。それは僕が知ってるから、二人ともついて来て」
ディケイド(コンプリート)が先導し、その後をサイガと白い魔法使い(テンペスト)がついていく。そして、闘技場を通り抜け三人は格納庫に到着した。
ディケイド(コンプリート)「着きました」
白い魔法使い(テンペスト)「よし、ならさっさと乗り物パクって逃げるぞ」
サイガ「師匠、パクるって言い方はどうかと思いますが…」
サイガの呟きは聞かずに白い魔法使い(テンペスト)とディケイド(コンプリート)は三人が乗れそうな乗り物を探す。すると、ドルマンスタインが乗ろうとしていた大きな乗り物が目にはいった。サイガはそれに近付いて行く。
サイガ「二人とも!これは如何ですか?」
ディケイド(コンプリート)「これか…。確かに此れなら三人で乗れるし丁度いいかな」
白い魔法使い(テンペスト)「そうだな。他に良さそうな物はなかったみたいだしな。よし、乗り込むぞ!」
三人は、その乗り物に近付いて行く。しかし…
白い魔法使い(テンペスト)「あれ?此れ如何やって開けるんだ?」
サイガ「ちょ、師匠!何やってるんですか⁉︎」
ディケイド(コンプリート)「早く、早く!」
入り口のドアを開ける事が出来ず、あたふたしていた。だが、それも仕方ないだろう。未来の技術の乗り物の取り扱いなど初見で出来る訳がない。しかし、そうこうしている間に基地全体の揺れが大きくなり、完全崩壊までのタイムリミットが迫る。
白い魔法使い(テンペスト)「ちょっと、待てって⁉︎俺だって分かんねぇから困ってんだよ⁉︎」
サイガ「そんな〜!」
ディケイド(コンプリート)「何とかして下さい!」
焦る白い魔法使い(テンペスト)を三人が急かしていると、格納庫の入り口から大量の初級インベスや白ヤミーが入ってきた。三人は、それを見て更に焦る。
サイガ「な、何で⁈何で彼奴らが居るの⁉︎」
ディケイド(コンプリート)「多分、黒マスク達が基地中に配置させてた奴らだと思う」
白い魔法使い(テンペスト)「よし!なら、此処は俺が彼奴らを…」
ディケイド(コンプリート)「彼奴らは僕と奈々ちゃんで食い止めます。だから、貴方は口じゃなくて手を動かして下さい。いける、奈々ちゃん?」
サイガ「うん、勿論!師匠、その間に扉を開けといて下さい」
白い魔法使い(テンペスト)「…」
ディケイド(コンプリート)「あ、郎夜さん。ピー助の事もお願いします」
白い魔法使い(テンペスト)「…おう」
白い魔法使い(テンペスト)の返事を聞くと、ディケイド(コンプリート)とサイガは敵の集団に向かっていく。そして、それぞれ戦闘を始める。それを横目に白い魔法使い(テンペスト)は片手にピー助を抱えながら必死に扉を開けようとする。しかし、扉はうんともすんとも言わず、全く動かなかった。
白い魔法使い(テンペスト)「くっそー!開かねぇよ!もう如何なってんだよ、このドア‼︎」
遂に苛つきが頂点に達した白い魔法使い(テンペスト)が、扉に向かって割と強めに蹴る。しかし、扉は、ばんっ!と言う音を立てるだけで、それ以外は何も起こらない。それを見て白い魔法使い(テンペスト)は、虚しさと共に落ち着きを取り戻した。
白い魔法使い(テンペスト)「はあ、いい歳して何ドアに向かって一人切れてんだが…。開かねぇな…これ…」
白い魔法使い(テンペスト)は、ため息を吐きながら呟き操作を開始する。その時、突然ピー助が頭で何かを指しだした。
ピー助「ピィ、ピィ」
白い魔法使い(テンペスト)「ん、如何したピー助?俺の手、いや指?を指してn…あっ、そうだ。俺には此れがあったんだった。何で気付かなかったんだ…」
ピー助の指した自身の指を見て、それに気付いた。そして、今の今まで言われるまで気付かなかった自分自身に呆れて頭を抱える。それをピー助は首を傾げて見ていた。その頃ディケイド(コンプリート)達は…
