ブラック・ブレット 〜Nocturnal Hawk〜   作:神武音ミィタ

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入院中からの投稿でーす(笑)
歯科矯正の外科手術です(^^;;


第52話〜幻と迷い〜

「来いよ……心音」

 

俺は心音の逆手刀を構える。

心音は腰に帯びた刀を抜き、構える。

 

「あなたは……何なの? イニシエーター……呪われた子供のクセに……」

 

「何って言われてもなぁ……俺はお前の相棒で……」

 

言い切る前に心音が猛スピードで斬りかかる。

 

「デタラメをっ‼︎」

 

俺は振り下ろされた刀を受け止める。

 

「うーん、こっちは大真面目なんだがな……っ‼︎」

 

刀を弾き、距離を取る。

 

「だからさ……色々と知ってんだよ、お前のことは」

 

刀を構えなおし、言い放つ。

 

「……お前が今、ご主人様って呼んでるマッドサイエンティストの何倍もな‼︎」

 

「っ⁉︎ 貴様……蓮様を侮辱したなァアアアアッ‼︎」

 

心音が接近し、刀を振るう。怒りで乱れているものの、速い。

俺は冷静に見極め、素早く躱す。

 

「……はぁ、お前はそんな騎士ってキャラじゃねぇのに……っ‼︎」

 

逆手刀で弾き、再び距離を置く。普段なら蹴りの一つでも入れて突き放すのだが、相手は心音だ。

それに……俺は戦いに来たわけじゃない。

 

「お前はどちらかというとさ、ちょっとテンションがオーバーフローした大和撫子っていうかさ……」

 

「わけのわからないことを……ダラダラと‼︎」

 

距離を詰めて横に刀を振るう。横に転がり躱す。

 

「おまけにさ……お前はそんな長刀使わねぇよ。お前自分で言ってたじゃねーか。あまり好きじゃないって」

 

「っ⁉︎」

 

心音が頭を抑えた。

 

 

 

ー…なぁ心音。なんで短い逆手刀なんだ?

 

ー…え? うーん……なんか長いのって苦手なんだよね……好きじゃないっていうか……なんかさ、逆手刀ってカッコイイじゃん⁉︎

 

 

 

「くっ……はああああっ‼︎」

 

心音が俺の逆手刀に刀を叩きつける。

刃同士が火花を散らし、金属音が鳴り響く。

 

「耳障りだ……消えろ消えろ消えろォオオッ‼︎」

 

「くっ……‼︎」

 

タイミングを見計らって、刀を弾く。

 

「はぁ……はぁ……っ‼︎」

 

「……それによ、お前……まともな飯食ったか? 顔、結構やつれ気味だぜ?」

 

「何……っ⁉︎」

 

 

 

ー…真‼︎ ご飯だよ‼︎ 今日は麻婆豆腐にほうれん草入れてみたの‼︎

 

ー…えー……ほうれん草かよ……って、旨っ‼︎ ほうれん草旨っ‼︎

 

ー…辛さも控えめで真みたいな子供でも手軽に野菜が摂れる‼︎

 

 

 

 

「く……あああっ⁉︎」

 

心音が頭を抑え、刀を地面に刺して支える。

憶えてんだな、やっぱり。

 

「……お前はスタイルいいけど、肉付きも丁度いいんだよな。だからさ、お前に抱きつかれるの、ホントは好きなんだよな……心地いいし……」

 

 

 

 

ー…だーあーりぃーん‼︎ むぎゅうぅうう〜♫

 

ー…もぶっ⁉︎ はっ、離せよおい‼︎

 

ー…まぁまぁ、そう照れるでない‼︎ んふふ〜♫

 

 

 

 

「ちっ、違うっ‼︎ これは……こんなの……っ‼︎ 私ではない‼︎」

 

目の前に幻覚を見ているのか、それを叩くように手を振る心音。

手放された刀が地面に倒れる。

俺はゆっくりと心音に歩み寄る。

 

「ひっ……‼︎」

 

心音は恐怖を感じたのか、俺から後ずさるように距離を置く。

 

「……俺がお前を避けていても、お前は俺を相棒と言ってくれた……俺を助けてくれた。だから……‼︎」

 

心音の背中にドラム缶が当たる。俺は心音に近づき、しゃがみ、彼女と視線の高さを同じにした。

 

「今度は……俺の番だ」

 

俺は心音を抱きしめた。痩せ細ったその身体の四肢は硬く冷たい。だが……胸の鼓動は分かる。

 

「あ……あああ……あああああァアアアアッ‼︎」

 

ジタバタと暴れるも、俺は心音を抑え込むように抱く。

 

「私は……ッ‼︎ ワタシ、ハ……ッ‼︎」

 

……ダァンッ‼︎

 

「っ⁉︎ がはっ‼︎」

 

俺の背後から銃声。背中に弾丸が着弾した。

発砲の主は……東條 蓮。

 

「東條……ッ‼︎」

 

「私から心音んを奪うな……この悪魔がっ‼︎」

 

続けて発砲。俺は逆手刀で弾くも、吐血し、その場にうずくまる。

 

「さぁ心音……戻っておいで? 大丈夫よ? あなたは間違ってないのよ?」

 

慈愛に満ちた瞳で両腕を開く。心音は立ち上がり、ゆっくりと、ふらふらと東條のもとへ脚を進める。

 

