ブラック・ブレット 〜Nocturnal Hawk〜   作:神武音ミィタ

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1話です。記念すべき(?)1話です。


〜孤高 死を運ぶ鷹〜
第1話〜夜の鷹〜


ガストレア。

ウイルスに感染し、遺伝子を書き換えられた生物。

人類はこれに敗北。「モノリス」と呼ばれる壁の中へと追いやられた。

そして今でもガストレアは、モノリスを越えて人を襲う。ガストレアから襲われ、体液を注入された生物はガストレアとなる。それが、奴らの繁殖能力。更に高い再生力を持ち、通常の弾丸による攻撃は通用しない。ガストレアに対抗出来るのは「バラニウム」と呼ばれる、ガストレアの再生能力を阻害する効力を備えた鉱物のみ。

そして、ガストレアに対抗すべく創設された「民間警備会社」、通称「民警」。そこに所属する、ガストレア抑制因子を持った「呪われた子供」…「イニシエーター」。それをサポート、共に戦う「プロモーター」。彼らこそ、「人類最後の希望」なのかもしれない……。

 

 

 

「…………」

 

静まり返った森の中。そこで蠢く黒い影と、赤い三つ目。

木の陰で気配を殺し、ライフルに弾を込める。そして、足音を立てず黒い影…ガストレアの後部に回る。大きさから推測すれば、ステージ2程度か。タイプは…8本脚。モデル・スパイダーか。関節部に8発撃ち込み、脚を封じる。とどめに0距離で散弾で木っ端微塵に。よし。

 

俺はライフルを構える。

ガストレアの右脚の付け根に狙いを定める。

こちらには気づいていない。

 

………今だ。

俺は引き金を引いた。

モデル・スパイダーの右脚が千切れる。そいつは悲鳴を上げた。

 

俺は走り出す。別の木の陰へ。狙いを定める。引き金を引く。

こいつを繰り返す。奴の脚が全て動かなくなるまで。

 

「………よし。」

 

動きが止まる。自力で移動も出来ないだろう。

俺はそのモデル・スパイダーに歩み寄り、ショットガンを構えた。

 

「ジ・エンド……だ。」

 

俺は引き金を引く。0距離で放たれた散弾は、そのモデル・スパイダーの体を、たちまちのうちに木っ端微塵にした。

俺は銃をバッグに収め、背中に背負う。今夜の仕事はこんなものかな。

時間は……3時54分。丁度いい。

俺……小鳥遊 真はその場を去った。

 

 

その日は眠れなかった。いや、眠たくなかったというべきか。俺は一人、朝の路地を歩いていた。今日は日差しが心地いい。眠気なんて吹っ飛んでしまう程に。

俺が民警を去ってから3年が経つ。このモノリスの内側は相変わらずだった。ガストレアに脅えつつも、希望を信じて生きていた。

 

「心音……。」

 

俺は罪を償う気持ちで、孤独にガストレアと戦っていた。

 

「オラッ……オラァッ!!」

 

ビルの裏路地に人影が見えた。それは……集団でリンチを受けていたショートカットの赤い瞳の少女……「呪われた子供」だった。

 

「きったねーんだよ化物!俺たちが殺してやるぜ!」

 

なす術も無く蹂躙されている少女の姿を見て、俺は男たちに近づいた。

 

「あぁん?」

 

こちらに気づいたようだ。

 

「………止めろ。」

 

「何だと………っらぁっ!!」

 

こちらに拳を振るってきた男。遅いな。俺はしゃがんでそれを躱し、男の腹部に拳

を叩き込んだ。

 

「っ!?ごほっ……」

 

その場に踞る男。

 

「止めろ、と言ったんだ。聞こえなかったのか?」

 

「てめぇ!!」

 

次々と男どもが襲いかかるが、俺は軽々となぎ倒していった。

 

「ぐぅっ……!」

 

男たちは一目散に逃げていった。

俺は少女に歩み寄って、抱きかかえた。

 

「大丈夫かい?」

 

「うん………お兄ちゃんもしかして、『みんけい』の人?」

 

その質問に、俺は少し胸が痛くなった。

 

「……うぅん、違うよ。でも、君の味方だよ。」

 

俺はその少女の顔を隠すように上着を被せ、負ぶっていった。

 

 

 

「はっ!てやっ!」

 

仮想戦闘プログラム。そこに映し出される、データ上のガストレア達。

撃つ。切り裂く、そしてまた、撃つ。

それの繰り返しだ。

 

