ブラック・ブレット 〜Nocturnal Hawk〜 作:神武音ミィタ
5話くらいほのぼので行く予定です。早まる可能性も(笑)
烏丸 凌馬の事件から、早一週間が経とうとしていた。
あれから真は、病院で精神面の治療を受けたが、あまり効果は無く、記憶を失った状態で退院……という形になった。
今日がその退院日である。私は真を迎えに行った。
室戸先生の部屋に、真はいた。もう既に身支度は済んでいるようだ。
「すまない。記憶が戻るのは時間の問題だ……。君が側にいてあげてくれ。そうすれば、何か思い出すだろう。」
室戸先生はコーヒーを啜りながら言う。
「わかりました。ありがとうございます。」
私は真に歩み寄った。
「真……?」
「こ、心音、さん……。」
オドオドしたような口調で話す。本当に人が変わったみたいだ。
「もう……心音、でいいよ。」
「そんな、ダメですよ。明らかに心音さんの方が年上なんですから。」
なんか、大人しくなっちゃったわね……。
「じゃ、行こ?私達の家に。」
「は、はい。」
私と真は病院を出た。
会社に戻ってきた。
「ここだよ。私達の家で……仕事場。」
「ここ……か。」
真は会社の看板を見つめる。
「どう、かな?」
「なんか………懐かしい感じがします。」
「そっか。」
よし。少し前進かな。
「じゃ、入ろっか。」
私はドアを開けて、真と一緒に足を踏み入れた。
そして、中のオフィスへ。
「心音さん‼︎真さん‼︎」
実緒が駆け寄る。
「ただいま。」
「真さん、大丈夫ですか……?」
「身体は大丈夫。記憶が戻るのは時間の問題だって。」
私の説明に、実緒は少し落ち込む。
「そうですか………。」
「まことお兄ちゃん……きおくそうしつ?」
実緒の後ろで、リコちゃんが言う。
「うん………そうね。」
「あの………この娘たちは?」
真が問う。
「あぁ、この黒髪のツインテールの娘はうちの会社のイニシエーターの川野 実緒ちゃん。もう1人の娘はリコちゃん。うちで保護してる娘よ。あなたが彼女を、暴行を受けていたところを助けたの。」
「俺が………そう、なんですか?」
「うん、そうだよ。」
「そうなのか……ごめん、思い出せない……。」
落ち込む真。実緒は真の手を握った。
「大丈夫ですよ‼︎焦らず行きましょうよ、ね?」
そして、笑顔を見せる。
「あ、あぁ……。」
やはり一度には戻らない、か。
私は昼食の支度に取り掛かった。
何にしようかな……やっぱこういう時って、真の大好物だった物を作ってあげれば…記憶が戻ったりとかって、するのかなぁ?
真の大好物……オムライス、か。
「よしっ。」
私は冷蔵庫から卵、ケチャップ、鳥肉、その他の野菜とバターを取り出し、フライパンに火をかけバターを投入し、それを溶かす。確か、炊飯器に余っていたご飯が…四人分はあったよね。
私は炊飯器を開ける。うん、あった。
私はバターで鳥肉を炒める。
「……………」
真が興味深そうにキッチンを覗き込む。
「? どうかした?」
「あの、なんか、手伝いましょうか?」
あ、真だ。やっぱり真だ。
真はいつも、聞いてきていた。「手伝おうか?」と。
私は少しホッとした。記憶が無くなっても、真は真なんだ。
「じゃあ、このボウルに卵溶いて、牛乳をこのカップにいれて、軽くでいいから混ぜてくれないかな?」
私は、ボウルに卵を8個、計量カップを入れ、冷蔵庫から牛乳を取り出した。
「あ、はい。」
真は卵を割り混ぜはじめ、私が指示した通りにした。
あ、手際もいい。やっぱ真だ。
私はそれをみて微笑む。
「? なんか、僕の顔付いてますか?」
「ううん、大丈夫だよ。」
そうこうしているうちに、チキンライスが出来上がった。
私はそれを器に移して、フライパンに卵を流し、薄焼き卵を作った。そして、それでチキンライスを包む。これを四人分………っと。
「出来たっ。」
「あ、旨そう……」
仕上げにケチャップをかければ…完成。私はテーブルに四人分のオムライスを持って行く。
「わぁ‼︎オムライス‼︎」
実緒とリコちゃんの目が輝く。
「久々に作ったわ〜。じゃ、どうぞ‼︎」
「いただきまーす‼︎」
「ほら、真も‼︎」
「は、はい……いただきます。」
私たちは椅子に座り、オムライスを食べ始めた。
真が一口、口に運んだ。
「どうかな?」
「……とても、旨いです。」
真が微笑んだ。
「っ⁉︎」
キューン……‼︎可愛い……っ⁉︎
「? 心音さん?食べないんですか?」
「………あ、うん⁉︎た、食べるよー?食べる食べる‼︎」
あれ?なんで赤くなってるの私?
もしかして……いやいや、ないない。
私はその感情を抑え込むかのように、オムライスを頬張った。
「心音………」
「ま、真………きゃっ⁉︎」
薄暗い密室。真は私をベッドに押し倒し、上に覆い被さる。
「ちょ、真………っ。」
「何だよ?」
「は、恥ずかしいよ……あんま見ないで?」
「何でだよ…?」
真は私の耳元に、優しく囁く。
「ホントは、見られたいくせによ……?」
そのまま、抱きつかれる。
「きゅ………っ‼︎キューン……っ‼︎」
「はっ⁉︎」
私は飛び起きた。
深夜の3時だった。
「ゆ、夢か………」
隣のベッドに、真は寝ている。寝顔を覗く。
可愛い……可愛い……っ‼︎
「………ちょ、ちょっとだけならいいよね……?」
私は真の顔に、自分の顔を近づけてみる。その距離、僅か数センチ。
「…………って。」
落ち着け、自重しろよ私っ‼︎
すぐ様顔を離した。
真はあくまでも相棒だ。そんな、感情……持っちゃダメっ‼︎
「………そんな、感情?」
あれ?もしかして、私。
真のことが……好き、なの、かな……?
「………ふにゃああああ〜……っ。」
私は枕に顔を埋めた。
これが……恋なのかな?
次の日。真は病院と言うことで昼間は先生の所へ。
私はある人物の元を訪ねていた。
「何だよ、聞きたいことって。」
里見 蓮太郎くんと藍原 延珠ちゃんだった。
「うん、あのさ……」
喫茶店で、二人に向かい合った状態で私は話した。
「……イニシエーターに恋愛感情を持つのって、ありかな?」
「…………は?」
「アリに決まっておる‼︎妾は蓮太郎のふぃあんせなのだからな‼︎」
「これは、こいつが勝手に言ってるだけだからな。勘違いするなよ。」
里見くんのその発言に、延珠ちゃんは頬を膨らませた。
「はぁ……イニシエーターに恋って………あんたも相当だよな。」
「うぅ………今年で24のこんな女が、10代の少年に恋するなんて……」
里見くんは頭を掻き、言った。
「………あんたがいいなら、いいんじゃないのか?」
「うん……そうだよね。結局は、そうなる、よね……」
私は肩を落とし、コーヒーを啜った。
そして、私は悟った。
私は……ショタコンであると。
そうだよ、心音はショタコンさ!(笑)
やっぱね、恋愛要素も重要だよ‼︎
延珠だって蓮太郎が大好きなんだから‼︎(笑)