ブラック・ブレット 〜Nocturnal Hawk〜   作:神武音ミィタ

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大学が夜間から昼間になったので、嬉しい忙しさ体感中です(笑)


第48話〜雨と悔しさ〜

「ん……っ」

 

目が覚めた。私は身体を起こそうとする。

 

「………⁉︎」

 

私の視界に入ったのは、薄暗い部屋の天井の照明。まるで病院の手術室のような…。

 

「あ、心音ん❤︎ 気が付いたぁ?」

 

白衣を纏った眼鏡の女性が私の顔を覗き込んでくる。その顔に……私は見覚えがあった。

 

「⁉︎ あんた……っ‼︎」

 

「お久ぁ〜。元気してたぁ〜? うふふ…‼︎」

 

女はメスを片手に、狂ったような表情を浮かべる。

 

「蓮………‼︎ あなた、何を…っ⁉︎」

 

「何って? 決まってんじゃーん……」

 

女……東條 蓮は私に顔を近づける。

 

「………心音んを、私のものにするの…あっはぁ…❤︎」

 

恍惚とした表情を見せる蓮は、私の口に麻酔を当てた。

私の意識は朦朧とし、再び眠ってしまった………。

 

 

 

 

「はぁ……はぁ………っ‼︎」

 

俺は雨に打たれ、ずぶ濡れになりながら心音を探していた。情報を聞きこんだものの、有力な情報が無い。

 

「くそ………っ‼︎」

 

俺はその場に膝をつき、地面を殴った。

水が跳ね、俺の顔を更に濡らす。

 

「…………お前、小鳥遊 真か?」

 

男の声。俺は顔を上げた。

 

「……⁉︎ お前は……‼︎」

 

「……大丈夫か?」

 

烏丸 凌馬に改造され、死んだと思われていたガストレア・ヒューマン……

 

「東 雫………っ⁉︎」

 

雫は肩に、何やら木箱を担ぎ、傘をさしていた。

俺は立ち上がる。

 

「お前……死んでなかったのか?」

 

「あぁ、死ねなかったようだ……」

 

俺は、くしゅん、とクシャミをした。

 

「ここじゃなんだ。場所を変えよう。着いてこい」

 

雫は脚を進める。俺はそれに着いていった。

 

 

 

 

歩くこと5分。

バー『クスィー』。そう書かれた看板の店に着いた。

雫が店の中に入る。

 

「幸雄、帰ったぞ」

 

「おう、すまんな……って、うおおおおおおおっ!!? きっ、貴様!! いつぞやのイニシエーター!!」

 

店に入るや否や、カウンターにいた男が騒ぐ。

 

「お前は……あの時のミュータント?」

 

確か、俺と心音が戦った男女二人の片割れ。名は確か、クスィー。

 

「お、おい雫! な、何でこいつがいるんだよ!?」

 

「…小鳥遊、幸雄と知り合いなのか?」

 

「知り合いってか、前に事件で少し関わったっていうか……」

 

雫は肩に担いでいた木箱をカウンターへ持っていき、開ける。中身はオリーブオイルだった。

 

「幸雄、頼まれていたオリーブオイルだ」

 

「お、おう……」

 

「小鳥遊、二階にシャワーがある。好きに使え。あと着替えもあとで出しておく」

 

「分かった、すまない……」

 

俺は階段を上り、バスルーム前へ。雨でずぶ濡れになった衣服を全て脱いでバスケットへ投げ込み、バスルームに足を踏み入れシャワーを浴びる。

 

「…………」

 

心音………っ。

俺のせいだ。俺があの時……しっかりしていれば…っ‼︎

悔しさを心の中で感じていると、磨りガラスのバスルームの扉の前に人影が。

 

「小鳥遊、大丈夫か?」

 

雫だった。どうやら洗濯機を回しに来たようだ。バスケットの中の洗濯物を洗濯機へ放り込んだのが、磨りガラス越しに分かった。

 

「あぁ、まぁな……」

 

「幸雄には話しておいた。俺とお前の関係。あいつからも色々と聞いた 」

 

「そうか……」

 

雫は洗濯機のフタを閉じ、スイッチを入れた。

 

「詳しいことは飯を食いながらにしよう。 店が開くまでは時間もあるしな 」

 

「あぁ……」

 

俺はシャワーを止め、バスルームを出る。雫から投げ渡されたタオルで身体の水滴を拭く。そして、洗濯機の上にあった着替えを持って、それを身につけた。

 

「荷物は隣の部屋にある。今日は遅い。泊まっていけ」

 

「いいのか?」

 

「お安い御用だ」

 

俺たちは店のフロアへ戻ってきた。

クスィー…幸雄がパスタを茹でながら、野菜とベーコンを炒めていた。店中にベーコンとオリーブオイルの香りが広がる。

 

「幸雄」

 

「おぉ、もうすぐ出来る。カウンター座れや」

 

俺はカウンターに座る。雫はグラスに水を注いできた。

 

「小鳥遊、何があったんだ? お前のような奴が、こんな大雨の中1人でいたんだ。とんでもないことが…」

 

俺はグラスの水を飲み、話す。

 

「心音が……さらわれた。」

 

「何……っ⁉︎」

 

「さらった奴は…身体が機械だった。恐らく、あれは機械化兵士……」

 

機械化兵士、その言葉に反応するかのように、幸雄が顔を上げた。

 

「おい待て、今…機械化兵士って言ったか?」

 

「え? あ、あぁ……」

 

幸雄はパスタを皿に盛り付け、俺たちの前に差し出す。

 

「何かあるのか?」

 

「ここ最近、そんな話をよく聞くんだわ。機械化兵士みたいなやつが、人攫いをしてるっていう話を…な」

 

スマホを取り出した幸雄は電話をかけた。

 

「今日、今から来れるか? ……分かった、頼むな」

 

電話を切る。

 

「誰にかけたんだ?」

 

「知り合いの情報屋だ。色んなところから裏情報を持ってくる、意外と便利なやつさ」

 

雫はパスタを食べる。

 

「ひとまず食っとけ。 いつでも動けるように、な」

 

雫から肩を叩かれる。それに押されたかのように、俺はパスタを食らった。

 

 

 

 

「………」

 

明崎民間警備会社の空気は、明るいものではなかった。全員が寝静まった後、シグマは一人パソコンに向かっていた。

 

「心音様のケータイの逆探知も不可能。 誘拐犯の詳細も分からない……」

 

そんな中、シグマに茶を淹れる者が。

 

「シグマ殿、無理はなさるな」

 

知哉だった。心配そうな目でシグマを見る。

 

「ありがとうございます。 助かります」

 

シグマは茶を飲み、再びパソコンに向かった。

 

「真様……心音様………」




オリジナルの方もぼちぼち書いてます。
あー、多忙(笑)

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