ブラック・ブレット 〜Nocturnal Hawk〜 作:神武音ミィタ
眠いのにめっさ書いちゃったよ……wwww
かなりキツい状況だ。森の奥にある大樹の裏で辺りを警戒する。
変異体のガストレアは、他のそれでは話にならない程の力を備えていた。優れた視界や嗅覚、弾丸を口で受け止めてしまう程の洞察力と瞬発力、そして、あのスピード……。
「かなりヤバい状況だぞ、これ……」
………グルルル…
不味いな。近づいてきている。こちらの匂いを嗅ぎ付けているのか?どうする。このまま奴の前に飛び出し、目か脚を狙うか。もしくは背後から接近し、ショットガンを0距離でぶち込むか。どっちにしろ、失敗すれば終わり。
……試行錯誤していたそのときだった。
「てやぁあああっ!!」
変異体に攻撃を仕掛ける者が現れた。それは……俺が暴行を受けていた少女を民警に預けたときに出てきた、黒髪のツインテールの少女だった。イニシエーターだったのか。ランスを変異体の脚に突き刺し、そのまま突き放す。変異体は突き放されるも体制を立て直した。イニシエーターはランスを前に突き出し、駆け出した。
「くらえぇえええ!!」
ランスの先は変異体の右目を捕らえた。イニシエーターはそのままランスを押し込む。
「グルオオオオ!!」
苦悶の声をあげる変異体。脚に攻撃を食らったせいか、動けなかった。今回はあの少女に手柄はやるか……そう思った時だった。
「……!!」
変異体の尾部………サソリのような尾が上にあがり、先端から液体を出していたのだ。
「おい!!離れろ!!」
「えっ!?………!!!」
一瞬だった。尾はイニシエーターの脚部を狙っていた。尾が動き出すほんのコンマ二秒ほど。彼女は直ぐ様察知し、ランスを引き抜いて後方に跳んで、見事に躱したのだ。
「グルアオオオオ!!」
変異体がイニシエーターへ駆け出した。不味い。
俺はすかさず手榴弾のピンを抜いた。
「伏せろ!!」
イニシエーターにそう叫ぶと同時に、俺は変異体に手榴弾を投げつけた。手榴弾は変異体に当たると同時に爆発。変異体は怯んだ。
「こっちだ!!」
俺はイニシエーターに呼びかける。彼女はこちらへと駆け出した。そして、俺は彼女の手を引いて、森の奥へと入っていった。
「………ダメだ。」
無線がつながらない。森の中で、明崎 信也は彷徨っていた。
謎のガストレアが森にいるという報告を受け、明崎とそのイニシエーター、川野 実緒が現場へ向かった。だが、遭遇したガストレアは強力でかなりの苦戦を強いられた。このままでは全滅する。そう判断した信也は、実緒に二手に別れ、後で河口で落ち合うよう指示したのだ。
なんとかガストレアからは撒く事が出来た信也である。
「とりあえず……進むしか無いようだな。」
信也は辺りを警戒しながら河口を目指した。
森の奥にある、巨大なコンクリート製の土管の裏に隠れている俺と、黒髪ツインテールのイニシエーター。辺りを見渡す……まだ嗅ぎ付けられてはいないようだな。
「しばらくは大丈夫そうだな……」
「あ、あの……」
「ん?」
少女が俺を見上げる。
「あの、以前にリコちゃん……女の子を助けてくださった方、ですよね……?」
「あぁ、そうだな。あの子は元気かい?」
「は、はい。今、わたし達が責任を持って保護しておりますっ。」
「なら、良かった。」
「あ、あのっ、も、申し遅れましたが私、明崎民間警備会社のイニシエーター、モデル・ワスプ、川野 実緒と言います!」
ビシッと敬礼をしてきた。
「あ、あぁ。丁寧にどうも。……モデル・ホーク、小鳥遊 真だ、よろしく。」
「え……!?まこと………って……まさか!!」
少女……実緒は聞いてきた。
「あなたが……心音さんの、元・イニシエーター……!?」
「……あぁ。」
俺は答えた。少し口調が重くなってしまった。
「………そう、でしたか………申し訳ありません………」
頭を下げる実緒。
「謝る必要は無いさ。」
「…………あの、少し聞いてもいいですか?」
少し怖い気がしたが、俺は頷いた。
「何かな?」
「真さん…………あなたにとって、心音さんはどんな人ですか?」
どんな人…………か。
「……護りたい、人かな。」
「だったら、何でですか?」
「え?」
実緒の目は、どこか悲しげだった。
「何で……心音さんの側にいてあげないんですか?」
一瞬、喉の奥が詰まったような感覚がした。俺は口を開いた。
「………俺に、その資格が無いからだ。」
そう言った時だ。すかさず、実緒は言い放った。
「違いますよね?」
「…………」
「私、見たんです。こないだ、真さんが心音さんのご飯食べているのを、たまたま。」
見ていたのか。俺は何も言わない。
「あなたは分かっているはずです。心音さんがあなたを待っているってこと。心音さんはあなたともう一度生活したいと望んでいる。あなたがした事も気にしていない。むしろ感謝している。あなたは……本当は戻らなきゃいけないんじゃないんですか?彼女を護りたいのなら……あなたは民警に戻るべきなんじゃないんですか?」
鋭いなこの娘………その通りだ。俺は本当は………民警に戻るべきなんだろう。そうでないと、心音は護れない。だけど……
「……実緒ちゃん、だっけ。君は、自分がもしガストレアになったらって……考えたことはあるか?」
「え?」
「………俺は心音を傷つけた。けど、あいつはそのことは気にしていない……そんなことは分かっている。俺が怖いのは……俺がガストレアになった時に心音を傷つける事なんだ。俺に優しくしてくれた心音をまた傷つけるのが……俺の意識が消えた状態でそうしてしまうかもしれないのが………怖いんだ。」
初めて、誰かに話した。これが俺の本音だった。
「……真さん。」
実緒ちゃんは……俺の手を掴んだ。
「怖いのは……私も一緒です。けど、私はだからといって、プロモーターを護るために離ればなれになるのは……嫌です。私は、絶対生き残ります。それが、私を拾って育ててくれた…信也さんへの恩返しですから。」
「実緒ちゃん………」
「強がりなのは分かってます。でも、強がってないと……護りたいものも護れない………そう思ってますから。」
………凄いな、この娘は。その勇敢さに心を打たれた俺だった。この娘は逃げていない。明るい未来を信じて突き進んでいる。それに比べて俺は……ダメだな。逃げているだけじゃないか。
「……ありがとう、実緒ちゃん。」
空いている手で、彼女の頭を撫でた。
「真さん……。」
「決めたよ。俺も、絶対に生き残る。」
「……はいっ。」
実緒ちゃんははにかんだ。
………グオオオオオ………!!
「!?」
変異体の鳴き声……結構近づいて来たな…。
「ど、どうしましょう……!?」
俺はバッグの中を開いた。
「………!!」
俺は咄嗟に作戦を思いついた。そうだ、これだ。これなら……いけるかもしれない。
「ま、真さん?」
「………実緒ちゃん。」
俺は彼女の方を真っ直ぐ向いた。
「ちょっと、手伝ってもらえるかな?」
ヘタレ、解除!!そんな話になってしまった。ようはガストレアとして心音を傷つけたくないから、民警から手を引いていた、ということです。しかし、実緒がこんなに勇敢なキャラになるとは……我ながらビックリwww
今のところ、実緒の台詞が一番かっこいい気がしますwwww