ブラック・ブレット 〜Nocturnal Hawk〜 作:神武音ミィタ
色々ありましたが、ここまで来れたのも皆様のおかげだと感じております‼︎(*^^*)
「はぁっ‼︎」
バーニアを展開し、心音がオメガに殴りかかる。オメガは素早く身を翻して躱す。
「そこだっ‼︎」
躱したところにNHライフルの3分チャージを放つ。
「ふん‼︎」
オメガは右手を前に突き出す。弾丸が…オメガの手の前で止まった。
「何っ⁉︎」
「所詮はこの程度か…ガッカリだな。」
握られる拳。その途端、弾丸は消滅した。
「くっ‼︎」
「君たちでは私には敵わない……言わなかっただろうか?」
「うるさいんだよ…っ‼︎」
俺は駆け出し、オメガの背後に回り込む。が、しかし。
「な……っ⁉︎」
即座に回り込まれた。
「遅いのだよっ‼︎」
背中に衝撃波をくらい、俺は吹っ飛ぶ。
「ぐああああああっ‼︎」
壁に叩きつけられる。
「かはっ‼︎」
「真‼︎」
心音が銃を放つ。オメガは念動力で弾丸を受け止める。
「そのような力で、私に敵うと思うなよ?」
弾丸が心音に向かってくる。心音は右肩に被弾する。
「くっ⁉︎」
「つまらないな…実に、つまらない。」
オメガは右手を突き出す。
「く……っ⁉︎」
心音の身体が浮き上がる。ユプシロンにしたやつか⁉︎
「やめろっ‼︎」
俺はマシンガンを放つ。弾丸は躱される。オメガは拳を握る。
「くっ⁉︎ くああ……っ‼︎」
心音が宙に浮いたまま苦しみ出す。念動力で締め付けているのか⁉︎
「ふはは……握りつぶしてくれる‼︎」
「あ………く……っ‼︎」
「心音っ‼︎」
俺はショットガンに持ち替え、銃口をオメガに向ける。しかし、オメガは念動力で、心音を盾にする。
「っ⁉︎ 貴様……っ‼︎」
「ふふふ……攻撃できまい?ベタな台詞で申し訳ないが……」
「くそっ‼︎」
どうすればいい…っ‼︎
どうすれば……っ⁉︎
……その時だった。
背後から銃声。その弾丸は……オメガの右手を掠めた。
「……?」
オメガは右手を引っ込める。心音が地面に倒れる。
「ケホッ‼︎ケホッ‼︎」
「心音っ‼︎」
俺は心音に駆け寄り、肩を貸し、立ち上がらせる。
「……誰だ?」
弾丸の飛んできた方向……その先にいたのは……
「大丈夫ですか? 真さん、心音さん。」
「遅くなって申し訳ありません。」
左にランス、右に信也の銃の片方を持っている実緒と、右に鎌、左に信也の銃のもう片方を持ったミュータント…シグマがいた。
「シグマ……何をしている?」
「………私は、あなたの考えに背くことにしました。あなたの考えは…間違っている。」
シグマは無表情に言う。
「やれやれ……改造したアンドロイドほど面倒なものはないと言うことか……仕方ない。貴様もここで死んでもらうか。」
オメガはシグマに光弾を放つ。シグマは鎌でそれを弾く。
俺と心音は2人に駆け寄る。
「実緒、信也は?」
実緒は首を横に振った。助からなかった……か。
「真さん、これを。」
実緒は2本の剣を手渡した。信也が使っていたものだ。
「信也さんの本当の思いを……世界を救いたいっていう願いを……‼︎」
俺は右手に剣、左手にマシンガンを構えた。心音にもう片方を渡す。
「社長……‼︎」
心音は剣と刀、二つの刃を構える。
「参りましょう。この人数、メンツなら、勝機はあります。」
シグマが鎌を両手で握る。
「小賢しい奴らめ……貴様ら如き、敵では無い‼︎」
オメガは無数の光弾を放つ。
俺と心音は剣で弾いて、オメガに向かって進む。
「心音っ‼︎」
「うんっ‼︎」
俺と心音は光弾の嵐を切り抜けた。
「何っ⁉︎」
「うおらぁっ‼︎」
俺はオメガの右肩に剣を突き刺す。
「ぐおっ‼︎」
「はぁっ‼︎」
剣を引き抜き、蹴りを入れて距離を置く。
「がぁっ‼︎」
そこへ駆け出す、実緒とシグマ。
「てやっ‼︎」
「‼︎」
二人は同時にオメガを斬りつける。
「ぬおおっ⁉︎」
オメガはその場に跪く。
「心音ぇっ‼︎」
心音は駆け出し、飛び上がる。
「せやぁぁあああっ‼︎」
心音の両手の刃が、オメガを捕らえた。
「ぐああああああっ‼︎」
オメガは吹っ飛ぶ。が、態勢を立て直し、着地する。傷は深いはず…なんてタフな野郎だ……‼︎
「この……民警風情がぁっ‼︎」
オメガは左手から衝撃波を放つ。俺たちは全員吹っ飛ばされた。
「うあああっ‼︎」
地面に叩きつけられる。オメガは血を流しながらも立ち上がる。
「あいつ……まだこんな力を……っ⁉︎」
