どうも皆様、お久しぶりでございます。
不定期更新にも関わらずお待ちいただいて、まことにありがとうございます。
社会人って……こんなに疲れるんですね……うごご。
私、もうダメかもわからんね。ははっ!
ゆとり世代だなぁと実感する今日この頃。
社会に揉まれながら、GWは引きこもるマスラヲの次回作にご期待下さい(え?)。
せっかくなので、吸血王と魔法と異世界を投稿する時、いくつか他の二次も案としてはあったので、それを一話だけ投稿してみます。
作品案①:貴族とギアスと異世界
作品案②:青春とサイバディと異世界
作品案③:死神と(未定)と異世界
作品案④:南蛮王と(未定)と異世界
二次小説歴戦の勇者の皆様なら、タイトルでなんとなくわかるでしょうか?
気分しだいで続きは書くかも・・・その時は作者、死ぬ覚悟をしたときです。
ではいつになるかわかりませんが、次の投稿でお会いしましょう。
「……ん? これは……」
人里離れた陸の孤島とも言うべき深い深い森の一画。日差しも入り込まない暗闇の中に、地下深くまで続く洞窟があった。
その深奥には、たったひとつだけ魔法のランプが灯っており、すでに寿命間近のボロボロ机とイスのみが置かれていた。
「珍しい来訪者が来たものだ」
そしてそのイスに、黒いローブに身を包み、顔も体も覆い隠した人型の『何か』が座っている。
発せられる声は、高くもなく低くもない。とても中性的でそれだけでは男か女かさえ分からない。
「……さて……どうしたものか……」
そんな怪しさ満点の『何か』は、その場から動くことなく独り言をつぶやく。
その意味するところは、本人にしか分からない。
その人型の『何か』から、この世界において他と隔絶した魔力が放出される。
すると目の前には鏡のようなものが現れ、どこか別の場所の映像を映し出した。
「……ようこそ同胞よ。我が創りし魔法世界へ」
その鏡の映像の中には、一人の男が騎馬に跨っている姿があった。翼を持ったその天馬は、男の合図とともに空に飛翔し、男とその後ろに同乗する金髪の少女二人分の重さをものともせずに、戦場へと飛び込んでいった。
「願わくば。いつか来る狂乱の渦に飲み込まれぬことを」
最後にそうつぶやくと『何か』は光る鏡を消し、再び暗闇の中に溶けていくのであった―――――
俺が最初にしたことは、仲間を集うこと。
琴音の所属する樹人族については、琴音の説得と族長の殺害という事実によって皮肉にもスムーズにいった。
災いが福に転じるというのは、こういうことを言うのだろうか。あまりに重い災いだったが……。
そこから樹人族のつてすべてを使い、様々な種族に声を掛けた。
もちろん先に得た情報通り、亜人の交流範囲は限られているため、それだけでは数は揃わない。つてを手繰ったその先から、さらにつながりを求めて呼びかけた。
そうすると、以外にも『集団で戦う』という考えに賛同者が多く出てきた。
特に、心のどこかでこのままでは駄目だと気付き始めていた各種族の若い連中が、俺の呼びかけに答えたのだった。
しかし、順調だったのはそこまで。
これは人数が増えることの弊害とも言うべきか、ライールという男が指揮を取ることに不満を漏らす者達もやはりいる。
それは種族的なことではない。俺が見た目が人間でもまったく違う存在であるということは亜人ならなんとなくわかるらしく、そこは問題にならなかった。
文句や不満が出た理由は、簡単に言うと俺が上に立つほどの実力者かどうか分からないから、というもの。
亜人は実力主義的な所があるためなのか、単純な力比べで一番強い奴が組織のトップであるべきだという考えがある。脳筋、野蛮と言われればそれまでだが、俺にとってはむしろ好都合。
俺が『文句のある奴は掛って来い』と挑発し、そのすべてを叩き潰したことによって、よく分からないが熱狂的な支持を得るに至ったのだから良しとしよう。うむ。
