ブラック・ブレット 〜Nocturnal Hawk〜   作:神武音ミィタ

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更新できた……そして、アニメ溜まってる……orz
とりあえず、翠ちゃんで癒されるとしましょうかなwww


第32話〜本当の裏切りと平和〜

「まさか、かつての相棒を檻に放り込むなんてねぇ?」

 

ミュータントのアジトのバーカウンターのような席に、イプシロンとファイが腰掛け、酒を嗜んでいた。

 

「………それが、オメガの意志だろう?」

 

「いいや。オメガだけじゃないさ……あなた自身の意志でもあるでしょう?」

 

ファイは……俯いて黙ったまま、席を離れた。

 

「やれやれ……やっぱ未練があるのかしらねぇ……。」

 

そこへ……白衣の男がイプシロンに近寄る。

 

「あら、オミクロン。頼んでおいたものは?」

 

「これだろ?」

 

オミクロンと呼ばれたその白衣の男は、アタッシュケースをイプシロンに手渡す。

 

「ありがと。どう?一緒に飲む?」

 

「……いただこうかな。」

 

オミクロンはイプシロンの隣に座る。

 

「テキーラ。」

 

「あんたはそればっかだねぇ。」

 

バーテンダーの男が笑うように言う。

 

「うるさいぞ……クスィー。」

 

クスィーと呼ばれたバーテンダーは、オミクロンの前にグラスを置く。

オミクロンはグラスを口に運ぶ。

 

「どうなの?イニシエーターの処分装置、それと新兵器の方は。」

 

「新兵器はもう仕上げた。後で取りに来い。処分装置はもう少しかかるが、明日までには何とかなる、とでも言ったところかな。パイとロー、タウが居ればその半分で済むけどな。」

 

「ま、死んだ奴のためにも頑張れよっ。」

 

クスィーがウインクをする。

 

「……無論だよ。」

 

 

 

 

 

ファイは檻に来ていた。捕らえられたイニシエーターは反抗することなく、大人しくしていた。

ファイは、そこに居たシグマに歩み寄る。

 

「ファイ様。」

 

「問題は?」

 

「特にありません。」

 

ファイはその一言を聞くと……実緒とリコ。二人がいる檻に歩み寄る。

 

「………実緒。」

 

「…………っ。」

 

実緒は鋭い視線を、ファイに向けた。

 

「………すまない。」

 

「え……?」

 

その瞳は丸くなった。

 

「実緒。俺は確かにミュータントだ。けど、イニシエーターを殺すことには、俺は賛同出来ない。俺は……身体はミュータントだが、心は民警として、ガストレアと戦いたい。」

 

「信也さん………。」

 

ファイはシグマを呼ぶ。

 

「シグマ………お前、ここを裏切らないか?」

 

「……裏切り、ですか。」

 

シグマはリコを見た。リコは強い視線でシグマを見ていた。

 

「…………恐らく、今の私にはこれまでにはなかった何かが芽生えようとしています。人間らしさ……もしそれが、その裏切りをすることでわかるのなら……リコ様が笑ってくれるなら、私は裏切りをしましょう。」

 

「あぁ……きっと分かる。」

 

ファイはポケットからケータイを取り出し、檻の中の実緒に渡した。

 

「いいか実緒。恐らく、イニシエーターの処刑は明日にでも始まる。その前に、何としてでも阻止する。まず、紅音にメールを送ってくれ。あいつらが来たところで、ここのイニシエーターを解放し、ここのミュータントを叩く。」

 

「信也さん……‼︎」

 

「頼む………シグマ、このことは……」

 

「わかっております。極秘ですね。オメガ様にも。」

 

「あぁ……頼む。」

 

ファイはその場を後にした。

 

「信也さん……事が済んだら、色々としてもらいますからね。」

 

実緒はメールを送った。

 

 

 

 

 

「場所が分かった⁉︎」

 

徳崎重工の地下の隠し部屋。そこで、俺たちは食事をしていたところだった。

 

「さっき、実緒ちゃんが信くんのケータイからメールして来たの。さっき電波を逆探知して、座標を特定したわ。」

 

モニターに地図が映る。赤い点が、その座標を指し示した。市街地の高層ビルの地下?

