どうやら俺はたくさんの世界に転生するらしい【完結】   作:夜紫希

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逃亡者は語る

これは楢原大樹が犯罪に手を染める二時間前のことである。

 

 

「おいコラちょっと待て。今すぐ訂正しろ」

 

 

えー。

 

 

「まさか……地の文に舐められるとは……」

 

 

ざまぁ(笑)

 

 

「あぁ?」鬼の形相

 

 

こ、これは事件が発生する二時間前のことである。

 

 

 

 

 

 

 

俺と黒ウサギは最近買ったバイクに乗ろうとしていた。バイクの横にはサイドカーがついている。もちろん、黒ウサギが乗る場所だ。

 

免許?もちろん、無いよ!

 

というのは嘘だ。実は武偵高校で一応免許はある。だが、この世界で通じるかどうか分からん。あと、免許は教室にある机の引き出しに重宝してる。……ダメじゃん。

 

いざ出発しようとエンジンをかけたとき、

 

 

「私も連れて行ってください」

 

 

「え、エレシス!?」

 

 

「陽です」

 

 

「な、何で来た、陽!?」

 

 

突如、背後にエレシスが出現した。バカヤロウ!黒ウサギの戦闘力が上がってるじゃないか!?9万……10万……バ、バカな……まさか……ま、まだ上昇している………!?

 

 

「コレハドウイウコトデスカ?」

 

 

「待ってくれ!俺は何も知らない!」

 

 

俺はエレシスに視線を送り、説明させる。

 

 

「私が楢原さんの彼女だからです」

 

 

「そろそろいい加減にしないとマジでぶっ飛ばすぞテメェ!?」

 

 

「本当は言えません。邪魔しないので連れて行ってください」

 

 

「……………ついてくんなって言っても来るんだろ?」

 

 

俺の質問にエレシスはうなずいた。

 

 

「はぁ……分かった。サイドカーに乗れ」

 

 

俺はサイドカーに指を差す。エレシスは乗り込み、サイドカーにあったヘルメットを被る。

 

 

「いいのですか、大樹さん?」

 

 

「今は停戦中だ。もし何かあっても守ってやる」

 

 

「大樹さん……」

 

 

俺はバイクにまたがって乗る。後ろには黒ウサギが乗って、俺の腰に手を回す。

 

 

「ちょッ、黒ウサギ……」

 

 

胸が当たってるっと注意しようとしたら、

 

 

「むー」

 

 

「……………」

 

 

黒ウサギとエレシスが睨み合っていた。何だこの修羅場。俺の偽彼女と同居人のウサギが修羅場過ぎる。第一巻は発売されません。

 

もうなんかどうでもよくなったので、バイクを走らせた。

 

________________________

 

 

俺たちが向かった場所は東京にある府中刑務所だ。別に俺は悪いことはしてないよ。

 

5mぐらいのコンクリート製の壁が施設を囲み、逃げるのは不可能だと錯覚させられる。まぁ俺は殴って脱出☆で終わりそうだな。

 

門の近くにいた警備員と話し、敷地の中に入れてもらう。

 

中に入ると学校のような3階建ての建物がたくさんあった。おそらく、囚人はあの中にいる。

 

施設の真ん中にある建物の中で受付をすませ、ある人物との面接が許された。

 

 

「誰に会うのですか?」

 

 

「黒ウサギも知っている人物だ」

 

 

しばらく待っていたら、警備服を身に纏った男が俺たちを案内してくれた。

 

いくつも並ぶ部屋の廊下を抜けて、一番奥の部屋を目指す。そこの部屋が面会室だ。

 

 

「どうぞ、時間は通常なら30分ですが……」

 

 

「ああ、代理人だから半分で良い」

 

 

「わかりました」

 

 

警備の男は一礼して、ドアを開けた。

 

 

「ッ!?」

 

 

黒ウサギは中にいた人物を見て驚く。

 

 

「な、何故貴様らが!?」

 

 

ブランシュの日本支部リーダー(つかさ)(はじめ)だったからだ。

 

アクリルガラスの奥に座った司は全身青色の囚人服を着ている。

 

 

「よう、腕は大丈夫か?」

 

 

「……馬鹿にしに来たのか?」

 

 

司の右腕。肘から下が無くなり、包帯が巻かれてある。司の腕を斬ったのは桐原だ。

 

 

「いや、用があってきたんだ。手短に話そう。お前、まだ催眠術が使えるか?」

 

 

「何だと?」

 

 

司は眉を額に寄せる。

 

 

「どうなんだ?」

 

 

「……CADがあれば使える。それがどうした?」

 

 

「ある人物に催眠術をかけてほしい」

 

 

俺は内容を告げる。

 

 

「『忘れた記憶を思い出せ』ってな」

 

 

「ッ!」

 

 

黒ウサギは理解したようだ。

 

 

「クックック、そうか……なら条件がある」

 

 

「何だ?」

 

 

「まず質問がある」

 

 

黒ウサギは身構えた。一体どんなことを聞いてくるのか。

 

 

(きのえ)はどうしている?」

 

 

「……意外だな。てっきり『今日のパンツは何色だ?』とか聞いてくるかと」

 

 

「聞くか!」

 

 

「フッ、俺は黒のボクサーだ」

 

 

「だから聞いてないって言っているだろ!?」

 

 

「く、黒ウサギは言えません!」

 

 

「言わなくていいよ!?」

 

 

「私は白」

 

 

「だから言わなくていいって言ってるだろうが!はやく甲のことを教えろ!」

 

 

司は声を荒げながら怒る。甲とは司一の義理の弟。剣道部の主将をしていた人物だ。それにしても白か……いいと思うよ?