「さて、ここからが問題だな」
「そうなのですか? 皆さんやる気に満ちているのですし、このまま戦地に赴くものと思っていましたが……」
「まぁそれは間違いないがな」
戦力と士気をある程度高めることができた俺達は、現在今後の方針確認をするべく、樹人族の集落の中にある長の(琴音の)家で、頭を突き合わせていた。
なぜここなのかというと、別に琴音の集落だからというわけではなく、仲間となった種族の中で、戦略的に一番人間が入り込みにくい、見つかりにくい場所にあったのがここだったから。
メンバーは俺、琴音、エヴァは当然のこと、加えて俺が独断と偏見によって任命した各種族の部隊長数名。
俺の発言に対し、琴音が自分の思ったことを言う。エヴァ以外の参加者も「うんうん」と首を縦に振っている。
基本的に好戦的な連中ばかりのようで、心強い面もあるが若干その脳筋具合が心配になる俺。
「行き当たりばったりで沸き潰ししていっても非効率的だと思わないか?」
「それは……そうですね」
「短期的な勝利を求めてるわけじゃない。俺達は今後の亜人達の身分を高めるべく戦う。ただ集団になって抗えばどうにかなるわけじゃない。そこは理解してほしい」
確認するように俺が集う皆を見渡すと、頼もしい力強い瞳でこちらを見返してくる。
彼らは集落から俺のもとに来る時、かなり仲間とひどい別れ方をしてきたらしい。
「後悔するぞ」「ここにいれば安全なのに」「戦わずに逃げれば」「野蛮人の味方をするか」。
特に年嵩のいった者達にかなり強引な止め方をされていたようだ。一族を守るという信念のもと、彼らは彼らなりに考えての発言なのだろうが、前線に出て、戦士として人間と相対する機会の多かった若年層の者たちにとって、それは世迷言に映った。
゛戦わななければ何もかも奪われる ゛
ある一人の亜人の青年が俺に向けて言った言葉だ。
自分がリーダーとなって人間をたびたび追い返していたが、来るたびに増え続ける人間の軍隊を前にするたび、恐怖に駆られたという。
いつか押し負ける。
いつか自分も死ぬ。
いつか種族も滅ぼされる。
―――――人間が恐ろしい。
ここにはそうした一種の強迫観念にも似た感情を実際に人間と相対することで感じた者達ばかりが集っている。
だがだからこそ、彼らの瞳には強い光が宿る。
人間に恐れを抱いてなお、俺の目の前の者達、その下に配属された各種族の戦士たちは、打開策を己の中で模索し続けていた。諦めるということをしなかった。
゛その答えをあなたが教えてくれた ゛
同じ青年が笑顔で俺に言ってくれた。
自分達だけでダメなら結束を。
場当たり的な戦いではなく戦術を。
亜人全体を相互に守る戦略を。
現実を思い知っている者ほど、俺が外から持ち込んだ新しい考え方に共感してくれた。
どうせ戦って命を散らす運命ならば。
未来につながる戦場で。
そんな多くの尊い想いを俺は背負って今がある。
「つまりライールさんは戦うにしても『目的』を持った方がいいとおっしゃっているんですね?」
「ギルの言う通りだ」
どうやら何が言いたいか、なんとなく察してくれたようだ。
視線を向けるとあの時の青年、牛角族のギルだった。
出会ったころの暗い表情と諦観の混じった瞳ではなく、希望を持ったいい瞳だ。
「これを見てほしい」
意思統一ができたところで、俺はこの樹人族の集落に入る前にある程度把握しておいた、現在の戦場分布図を取り出した。
地図の内訳は、どこに森があって湖があってというかなり大雑把なものだが、場所さえ分かればいいのだからこれでいい。
皆の視線が地図に映ったところで、俺は指で示しながら説明を始めた。
「まず前提として拠点と言うものはどうしても必要だ。その候補地としてはこの辺りがいいんが……」
「えっ」
「げっ」
現在の『亜人狩り』の侵攻具合から見て、都合のいい場所に目星をつけておいたのだが……?