「蓮、様……」

 

俺は……心音の足首を掴んだ。

心音は俺を見下ろす。その表情は……迷いに満ちていた。

 

「心音……お前は……お前は……ッ‼︎」

 

俺は立ち上がり……腹の底から叫ぶ。

 

「お前は……俺の嫁だッ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

「ッ‼︎」

 

心音は頭を抑え、その場に跪く。

 

「アアアッ‼︎‼︎ イヤッ‼︎ イヤイヤイヤァアアアアッ‼︎」

 

「戻れ……戻れ‼︎ 心音‼︎ 嫁ッ‼︎」

 

心音は……涙を流しながら、俺に手を伸ばす。

 

「‼︎」

 

「ま……こ……」

 

心音……‼︎

手を伸ばした。

 

……パシュッ。

 

「っ⁉︎ ……」

 

心音はその場に倒れこんだ。

 

「こっ、心音っ‼︎」

 

「はぁーあ。また調整が必要かぁ……」

 

東條が手にしていたのは……小型の麻酔銃。

 

「テメェ……ッ‼︎ 何が調整だァッ‼︎」

 

「やっぱりあんたの存在は消しとくべきね……小鳥遊 真‼︎」

 

東條は指を鳴らすと、地面が激しく揺れる。そして、地面から現れたのは……

 

「なっ、なんだこれは‼︎」

 

全身がバラニウムで出来た……蜘蛛型のガストレア‼︎ 機械か⁉︎

 

「私の……いや、私たちの兵器‼︎ メカガストレア……とでも言うべきかしら?」

 

メカガストレア……くそ、厄介なもの造りやがって‼︎

 

「さぁて……心音は返してもらうよ‼︎」

 

メカガストレアが機銃を放つ。俺は心音を抱え上げ、射撃を避ける。

 

「返してもらうのはこっちだ‼︎ こいつは俺の嫁だ‼︎」

 

俺はマシンガンを拾い上げ、メカガストレアに発砲するも弾丸が弾かれる。

 

「何が嫁よ……イニシエーターの分際で‼︎」

 

メカガストレアが迫ってくる。くそ、装甲が硬すぎる……‼︎ 一か八か……やるしかない。

心音をドラム缶の陰に寝かせ、NHライフルのチャージを開始した。

 

「ちょこまかと‼︎」

 

脚を振りかざすメカガストレア。跳び回ってなんとか躱す。

チャージは……あと2分‼︎

 

「あんたらがいるから……あんたらなんかがいるから、心音はァーッ‼︎」

 

メカガストレアがジャンプする。のしかかってくるつもりか……だが‼︎

俺は横に転んで躱し、銃口をメカガストレアにむける。

……チャージ完了‼︎

 

「ハアアアアッ‼︎」

 

トリガーを引く。反動で身体が吹っ飛ぶも、空中で姿勢をとり、着地。

放たれた弾丸はメカガストレアの頭部に着弾。爆発し、木っ端微塵になった。

 

「ハァ……ハァ……ッ⁉︎」

 

心音がいない……‼︎

東條がバイクに乗せていた。

 

「待て‼︎」

 

駆け出そうとすると地面から現れたのは……再びメカガストレア。モデルスコーピオンか? さっきのよりデケェぞコレ……‼︎

 

「そんじゃ、待たね〜♫」

 

東條は心音を連れ去ってしまった。

 

「こっ、心音ーッ‼︎」

 

畜生……っ‼︎

しかし、俺に悔しがっている暇などなかった。

メカガストレアが俺に体当たりをかましてきた。俺の体は軽々と吹っ飛ぶ。

 

「ごはっ‼︎」

 

地面に体を叩きつけられる。ゆっくりと迫り来る、メカガストレア。

 

「まだ……死ねるか……っ」

 

体に力が入らない……クソ……っ‼︎

 

メカガストレアが尻尾を振り上げた……。

 

「……ヤァアアアッ‼︎」

 

メカガストレアの尻尾を蹴りつけ、破壊する人影。その正体は……

 

「無事か⁉︎ 真‼︎」

 

「⁉︎ 藍原 延珠……‼︎」

 

印象的な二本のツインテールがたなびく。

 

「フシャアアアアッ‼︎」

 

更に爪でメカガストレアの脚を切り裂いていく……季崎 火乃。

 

「火乃‼︎」

 

「しっかりしな小鳥遊‼︎」

 

「今の真さんに、それはキツいかと……少し休んでいてください……‼︎」

 

俺の背後に立ち、ライフルを構える……ティナ・スプラウト。

 

「ティナ……」

 

「そこです」

 

ライフルを放つ。メカガストレアの頭部を射抜く。機能を停止したようで全く動かなくなった。

 

「お前たち……何で……」

 

「そちらの社長から連絡があったのよ……君を探してくれって」

 

ティナのプロモーター……天童 木更が歩み寄る。

 

「実緒が……」

 

「とりあえず……立てるか?」

 

延珠のプロモーター、里見 蓮太郎が肩を貸してくれた。俺は立ち上がる。

 

「あ、あぁ……」

 

「とりあえず、あんたのとこの事務所行くわよ。飛鳥たちが待ってる」

 

「あ、あぁ……」

 

俺たちはその場をあとにした。

 

「心音……」

 

俺は唇を噛み締めた。




引っ張るかどうか悩んだ結果引っ張った‼︎(笑)

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