ブラック・ブレット 〜Nocturnal Hawk〜   作:神武音ミィタ

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今回は戦闘はありません。なんだかほっこりするお話になっちゃいました(笑)


第4話〜空腹と暗躍〜

モデル・ケルベロスの撃破後。

私たち明崎民間警備会社社員は、オフィスに戻っていた。

玄関に入る。

 

「はぁー…疲れましたぁ…」

 

「お疲れ、実緒。」

 

「あ、実緒お姉ちゃん…心音お姉ちゃん…お帰りなさい……」

 

リコちゃんが出迎えてくれた。その頭を撫でる。

 

「ただいま。」

 

「お外……大丈夫だった?」

 

「うん、もう大丈夫だよ。」

 

実緒が笑顔で言う。

 

「さて、夕飯の支度しなきゃね‼︎」

 

私は手を洗い、エプロンに着替えてキッチンに入った。

 

「あれ……?」

 

そう言えば、社長がいない。

 

「ねぇ、実緒。社長は?」

 

明崎社長は夕飯だけは食べる。しかし、今晩その姿は見当たらなかった。

 

「あー、なんかお偉いさんの接待みたいです。言ってました。」

 

「接待……?」

 

誰かしら……?

私はフライパンに油を引きながら考えた。

 

 

「………何度も言わせるな。俺は、民警には戻らない。」

 

俺、小鳥遊 真を訪ねていたのは……俺がかつて所属していた民警の社長、明崎 信也だった。

 

「そう言うなよ。銃弾と抑制剤、いつも送ってやってるじゃないかよ。」

 

「それとこれとは話が別だ。」

 

「頑固だなぁ……何でだよ。何がそこまでお前をそうさせんだ。」

 

俺は……俯いた。

 

「……今日は帰ってくれ。頼むよ。今は…話したくないんだ。」

 

俺は扉を閉めた。

 

 

「やれやれ………」

 

あの頑固さをなんとかしないことには、分かってくれなさそうだな。

ガストレアがここ最近強くなってきている。更に組織を強くせねばならない。

それに……

 

「真………お前がいないと、心音が………いつも……」

 

俺は真の家を後にした。

 

 

「……旨いなこれ。」

 

昼間に買った麻婆豆腐に舌鼓を打っていた俺である。

 

「……まぁ、でも…こんなもんだろうな。」

 

やっぱり、何か物足りない気もする。

 

「心音………」

 

俺はふと、頬杖を着いて思い出してみた……………。

 

 

ある日の夕飯だった。

 

「はい、真用の麻婆豆腐‼︎辛さ控えめの甘口‼︎」

 

「なっ、うるせぇ‼︎俺だって、辛いの食えるっての‼︎子供扱いすんな‼︎」

 

見栄を張っていた。俺は大の甘党なんだ。

 

「ほっほーう?じゃ、私の食べる?激辛麻婆豆腐。」

 

「お、おう。よ、余裕だよ、よゆー。」

 

「はい、じゃあまず一口あげる。はい、あーん…」

 

心音はやたら俺にこれをすることが多かった。恥ずかしかったりした。

 

「じっ、自分で食べるっての‼︎」

 

「何よ〜、ホントは怖いんじゃないの〜?ん〜?」

 

「ぬぁ〜‼︎もうっ‼︎」

 

差し出された一口にぱくつく。

 

「………もぐふぉっ⁉︎ ちょ、辛っ‼︎水っ、水ーっ‼︎」

 

「あはは‼︎もう、だから言ったじゃない。どうするの?辛いの食べる?」

 

「……甘い方で。」

 

「うむ、素直素直っ。」

 

 

「………あれ?」

 

頬が濡れていた。

泣いている……?

 

「何で……泣いてんだ……?」

 

俺は………戻りたいのか?民警に。

心音と一緒に……また生活したいのか?