ディケイド(コンプリート)「はあっ、せいっ!それにしても数が多い!たあっ!」
サイガ「本当に、そうだね。やあっ!こんなに居たなんてっ!」
ディケイド(コンプリート)は、ライドブッカー(ソード)で白ヤミー二体を斬りながら敵の数の多さを口にし、サイガも初級インベスを蹴り飛ばしながら肯定する。二人はずっと休みなしで戦い続けていた。敵の強さは雑魚レベルなので苦戦などはしないが、数が数なので休みなしでの連戦を強いられていた。
ディケイド(コンプリート)「郎夜さんはまだかな」
サイガ「多分そうだと思う」
ディケイド(コンプリート)「なるべくは急いで欲しいけど…仕方ないか…」
二人が、そう呟きながらも敵を倒していると、大きな乗り物の上に乗っている白い魔法使い(テンペスト)から声がかかった。
白い魔法使い(テンペスト)「おおーい、お前ら!」
サイガ「師匠!もしかして開いたんですか⁈」
白い魔法使い(テンペスト)「いや、まだだ」
ディケイド(コンプリート)「じゃあ、何d…」
白い魔法使い(テンペスト)「いいから、こっちに来い!」
白い魔法使い(テンペスト)の意図が分からないまま二人は取り敢えずピー助を片手に抱えた白い魔法使い(テンペスト)のいる所まで跳ぶ。
白い魔法使い(テンペスト)「よし、来たな」
サイガ「師匠、此れから如何するんですか?」
白い魔法使い(テンペスト)「ん?そんなもん此れの中に入るに決まってるだろ」
ディケイド(コンプリート)「如何やって?」
白い魔法使い(テンペスト)「こうするんだよ」
《テレポート、ナウ》
すると、ディケイド(コンプリート)達は魔法陣に包まれて、そこから消えた。
乗り物の中
無人だった場所に突然、魔法陣が現れディケイド(コンプリート)達が現れた。
白い魔法使い(テンペスト)「最初から、こうすれば良かったんだ」
サイガ「確かに…焦り過ぎてて思い付きませんでした」
ディケイド(コンプリート)「本当だよ…ん?じゃあ、テレポートで基地からの脱出も出来るんじゃ?」
白い魔法使い(テンペスト)「ああ、それは無理だ」
ディケイド(コンプリート)の案を白い魔法使い(テンペスト)は一蹴する。
ディケイド(コンプリート)「如何してですか?」
白い魔法使い(テンペスト)「いやな、テレポートっつう魔法はな何処でも好きに跳んで行けるって訳じゃねぇんだ。目的地の場所や付近の地理を頭に入れてイメージしながらじゃねぇと駄目なんだ。そうしなきゃ、目的地があやふやになってとんでもない場所に来ちまったってなっちまうんだよ。テレポートした場所が地面の中でしたとかになったらヤバイだろ?今回もそれだ。正確にテレポートするには俺は此処らの事を知らなさ過ぎる。それに今、外の状況が分かってねぇ。そんな時に不用意に跳ぶのも危険だろ?」
ディケイド(コンプリート)「成る程、そう言うことですか。なら、さっさと此れ動かして脱出しましょう」
ディケイド(コンプリート)達は変身を解除して、操作パネルらしき物を見付ける。
のび太「此れで動くらしいですね」
郎夜「だな。だが、これも如何する?」
奈々「そうですね…。うん?これは…」
奈々は操作パネルの一番横にあった少し他より大きなボタンを見付けて押す。すると、前に大きな画面が現れ、乗り物内の電気などがつき明るくなる。
奈々「やった!動いた!」
郎夜「ああ、使えるって事だ!」
のび太「でも、ここからの操作g…」
《タイムシップ起動確認シマシタ。次ノ操作ヲ音声マタハパネルデ入力シテ下サイ》
突然、画面から電子音声が聞こえてきて三人は驚く。如何やら、これに搭載された機能らしい。のび太は、タイムシップと言う言葉に一つの可能性を思い付いた。
