ブラック・ブレット 〜Nocturnal Hawk〜 作:神武音ミィタ
アニメにも出ましたしね‼︎
「新人類創造計画からプロジェクトの除外を受けた……?」
徳崎重工の社長室。モニターにパソコンの画面が映し出されている。
俺は心音と実緒、紅音に閲覧したことを話した。
「あぁ。ミュータントもかつて、新人類創造計画の一つのプロジェクトととして採り入れられる予定だった。だが、機械化兵士の方がスペック、汎用性が高かったため、そちらの方が採用され、ミュータントは見捨てられた存在になった………って訳だな。」
本当は菫先生のもとを訪ねるべきなんだろうが、今のこの状況……ミュータントが一般市民を味方につけているこの状況では、難しい。やはり、自分で調べるしか方法が無い……か。
「信也さんも……その計画に…。」
実緒が俯く。
「そもそも、そのミュータントって何なの?」
紅音が問う。俺は画面を切り替える。
「俗に言う、『突然変異体』…だな。ただし、ガストレアウイルスによるものではないらしい。外界から何らかの物質を浴びたり触れたり……とかの接触により、常人を超えた力を得た者達……とのことだ。」
「信也さんが……それに⁉︎」
紅音がそこで声を上げた。
「ちょ、ちょっとタンマだよマコちゃん‼︎ 信くんは確かに身体能力は通常値を超えてるけど、そんな変異したような形跡は無いよ⁉︎」
「………もう、変異してあの能力。もしくは力をセーブして戦っていた………その可能性もあるんじゃないか?」
「そんな…信くん………。」
紅音が落ち込む……無理もない、か。
「………とにかく、奴らの拠点を絞り込まないとな。」
俺はモニターに地図を映し出し、分析を始めた。
「くすん……ひっく………」
狭い檻の中に、リコは閉じ込められていた。
「しんやさん……実緒おねえちゃん……ここねおねえちゃん……真おにいちゃん………ぐすっ……。」
その檻の前に、1人の女が立ち止まった。その銀髪の女は赤い瞳でリコを見つめる。リコはそれに気づき、恐怖故に身震いする。
「………そんなに、怖がらないで下さい。」
無表情に言う女。リコは顔を上げた。
「…あなたは、イニシエーターではありませんね。」
「……わかるの?」
「イニシエーターは普段、赤い瞳を見せていませんが、あなたは常に瞳が赤い。あなたはただの呪われた子供…という、私の分析です。」
機械のような話し方をする。
「……おねえちゃんは、わたしたちをどうするの…?」
その問いに、女は答えた。
「私に与えられた任務は、処刑される予定のあなた方が脱走しないように見張ること。」
「それは…おねえちゃんの考え?」
女は無表情な顔を変えることなく口ごもる。
が、少しして口を開いた。
「………私はアンドロイドに改造されたミュータントです。私に、考えるという行為は必要ないと、インプットされています。与えられた任務をこなす。それが、私の使命です。」
少し悲しげな表情をした。リコは聞いた。
「……悲しそうなのは、何で?」
女は答えた。
「……悲しい…ですか。申し訳ありません。私は感情がよく分かりません。ですが、この話を…私の使命や存在、その事を話すと、どうやらこのような表情になってしまうようなのです。」
悲しげな表情で話す女。リコは見つめる。
「ねぇ、あなたお名前は?」
「……私の名前…私はミュータント『シグマ』。呼び名はシグマです。」
「シグマ……うん。わたしはリコ。」
「リコ様。かしこまりました。インプットしておきます。」
女…シグマは頭を下げた。
「……何故、私の名前など?」
「……シグマは、わるい人じゃないと思ったから…。」
「悪い……人……。」
この時から、このアンドロイドの思考回路は少し混乱していた。この思考回路が安定するのは、先のことである……。
とある研究室。ミュータントの科学班はパソコンと向き合いながら作業を進めていた。
「調子はどうだ?」
「順調です。プラン通りですよ、ファイ様。」
そこへ、一人の男が現れる。
「来ておったのか…ファイ殿。」
「………プサイ…か。」
プサイと呼ばれた忍者風の男は、ファイに歩み寄る。
「そなたが帰ってくるとはな。オメガ殿もさぞかし喜ぶことだろう。」
ファイは表情を変えない。
「俺は……オメガのために動く。オメガのために命を捧げる。それが我々、ミュータントの意志だ。」
「流石だ。よーく分かっておる。」
「……理不尽にガストレアに葬られた我々の同胞や家族のためにも…な。」
「これまでに、8人のミュータントがガストレアの被害に遭い、この世から去っておる。」
「……崩壊の因子は…破壊するのみだ。」
ファイは研究室を出た。その後、プサイも闇に消えていった。
「……………ダメだ。」
奴らの拠点を特定出来ない。まだデータが足りないな…。
時間は……もう5時かよ…。まぁ、寝ないのには慣れているからいいか。
俺は冷蔵庫に向かい、牛乳をコップ一杯飲み干した。そして、寝室に入る。心音が心地よさそうに眠っていた。
「心音…………」
そっか。俺、心音に告白……したんだよ、な?
形はどうあれ、あれは告白だ。じゃあ、今俺と心音は彼氏彼女ってわけで……だから………うん。
「このくらい……気休め程度なら、いいよな?」
俺は心音の寝顔に顔を近づける。寝息が顔にかかる。心地いいな…。
「むにゅ……ぅん。」
……がしっ。
「……え?」
心音は寝たまま、俺の肩を掴んだ。そして……
…がばっ‼︎
「うおっ⁉︎」
そのまま抱き寄せられる。
「ちょ、心音…」
「んー………真…………大好き…愛してりゅ……すかー……」
ね、寝言かよ………。
俺を抱きながら寝息を立てる心音。
あ、ヤバイ……これ気持ちいいかも。
心音………あったかい………。
俺はいつの間にか寝ていた。
「ふあああ………」
私、川野 実緒は目が覚めた。ベッドから出て、窓を覗く。特に異常はなしか。
「リコちゃん……信也さん……。」
その2人のことで、頭が一杯な私だった。昨日の話が私を混乱させていたのだ。信也さんがミュータントだったこと。
「ずっと、隠してたんだ……。」
信也さん……。
私は……あなたとは戦いたくない。
この時、私はまだ分かっていなかった。
それが、叶わない願いだったことを。
ようやく安定してきたかな。
とりあえず日曜は英検ですので、しばらく勉強しまーす(笑)