ブラック・ブレット 〜Nocturnal Hawk〜 作:神武音ミィタ
いやぁ、書き過ぎて文字数が過去最高にwww
「さぁ……終わりにしてあげるわ‼︎」
イプシロンは注射器を振り下ろした。
「……‼︎」
「な、何っ⁉︎」
信也さんは……右手でイプシロンの注射器を持った腕を掴んだ。
「し、信也さん‼︎」
「イプシロン………お前の、好きには……させ…んぞ…っ‼︎」
「こいつっ‼︎」
イプシロンが信也さんに電磁波を放つ。
「ぐおおおおっ‼︎」
「このっ、離せっ‼︎このっ‼︎」
掴んだ腕は離さなかった。信也さんが叫ぶ。
「実緒っ‼︎ やれっ‼︎ 俺諸共‼︎」
「えっ⁉︎」
私は驚愕した。信也さん…諸共⁉︎
「今しかない‼︎ 俺の身体が、電磁波で…ぐあああっ‼︎ き、消える前に…っ‼︎」
「させるか、このっ‼︎このっ、このっ‼︎」
電磁波が強くなる。
「ぐあああっ‼︎ 実緒……実緒ーっ‼︎」
段々と、信也さんの身体が消えかかっている。
「実緒様……やるしかありません。仮にここでイプシロン様を狙ったとしても、盾にされる可能性があります。そうなれば元も子もありません。」
「シグマ⁉︎」
「……ようやくわかった感情を使います。辛いのは私も一緒です。」
無表情な顔に合わない、意思のこもった声。
「信也さん……っ‼︎」
私はランスを前に突き出したまま、駆け出す。
「はあああああああああああああっ‼︎」
ランスの先は……信也さんとイプシロンを貫いた。
「うあああ……っ⁉︎ ファイ…ぃいいっ‼︎」
「……実緒……っ…。」
私はランスを引き抜いた。イプシロンが倒れる。倒れそうになる信也さんを、私は支えた。
「信也さん⁉︎」
私は信也さんを揺さぶる。
「ごめんなさい……ごめんなさい……っ‼︎」
私は涙を流す。信也さんは力なく手を伸ばし、私の頬を撫で、指で涙を掬う。
「いいんだ………これで……っ……」
私は信也さんを抱きしめた。
「すまないな、実緒………。お前には色々と……迷惑を…かけてしまった……。」
「何言ってるんですか……私達、ペアじゃないですか。迷惑だなんて……思ってませんよ…?」
「優しいな………お前って、奴は………」
涙を流す信也さん。
「信也さん……」
「ありがとう………会社を……明崎民警を……頼む、ぞ……っ。」
「信也さん……?」
「ありがとう……実緒………っ。」
信也さんの瞳が閉じた。
「信也……さん………?」
私は信也さんを揺さぶる。
「信也さん?ねぇ……信也、さん……?信也さん…信也さん‼︎」
シグマが私の肩に手を置いて、悲しげな表情で言った。
「心拍が停止しています。残念ですが……イプシロン様の電磁波の影響が一番大きいかと。」
「そんな……嫌……嫌っ……‼︎」
私は……泣き叫んだ。信也さんの亡骸を抱きしめながら、大きな声で、涙を流しながら。
「さぁ……逃げ場は無いぞ…?」
地下牢。リコはプサイに視線を向けられていた。リコは恐怖のあまり立つことが出来なかった。
「実緒……お姉ちゃん……‼︎」
「無駄だぞ……助けなど、来ない。」
リコは目を見開いた。
「助けなんて……来ない……?」
「そうだ……お主に出来るか?戦うことが。まぁ、その弱腰では無理か?」
「私は………」
リコは……立ち上がった。
「ほう……?」
リコは……拳を固めた。
「私は………‼︎」
「ほう……?やるというのか…?」
プサイはクナイを取り出した。
「では……参るぞ‼︎」
プサイはクナイを投げる。
リコは……床を滑るようにそれを躱した。
「何っ⁉︎」
リコは身構える。その足元は……水に浮いている。まるで水面のアメンボのように…。
「これが……私の力……」
「おのれ……っ‼︎」
プサイは駆け出し、刀を振るう。
リコは素早く躱す。
「バカなっ⁉︎ 拙者の攻撃を…っ‼︎」
「はぁ……はぁ………っ。」
リコはプサイをまっすぐ見つめる。そして、武器庫を見る。一挺のハンドガン……ひとつだけ、そこにあった。
「この…っ‼︎」
プサイが再びクナイを投げる。リコは躱し…武器庫のハンドガンを手に取り、銃口をプサイに向ける。
「っ‼︎」
リコは顔をしかめ、引き金を引いた。
「きゃっ⁉︎」
反動で、リコは尻餅をついてしまった。
弾丸は天井に突き刺さる。
「⁉︎」
プサイは目を見開いた。