「所詮は機械化兵士とイニシエーターの集まり‼︎ 私がこの程度で死ぬわけがないだろう‼︎」
「くそ……なんてやつだ……っ‼︎」
「貴様らのような弱者が世界を乱すのだ‼︎ それが何故分からん⁉︎」
「弱者……だと…?」
俺は立ち上がる。
「この世に必要なのは強者だ‼︎ 強者がいればこの世はそれでいい‼︎ 私が強者だ……私が強者だっ‼︎」
オメガが高笑いをしたその時だった。
「っ⁉︎」
オメガの左肩に……クナイが突き刺さった。
「ぐおああああっ⁉︎」
クナイの飛んできた方向……そこにいたのは……
「⁉︎ リコちゃん⁉︎」
「プサイ様……?」
リコちゃんの隣に、忍者のような男がいた。
「プサイ……貴様もか…っ‼︎」
「……オメガ殿。そなたの考えは間違いだ。」
「何………?」
プサイは……優しげに、力強く言った。
「そなたは強者などではない。自分より弱いであろう呪われた子供達を皆殺しにするなど……強者の振る舞いではない。」
「何だと……⁉︎」
「………自分より弱き者の命を奪うなど…拙者には考えられぬ。拙者は……そなたの考えに異を唱えよう。」
プサイは俺たちの方を向く。そして、再び口を開く。
「そなたは彼らには勝てぬ。そなたには、彼らには有るものが欠けておるからな。」
「何だと……⁉︎」
「その通りだ……‼︎」
俺はNHライフルを構えた。既にチャージはマックス状態だ。
「なっ⁉︎」
オメガは両肩に負傷を負っていたため、手が動かないようだ。
「プサイぃっ‼︎」
「てなわけだ……教えてやるよ、オメガ‼︎ てめぇに足りないもの……それはっ‼︎」
トリガーを引き、弾丸を放つ。俺は吹っ飛び、壁に叩きつけられる。
放たれた弾丸はオメガに命中した。オメガは吹っ飛び、壁にめり込んだ。
俺は立ち上がり、言い放った。
「……信頼だよ。」
オメガは警察に身柄を拘束され、近いうちに裁判が行われるだろう。ミュータントの潜伏していたビルには、多数のミュータントの死体が転がっていた。それらも全て警察が処理した。その中には……明崎 信也の死体もあった。
信也の死体は紅音が引き取り、事務所のすぐ近くの墓地に彼の墓が建てられた。
東京エリアを数日間だけ震撼させたミュータント事件は、「テロリストの犯行」という形で情報改竄され、幕を降ろした……。
そして、半月が経った。
「というわけで……私が新しい社長の、川野 実緒です‼︎ 改めまして…よろしくお願いします‼︎」
明崎民間警備会社は、川野 実緒を新社長に新体制が始まった。色々話し合ったが、社長に相応しいのは実緒だろう、という俺と心音の意見が採用された。
「よっ‼︎社長‼︎」
心音が拍手する。
「それから……リコちゃん‼︎リコちゃん……水瀬(みなせ) リコを正式に、明崎民間警備会社のイニシエーターとします‼︎」
実緒の隣にいたリコが頭を下げる。イニシエーターの教習を終えて、正式にイニシエーターとなったのだ。どうやら思考の発達が早いのと、飲み込みが早かったというので、異例とも言えるスピードでイニシエーターになったとか。
「み、水瀬 リコです。改めまして、よろしくお願いしますっ‼︎」
また拍手が起こる。随分と立派になったな…俺が助けたのも懐かしいな、ホントに。
「それから、2人。新しくプロモーターに雇いました‼︎」
2人の人物が前に出る。
「実緒様の秘書兼プロモーター兼事務所のメイドとして雇われました、コードネーム・シグマです。よろしくお願いいたします。」
何故かメイド服に着替えているシグマである。実緒のプロモーターとして、序列登録も済ませたらしい。
「リコ殿のプロモーターとして雇われた拙者、プサイ改め、土条寺 知哉(つちじょうじ ともや)と申す。よろしくお願い申し上げる。」
忍者のミュータントは本名を名乗っているとのこと。知哉は深々と礼儀正しく頭を下げる。
彼もリコとの序列登録も済んでいるようだ。
この2人も、拍手で迎えられた。
「信也さん…前社長の意志を継ぎ、これからも人類の自由、平和のため……戦いましょう‼︎」
「はいっ‼︎」
「ふ…了解だ。」
俺と心音は手を挙げて微笑む。
「よし‼︎ じゃあ新生明崎民間警備会社設立を祝って、今夜はパーティーよっ‼︎」
心音の掛け声が事務所に響き、賑やかで微笑ましい雰囲気が生まれた。
明崎 信也。
彼は英雄だった。その事実は変わりないだろう。
彼は、彼の魂は生き続ける。
その魂を継ぐものがいる限り、ずっと。
次回は少し番外編のようなポジションで書いてみます。シグマと知哉(プサイ)、それぞれが主役になる予定です。