ブラック・ブレット 〜Nocturnal Hawk〜   作:神武音ミィタ

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ミュータント編、完結です‼︎
色々ありましたが、ここまで来れたのも皆様のおかげだと感じております‼︎(*^^*)


第37話〜信頼と魂〜

「はぁっ‼︎」

 

バーニアを展開し、心音がオメガに殴りかかる。オメガは素早く身を翻して躱す。

 

「そこだっ‼︎」

 

躱したところにNHライフルの3分チャージを放つ。

 

「ふん‼︎」

 

オメガは右手を前に突き出す。弾丸が…オメガの手の前で止まった。

 

「何っ⁉︎」

 

「所詮はこの程度か…ガッカリだな。」

 

握られる拳。その途端、弾丸は消滅した。

 

「くっ‼︎」

 

「君たちでは私には敵わない……言わなかっただろうか?」

 

「うるさいんだよ…っ‼︎」

 

俺は駆け出し、オメガの背後に回り込む。が、しかし。

 

「な……っ⁉︎」

 

即座に回り込まれた。

 

「遅いのだよっ‼︎」

 

背中に衝撃波をくらい、俺は吹っ飛ぶ。

 

「ぐああああああっ‼︎」

 

壁に叩きつけられる。

 

「かはっ‼︎」

 

「真‼︎」

 

心音が銃を放つ。オメガは念動力で弾丸を受け止める。

 

「そのような力で、私に敵うと思うなよ?」

 

弾丸が心音に向かってくる。心音は右肩に被弾する。

 

「くっ⁉︎」

 

「つまらないな…実に、つまらない。」

 

オメガは右手を突き出す。

 

「く……っ⁉︎」

 

心音の身体が浮き上がる。ユプシロンにしたやつか⁉︎

 

「やめろっ‼︎」

 

俺はマシンガンを放つ。弾丸は躱される。オメガは拳を握る。

 

「くっ⁉︎ くああ……っ‼︎」

 

心音が宙に浮いたまま苦しみ出す。念動力で締め付けているのか⁉︎

 

「ふはは……握りつぶしてくれる‼︎」

 

「あ………く……っ‼︎」

 

「心音っ‼︎」

 

俺はショットガンに持ち替え、銃口をオメガに向ける。しかし、オメガは念動力で、心音を盾にする。

 

「っ⁉︎ 貴様……っ‼︎」

 

「ふふふ……攻撃できまい?ベタな台詞で申し訳ないが……」

 

「くそっ‼︎」

 

どうすればいい…っ‼︎

どうすれば……っ⁉︎

……その時だった。

 

背後から銃声。その弾丸は……オメガの右手を掠めた。

 

「……?」

 

オメガは右手を引っ込める。心音が地面に倒れる。

 

「ケホッ‼︎ケホッ‼︎」

 

「心音っ‼︎」

 

俺は心音に駆け寄り、肩を貸し、立ち上がらせる。

 

「……誰だ?」

 

弾丸の飛んできた方向……その先にいたのは……

 

「大丈夫ですか? 真さん、心音さん。」

 

「遅くなって申し訳ありません。」

 

左にランス、右に信也の銃の片方を持っている実緒と、右に鎌、左に信也の銃のもう片方を持ったミュータント…シグマがいた。

 

「シグマ……何をしている?」

 

「………私は、あなたの考えに背くことにしました。あなたの考えは…間違っている。」

 

シグマは無表情に言う。

 

「やれやれ……改造したアンドロイドほど面倒なものはないと言うことか……仕方ない。貴様もここで死んでもらうか。」

 

オメガはシグマに光弾を放つ。シグマは鎌でそれを弾く。

俺と心音は2人に駆け寄る。

 

「実緒、信也は?」

 

実緒は首を横に振った。助からなかった……か。

 

「真さん、これを。」

 

実緒は2本の剣を手渡した。信也が使っていたものだ。

 

「信也さんの本当の思いを……世界を救いたいっていう願いを……‼︎」

 

俺は右手に剣、左手にマシンガンを構えた。心音にもう片方を渡す。

 

「社長……‼︎」

 

心音は剣と刀、二つの刃を構える。

 

「参りましょう。この人数、メンツなら、勝機はあります。」

 

シグマが鎌を両手で握る。

 

「小賢しい奴らめ……貴様ら如き、敵では無い‼︎」

 

オメガは無数の光弾を放つ。

俺と心音は剣で弾いて、オメガに向かって進む。

 

「心音っ‼︎」

 

「うんっ‼︎」

 

俺と心音は光弾の嵐を切り抜けた。

 

「何っ⁉︎」

 

「うおらぁっ‼︎」

 

俺はオメガの右肩に剣を突き刺す。

 

「ぐおっ‼︎」

 

「はぁっ‼︎」

 

剣を引き抜き、蹴りを入れて距離を置く。

 

「がぁっ‼︎」

 

そこへ駆け出す、実緒とシグマ。

 

「てやっ‼︎」

 

「‼︎」

 

二人は同時にオメガを斬りつける。

 

「ぬおおっ⁉︎」

 

オメガはその場に跪く。

 

「心音ぇっ‼︎」

 

心音は駆け出し、飛び上がる。

 

「せやぁぁあああっ‼︎」

 

心音の両手の刃が、オメガを捕らえた。

 

「ぐああああああっ‼︎」

 

オメガは吹っ飛ぶ。が、態勢を立て直し、着地する。傷は深いはず…なんてタフな野郎だ……‼︎

 

「この……民警風情がぁっ‼︎」

 

