ブラック・ブレット 〜Nocturnal Hawk〜   作:神武音ミィタ

41 / 64
久々の本編です。少し短くてごめんなさい……(^^;;


〜負の遺産 真実の箱〜
第38話 〜我儘と妙〜


博多エリア……ここ数日、ここでは奇妙な事件が横行していた。

 

「連続殺害事件……死に方からしてガストレアによるもの。しかし、目撃証言にガストレアを見たという情報は無し……?」

 

俺…小鳥遊 真は新聞を読んでいた。

 

「これがどうかしたんですか?心音さん。」

 

ここ、明崎民間警備会社の社長である川野 実緒が、俺のパートナー…徳崎 心音に問う。

 

「うん。この被害……ガストレアヒューマンと全く同じだなって感じたんだけど……。」

 

「ガストレアヒューマンが……生きている?」

 

「馬鹿な。烏丸 凌馬は死んだ。そんなこと、ある訳……」

 

「ある可能性が強いの……これを見て。」

 

心音はパソコンの画面を見せる。そこに映っていたのは、烏丸 凌馬の経歴だった。

 

「新博多大学……烏丸はここの大学教授だった。そして、この事件が起きたのは博多エリア………。つまり、烏丸のかつての教え子達が烏丸の技術でガストレアヒューマンを作り出した……。」

 

なるほど。そういうことか……。

 

「……行くしかないみたいだな、博多エリアに。」

 

「しかし、真様。東京エリアも現在、モノリス崩壊、対アルデバランのため、そちらに行くべきなのでは?」

 

シグマが俺の方を向く。

 

「確かに……そうかもしれない。だが、ガストレアヒューマンとの交戦を多く経験しているのは俺たちくらいだ。博多の奴らも、今頃未知の敵の出現に対策を追われていることだろうし、手助けした方が事態も直ぐに収まるだろ。それに……」

 

俺は拳を固めた。

 

「烏丸の計画は……開けてはいけないパンドラの箱みたいなもんだ。絶対阻止しねぇと。」

 

シグマは……口角をほんの少し上げた。

 

「……なるほど、理解しました。」

 

「……お前も笑顔がサマになったな。」

 

「お褒めいただき光栄です。」

 

実緒が手を叩く。

 

「じゃあ、準備に取り掛かりましょう‼︎ 先ずは聖天子様にお伝えしないと……。」

 

「聖天子は俺と心音で行くよ。」

 

「えっ、私も⁉︎」

 

心音はびっくりし、俺の方を向く。

 

「この中で聖天子慣れしてるのは俺だろ?そんで、俺のパートナーはお前だろ?妥当だろ?」

 

「いや、聖天子様慣れって何よ⁉︎」

 

「じゃ、行ってくるわー。」

 

俺は事務所を出た。

 

「あ、ちょっとー⁉︎」

 

心音も俺に続いた。

 

 

 

「真お兄ちゃんたち……大丈夫なの?」

 

リコは実緒に聞く。

 

「まぁ、何とかなるよ。……多分。」

 

「ともかく我々は、博多に飛ぶ用意をしなくてはな。」

 

明崎民間警備会社は博多エリアへの移動の準備に取り掛かった。

 

 

 

 

 

「博多エリアにガストレアヒューマンと思われる被害……ですか………。」

 

聖天子の邸宅にやってきた、俺と心音。心音は相変わらず俺の隣で縮こまっている……だからいい加減慣れろや。

 

「あぁ。アルデバランの出現の方も大変だが、このまま博多の事態を放っておくわけにもいかない。それに…烏丸の遺産があるのならば、俺たちがそれをぶっ壊さなきゃいけない。ちょっと我儘かもしれないが……。」

 

聖天子は…頷いた。

 

「分かりました。あなた方明崎民間警備会社には別の要請を出しましょう。博多エリアの事件の調査、烏丸 凌馬が関わっていた場合は事態の解決。あちらの方には許可を出しておきます。明日の午前8時にヘリを手配しておきましょう。」

 

「悪いな、何から何まで。」

 

「いえ、構いません。それでは、よろしくお願い致します。」

 

「こちらこそだ。」

 