 

っと話が脱線しかけた。危ない危ない。

 

 

「結果から言うと、あの人は自主退学した」

 

 

「……………」

 

 

司は自然と頭が下を向いていた。自分のせいでこうなったからな。

 

 

「『勘違いしないでくれ、今はやりたいことがある。だから退学するんだ。はやく帰って来てくれ、兄さん』だってさ」

 

 

「ッ!」

 

 

司は顔を上げて驚いた。

 

俺がこいつと面接できた理由がこれだ。家族からのメッセージを伝えることで面接が許されたのだ。

 

 

「そうか……」

 

 

「それで、催眠術は?」

 

 

「いいだろう。やってあげるよ」

 

 

司は笑み……いや、何かゲスい笑みを浮かべていた。本人には自覚が無いかもしれないが怖いわ、その笑顔。黒ウサギも怯えてるよ。

 

 

「話は終わりかい?」

 

 

「いや、あと一つ聞きたいことがあるんだが……」

 

 

 

 

 

ジリリリリリリリリッ!!!

 

 

 

 

 

その時、部屋に警報が鳴り響いた。

 

 

「お前がブランシュにいた頃、」

 

 

「「質問続行!?」」

 

 

司と黒ウサギが驚いていた。

 

 

「あぁ?面接時間15分しかないんだぞ!?」

 

 

「それどころじゃないだろ!」

 

 

司がツッコみを入れる。ふむ、こいつ中々いいセンスを持っていやがる。

 

 

「さてと、侵入してきた奴は……」

 

 

俺は目を閉じて神経を研ぎ澄ませる。そして、集中して音を聞く。

 

……廊下に誰かが歩いている。

 

 

「こっちに来るぞ」

 

 

「ッ!」

 

 

黒ウサギはギフトカードを取り出す。俺も懐から取り出したコルト・パイソンを右手に持つ。

 

 

ガチャッ

 

 

ドアがゆっくりと開く。

 

 

「………誰もいない?」

 

 

司が呟く。扉の向こうには誰もいなかった。

 

 

「……そこだ!」

 

 

ドゴンッ!!

 

 

俺は壁に向かって左手で勢い良くぶん殴った。

 

壁は崩れ、隣の部屋が見えるようになる。部屋の中には一人の微笑んだ女性がいた。瓦礫は女性に当たっていなかった。いや、魔法によって当たらないようにしていた。

 

手には拳銃型CAD。しかも、特化型CADだ。

 

赤い服を着た女性は銃口を司に向けている。

 

 

「逃げろ司ッ!」

 

 

「え?」

 

 

標的は司だった。司の足元に魔方陣が展開する。

 

俺はコルト・パイソンで女性に向かって一発だけ弾丸を撃つ。と同時に左手でアクリルガラスをぶち壊した。

 

 

バリンッ!!

 

 

ガラスは飛び散り、穴が開く。

 

ドレスのような赤い服を着た女性は黒くて長い髪をなびかせながら、CADを構えたまま横に動いて避ける。慣れた動きだ。まだ余裕の笑みを浮かべてやがる。

 

魔法が発動する前に俺は空けた穴から司の胸ぐらを掴んで後ろに放り投げる。

 

 

「うぐッ!?」

 

 

司は廊下まで転がった。そして、

 

 

ゴオッ!!

 

 

司のいた場所が赤い炎が巻き上がった。俺は腕で顔を隠す。まともに見ていられないほどの熱さだ。目が痛い。

 

 

(この魔法師も相当強いようだな……)

 

 

だが、

 

 

「逃げるぞ!」

 

 

「ッ!?」

 

 

赤い服を着た女性は俺の発言に驚く。逃げるとは思わなかったからだろう。

 

ここで抗戦したところで女性の思うツボ。なら、逃げるが勝ちだ。

 

 

ドゴンッ!!

 

 

俺は飛び蹴りで壁に大穴を開ける。刑務所の従業員さん、看守さん、ごめんなさい。

 

そこから、黒ウサギ、エレシスが逃げて行く。

 

 

「お前も行くぞ」

 

 

「え、いや、僕はこれ以上罪を……」

 

 

「じゃあここであいつに殺される?」

 

 

「……………」

 

 

俺は無抵抗になった司を担いで穴から脱出した。

 

 

「ッ!」

 

 

女性は俺たちにもう一度魔法を発動しようとする。

 

 

「させません!」

 

 

黒ウサギは右手の中指にはめていた指輪を起動させる。その瞬間、女性が発動していた魔法が消える。

 

 

「『アンティナイト』……!?」

 

 

司が驚きながら口にする。そう、これはお前たちから戦利品として貰った品物だ。決してお前らから盗んだわけではない。いいか、盗んでないぞ?

