ブラック・ブレット 〜Nocturnal Hawk〜   作:神武音ミィタ

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フラグ回収しました(笑)
いやぁ、書き過ぎて文字数が過去最高にwww


第36話〜涙と覚醒〜

「さぁ……終わりにしてあげるわ‼︎」

 

イプシロンは注射器を振り下ろした。

 

「……‼︎」

 

「な、何っ⁉︎」

 

信也さんは……右手でイプシロンの注射器を持った腕を掴んだ。

 

「し、信也さん‼︎」

 

「イプシロン………お前の、好きには……させ…んぞ…っ‼︎」

 

「こいつっ‼︎」

 

イプシロンが信也さんに電磁波を放つ。

 

「ぐおおおおっ‼︎」

 

「このっ、離せっ‼︎このっ‼︎」

 

掴んだ腕は離さなかった。信也さんが叫ぶ。

 

「実緒っ‼︎ やれっ‼︎ 俺諸共‼︎」

 

「えっ⁉︎」

 

私は驚愕した。信也さん…諸共⁉︎

 

「今しかない‼︎ 俺の身体が、電磁波で…ぐあああっ‼︎ き、消える前に…っ‼︎」

 

「させるか、このっ‼︎このっ、このっ‼︎」

 

電磁波が強くなる。

 

「ぐあああっ‼︎ 実緒……実緒ーっ‼︎」

 

段々と、信也さんの身体が消えかかっている。

 

「実緒様……やるしかありません。仮にここでイプシロン様を狙ったとしても、盾にされる可能性があります。そうなれば元も子もありません。」

 

「シグマ⁉︎」

 

「……ようやくわかった感情を使います。辛いのは私も一緒です。」

 

無表情な顔に合わない、意思のこもった声。

 

「信也さん……っ‼︎」

 

私はランスを前に突き出したまま、駆け出す。

 

「はあああああああああああああっ‼︎」

 

ランスの先は……信也さんとイプシロンを貫いた。

 

「うあああ……っ⁉︎ ファイ…ぃいいっ‼︎」

 

「……実緒……っ…。」

 

私はランスを引き抜いた。イプシロンが倒れる。倒れそうになる信也さんを、私は支えた。

 

「信也さん⁉︎」

 

私は信也さんを揺さぶる。

 

「ごめんなさい……ごめんなさい……っ‼︎」

 

私は涙を流す。信也さんは力なく手を伸ばし、私の頬を撫で、指で涙を掬う。

 

「いいんだ………これで……っ……」

 

私は信也さんを抱きしめた。

 

「すまないな、実緒………。お前には色々と……迷惑を…かけてしまった……。」

 

「何言ってるんですか……私達、ペアじゃないですか。迷惑だなんて……思ってませんよ…?」

 

「優しいな………お前って、奴は………」

 

涙を流す信也さん。

 

「信也さん……」

 

「ありがとう………会社を……明崎民警を……頼む、ぞ……っ。」

 

「信也さん……?」

 

「ありがとう……実緒………っ。」

 

信也さんの瞳が閉じた。

 

「信也……さん………?」

 

私は信也さんを揺さぶる。

 

「信也さん?ねぇ……信也、さん……?信也さん…信也さん‼︎」

 

シグマが私の肩に手を置いて、悲しげな表情で言った。

 

「心拍が停止しています。残念ですが……イプシロン様の電磁波の影響が一番大きいかと。」

 

「そんな……嫌……嫌っ……‼︎」

 

私は……泣き叫んだ。信也さんの亡骸を抱きしめながら、大きな声で、涙を流しながら。

 

 

 

 

 

「さぁ……逃げ場は無いぞ…?」

 

地下牢。リコはプサイに視線を向けられていた。リコは恐怖のあまり立つことが出来なかった。

 

「実緒……お姉ちゃん……‼︎」

 

「無駄だぞ……助けなど、来ない。」

 

リコは目を見開いた。

 

「助けなんて……来ない……?」

 

「そうだ……お主に出来るか?戦うことが。まぁ、その弱腰では無理か?」

 

「私は………」

 

リコは……立ち上がった。

 

「ほう……?」

 

リコは……拳を固めた。

 

「私は………‼︎」

 

「ほう……?やるというのか…?」

 

プサイはクナイを取り出した。

 

「では……参るぞ‼︎」

 

プサイはクナイを投げる。

リコは……床を滑るようにそれを躱した。

 

「何っ⁉︎」

 

リコは身構える。その足元は……水に浮いている。まるで水面のアメンボのように…。

 

「これが……私の力……」

 

「おのれ……っ‼︎」

 

プサイは駆け出し、刀を振るう。

リコは素早く躱す。

 

「バカなっ⁉︎ 拙者の攻撃を…っ‼︎」

 

「はぁ……はぁ………っ。」

 

リコはプサイをまっすぐ見つめる。そして、武器庫を見る。一挺のハンドガン……ひとつだけ、そこにあった。

 

「この…っ‼︎」

 

プサイが再びクナイを投げる。リコは躱し…武器庫のハンドガンを手に取り、銃口をプサイに向ける。

 

「っ‼︎」

 

リコは顔をしかめ、引き金を引いた。

 

「きゃっ⁉︎」

 

反動で、リコは尻餅をついてしまった。

弾丸は天井に突き刺さる。

 

「⁉︎」

 

プサイは目を見開いた。

 

「そなた……銃を撃ったことが……?」

 