いや、そんなことはない。俺は決めたんだ。民警には戻らない。心音を傷付けた俺に、戻る資格なんてないんだ。

 

「………………」

 

俺は夕飯をかき込んだ。だが、全然と言っていいほど腹は満たされていなかった。

 

「………ちっ。」

 

俺は家を出た。

 

 

結局、社長の接待の詳細も分からず、時計は11時を指した。実緒とリコは一時間も前に寝た。私はパソコンで報告書を作成していた。今月で会社が撃破したガストレア、その被害、イニシエーターの状態などを打ち込む。

 

ピーンポーン………

 

「? 誰かしら…」

 

こんな時間に…社長かな?

私は玄関に向かい、ドアを開けた。

 

「はーい………⁉︎」

 

そこにいたのは……

 

「真………⁉︎」

 

何で………?

 

「真……」

 

「飯、あるか?」

 

真は目を逸らしながら、聞いてきた。

 

「……え?」

 

「なんか……食い物。」

 

あぁ、そういうことか。なんだ。

良かった、相変わらずみたい。

 

「……上がりなよ、とりあえず。」

 

「……わり。」

 

私は真を上げた。

キッチンに入る。今日の肉野菜炒めは辛うじて一人分残っていた。即席で味噌汁を作り、保温していたご飯と一緒に器に盛り付けた。

真はテーブルに着いた。

 

「……はい。」

 

真の前に肉野菜炒め、ご飯、味噌汁を並べ、箸を手元に置いた。

 

「………いただきます。」

 

真は黙々と、食べ始めた。

私はその向かい側に座る。

 

「………やっぱ旨いわ。」

 

「え?」

 

「……お前の飯、やっぱ旨いわ。」

 

私の方を向いて、言ってきた。

 

「そっ……か。」

 

自分でも口元が緩んでいるのが分かった。

 

「……何笑ってんだよ。」

 

ほら、やっぱり。

 

「嬉しいんだから、笑うのは当然でしょ?」

 

「……知るか。」

 

食べ続ける真。私は言ってみた。

 

「ねぇ、真。」

 

「ん?」

 

「どうして、戻ってこないの……?」

 

真は……ご飯を味噌汁で流し込み、口を開いた。

 

「……社長も今日、俺のとこに来てそんなこと聞いたよ。」

 

「え?」

 

じゃあ、社長は真を訪ねていたってこと?

 

「………今は話したくないんだ。悪ぃけど。」

 

「そっか。」

 

真は食べ終え、皿を重ねた。

 

「ごちそうさま。……じゃ、帰るな。」

 

そして、立ち上がり玄関へ向かった。

 

「真!」

 

私は玄関まで見送る。

真はドアノブに手をかけて止まっていた。

 

「……私、待ってるから。今度は、私があなたを護るから。」

 

「………………。」

 

何も言わず、真はオフィスを去った。

 

「真……。」

 

待ってるから。あなたとまた一緒にいられる、その日まで……。

 

 

日にちは変わっていた。俺は暗い路地を一人歩いていた。

 

「………誰だ。」

 

背後から気配がした。俺は立ち止まり、振り返る。

 

「気づいていたとは……流石、モデル・ホークの能力は侮れないな。」

 

暗闇から現れたのは一人の男と一人の少女。男の方は長身でタキシードを見にまとい、シルクハットにマスケラという格好をしていた。

少女の方は、腰には小太刀、青い髪に赤い瞳……イニシエーターか?

 

「初めましてかな、小鳥遊 真くん。」

 

「……何故俺を。」

 

「民警に関わっていれば有名さ。死を運ぶ鷹よ。」

 

「貴様……誰だ。」

 

「すまない。自己紹介が遅れたよ。私は蛭子 影胤。そしてこれが私の娘でありイニシエーター……」

 

「モデル・マンティス、蛭子 小比奈。」

 

親子か。

 

「貴様……民警か?」

 

「いや、元・民警だ。君と同じ立場さ。」

 

「………何の用だ。」

 

その男…影胤のマスケラから、黄色い瞳が見えた。

 

「……私の仲間にならないか?」




ほっこりからのシリアスドーン‼︎(笑)
蛭子親子いいですよね。影胤さんが明らかすぎる生存フラグで笑ってしまいましたよ、こないだ(笑)

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