「でやぁああっ!!」

 

全てのターゲットを片付ける。

 

「……シミュレーション終了。」

 

会社のシミュレーションルームで私、徳崎 心音はトレーニングをしていた。

 

「お疲れさまです、心音さん!」

 

一人のツインテールの少女が水を持ってきた。私はそれを受け取る。

 

「ありがと。」

 

「それにしてもすごいですよね心音さん!あそこまで体が動くなんて!あたしには無理かも〜。」

 

彼女の名前は川野 実緒(かわの みお)。うちの会社の新米イニシエーターだ。私たちが所属しているのは「明島民間警備会社」。社長は明島 信也(みょうじま しんや)。小規模な民警で私たちが職場として使っているここは、オフィスビルの10階の広い部屋だった。4割程をシミュレーターが占領しているが。また、ここで私たちは生活もしており、時折迷子の「呪われた子供」達の保護も行っている。ある程度保護した子供達は他の団体の運営する施設へと送られるとのこと。

この会社は私が昔から所属しており、かつては……私の元イニシエーター、小鳥遊 真もいた。

ピーンポーン……

 

「ベル?こんな時に……」

 

「あ、私出ますね!」

 

実緒が玄関へと向かう。私は椅子に腰掛け、水を飲んだ。

 

 

「はーい!」

 

ドアを開け出てきたのは、黒髪のツインテールの少女だった。

 

「あぁ、すまない。少し頼みがあるんだが……」

 

俺は負ぶっていた少女を降ろした。

 

「! あの、この子……」

 

「あぁ……暴行を受けている所を助けたんだが……」

 

「酷い………大丈夫?」

 

ツインテールの民警少女が彼女を心配する。

 

「お姉ちゃん……ここ、みんけい?」

 

「うん、そうだよ!もう大丈夫だよ!!」

 

微笑むツインテール。そして、俺の方を見上げた。

 

「では、この子はこちらで保護しておきますね!」

 

「あぁ、頼むよ。」

 

俺は、明島民間警備会社を後にした。

 

 

「心音じゃなくて良かった……」

 

一言呟いた。事実だった。

 

 

 

「心音さん!保護の件でした!この子です!」

 

実緒は、ショートヘアの娘とともに戻ってきた。

 

「酷い傷……」

暴行の跡が生々しく残っていた。

 

「実緒、救急箱持ってきて!」

 

「はーい!」

 

実緒はすかさず救急箱を持ってきた。私は少女の傷の手当を始めた。

 

「大丈夫?」

 

「うん……黒い髪の優しいお兄ちゃんが助けてくれたの。」

 

「………そっか。」

 

私は少女の言葉だけで分かった。彼女を助けた張本人が。

 

「………真…ね。」

 

「? 誰ですか、その人。」

 

実緒が聞いてきた。

 

「そっか、実緒は知らないのよね。」

 

「知り合いですか?」

 

少女の手当が終わった。私は彼女をソファに横たわらせた。少女は疲労していたのか、直ぐ様寝息をたてた。

 

「……私の…相棒よ。」

 

今でも、そう思ってる。

真のプロモーターは、私だって。

 

 

 

結局、俺は夕方の6時に帰ってきた。マンションの郵便受けを開ける。そこには1枚の紙が。

 

「不在連絡票……」

 

送り主は……「明島民間警備会社」。

「いつもの」か。

俺は宅配ボックスに番号を入力し、ボックスから荷物を出した。部屋に着く。箱を開けると……そこにあったのはバラニウム製の弾丸のストック。軽く1ヶ月半は持つかな。それと、1ヶ月分のウイルス抑制剤。イニシエーターは体にウイルスを飼っているような者だ。浸食は少しではあるが進んでいる。それを抑える為の注射を定期的に射たねばならないのだ。俺は注射器に抑制剤のカートリッジをセット。それの先端部を自分の二の腕に刺し、抑制剤を射ち込んだ。

 

「心音……」

 

この荷物は、あいつからのほんの少しの気遣いだった。正直、とても助かっている。だが、俺は民警に戻る気は無かった。

また、心音を傷つけるのが怖かった。

逃げだということくらい分かっている。けど、これが正しいんだ。俺は決めたのだから。

 

「一人で……戦う。」

 




てなわけで、書きました。
うーん……感想が欲しい!!www
感想をいただければ、アイデアのひらめきが加速します。
読んでくださった方々、ありがとうございます。
次回も頑張ります。

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