ブラック・ブレット 〜Nocturnal Hawk〜 作:神武音ミィタ
新たな敵が動き出しますよ‼︎
「はぁ………」
夕方のスーパーへ、私は買い物に行っていた。カゴを持ち、食材などを放り込んでいく。
「なんで、あんなことになったんだろう……?」
昨晩。私は真にハグをし、それにより真は、私と彼の関係が『恋人同士』だと思っている。
まぁ、嬉しく無いわけじゃないけどさ……。
「やっぱり、ちゃんとした真に戻ってから……はぅう〜。」
ダメだダメだ………ダメだぞ私。完璧に妄想の方に走ってしまっている。
「………心音?」
後ろから声。その主は……
「お、お姉ちゃん?」
私の姉、徳崎 紅音だった。
「にーはお〜。買い物?」
「う、うん。お姉ちゃんも?」
「今日アサリが安いってさー。ほら、今旬じゃん?だから今日の夕飯はボンゴレスパゲッティかなーってさ。」
「あ、奇遇。私もそのつもりだった。」
「おお〜、そうかそうか〜。」
私とお姉ちゃんは一緒に買い物をすることにした。
レジを済ませ、袋に詰めている時…
「心音……その、マコちゃん、大丈夫?」
心配そうな声で聞いてきた。お姉ちゃんには、私が真の事情を話したのだ。
「う、うん。身体には問題ないから。あとはいつ記憶が戻るか、かな。」
「そっか………ホント、ごめんね。」
「え?」
「私……職人として失格だよ。自分から、使用者の事を第一にとか言ってたくせに…私の武器のせいで、マコちゃんが………。」
かなり責任を感じているみたいね。無理もないかな。
「大丈夫だよ。お姉ちゃんは悪くないよ。」
「………ありがと、心音。」
少し表情が明るくなった。良かった。
それから私たちはスーパーの前で別れた。
「ただいま〜。」
「あ、おかえりなさい。」
真が出迎えた。よし、平常心平常心……
「あ、荷物運びますよ。」
キューン……じゃなくって………
「あ、ありがと。台所に運んどいてくれる?」
「はい。」
真に荷物を渡し,私は洗面台で手を洗ってからキッチンへ。
あくまでも、ノーマルに……ノーマルに、よ。
リビングでは真と実緒、リコちゃんがトランプをしていた。ババ抜きのようだ。
「よっし。」
キッチンの買い物袋の中身を冷蔵庫に入れ、アサリ、パスタ麺、ニンニクと、コンソメでいいかな。あとは、ほうれん草……うん、オッケー。
私は早速、ボンゴレスパゲッティの調理に取り掛かった。
「おいひー‼︎」
実緒が絶賛する。ボンゴレスパゲッティの出来は、我ながら見事な物に仕上がった。
「やっぱり、心音さんの料理は旨いですね。ホントに。」
キュン……っじゃあ、ないっ‼︎てやっ‼︎
「あっ、ありがとうね〜。」
よし、抑えたぞ。偉いぞ私。
「……そう言えば、心音さん。ここの社長さん、ここ最近見ませんよね?」
「あー……確かに。」
こんなに長い期間…一週間近くいないとは……今までなかったよね、こんなこと……。
「実緒、何か聞いてない?」
「それが……全く、何も。ちょくちょく連絡しているんですけど、返事がなくて。」
「どうしたのかな……」
少し、心配だった。
街外れの小さなバー。
信也はそこで、一人の女性と話をしていた。
「………まさか、あなたが戻ってくれるとは思ってなかったわ。」
「……烏丸 凌馬の件から、色々考えた結果…お前たちの考えを正しいと思ったよ。」
「嬉しいわ……大歓迎よ。」
「………感謝する。」
グラスのテキーラを口に含み、信也は怪しげに笑う。
「あなたの素性は?バレてないの?」
「当たり前だろ。俺の口の硬さ…知ってんだろ?」
「ふふ……まぁ、ね。」
女はUSBを信也に差し出す。
「これか。作戦のプロジェクトは。」
「えぇ、作戦開始よ。私たちは耐えてきた…その殻を破る時が来たのよ……‼︎」
「俺たちの逆襲ってかい。」
「全ては『オメガ』の為に。それじゃあ、よろしくね………『ファイ』。」
女はカウンターに万札を置いて去った。
「心音……実緒……お前たちには悪いが………。」
信也は冷たい表情のまま、バーを出た。
次の日の朝。
私、川野 実緒は明朝から出かけていた。
信也さんの自宅を訪ねるためにだ。
「信也さん……」
前から連絡してみたが、応答もない。
私は違和感を感じ、行動に移す。
信也さんは会社にいない時は、マンションの一室で生活している。
私はそのマンションのロビーのインターホンを鳴らす。
「………………」
いないのかな。もしくはまだ起きていないのか……。
「実緒…?」
背後から声。振り返る。信也さんが、黒いスーツ姿で立っていた。
「し、信也さん‼︎ 今までどこに⁉︎」
私は信也さんに駆け寄る。
「あぁ、少しな……古い知り合いがこちらに来ていてな。」
頭を掻きながら、信也さんは言った。
………嘘の仕草。私は一瞬で分かった。
こんな話し方……信也さんはしない。
「……何か隠してませんか?」
「……何?」
「いくら信也さんが会社に来る日は少ないとはいえ、一週間もいないのは不自然です。何か……何か隠していることがあるんじゃないんですか?」
信也さんは黙り込む。そして、顔を上げた。
「……やはり、お前に隠し事は無理だった…か‼︎」
信也さんはいきなり、私にスプレーを吹きかけた。
「っ⁉︎」
目が……っ‼︎催涙ガス⁉︎
私はその場に膝まづいた。そして、目が開くようになった時には……信也さんはいなくなっていた。
過去に貰った合鍵で部屋に入ったものの、武器やパソコンなどが全て持って行かれており、もぬけの殻だった。
「心音さんに伝えなきゃ…‼︎」
私は駆け出し、会社に戻った。
「社長が⁉︎」
実緒から話を聞いた私は驚愕した。
「はい。いきなり、人が変わったように……。」
「何があったのかしら……」
「分かりません。ただ、何かに関わってることは、間違いないみたいです。」
実緒は俯きながら話す。
「社長………。」
一体、どうしたんですか……?
薄暗い空間。そこに集まったのは……黒服を纏った、男5人と、女4人。
「これで、今の所の全員かしら?」
「あぁ、問題ない。」
セミロングの女の問いに、パソコンを片手に立っている男……信也が答えた。
「遂に我々の時代が来た。ガストレアの力を根絶やしにすべく、我々が動き出す時が……‼︎」
奥にいた強面の男が、両手を広げて大らかに言い放つ。
「民警の時代は終わり……ってとこかしら?」
ロングヘアの女が、爪にマニキュアを塗りながら言う。
「ようやく俺たちの自由が手に入るんすよね‼︎ ゾクゾクするっす‼︎」
見た目の幼い青年がはしゃぐ。
「俺たち……『ミュータント』が世界の救世主になる時が来た。全てのガストレア……そして、その因子を持つイニシエーター…呪われた子供を根絶やしにする…。」
信也は拳を突き上げ、言い放つ。
「全ては……『オメガ』のために。」
企画の当初から予定していました、信也の裏切り‼︎
明崎民間警備会社はどうなってしまうのか⁉︎
次回から新展開、本格スタートです‼︎