のび太「タイムシップって…。もしかして、これ…タイムマシン…?」
郎夜「本当か⁉︎」
のび太「ええ、タイムシップって言う名前からして…多分」
奈々「やった!なら、これで何とかなるね!」
のび太の言葉に郎夜と奈々は大喜びする。のび太はタイムシップにこの場所から離れる様に言う。
のび太「タイムシップ、取り敢えず此処から離れて時間移動して!」
《了k…caution、caution、caution…》
のび太「えっ、な、何⁈如何したの⁈」
のび太達は突然の警告音に驚き困惑する。のび太は、その原因をタイムシップに聞く。
《超空間ニ突入スル為ノエネルギーガ足リマセン。ヨッテ、時間移動ハ不可能デス》
のび太「何だって⁉︎」
奈々「そ、そんな…」
郎夜「くそっ、如何すりゃぁ…」
その時、外で天井が崩れタイムシップの近くに落下し、それによりタイムシップが大きく揺れる。
のび太「うわっ!」
奈々「きゃっ!」
郎夜「どわっ!」
三人は、その揺れに思わずよろける。よろけながらのび太はタイムシップに言う。
のび太「これって飛んで出ることは出来ないの⁈」
《可能デス。シカシ、周リニハ脱出スル為ノ出口ガアリマセン》
郎夜「これに何か脱出口開ける為の装備とかねえのか⁈」
《迎撃用ノ反物質粒子砲ガ搭載サレテイマス。シカシ、今発射スルトコノ場所ガ一気ニ崩壊シテシマイマス》
奈々「撃たなくても、もう十分崩れてるよ!」
郎夜「構わん!撃てぇぇぇ‼︎」
すると、タイムシップの前面から極太の巨大な砲身が出てきて、その砲身にエネルギーがチャージされていく。
《反物質粒子砲発射マデ後5秒、4、3、2、1反物質粒子砲発射シマス》
その瞬間、砲身から巨大な光の砲撃が放たれ天井に命中し、一気に外まで貫いた。それにより、タイムシップが通れる程の巨大なトンネルが出来る。
のび太「今だ一気に飛べぇぇぇ‼︎」
のび太が叫ぶ様に言うと、タイムシップは急に動きだし凄まじい速度でトンネルを潜る。しかし、反物質粒子砲の影響で基地が一気に崩壊しだし、その影響でトンネル内も岩や瓦礫が無数に落下して、タイムシップに傷をつけていく。
郎夜「ぐうぅぅ、後どれ位だ⁉︎」
《間モナクデス。脱出ノ際ニ非常ニ大キナ揺レガ予想サレマス。警戒シテ下サイ》
タイムシップが出口付近に差し掛かった時、出口が一気に崩れた。しかし、タイムシップは速度を緩めることなく出口へと向かっていき、崩れた出口を無理矢理こじ開けて外へと出た。
のび太「治まった…?」
奈々「脱出できたの…?」
《脱出ニ成功シマシタ》
郎夜「…や…」
皆「やったぁぁぁぁぁ‼︎」
ピー助「ピィーーー‼︎」
タイムシップの報告を聞くと、三人は一斉に歓声をあげて喜ぶ。それから暫く、三人は騒ぎまくっていた。その間にタイムシップは地面へ着陸する。そして、漸く落ち着いた三人は外へと出る。
奈々「すぅぅぅ…はぁ〜〜。何だか外の空気を吸うのが久し振りに思えちゃうね」
のび太「そうだね。ずっとって程じゃなかったのかもしれないけど、結構あの基地にいたからね」
郎夜「本当だぜ。正直、息が詰まりそうだったぜ」
ピー助「ピィ、ピィ」
のび太たちは外へ出ると、思い思いの感想を言う。それから、のび太たちは外の空気を味わいながら休んだ。
数時間後
のび太たちが休んでいた場所には青と白の制服に身を包んだ“タイムパトロール”の隊員たちがタイムシップの調査をしていた。その中でサングラスにヒゲを生やした人物に一人のタイムパトロール隊員が報告をする。
隊員1「長官、タイムシップの調査が完了しました。奴らのアジトの方も調査がもうすぐで完了するとのことです」
長官「そうか。ご苦労だった。それでは、暫くは待機だ。そして、アジトの調査が終わり次第帰還する。準備だけはしておけ」
