ブラック・ブレット 〜Nocturnal Hawk〜   作:神武音ミィタ

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聖天使様と真君の対談です。少し謎を投げかけておきます!(笑)


第14話〜矛盾と希望〜

私は、震えていた。

高価そうなリムジンの中で、縮こまっていた。

 

「………心音。」

 

いつも着ているスーツがキツく感じる……あれ?おかしいな……あ、脚も震えてきた。

 

「おーい、心音。」

 

手に汗が落ちてきた。あぁ、どうしよう……あぁ……。

 

「おい、心音っ。」

 

真が私の肩を叩いた。

 

「はっ⁉︎なっ、何っ‼︎」

 

何かあったのか焦り、周囲を見渡す。

真が溜息を着く。

 

「着いたぞ。」

 

真が指差した先に……聖天使様の邸宅がそびえ立っていた。

 

 

 

「聖天使様。たった今、徳崎 心音とそのイニシエーター、小鳥遊 真が到着したもようです。」

 

「分かりました。こちらへ案内をお願いいたします。」

 

やってきた警備隊の男が一礼し、部屋を出る。

 

「……小鳥遊 真さん…。」

 

椅子に腰掛けているのは人離れした美貌を持つ、東京エリア統治者……聖天使。

その隣には他の警備隊の面々が。

 

「聖天使様、一つよろしいですか?」

 

「何でしょう?」

 

「わざわざ、プロモーターとイニシエーターを呼ぶなど……直接報告せずとも、我々を介して頂ければ…」

 

「真実は、本人の口から伺うことに意味があると思います。それに……気になるのです。」

 

「気になる……?」

 

聖天使は、手元のデータに目を落とした。

 

「……あの、唯一の少年のイニシエーターが。」

 

 

 

「広いな……」

 

リムジンを降り、聖天使の邸宅に入った俺と心音。聖天使に、烏丸 凌馬の計画を報告するためだ。心音は俺の隣でビクビクしながら歩いている。

俺たちは警備の男に案内をしてもらっている。

 

「………なぁ、心音。」

 

「な、何っ……?」

 

声が引きつってやがる。やれやれ。

 

「はぁ……ちょっとは落ち着け。何そんなに緊張してんだ。」

 

「き、緊張するわよっ……だって、あの聖天使様よ⁉︎あの、ど偉い政治家よ⁉︎ なんかヘマすれば、何されるかわかんないのに……」

 

やれやれ………何故にそこまで。

 

「着いたぞ。失礼の無いようにな。」

 

「あっ、ありがとうございましちゃっ‼︎あぅ……噛んじゃった……」

 

俺は溜息を着いた。恐らく、今日だけで6回目だ。

警備の男は扉を開けた。

 

「…………」

 

「お待ちしておりました。徳崎 心音様、小鳥遊 真様。」

 

部屋の椅子から立ち上がり、頭を下げたのは言うまでもない……聖天使だった。

 

「しっ、失礼します‼︎」

 

心音が部屋に入る。俺はそれに続く。

 

「どうぞ、お座り下さい。」

 

「はっ、はいっ‼︎」

 

俺たちは椅子に腰掛ける。心音は異常に姿勢が良かった。……テンパりすぎだろ。

テーブルには紅茶が置かれていた。

 

「お忙しい中、お呼びして申し訳ありません。明崎様よりお話は聞いております。元凶は分かっていると。」

 

「あぁ、その通りだ。」

 

俺は紅茶を啜り、言った。……良い香りだな、これ。

 

「ちょっ、真っ!」

 

「では、お話頂けますか?」

 

聖天使は表情を変えずに俺の方を見つめる。

 

「あぁ………」

 

 

 

それから20分程。俺は聖天使に報告した。烏丸 凌馬と、彼の計画『ガストレア・ヒューマン計画』。それの実験台として作られている、実験動物について。

 

「烏丸 凌馬……。」

 

表情を変えず、聖天使は俺の話を聞いていた。

 

「彼の居場所を突き止める必要がありますね。わかりました。あなた方の他にも、彼の居場所を捜索させることにしましょう。」

 

「助かる。」

 

隣で心音は、ポカンとしていた……って、イニシエーターの俺の方が喋ってどうすんだ。

 

「では、二人ともご苦労様でした。引き続き、ガストレア討伐、並びに烏丸 凌馬の捜索をよろしくお願いいたします。」

 

