ブラック・ブレット 〜Nocturnal Hawk〜   作:神武音ミィタ

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懐かしい2人のお話です。
少し間が空きますが、第二部もよろしくお願いします。


第45話EX④ 〜蟷螂少年とバーテンダー〜

 

「うぅ………っ。」

 

烏丸 凌馬の潜入していた、東京エリアの町外れにある廃ビル跡地。瓦礫の中から出てきたのは……東 雫。

 

「…………ここは…そうか。」

 

死ねなかったか……。

 

「っ……。」

 

胸の部分に激痛が走る。彼は胸の部分を抑えながら、ゆっくりと歩き出した。

 

「く……っ…。」

 

しかし、その場で崩れ落ちて、倒れてしまった。

 

「…………。」

 

そのまま気を失った。

 

 

「………っ。」

 

目がさめると、雫は大人な雰囲気のある店のソファに寝かされていた。

 

「おっ、起きたか坊主。」

 

カウンターにいる男がボトルを振っている。

 

「ここは……?」

 

「俺の店、『BAR クスィー』だ。あの瓦礫の山の付近は俺の散歩コースでね。危なかったな。とりあえず手当はしといたぜ。」

 

雫は不思議そうに男を見る。

 

「……あんたは?」

 

「俺は……蒼ヶ崎 幸雄(あおがさき ゆきお)。しがないバーテンダーさ。」

 

グラスに透き通った紫の液体を注ぐ。それを雫のもとへ持っていく幸雄。

 

「アルコールは入ってないから安心しな。特製のグレープジュースだ。」

 

雫はグラスを受け取り、ジュースを飲む。

 

「……ありがとう。」

 

「礼には及ばんよ。」

 

幸雄……かつて「クスィー」と呼ばれた男はカウンターに戻った。

 

 

 

その日から雫はバーに住み込みで働くことになった。店内の清掃や、簡単な料理、ある時には客との話し相手になる事もあった。

そして、あっという間に1ヶ月が経った。

 

「どうだ?慣れてきたか?」

 

「まぁ、な。」

 

幸雄がパスタを持ってくる。

それを食べる雫。

 

「……なぁ、幸雄。」

 

「んー?」

 

「………俺、生きてていいのかな?」

 

いきなりそんな質問を受け、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をする幸雄。

 

「………う、うーむ。………いいんじゃないのか?てか、どーしてそんなことを?」

 

「……幸雄。ガストレア・ヒューマンって知ってるか?」

 

「…? 一時期東京エリアで暴れたっていう、あいつらか?腕とかがガストレアの……」

 

「あぁ。」

 

雫は手袋を外すと……自身の腕を変貌させた。

 

「っ⁉︎」

 

「………俺、それなんだよ。死にかけてるとこを拾われて、身体中弄くり回されて、利用され、捨てられた。」

 

腕を元に戻す。

 

「………まぁ、でもよ。」

 

ウォッカを飲みながら、幸雄は話す。

 

「今こうして生きてるんならよ、生きてたって文句は言われないわけなんだし、生きてていいんじゃねーか?」

 

「…………。」

 

「……まぁ、俺も色々とさ…人の死は見てきたからよ………なんとなく、分かるんだよ。生きるってことがどんなに凄いことかって、さ。」

 

「………そうか。」

 

雫はパスタを平らげる。

 

「………悪いな、変なこと聞いて。」

 

「気にすんな……ほら、もう店閉めたし、さっさ寝ろ。」

 

「おう。」

 

小さなバーの中での、この出会い。

この出会いが、明崎民間警備会社を救う力になるのは、近い未来のこと……。




この二人は二部でも大活躍です。
来月になるまでには二部スタートします。

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