隊員1「はっ!」
隊員は敬礼をして返事をすると、離れていく。そこで、別の隊員が長官に話しかけた。
隊員2「長官、よろしいでしょうか」
長官「如何した?何か問題でも起きたのか?」
隊員2「あ、いえ。そうではありません。その…今回の事件の功労者である野比 のび太たちの姿がありません」
そう言うと、長官は一息吐くと明後日の方向を向く。
長官「彼らなら、もう行っただろう」
隊員2「そうですか。本来ならば、事件解決の貢献の表彰を
する筈だったのですが」
長官「まあ、行ってしまったものは仕方がない。後で表彰すれば良いだろう。確か、野比 のび太の家には子守ロボットが行っているんだったな?」
隊員2「はい。子守用猫型ロボットMS-903 ドラえもんが行っているとのことです」
長官「なら、問題は無い。未来の事を知っているのだ、渡せない事もない」
隊員2「はい。しかし、彼らも此処に居れば私たちが彼らの時代まで送れたのですが…」
長官「いや、それは出来なかっただろう」
隊員「?それは如何言う?」
長官「彼らは我々が送ると行っても恐らくは断るだろう」
隊員2「何故ですか?」
長官「それは若さ故だろうな」
隊員2「は?」
長官「彼らには彼らなりの意地があるんだろう。あの首長竜を自分たちの手で返すという」
隊員2「はあ…」
長官は隊員の納得のいかないという声音を感じ取り、そちらの方に向き直る。
長官「納得がいかなさそうだな」
隊員2「い、いえ!そんなことは!」
長官「ふっ、構わん。納得がいってないのは声を聞いたら大体は分かる」
隊員2「は、はあ…。それにしても何故、長官はそこまで言い切れるのでしょう?」
長官「何故、か…。私にも、あの様な時代があったからだろうからな。後先の事は考えず無鉄砲に突っ走っていた時代がな」
隊員2「それh…」
隊員たち「うわぁぁぁぁぁ‼︎」
隊員が長官に言葉の意味を聞こうとした時、他の隊員たちの方から悲鳴が聞こえた。長官と隊員は其方を向き、状況を聞く。
長官「如何した?」
隊員3「ちょ、長官。怪物が、怪物が現れて、そ、それで…」
長官は隊員の報告を聞くと現状を概ね把握する。
長官「成る程、奴らの残党か…。よし、お前たちは下がっていろ。私がやろう。最近は戦闘なんて滅多になかったからな、腕や感をなまらせない様にするにはちょうどいい」
そう言う長官の腰にはバックルに金色のタイムパトロールのマークのベルト“G電王ベルト”が巻かれていた。そして、自分の懐から黒いパス“ライダーパス”を取り出す。すると、G電王ベルトから音声が鳴りだす。
長官「変身」
長官がライダーパスをG電王ベルトのバックルにセタッチすると、身体が銀色の装甲に包まれた黒いスーツに変わり、頭部のレール部分をパトカー型のパーツが走り、顔の前で止まるとパトライトを模した赤と青の仮面に変形し、サイレンが鳴り響く。そして、長官は“仮面ライダーG電王”へと変身した。
G電王「総員、タイムマシンへ一時退避」
隊員たち「了解!」
G電王の命令に隊員たちは返事をし、タイムマシンへと戻っていく。そして、全ての隊員がタイムマシンへ退避した事を確認したG電王は刃が出ている銃“デンガッシャー ガンモード”を片手に構えると、此方へ向かってくる初級インベスたちを見る。
G電王「これより、敵残党の殲滅を開始する」
そう言ってG電王は、初級インベスたちにゆっくりと近づいていった。
平原
のび太たちはタイムマシンが来る前に、あの場から離れて先へ向かっていた。
奈々「ねぇ、のび太くん」
のび太「ん、なに?」
奈々は横を歩いているのび太に声をかけ、のび太はそれに反応する。
奈々「良かったの?あのタイムシップ置きっ放しにして」