「そなた……銃を撃ったことが……?」
リコは……力なく言った。
「私は……ただの、子供………。」
リコは目を瞑った。殺される……そう思っていた。
「……すまない。」
プサイはリコの前で跪き、頭を下げた。
「え…………?」
「……拙者は最低だ。弱き者の命……罪のない者の命を理不尽に奪うなど……最低だ。」
「……あなたも、シグマと一緒?」
「? シグマ殿と……?」
「あなたとシグマ、同じ目をしてる…。」
リコはプサイの瞳を見つめながら言った。
「………気が変わった。イニシエーターに……罪は無い、と。」
プサイは立ち上がった。
「そなた、名は?」
「私、リコ…。」
「リコ殿……うむ。拙者はプサイ。」
プサイは頭を下げた。
「リコ殿。そなたには感謝したい。そなたがいなければ、拙者は間違った道を選ぶところだった。」
「プサイ……」
「この命、そなたと、そなたの大切なものに捧げよう。リコ殿は拙者がお守りいたす。」
「プサイ……うん、ありがとう。」
リコは手を差し出した。
「……かたじけない。」
その手を、プサイは握った。
「はっ‼︎」
クスィーの放つ弾丸を躱し、マシンガンを放つ。
「うおわわっ⁉︎」
クスィーはよろけながらも躱す。
「そこだっ‼︎」
よろけたところに弾丸を放つ。銃弾はクスィーの右脚を貫く。
「ぐっ⁉︎ いってぇーっ! ちょ、ヘルプ、ユプシローン‼︎」
「余所見をするな‼︎」
更に追い打ちで弾丸を撃ち込む。
「ぎゃーっ‼︎」
クスィーは脚を抑えて転がる。
「ちょ、無理無理……勘弁、参った、このとーりっ‼︎」
「……貴様、頭をぶち抜かれたいか?」
「ちょちょちょちょウェイティーン‼︎ 待ってくれよ‼︎ 俺はさ、しがないバーテンダーなんだよっ‼︎ 俺、戦いは得意じゃねーのよ、あはは……」
「……そーかよ。」
俺は呆れ、クスィーを放っておいた。
「さぁ……行くぞ‼︎」
ユプシロンが駆け出す。私は身構える。
「はっ‼︎」
「くっ‼︎」
拳を右手の刀で受け止める。そして…
「てやぁっ‼︎」
左手の拳を、ユプシロンに振るう。
「っ⁉︎」
ユプシロンは後ろに吹き飛ぶ。
「な、なんだ……っ⁉︎」
「脳ある鷹は爪を隠すけど……今の私は、そこまで脳は無いからっ‼︎」
私は左腕を突き出す。皮膚が剥がれ……黒く輝く腕が現れる。そう、私の…機械化兵士としての力だった。
「悪いけど……出し惜しみしないからっ‼︎」
私は左腕のバーニアを展開し、駆け出す。そして、勢いをつけて回転ばりにパンチを叩き込む。
「くあっ‼︎」
ユプシロンは地面に叩きつけられる。
「この……っ‼︎」
「心音っ‼︎」
俺は心音に駆け寄る。そして、左腕を見る。
「お前、それ……」
「あ、ご、ごめん……あのままじゃ負けちゃうから…」
俺は……肩を叩いた。
「大丈夫だ。それより……」
俺はユプシロンを見る。
「おのれぇ……っ‼︎」
ユプシロンが立ち上がった……その時だった。
「おやおや……もうここまで来たのか?」
「⁉︎」
階段の方から声。そちらを向く。
「命知らずな奴らだ……民警など、な。」
年老いたその男は余裕な表情を浮かべる。
「ここまで来たこと、褒めてやろう。私はオメガ……ミュータントのボスだ。」
「お前が……‼︎」
親玉自らお出ましってか……‼︎
「お、オメガ様‼︎」
ユプシロンが声を上げた……その時だった。
「‼︎」
オメガは手を突き出した。すると……そこから閃光が放たれ、ユプシロンの身体を貫いた。
「なっ⁉︎」
「お、オメガ……様……っ⁉︎」
ユプシロンはその場に倒れ、動かなくなった。
「ご苦労だった……ミュータント諸君。だが、もう良い。飽きたしな……」
「ひっ、ひぃいいいいっ‼︎」
クスィーはその場から逃げ出した。
「酷い……‼︎」
「お前……どういうつもりだ‼︎」
オメガは手を広げ、言い放つ。
「元々、私は民警潰しなど眼中に無くてな………全てはそう……全世界の支配。そのためだけの計画だ。ミュータントなど、私一人で十分……支配者は一人で十分だしな。」
「貴様……っ‼︎」
俺はライフルのチャージを開始。
「やるのか?やめた方がいいぞ。民警如きに、私が潰せるとでも?」
「あぁ……てめぇだけは、叩き潰す‼︎」
ミュータント編ももうすぐフィナーレです。
あと2話で終わればいいな……という説な願い(笑)