リコは……力なく言った。

 

「私は……ただの、子供………。」

 

リコは目を瞑った。殺される……そう思っていた。

 

「……すまない。」

 

プサイはリコの前で跪き、頭を下げた。

 

「え…………?」

 

「……拙者は最低だ。弱き者の命……罪のない者の命を理不尽に奪うなど……最低だ。」

 

「……あなたも、シグマと一緒?」

 

「? シグマ殿と……?」

 

「あなたとシグマ、同じ目をしてる…。」

 

リコはプサイの瞳を見つめながら言った。

 

「………気が変わった。イニシエーターに……罪は無い、と。」

 

プサイは立ち上がった。

 

「そなた、名は?」

 

「私、リコ…。」

 

「リコ殿……うむ。拙者はプサイ。」

 

プサイは頭を下げた。

 

「リコ殿。そなたには感謝したい。そなたがいなければ、拙者は間違った道を選ぶところだった。」

 

「プサイ……」

 

「この命、そなたと、そなたの大切なものに捧げよう。リコ殿は拙者がお守りいたす。」

 

「プサイ……うん、ありがとう。」

 

リコは手を差し出した。

 

「……かたじけない。」

 

その手を、プサイは握った。

 

 

 

 

「はっ‼︎」

 

クスィーの放つ弾丸を躱し、マシンガンを放つ。

 

「うおわわっ⁉︎」

 

クスィーはよろけながらも躱す。

 

「そこだっ‼︎」

 

よろけたところに弾丸を放つ。銃弾はクスィーの右脚を貫く。

 

「ぐっ⁉︎ いってぇーっ! ちょ、ヘルプ、ユプシローン‼︎」

 

「余所見をするな‼︎」

 

更に追い打ちで弾丸を撃ち込む。

 

「ぎゃーっ‼︎」

 

クスィーは脚を抑えて転がる。

 

「ちょ、無理無理……勘弁、参った、このとーりっ‼︎」

 

「……貴様、頭をぶち抜かれたいか?」

 

「ちょちょちょちょウェイティーン‼︎ 待ってくれよ‼︎ 俺はさ、しがないバーテンダーなんだよっ‼︎ 俺、戦いは得意じゃねーのよ、あはは……」

 

「……そーかよ。」

 

俺は呆れ、クスィーを放っておいた。

 

 

 

「さぁ……行くぞ‼︎」

 

ユプシロンが駆け出す。私は身構える。

 

「はっ‼︎」

 

「くっ‼︎」

 

拳を右手の刀で受け止める。そして…

 

「てやぁっ‼︎」

 

左手の拳を、ユプシロンに振るう。

 

「っ⁉︎」

 

ユプシロンは後ろに吹き飛ぶ。

 

「な、なんだ……っ⁉︎」

 

「脳ある鷹は爪を隠すけど……今の私は、そこまで脳は無いからっ‼︎」

 

私は左腕を突き出す。皮膚が剥がれ……黒く輝く腕が現れる。そう、私の…機械化兵士としての力だった。

 

「悪いけど……出し惜しみしないからっ‼︎」

 

私は左腕のバーニアを展開し、駆け出す。そして、勢いをつけて回転ばりにパンチを叩き込む。

 

「くあっ‼︎」

 

ユプシロンは地面に叩きつけられる。

 

「この……っ‼︎」

 

 

「心音っ‼︎」

 

俺は心音に駆け寄る。そして、左腕を見る。

 

「お前、それ……」

 

「あ、ご、ごめん……あのままじゃ負けちゃうから…」

 

俺は……肩を叩いた。

 

「大丈夫だ。それより……」

 

俺はユプシロンを見る。

 

「おのれぇ……っ‼︎」

 

ユプシロンが立ち上がった……その時だった。

 

「おやおや……もうここまで来たのか?」

 

「⁉︎」

 

階段の方から声。そちらを向く。

 

「命知らずな奴らだ……民警など、な。」

 

年老いたその男は余裕な表情を浮かべる。

 

「ここまで来たこと、褒めてやろう。私はオメガ……ミュータントのボスだ。」

 

「お前が……‼︎」

 

親玉自らお出ましってか……‼︎

 

「お、オメガ様‼︎」

 

ユプシロンが声を上げた……その時だった。

 

「‼︎」

 

オメガは手を突き出した。すると……そこから閃光が放たれ、ユプシロンの身体を貫いた。

 

「なっ⁉︎」

 

「お、オメガ……様……っ⁉︎」

 

ユプシロンはその場に倒れ、動かなくなった。

 

「ご苦労だった……ミュータント諸君。だが、もう良い。飽きたしな……」

 

「ひっ、ひぃいいいいっ‼︎」

 

クスィーはその場から逃げ出した。

 

「酷い……‼︎」

 

「お前……どういうつもりだ‼︎」

 

オメガは手を広げ、言い放つ。

 

「元々、私は民警潰しなど眼中に無くてな………全てはそう……全世界の支配。そのためだけの計画だ。ミュータントなど、私一人で十分……支配者は一人で十分だしな。」

 

「貴様……っ‼︎」

 

俺はライフルのチャージを開始。

 

「やるのか?やめた方がいいぞ。民警如きに、私が潰せるとでも?」

 

「あぁ……てめぇだけは、叩き潰す‼︎」

 




ミュータント編ももうすぐフィナーレです。
あと2話で終わればいいな……という説な願い(笑)

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