のび太「大丈夫だよ。タイムパトロールが後始末してくれるでしょ。僕らじゃ如何しようも無かったし」
奈々「でも、タイムパトロール本当に来るのかな?私たちが休んでる間、全然来る気配が無かったけど…」
郎夜「だが、タイムパトロールってのは航時法ってのに則って活動してるんだろ?なら、あのタイムシップは何としても処理しなきゃならない筈だ。じゃないと、あんなのがこの時代にあったって事実が歴史に歪みを与えかねないからな」
のび太「そう言うこと。ま、どっちにしろ僕達には如何する事も出来ないからね。タイムパトロールに丸投げするしか方法が無いんだよ」
奈々「成る程」
のび太と郎夜の説明に奈々は納得したと言う表情で頷いた。それから三人は色々な事を喋りながら歩いていた。その時、三人の目にあるものが映った。それは一面の海だった。
郎夜「こりゃあ…」
奈々「陸が無くなってる…」
のび太「多分、陸地がくっついたり、離れたりって移動を繰り返してるんだよ」
そう、この先に続く筈だった陸地が離れていたのだ。三人が如何したものかと頭を悩ませていると…
ピー助「ピィ、ピィ」
のび太「ん?お前に乗れって?」
ピー助「ピィ〜!」
ピー助が、のび太の頭を叩きながら鳴き、その意図を察したのび太が確認の意味を込めて聞くと、ピー助は肯定する様に鳴いた。
海上
奈々「凄い!全員で乗っても沈まないよ!」
郎夜「成長したんだろうな、ピー助も」
三人は元の大きさのピー助の背中に乗って移動していた。ピー助は三人を乗せても沈むこと無く問題無く進んでいた。それを見た奈々ははしゃいで、郎夜はピー助の成長だと言う。その中で、のび太はピー助の背中を撫でながら嬉しそうな、しかし少し寂しそうな表情をしていた。
奈々「二人とも、あれ…」
すると、奈々が何かを見つけたのか、その方向を見ながらのび太と郎夜に声をかけた。二人も、その方向を見ると其処には小島程度の大きさの陸地の中に四角い黒い穴の様なものがあった。
のび太「タイムマシンの入り口だ…!」
郎夜「と言うことは、ここは日本⁉︎」
奈々「帰って来たんだ‼︎」
三人は、それがタイムマシンの入り口だと分かると一斉に喜ぶ。そして、ピー助が陸地に着くと降りて確認をする。
のび太「うん、間違いない。これだ!」
郎夜「よし!じゃあ、これで帰れるな!」
奈々「はい!…あっ、でもピー助とは…」
のび太「…」
奈々の言葉に、のび太は現実を再確認させられて押し黙る。もうとっくに分かっていたことだった。自分とピー助が何時迄も一緒にいられないことは。分かってはいたが心の何処かでは認めたくなかったのだ。毎回、そう思う度に何度も心の中で誤魔化していた。だが、もう誤魔化せない。これは現実だからだ。
郎夜「…のび太、行ってこい」
のび太「郎夜さん…」
郎夜「別れを言うのは辛いかもしれないが、言わなかったら一生後悔する事になるぞ」
のび太「…はい」
のび太は砂浜で海を眺めているピー助のそばに行く。ピー助もそれに気付き頭をのび太の方に近付けて、のび太はピー助の頭を優しく抱き締める。
のび太「ピー助、やっと日本に着いたんだよ。分かるか?」
ピー助「ピィ」
のび太「長かったな…」
ピー助「ピィー」
のび太がピー助に語りかけていた時、海から何か音がした。のび太とピー助が海の方を見ると、それはピー助と同じフタバスズキリュウの群れだった。その群れは、仲間同士でじゃれあったりしていた。そして、その群れがピー助に気付くと全員がピー助を見つめる。
フタバスズキリュウ達「ピー、ピー」
ピー助「ピィ…」
フタバスズキリュウ達「ピー、ピー、ピー」
フタバスズキリュウ達は、まるでピー助を呼んでる様に鳴き始める。それにピー助も呆然とする。のび太は、別れの時を感じて涙を零しそうになるが無理矢理抑え込んでピー助に語り掛ける。
