ブラック・ブレット 〜Nocturnal Hawk〜 作:神武音ミィタ
夏世ちゃん、ええ娘やん……(T . T)
病院から出て、俺は繁華街をぶらりと歩いていた。今晩の夕食を探していた。
「何食うかな……」
足が止まる。中華か……悪くない。中華惣菜店を覗いてみる。家にインスタントのコンソメスープがあった。今日はちまきと麻婆豆腐にするか。
「すみません、ちまき二つと麻婆豆腐一つ。」
俺はその二つを買い、店を出た。
ーガシャアアアン……‼︎
「⁉︎」
遠くの方……窓ガラスの割れる音が。
俺はその方向へ走り出した。
「あれは……」
物陰から見る。
そこでは戦闘が行われていた。
ガストレア……ステージ1の…カブト虫……モデル・ビートルか。
それと戦っているのは、黒いスーツに身を包んだ青年と、黄色いパーカーに身を包んだツインテールの少女。プロモーターとイニシエーターか。
「延珠、跳べ‼︎」
「っ、ふんっ‼︎」
ほう、あの跳躍力。見た目からして、モデル・ラビットだろうか。
「くらえ‼︎」
黒スーツのプロモーターがガストレアに発砲。弾丸はモデル・ビートルの角を破壊した。ガストレアが怯む。
「でやああああああっ‼︎」
イニシエーターが空中から急降下し、ガストレアの背面に蹴りを叩き込んだ。なるほど、靴底にバラニウムを仕込んでいる訳か。
ガストレアは飛散し、肉片が辺りに散らばった。
「大丈夫か、延珠。」
「問題は無いぞ。今日は容易かったの。」
「ステージ1だったしな。早目に倒せて良かったな。」
「それより蓮太郎。妾は空腹じゃっ。」
「あぁ、そうだったな。よし、なんか食いに行くか‼︎」
「おぉ〜‼︎よし、行こう‼︎」
そのプロモーターとイニシエーターは、その場を後にした。
「……中々見所のある奴だな。」
いつか会うこともあるだろうな。その時は色々と話してみたいもんだ。
俺は足を進め、帰路を辿った。
「……なぁ、蓮太郎よ。」
「ん?どうかしたか?」
「さっきの戦い。何か…『誰かに見られている感じ』がしたのじゃが…」
とある喫茶店で、プロモーターの里見 蓮太郎と、そのイニシエーターの藍原 延珠は一服していた。
「んー……そうか?そんな感じはしなかったけどな…」
「何か……鋭い視線を感じたのじゃが……いや、気にしすぎじゃろうな。すまない蓮太郎、忘れてくれ。」
「お、おう……」
「………やっぱり、そうだったのですか。」
匂田公立大学病院の地下室。私、徳崎 心音はここの主、室戸 菫を訪ねていた。
「あぁ。君にしたことに、今でも罪悪感を感じているようだ。その罪滅ぼしと称し、プロモーター無しに闘っている。」
「どうして……そんなに背負うのでしょうか?」
「さぁねぇ。彼は素直じゃないんだろうね。思っていることを言いたいけど、変に気遣って言えない…」
ビーカーでコーヒーを飲む室戸先生。
「……気遣う必要なんて無いのに…。」
何でなの?真……。
あなたに罪は無い。あなたは正しかったのに。何故そこまで……?
ーブーッ、ブーッ。
携帯電話の振動音。室戸先生の物だった。
「私だ。……そうか、分かった。すぐに向かわせよう。」
室戸先生は電話を切り、私の方を見た。
「君の所の社長からだ。市街地にガストレアが出現。ステージ4の、モデル・ケルベロスのようだ。」
「ステージ4⁉︎」
かなりの規模だ。早く行かないと。
「既に現場に社長本人とイニシエーターはいるようだ。早く行きたまえ。」
「はい!」
私は部屋を出ようとノブに手をかけた。
「……先生。」
「何かな?」
「……ありがとうございます。」
そう言い残し、私は部屋を飛び出した。
その頃、市街地では。
「てやあああっ‼︎」
イニシエーターの実緒、そのプロモーターであり、社長の明崎 信也が、ガストレアステージ4、モデル・ケルベロスと交戦中だった。
実緒の振るうランスが空を切る。ケルベロスは軽々とかわす。だが、着地の一瞬、スキが生まれる。
「そこだぁっ‼︎」
着地と同タイミングで、ガストレアの右脚にランスを突き刺す。そしてそのまま、突き飛ばす。
ガストレアは距離を取る。右脚からは紫色の血液が流れ出る。狙いは正確だ。
実緒はモデル・ワスプのイニシエーター…スズメバチの能力を備えたイニシエーターだ。狙った獲物の弱点を突く戦法を得意とする。
「……社長。こいつ、中々強いですよ…」
「落ち着け。慎重にいけば勝てる。」
「……はいっ。」
「ひとまず、弾幕を俺が張る。その間に奴の背後に周り、ランスで一発かます……いけるか?」
「……やってみます…‼︎」
「よし、行くぞ‼︎」
明崎はマシンガンをケルベロスの足元に放つ。煙が起こり、辺りは白くなった。その間に実緒は路地を利用し、ケルベロスの後方に回り込んだ。
物陰から、頃合いを待つ。煙が収まるまでランスを構え、待機する。
だんだんと煙が薄れていく。
「……今だ‼︎」
明崎の言葉と共に、実緒はランスを前に突き出し、突進した。
「はああああああっ‼︎」
しかし。
「グルオオオオオッ‼︎」
ケルベロスの咆哮。それが辺りを包んでいた煙を掻き消し……
「っ‼︎」
ケルベロスは実緒に襲いかかる。
まずい‼︎
実緒が思った、その時だった。
「グルゥッ⁉︎」
「‼︎」
ケルベロスの頭部に弾丸が撃ち込まれた。怯むケルベロス。その弾丸の主は……
「おまたせ‼︎」
心音だった。
「こ、心音さん‼︎」
「心音‼︎ 時間は許容範囲だ。一気に責めろ‼︎」
「了解‼︎」
私は腰の刀を引き抜き、駆け出した。
社長のマシンガンがケルベロスを捉える。怯ませ、その隙に私と実緒で仕掛ける‼︎
ケルベロスが怯んだ。
「そこだああああっ‼︎」
「これで、終わりっ‼︎」
実緒と私が同タイミングで、ケルベロスを切り裂いた。
ケルベロスは断末魔の叫びを上げ、飛散した。
「任務、完了。」
真………。
私は、大丈夫だから。
今度は、私があなたを……護るから。
いやぁ、安定の可愛さだぜ、延珠♫
その内延珠と実緒の絡みなんて書いてみたいなぁ…なんて(笑)