「どうした?」
「ライールさんそこは……」
その候補地を示した瞬間、なぜか幾人かが苦い表情をした。
理由を訊ねると、ギルが周囲の視線に押されて渋々答えた。
「……その土地に、とても厄介な種族が住んでいるんです」
「厄介?」
不思議な言い方をする。
強い、大きいなどの特徴をとらえる言葉は数多くあるが、種族全体を総じて『厄介』とは。
「心を読むんです。その方達」
「琴音?」
どう説明したものかと困惑気味のギルを見かねて、琴音が受け継いでそう言った。
「私達亜人の中でも忌避される能力です。なにせ体に触れられただけですべてを読まれてしまうわけですから。力の強いものでは近寄っただけである程度読めるとか。彼らが悪い訳ではないのですが、その読心能力故に人間からは便利な道具扱い。私たちにとっても扱いに困る種族。そう言う意味でおそらくギルさんは厄介だと言ったのだと思います。少し前に彼ら絡みで関係のない種族が滅ぼされたと噂で聞いたこともあるくらいですから……」
「なるほど。読心術ね……」
ギルや琴音たちを非難することはできない。
そんな能力を生まれた時から持っている存在がひとつの種族を形成しているのだ。生き物である以上警戒心が出てしまうのは仕方がない。
しかし権力者が欲しがりそうな能力だな。
もし本当にそんな種族がいるなら、確かにそれが原因でひとつやふたつ集落が滅んでもおかしくない。
……ふむ。
「行ってみるか」
「ラ、ライールさん?」
「ほ、本気ですか?」
どうやら亜人達には苦手意識みたいなものがあるみたいだが、正直得難い能力だ。
今後の戦いに置いても重要な位置を占めるはず。
そうでなくても、放っておくのは俺達の行動指針と逆行する行い。
どのような種族であろうとも。どんな能力を持っていようとも。すべての人種を受け入れる国を創って行くのなら、避けては通れない。
それに俺は心を読まれたところで動じない自信がある。
彼らに隠しごとなどする必要はないのだ。
後ろめたいことがないなら、普通に会って話をすればいいだけのこと。
「どちらにしろ本拠を構える候補地の一つだ。交渉くらいしにいくべきだろう」
「そ、それはそうですが……」
「心配するな。俺とエヴァだけで行く」
「い、いえっ! だったら私もお話に真実味を持たせる意味でも同行を――」
「無理をするな。それに彼らは心を読むんだろう? なら『真実』などすぐに分かる」
「……すいません」
琴音は責任感からか同行を申し出たが、どうしても心を読まれるという恐怖が先行していらぬ想像力を働かせてしまっている様子。
それを自分でも分かっているために、無理をせずにこの場に残るようにと言った俺の言葉に素直に従うことにしたらしい。
それでも俺や交渉しに行く種族の者達に罪悪感を感じているようだ。謝りながらシュンと落ち込んでしまった。
「君には別の仕事を頼もう」
励ます意味で軽くポンポンと項垂れる頭を撫で、残る彼女にここを離れる俺に変わってやってもらいたいことを告げる。
「……なんでしょう?」
「鍛冶鉄工の得意な者達に武器の製造依頼と製造ラインの確立。農作物を生産し自給自足の出来る体制の構築。今後も集まってくると思われる者達のための住居場所の確保と建築、などなど。色々とやることは大量にあるぞ? その陣頭指揮を頼んでもいいか?」
着いていけないことに罪悪感を覚えてしまうほど、琴音は優しく責任感が強い娘だ。
ならば「残る価値のある仕事」を任せるとなれば……
「!!……はいっ! 任せてください!」
この通り。やる気たっぷり元気な返事をしてくれる。
「……ありがとうございます」
もちろん聡い彼女には俺の考えなどお見通し。
ちゃんとお礼も忘れないのだから、本当にしっかりしている。
「コホン。じゃあ任せる。行くぞエヴァ」
「うん!」
「いってらっしゃい」
琴音や会議場にいた者達に後を任せ、彼らの見送りの中、俺とエヴァは晴れ渡る空に浮遊して目的地に飛び立った。
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