のび太「ここがお前の故郷なんだよ」
ピー助「ピィ〜〜!」
フタバスズキリュウ達「ピー!」
ピー助「ピィ〜」
のび太が少し震えた声で、そう言うとピー助は仲間の呼びかけに応える様に鳴き、フタバスズキリュウ達もまたそれひ応える。そして、ピー助は仲間のもとへ向かおうと海に入る。のび太もその後をついて海に入る。ピー助の後をついて行くのび太は、ピー助のヒレや背中を見る。それは出会った頃とは違い、とても大きくなっていてピー助の成長を改めて感じる。それを見て、また涙が零れそうになるがまだ我慢する。今、ここで泣いてしまったらピー助が自分を心配して仲間のもとへ帰れない。そう思ってのび太は必死に涙を堪えていた。
のび太「ピー助…。お前は、これから色々なものを見て、知って、学んで。その中で、お前はまた成長するんだ。その中には知りたくなかった事や辛いこともあるかもしれない。でも、それでも逃げないで欲しいんだ。その経験も、お前をきっと大きくしてくれるから。それで今度はお前が皆を守るんだ。だから、だから…」
のび太が話している間にピー助は群れに近づいて行った。そして、群れもピー助を受け入れていた。その様子を見たのび太はとうとう涙を隠せなくなっていた。顔は泣きそうに歪んでいて、今にも涙が零れそうな表情だった。
のび太「ぼ、僕も、頑張るからな!じゃあ、げ、元気で、な!」
そう言うとのび太は後ろを向いて一直線に走り出す。その途中、足がもつれつまづいてしまう。
のび太「二人とも!早く乗って、早く!」
奈々「のび太くん…」
郎夜「乗るぞ…」
奈々「はい…」
その様子を見ていた奈々は涙ぐんでいて、郎夜はのび太の気持ちを察してタイムマシンに乗り、奈々に乗る様に言う。
ピー助「ピィ〜〜!」
離れていくのび太を見て、ピー助は鳴くとのび太を追う。のび太は気持ちが落ち着かず足が思う様に動かない。
ピー助「ピィ〜!」
のび太「くっ…うっ…来るなぁぁぁぁ‼︎」
ピー助「ピ…ピィ〜〜〜〜!」
のび太は振り向いてピー助に来るなと言う。その時、ピー助は見てしまった。のび太の涙を、表情を。今の今までピー助を行かせる為に堪えていたそれらを。それを見るとピー助は追えなくなってしまう。しかし、それでも涙を流しながらピー助はのび太を呼ぶ様に鳴く。その鳴き声を背に受けながらのび太はタイムマシンに駆け込む様に乗り、泣きながら運転席のレバーを引く。すると、タイムマシンは起動してどんどん上昇して行く。
ピー助「ピィ〜!」
ピー助は上昇して行くタイムマシンを見て鳴き声を上げる。奈々と郎夜は涙を流しながらもピー助を見ていて、のび太は顔を俯かせて泣いていた。そして、タイムマシンが一定の高さまで来るとオレンジの光に包まれる。
奈々「さよなら、ピー助!」
郎夜「元気でやれよ!」
のび太「ピー助〜〜〜〜〜〜‼︎さようなら〜〜〜‼︎」
奈々と郎夜は、少し落ち着いたのか泣きながらもピー助に別れを言う。のび太も最初は顔を俯かせたままだったが、覚悟が決まったのかピー助の名前を呼び、別れを言う。その顔は、もう泣いていなく優しげな表情だった。
のび太「出発!」
タイムマシンが動き出し、オレンジの光が激しくなる。その中で、のび太はもう一度だけピー助を見る。見るとピー助は此方に向かって鳴いている様だった。それを見たのび太が小さな声で言う。
のび太「さようなら。強くなれよ、ピー助…」
のび太がその言葉を言ったのをきっかけに、タイムマシンが発進する。そして、オレンジの光を煌めかせながらのび太たちを乗せたタイムマシンは白亜紀の日本から消えた。
のび太の家の前
のび太「今日は本当にありがとうございました」