俺は頭を下げ、立ち上がる。

 

「それじゃ、明日の朝頼む。行くぞ心音。」

 

「あっ‼︎ し、失礼しました‼︎よろしくお願い致しましゅっ‼︎あぅ……」

 

だから落ち着けっての……。聖天子はそれを見て微笑む。

 

「それでは、今日はありがとうございました。」

 

「あぁ、失礼する。」

 

俺と心音は邸宅を後にした。

 

 

 

「はぁ……疲れたぁ……」

 

帰り道、心音は項垂れながら歩いていた。

 

「テンパりすぎなんだよ、お前は。」

 

「うぅ……むぅ〜っ‼︎」

 

心音はいきなり俺の首根っこを掴んできた。

 

「って、何してんだよお前⁉︎」

 

「べぇつぅにぃ〜?」

 

俺の髪をわしゃわしゃと掻き乱す。やーめーろー。

 

「真………。」

 

まるで子犬のように目を輝かせてこちらを見てくる……何だよもう……。

 

「ねぇ真………」

 

心音が俺を後ろから抱きしめる。

 

「な、何だよ………」

 

「………大好き。」

 

「んなっ⁉︎ な、な、何言っちゃってんだよお前⁉︎」

 

俺はそのまま顔を心音に向ける。

 

「あ、あっかーい。この照れ屋さんめぇ〜。にっししー。」

 

「ったく……ほら、早く帰るぞ。博多への準備しねぇと。」

 

俺は心音の腕をどけて、彼女の手を掴んで帰路についた。

 

 

 

 

その日の夜。会社の皆は全員用意を終えて、眠りについていた。

 

「…………ん。」

 

ふと目が覚めた。俺はベッドから出る。喉渇いたな…。

俺は寝室を出て、冷蔵庫に向かおうとした。

 

「あれ。」

 

「真様?まだ午前3時5分38秒ですが……」

 

シグマがパソコンに向かっていた。てか時間細けぇよ。

 

「ちょっと喉渇いてな………。お前は何やってんだ?」

 

「データの閲覧、及び私のサーバーの情報の更新です。主に烏丸 凌馬についての関連データをインプットしている最中です。現在84%のデータをインプット。推定残り時間は3分半ほどでしょう。」

 

「勉強熱心だな。」

 

シグマはパソコンの画面を見つめたまま言う。

 

「烏丸 凌馬……彼には私も興味があります。何故そこまで人間にガストレアの力を埋め込みたかったのか……その真意は博多にあるでしょう。」

 

「その答えはデータベースには?」

 

「ありません。ガストレアヒューマンタイタン……その撃破までのデータしかデータベースには存在しません。烏丸 凌馬の意思などはデータベースからは確認出来ません。」

 

「そう、なのか……」

 

俺は冷蔵庫のペットボトルの水を一気に飲み干した。

………ヤバイ、目が余計覚めちまった。寝れねぇ……。

 

「………なぁ、シグマ。」

 

俺はシグマに向かい合って座る。

 

「……何でしょうか?」

 

「シグマは、ガストレアやイニシエーターについてのデータは既に閲覧しているんだよな?」

 

「えぇ。そうですね。ただ……イニシエーターに関して一つ、妙な点が。」

 

妙……?

 

「妙………っていうと?」

 

「………小鳥遊 真様。あなたのデータが『無さ過ぎる』んです。」

 

「⁉︎」

 

俺のデータが……『無さ過ぎる』?

 

「普通のイニシエーターのデータには、出身、年齢、能力、経歴を見ることが可能です。ですが、真様のデータは、極端に少ないのです。それこそ、名前と所属しかデータに掲載されていないのです。」

 

……どういうことだ?

俺はちゃんと序列も持ってるし、正真正銘のイニシエーターだ。

何故俺のデータが無いのか……。

 

「このまま解析を続けていれば、おいおい何かわかるでしょう。その時はお教えします。」

 

「あぁ……頼むよ。」

 

俺は自室にこもり、夜が明けるまでパソコンを開いていた。




次回から博多エリアのお話です。真の真実も段々と明らかにしていきますよ。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。