ブラック・ブレット 〜Nocturnal Hawk〜   作:神武音ミィタ

44 / 64
超久々な投稿です。
色々迷走してますが、なんとか完走できるように頑張ります。
今年もよろしくお願いします。


第41話 〜尾行と不器用〜

 

「あぁ、生物学部だろ? なんか噂になってるってな。」

 

新博多大学。俺、小鳥遊 真と徳崎 心音は聞き込みをしていた。この周辺の怪しいと思われる団体、生物学部についてだ。生物学部が何やら怪しいものを作っているとの噂を聞くが、何か知らないか、と。

 

「えぇ、何か知らないかしら?」

 

「うーん……でも、あいつらそんなこと……怪物作ったりとかしなさそう…てか、出来ないと思うんだよなぁ…。」

 

「出来ない?」

 

「あぁ、生物学部って地味なことしかしないもん。今年の学祭も金魚すくいくらいだったし……。」

 

男子学生が顎に手を当てて答える。

 

「分かった、ありがとう。」

 

「すまんね、あまりお役に立てなくて。」

 

「大丈夫だよ。」

 

微笑む心音。その横で、俺はその男子学生を見ていた。

 

「そんじゃ、失礼‼︎」

 

男子学生はその場から走り去っていった。

 

「……? どうしたのダーリン。怖い顔して。」

 

「……心音。あいつ、尾行するぞ。」

 

俺は走り去った男子学生のあとを追って歩き出した。

 

「え? どうして?」

 

疑問に満ちた顔を浮かべる心音。

 

「………ヤツは、黒だ。」

 

 

 

「……そうですか。そんな事が…。」

 

私、川野 実緒は長瀬民間警備会社に来ていた。正式な挨拶のために、だ。

先ほど、社長である長瀬 飛鳥さんから、昨日の真さんたちとの話を聞いたところだった。

 

「誠に申し訳ありませんでした。うちの火乃が戦うと聞かなくて……。」

 

彼女のイニシエーターの季崎 火乃は頬杖をついて頬を膨らませている。

 

「むぅ……。」

 

「いえ、構いません。寧ろ良い訓練になりました。」

 

シグマが表情を変えずに言う。

 

「あぁ、昨日いただいたデータ…ガストレア・ヒューマン事件のデータを閲覧いたしましたが……私の予想を遥かに上回っていました。特に、ガストレア・ヒューマン タイタン……。」

 

「えぇ、真さんの捨て身の一撃でなんとかなりましたが……」

 

私のその言葉に、火乃ちゃんは驚く。

 

「あ、あいつが…捨て身⁉︎」

 

「はい、暴走したタイタンを止めたのは、データによると真様です。彼はその代償に、一時記憶を失っていたとのことです。」

 

「そう、なんだ………。」

 

シグマの言葉に火乃ちゃんが俯く。

 

「………ねぇ、火乃ちゃん。」

 

私は彼女に話しかける。

 

「私たちにとって、ガストレア・ヒューマンは最早見過ごせない天敵なの。けど、私たちの力だけじゃどうしようもならない。だから、あなたたちの力が必要なの。ガストレアの力を人工的に人間に宿すなんて……許されていい訳がない。」

 

「…………っ。」

 

火乃ちゃんは部屋から出た。

 

「か、火乃‼︎」

 

「私が行きます。」

 

シグマがその後を追った。

 

「申し訳ありません。あの子…少し不器用なもので。」

 

「いえ、大丈夫です。火乃ちゃん……大丈夫ですか?」

 

「あの子、昔からそうなんです。感情を表に出すのが苦手で……。」

 

 

 

「………。」

 

長瀬邸の庭の柵に腕を置いている火乃。彼女に歩み寄るのは……シグマ。

 

「大丈夫ですか? 火乃様。」

 

「あんたか………。」

 

火乃はシグマの方に視線を遣る。

 

「………私さ。昨日あんたらに会うまで、自分のこと最強とか思ってたんだ。ガストレアもバンバン倒して、着実に序列も上げて…………私は何でも出来るってさ、思ってたんだ。」

 

「なるほど……。」

 

「けど、違った。私は昨日……ま、真に負けた。初めてだったの、負けたの。」

 

そういう火乃の顔は、少し嬉しそうになった。

 

「でも、あいつは褒めてくれた。初めてだったんだ。飛鳥以外で私を褒めてくれたの。」

 

「火乃様は褒められるのが好きなのですね。」

 

その言葉に火乃は慌てたように言う。

 

「ちっ、違うわよ‼︎ ホントは褒めて欲しくなんかないけど、し、仕方なく褒めさせてあげてるだけよっ‼︎」

 

耳と尻尾を振りながら話す火乃。

 

「……だからさ、あいつが捨て身までしないと倒せないって分かった時さ……私、なんか情けなくなって…見てる世界が小さくてさ……。」

 

落ち込んでいるのが分かりやすく、荒ぶる尻尾が大人しくなる。

 

「………そうですか。申し訳ございません火乃様。私、このような時、なんと申せばよいのか……。」

 

「いいのよ、そんな気使わなくて。」

 

 

 

男子学生を尾行し、辿り着いたのは……生物学部棟。

 

「ここは……」

 

「ビンゴだな。」

 

生物学部棟に入る。そこには……

 

「あ、真お兄ちゃん。」

 

リコと知哉がいた。

 

「おお、真殿に心音殿。」

 

「よう。なぁ、ここに男が来なかったか?」

 

「男の人?んー……私たち10分くらい前にここに来たけど、見てないよ?」

 

リコが答える。ここには…いや。ここから入ってはいないのか……。

俺は生物学部棟の裏側に向かう。

 

「あ、真ー‼︎」

 

心音が俺に着いてくる。

 

「………ふむ。」

 

裏側には倉庫があるだけだった。

 

「何もないね……。」

 

「……心音、あの二人をここに呼んでくれ。」

 

「え………?」

 

俺は辺りを見渡す。

 

「…………嫌な予感がする。」

 

 

 

「うぃーす、お疲れっす。」

 

真たちから聞き込みをされていた男子学生が、生物学部棟の地下にある、怪しげな研究室に入る。

 

「遅いぞ、どこで道草をしていた。」

 

メガネをかけた男がキーボードを叩きながら言う。

 

「民警が来てやがったんだよ。何とかお茶を濁しといたが、一人感の良さそうな野郎がいたからな……。」

 

「貴様……嗅ぎつけられたのか?たかだか民警に。」

 

「んだよ………もしここに来たら、責任はとるよ。」

 

「やーいやーい、大貴おこられてやんのー。」

 

女子学生が舌を出す。

 

「るせぇよバカ。」

 

そこにいるのは四人の学生。怪しげな彼らは、パソコンに向かっていた。

 

『烏丸プロジェクト』

 

そう書かれたデータを見つめて……。




次回から段々と謎を明らかにしていきます。
中々困っていますが、頑張ります。

クロスアンジュのSSを近々書こうかなと考えています。キャラなどは出来ているので、こちらがひと段落ついたら書き始めようかと。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。