オメガは左手から衝撃波を放つ。俺たちは全員吹っ飛ばされた。

 

「うあああっ‼︎」

 

地面に叩きつけられる。オメガは血を流しながらも立ち上がる。

 

「あいつ……まだこんな力を……っ⁉︎」

 

「所詮は機械化兵士とイニシエーターの集まり‼︎ 私がこの程度で死ぬわけがないだろう‼︎」

 

「くそ……なんてやつだ……っ‼︎」

 

「貴様らのような弱者が世界を乱すのだ‼︎ それが何故分からん⁉︎」

 

「弱者……だと…?」

 

俺は立ち上がる。

 

「この世に必要なのは強者だ‼︎ 強者がいればこの世はそれでいい‼︎ 私が強者だ……私が強者だっ‼︎」

 

オメガが高笑いをしたその時だった。

 

「っ⁉︎」

 

オメガの左肩に……クナイが突き刺さった。

 

「ぐおああああっ⁉︎」

 

クナイの飛んできた方向……そこにいたのは……

 

「⁉︎ リコちゃん⁉︎」

 

「プサイ様……?」

 

リコちゃんの隣に、忍者のような男がいた。

 

「プサイ……貴様もか…っ‼︎」

 

「……オメガ殿。そなたの考えは間違いだ。」

 

「何………?」

 

プサイは……優しげに、力強く言った。

 

「そなたは強者などではない。自分より弱いであろう呪われた子供達を皆殺しにするなど……強者の振る舞いではない。」

 

「何だと……⁉︎」

 

「………自分より弱き者の命を奪うなど…拙者には考えられぬ。拙者は……そなたの考えに異を唱えよう。」

 

プサイは俺たちの方を向く。そして、再び口を開く。

 

「そなたは彼らには勝てぬ。そなたには、彼らには有るものが欠けておるからな。」

 

「何だと……⁉︎」

 

「その通りだ……‼︎」

 

俺はNHライフルを構えた。既にチャージはマックス状態だ。

 

「なっ⁉︎」

 

オメガは両肩に負傷を負っていたため、手が動かないようだ。

 

「プサイぃっ‼︎」

 

「てなわけだ……教えてやるよ、オメガ‼︎ てめぇに足りないもの……それはっ‼︎」

 

トリガーを引き、弾丸を放つ。俺は吹っ飛び、壁に叩きつけられる。

放たれた弾丸はオメガに命中した。オメガは吹っ飛び、壁にめり込んだ。

俺は立ち上がり、言い放った。

 

「……信頼だよ。」

 

 

 

オメガは警察に身柄を拘束され、近いうちに裁判が行われるだろう。ミュータントの潜伏していたビルには、多数のミュータントの死体が転がっていた。それらも全て警察が処理した。その中には……明崎 信也の死体もあった。

信也の死体は紅音が引き取り、事務所のすぐ近くの墓地に彼の墓が建てられた。

東京エリアを数日間だけ震撼させたミュータント事件は、「テロリストの犯行」という形で情報改竄され、幕を降ろした……。

 

 

 

そして、半月が経った。

 

「というわけで……私が新しい社長の、川野 実緒です‼︎ 改めまして…よろしくお願いします‼︎」

 

明崎民間警備会社は、川野 実緒を新社長に新体制が始まった。色々話し合ったが、社長に相応しいのは実緒だろう、という俺と心音の意見が採用された。

 

「よっ‼︎社長‼︎」

 

心音が拍手する。

 

「それから……リコちゃん‼︎リコちゃん……水瀬(みなせ) リコを正式に、明崎民間警備会社のイニシエーターとします‼︎」

 

実緒の隣にいたリコが頭を下げる。イニシエーターの教習を終えて、正式にイニシエーターとなったのだ。どうやら思考の発達が早いのと、飲み込みが早かったというので、異例とも言えるスピードでイニシエーターになったとか。

 

「み、水瀬 リコです。改めまして、よろしくお願いしますっ‼︎」

 

また拍手が起こる。随分と立派になったな…俺が助けたのも懐かしいな、ホントに。

 

「それから、2人。新しくプロモーターに雇いました‼︎」

 

2人の人物が前に出る。

 

「実緒様の秘書兼プロモーター兼事務所のメイドとして雇われました、コードネーム・シグマです。よろしくお願いいたします。」

 

何故かメイド服に着替えているシグマである。実緒のプロモーターとして、序列登録も済ませたらしい。

 

「リコ殿のプロモーターとして雇われた拙者、プサイ改め、土条寺 知哉(つちじょうじ ともや)と申す。よろしくお願い申し上げる。」

 

忍者のミュータントは本名を名乗っているとのこと。知哉は深々と礼儀正しく頭を下げる。

彼もリコとの序列登録も済んでいるようだ。

この2人も、拍手で迎えられた。

 

「信也さん…前社長の意志を継ぎ、これからも人類の自由、平和のため……戦いましょう‼︎」

 

「はいっ‼︎」

 

「ふ…了解だ。」

 

俺と心音は手を挙げて微笑む。

 

「よし‼︎ じゃあ新生明崎民間警備会社設立を祝って、今夜はパーティーよっ‼︎」

 

心音の掛け声が事務所に響き、賑やかで微笑ましい雰囲気が生まれた。

 

明崎 信也。

彼は英雄だった。その事実は変わりないだろう。

彼は、彼の魂は生き続ける。

その魂を継ぐものがいる限り、ずっと。

 




次回は少し番外編のようなポジションで書いてみます。シグマと知哉(プサイ)、それぞれが主役になる予定です。

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