「はっ、はいっ‼︎しっ、失礼しますっ‼︎」

 

心音が立ち上がり、一礼する……だから、落ち着けっての。

 

「じゃあ、失礼する。」

 

立ち去ろうとしたその時だった。

 

「小鳥遊様は残っていただけますか?少し聞きたいことが……。」

 

「? 俺だけに、か?」

 

「はい。」

 

何だろうか……まぁいい。

 

「わかった……心音。入口のとこで待っててくれ。」

 

「う、うん………」

 

心音は先に部屋を出た。

 

 

「もう、真ってば。聖天使様にタメ口って……」

 

確かに、私は聖天使様よりは年上だ。けど、相手は政治家だ。そんなお方に………

 

「……………あれれ…?」

 

辺りを見渡す。ここ、どこ?

 

「………迷った…っ。」

 

私は愕然とした。

とりあえず、近くにいた警備員に案内してもらい、外へ出た……。

 

 

 

 

「俺の……両親?」

 

「はい、ご存じないのですか?」

 

聖天使の質問は、「俺の両親の行方」だった。

 

「あぁ……というより俺、親とかいないんだわ。気がついたら孤児院に拾われていて、そこにいたっていうか……。」

 

「そう…なのですか。…申し訳ありません。」

 

「謝る必要はねぇよ。知る由もないんだし。」

 

聖天使は顔を上げる。

 

「ただ、なんでそんなことを?」

 

「………小鳥遊様は、自分の存在が少し矛盾していると感じませんか?」

 

矛盾……?

 

「どういうことだよ?」

 

「……あなたは、周りからどんなイメージを持たれていると思っていますか?」

 

イメージ………か。

 

「……唯一の男イニシエーター……ってところかな?」

 

「それなんです。」

 

「…………え?」

 

「男のイニシエーター………普通、イニシエーターは女子がその力を得るのです。ですが、小鳥遊様は男子。男子がイニシエーターの能力を得たというケースは、これまでにありません。というより、『あり得ない』のです。」

 

「何………⁉︎」

 

俺の存在が………あり得ない?

 

「ガストレアは、生物の遺伝子を変える能力があります。ですから、呪われた子供達は全て女子のはずなのです。それが、何故かあなたは男子でありながら、ガストレアウイルスを身体に宿している……。女もあれば男もある。そう考えるのが自然になっていますが、本当はそれはあり得ないのです。」

 

「………なるほどな。だから、俺の親を探すことで、事実上あり得ない存在である、男イニシエーターの詳細を知りたかったと………。」

 

「………そう言うことです。」

 

やれやれ…そういうことか。

俺は脚を進めた。

ドアノブを握り、聖天使に振り返る。

 

「………俺は、過去をグジグジ見つめないことにしてるんだ。あんたは気になるかもしれない。けどな、俺は生きる。生きるために、俺は未来を見つめることにした。俺の存在が矛盾しようが、そんなことは関係ない。俺は俺だ。俺は、護りたいモノがある。そのためにガストレアを倒す。それだけだ。」

 

俺の言葉に聖天使は……微笑んだ。

 

「……とても、前向きな考えですね。」

 

「褒め言葉、感謝するぜ。じゃあ、烏丸の捜索、よろしく頼むな………『聖天使様』。」

 

俺はそう言い残し、部屋を出た。

 

「………笑うんだな、聖天使も。」

 

 

 

そして、俺は入口に戻ってきた。心音が待っていた。

 

「真!」

 

駆け寄る心音。

 

「何の話してたの?」

 

「まぁ、色々な………心音。」

 

「ん?」

 

俺は……心音に拳を突き出す。

 

「これからも……頼むぜ?」

 

俺の存在の矛盾? そんなの知らないな。

俺はこうして生きている。それだけで十分だろうが。

 

「………うんっ。」

 

心音は、俺の拳に自身の拳をぶつけた。

 

「じゃ、帰ろっか!」

 

「おう。今日晩飯は?」

 

「ふっふーん……真の復帰祝いで、すき焼きだよ!」

 

「おっ……やった。」

 

そうさ。

俺は生きる。

ガストレアを倒し、滅ぼした後に見えるはずの。

『希望』を信じて。




真、変わったよなぁ……(笑)
すごい前向きになりましたよね……って、俺の作ったキャラだっての(笑)

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