 

「信くんの作戦によれば、まず、マコちゃんと心音がアジトに突入。ミュータントが2人に押し寄せて来る。そうすれば、地下にいるイニシエーターの警備はガラ空きに。その間に信くんが檻を開け、イニシエーターを逃がして形勢逆転。一気にミュータント部隊を叩く…といったところね。」

 

「社長………よかった…‼︎」

 

心音が微笑む。

 

「じゃあ、早速…」

 

「罠の可能性は?」

 

俺が口を開く。

 

「あいつらの罠かもしれないぞ?信也が寝返ったふりをして、俺たちを誘導している……その可能性も十分あり得ないか?」

 

心音と紅音は黙り込んだ。

 

「どうなんだよ、紅音。」

 

紅音は……顔を上げて言い放った。

 

「………私は信じるよ、信くんを。」

 

「お姉ちゃん……。」

 

「確かに、信くんはミュータントなのかもしれない。けど、私は信じたいの。もし、信くんが私たちを騙していたら……責任は私が取る。」

 

力強い目つきだった。俺は口元を緩めた。

 

「……了解だ。お前の提案に乗るよ。」

 

「‼︎ 真……‼︎」

 

「それで?いつ突入すんだ?」

 

「どうやら、イニシエーターの処刑は明日にでも始めるみたい…時間があるとすれば……日付が丁度変わる時……。」

 

今から2時間後か……まぁ、不意を付いた突入には妥当な時間だな。

 

「よし、それまでにやることやるぜ……心音。」

 

「う、うん‼︎」

 

「今回のこの作戦は私も参加させてもらうよ。」

 

紅音が微笑みながら言う。

 

「お、お姉ちゃん⁉︎大丈夫なの⁉︎」

 

「一応、一通りの銃器の扱いなら朝飯前よ?それに、信くんの力になれれば…私はそれでいいから、さ。」

 

こういうところは、心音にそっくりだよな…流石は姉妹、か。

 

「おう、分かったよ。よし‼︎ とりあえず、身支度済ませるぞ!」

 

俺たちは突入の準備を始めた。

 

 

 

 

 

ミュータントのアジトの大会議室。全てのミュータントが席に座っていた。

 

「む…?ファイ。シグマはどうした?」

 

ミュータントのボス……オメガが口を開く。

 

「イニシエーターの見張りに回っている。一人、脱走を図ろうとした奴がいたようだ。」

 

ファイは冷静に答えた。

 

「そうか。では、会議を始める。諸君、イニシエーターの捕獲、ご苦労だった。だが、まだまだ東京エリアのイニシエーターはどこかに潜伏しているはずだ。引き続き、捜索を続けよ……。他に何か報告がある者は?」

 

「よろしいかしら?」

 

イプシロンが手を上げた。

 

「どうした、イプシロン。」

 

「……どうやら、私たちのこのアジトの情報が外部に漏れているようよ?」

 

その場がざわめく。ファイは冷静な表情を変えない。

 

「恐らく、この中に内通者がいるんじゃないかしら?私たちの中で、イニシエーターに情報を流しているものが。」

 

「ほう? それが誰か、察しは付いているのか?」

 

「いいえ……今のところは、わかってないけど?」

 

そこで、イプシロンはファイを一目みる。ファイの表情は……変わらない。

 

「ふぅむ……まぁ、よかろう。内通者がわかり次第、迅速に殺せ。」

 

それから少し話があり、会議は終わった。

 

 

 

 

 

ファイは会議の後、イプシロンと屋上に来ていた。

 

「ファイ。あなた……イニシエーターを消し去りたいなんて、考えてないでしょう?」

 

ファイは何も言わない。

 

「身体はミュータントでも、民警として戦いたいなんて、まだ思ってるんでしょ?無駄よ。私たちはこれまで、イニシエーターを…民警を潰すために作戦を起こしてきた。あなたをスパイとして民警に潜入させたのも、その作戦の一貫。今更、イニシエーターのあの娘に情が移ったとでも言うつもりかしら?」

 

「…………俺は、確かに一瞬、お前たちの考えを正しいとは思ったさ。けど、違った。多くの血を流してまで得た平和は……本当の平和じゃないだろう…?」

 

ファイは悲しげな表情で言う。

 

「俺たちは手を取り合うべきだ‼︎ イニシエーターとミュータント……その架け橋に俺はなりたい‼︎ ガストレアの因子を持っていようが、イニシエーターは怪物じゃない、人間だ‼︎ 生きている‼︎ 生きている命を奪うことなんて……間違っている‼︎」

 

「無駄よ……そんなのはねっ‼︎」

 

イプシロンは右手から電磁波を放った。

 

「ぐああああっ‼︎」

 

ファイはその場に倒れた。

 

「全く……本当は殺すところだけど……」

 

イプシロンはファイに歩み寄り、その頭に装置を取り付けた。

 

「少し、おもちゃにしてあげるわ。」

 

 




そろそろミュータント編もクライマックスですね。ちなみに、この後の戦闘には原作キャラはしばらく出てきません。出すなら多分後半かなぁ。

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