郎夜「気にすんなよ。こっちも貴重な体験させてもらったしな」
奈々「うん。だから、こっちからもありがとうねのび太くん」
白亜紀から帰ってきたのび太は、家の前で郎夜と奈々の見送りをしていた。時間はもう夕方だった。
郎夜「じゃあ、そろそろ行くか」
奈々「はい。またね、のび太くん」
のび太「うん。またね」
奈々と郎夜はのび太に別れの挨拶を言うと、のび太に背を向けて歩いていく。のび太はそれを二人が見えなくなるまで見ていた。そして、二人が見えなくなって家に入ろうとした時、夕やけ空が目に入った。
のび太「夕やけがきれいだな…」
のび太は空を見ながら誰にとも無くそう言うと、家に入っていく。家に入ると玉子が台所から出てきた。
玉子「あら、郎夜さんと奈々ちゃんはもう帰ったの?」
のび太「うん」
玉子「そう。もうすぐご飯の支度するから、降りてきてね」
のび太「分かった」
のび太はそう言うと階段を登っていく。それを見ていた玉子は、ふと思い出した様にのび太に問いかける。
玉子「所で今日は何してたの?」
のび太「…ちょっとね」
のび太は問いかけられて一瞬動きを止めたが、今日の冒険を全て振り返りそう答える。そして、ゆっくり階段を上がって自分の部屋に向かった。
夜中
真夜中、のび太は中々眠れずにいた。何だか、気持ちが落ち着かず寝ようとする気になれなかった。のび太は起き上がって机に向かって座る。そして、ライトをつける。のび太は机の引き出しから何枚かの写真を取り出す。それは現代でのピー助との写真と白亜紀でのピー助との写真だった。それを見ながら、のび太はピー助がいた時の毎日を振り返る。
のび太「…寝ようかな」
のび太は写真を引き出しに仕舞うとライトを消し、布団に入る。すると、のび太のそばにピー助と遊んだボールがあった。それを見てのび太は全ての始まりである、あの卵を思い出し、重ねる。のび太はそっとボールを抱き寄せると目を瞑って呟く。
のび太「お休み、ピー助」
その時、のび太の耳にピー助の鳴き声が聞こえた様な気がした。
後書きの間
のび太「いや〜、とうとう書き切ったね」
Δデルタ「ああ、長かったよここまで来るのに」
郎夜「ほんとだな。まあ、言っちまえばまだエピローグがあるんだけどな」
奈々「でも、本編は此れで終わりですよね?」
ドラえもん「そうだろうね」
のび太「さて、そろそろ本編の方を見て行くとして。今回は基地からの脱出とピー助の別れの場面だね」
Δデルタ「ラスト映画でめっちゃ良かったよな。俺、泣いたもん、あのシーン」
ドラえもん「で、脱出は敵のタイムマシンに乗ってしたね。所でさ、反物質粒子砲って物騒過ぎない?」
郎夜「いや、犯罪者の基地なんだからありじゃね?未来人だし」
ドラえもん「未来って怖い…」
奈々「ドラちゃんが言っちゃう?」
郎夜「で、タイムパトロールの長官が変身しちゃったんだが?」
Δデルタ「なんか似合うと思って」
のび太「それだけ⁉︎」
Δデルタ「うん。あっ、設定的にはG電王はタイムパトロールが開発した技術って扱いだから」
郎夜「未来ってすんごい…。でも、ベルトのバックルの部分だけ違うよな?」
Δデルタ「だって、タイムパトロールが開発したのに時間警察のマークじゃおかしいでしょ?」
奈々「まあ、確かにそうですけど」
ドラえもん「所で、これのラストのシーンって旧版の映画のシーンだよね?」
Δデルタ「おう。なんかあのシーンが頭に残ってて」
のび太「へぇ〜」
Δデルタ「さあ、話すべき事は話した。じゃあ、次回予告を郎夜!」
郎夜「おう!冒険が終わり平和な日常を過ごしていたのび太。だが、何故かタイムパトロールから呼び出しが…。そして、とある世界ではのび太の知らない間に事が進行していた。次回、エピローグ」
Δデルタ「全てを破壊し、全てを守り抜け!」