ブラック・ブレット 〜Nocturnal Hawk〜 作:神武音ミィタ
少し間が空きますが、第二部もよろしくお願いします。
「うぅ………っ。」
烏丸 凌馬の潜入していた、東京エリアの町外れにある廃ビル跡地。瓦礫の中から出てきたのは……東 雫。
「…………ここは…そうか。」
死ねなかったか……。
「っ……。」
胸の部分に激痛が走る。彼は胸の部分を抑えながら、ゆっくりと歩き出した。
「く……っ…。」
しかし、その場で崩れ落ちて、倒れてしまった。
「…………。」
そのまま気を失った。
「………っ。」
目がさめると、雫は大人な雰囲気のある店のソファに寝かされていた。
「おっ、起きたか坊主。」
カウンターにいる男がボトルを振っている。
「ここは……?」
「俺の店、『BAR クスィー』だ。あの瓦礫の山の付近は俺の散歩コースでね。危なかったな。とりあえず手当はしといたぜ。」
雫は不思議そうに男を見る。
「……あんたは?」
「俺は……蒼ヶ崎 幸雄(あおがさき ゆきお)。しがないバーテンダーさ。」
グラスに透き通った紫の液体を注ぐ。それを雫のもとへ持っていく幸雄。
「アルコールは入ってないから安心しな。特製のグレープジュースだ。」
雫はグラスを受け取り、ジュースを飲む。
「……ありがとう。」
「礼には及ばんよ。」
幸雄……かつて「クスィー」と呼ばれた男はカウンターに戻った。
その日から雫はバーに住み込みで働くことになった。店内の清掃や、簡単な料理、ある時には客との話し相手になる事もあった。
そして、あっという間に1ヶ月が経った。
「どうだ?慣れてきたか?」
「まぁ、な。」
幸雄がパスタを持ってくる。
それを食べる雫。
「……なぁ、幸雄。」
「んー?」
「………俺、生きてていいのかな?」
いきなりそんな質問を受け、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をする幸雄。
「………う、うーむ。………いいんじゃないのか?てか、どーしてそんなことを?」
「……幸雄。ガストレア・ヒューマンって知ってるか?」
「…? 一時期東京エリアで暴れたっていう、あいつらか?腕とかがガストレアの……」
「あぁ。」
雫は手袋を外すと……自身の腕を変貌させた。
「っ⁉︎」
「………俺、それなんだよ。死にかけてるとこを拾われて、身体中弄くり回されて、利用され、捨てられた。」
腕を元に戻す。
「………まぁ、でもよ。」
ウォッカを飲みながら、幸雄は話す。
「今こうして生きてるんならよ、生きてたって文句は言われないわけなんだし、生きてていいんじゃねーか?」
「…………。」
「……まぁ、俺も色々とさ…人の死は見てきたからよ………なんとなく、分かるんだよ。生きるってことがどんなに凄いことかって、さ。」
「………そうか。」
雫はパスタを平らげる。
「………悪いな、変なこと聞いて。」
「気にすんな……ほら、もう店閉めたし、さっさ寝ろ。」
「おう。」
小さなバーの中での、この出会い。
この出会いが、明崎民間警備会社を救う力になるのは、近い未来のこと……。
この二人は二部でも大活躍です。
来月になるまでには二部スタートします。