 

門の前まで逃げてきた俺たちは止めてあるバイクに乗る。

 

 

「よし、バイクに早く乗れ!出すぞ!」

 

 

俺は司をサイドカーに乗せ、隣にエレシスを座らせた。というかエレシスがさっきからずっと無表情なんだが?冷静すぎるだろ。

 

バイクには俺が乗り、後ろから黒ウサギが抱き付く。やっふー!

 

 

ギュルルルルッ!!

 

 

アクセル全開で踏み込んだ。タイヤはもの凄い音を出し、バイクとサイドカーは勢いよく刑務所を飛び出した。

 

 

 

________________________

 

 

 

「で、現在にいたる」

 

 

「僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない」

 

 

「……………」

 

 

 

「大樹さん!どうするんですか!?」

 

 

カオスだなオイ。

 

後ろには3台ものパトカーが追いかけて来ている。上空にはヘリコプター。窓からカメラがこちらを向いているのが見えるけど、まさかテレビとかには映ってないよな?

 

ちなみに高速道路なのでずっと走り続けれる。赤信号とかで止まったら逃げれそうにないからな。

 

 

「大丈夫だ。ここは日本だぞ?アメリカみたいに銃をバンバン撃ったり

 

 

ガキュンッ!!

 

 

サイドカーに銃弾が当たった。司の震えていた体が止まった。時が止まったかのように……生きてますかー?

 

 

「……撃ったな」

 

 

「撃ちましたね」

 

 

「「……………」」

 

 

とりあえずアクセル全開にした。

 

 

「『アンティナイト』は発動していろよ!」

 

 

「はい!」

 

 

黒ウサギは俺の言葉に大きな声で返答する。魔法を使われたら厄介だ。まだ銃弾の方がかわせる。

 

 

ガキュンッ!ガキュンッ!

 

 

後ろから何発も銃弾が撃たれるが当たらない。やーい、お前らの射撃ランク武偵高校ならEランクだな!

 

 

「おおおおおおい楢原!どこに逃げるんだ!このままだと撃たれるぞ!?」

 

 

「落ち着け、それは俺じゃない。陽だ」

 

 

司は陽を強く揺さぶりながら半泣きだった。エレシスはそれでも無表情。

 

 

「それと、安心しろよ。大丈夫だから。陽、発信機はどうだ?」

 

 

エレシスは俺が渡した携帯端末を見る。

 

 

「標的は移動中です。場所を予測すると住宅街の中にある廃病院」

 

 

「……予測ってすごいな。まぁいい。そこに行くぞ」

 

 

「発信機だと?まさかあの時につけたのか!?」

 

 

俺はエレシスに素直に感心していた。予測とか普通できないぞ。

 

司はエレシス隣で驚きの声を上げていた。

 

 

「逃げる時に発信機を投げて服に付けたんだ。ほら、ひっつき虫みたいな作りになってんだ」

 

 

ひっつき虫の発信機。名づけて『ひっつき発信機』!ダサいってだから。何でこんなに俺はネーミングセンスが無いの?

 

俺はそれを司の青い囚人服にくっつける。

 

 

「た、確かにひっつk……お、おい!取れないぞ!?」

 

 

司が必死に左手で発信機を取ろうとするが、全く取れる気配が無い。

 

 

「うん、もう取れない。そういう作り」

 

 

「おい!?」

 

 

「これでもう俺から逃げられないな」

 

 

「た、助けてくれえええええェェェ!!」

 

 

司は後ろのパトカーに向かって手を伸ばす。はいはい、危ないから大人しくしておいてくれよ。

 

 

「ひいッ!?」

 

 

「ん?どうした?漏らした?」

 

 

「違う!後ろだ!」

 

 

司が後ろに向かって指を差す。

 

振り向くとパトカーの後ろから巨大な何かがもの凄いスピードで追いかけてきた。

 

 

ギュルルルルルッ!!!

 

 

大きな音を響き渡らせながら近づいてくる。それは、

 

 

 

 

 

ガ〇ダムだった。

 

 

 

 

 

いや、ふざけてない。マジだ。ガン〇ムがこっちに向かって来てる。

 

では、詳しく説明しよう。

 

大きさは縦に約3~4m。横は2~3mだ。人型のロボットに近い。黒い装甲に身を包んでいる。

 

右手には……チェーンソーだな。何かギュルギュル回ってる。左手は多分パイルハンマーっていう武器だ。

 

肩には物騒な機関銃がついてる。

 

うん、マジで〇ンダムじゃん。

 

 

「ちょ、直立戦車……!?」

 

 

「知ってるのか、司?」

 

 

以外にも司はそのガンダ〇……直立戦車を知っていた。

 

 

「逃げろ!アレには普通の銃弾は効かん!絶対に勝てない!」

 

 

「いや、俺なら余裕だと思うが?」

 

 

「やめろ、巻き込まれたら僕たちが死ぬ!」

 

 

「……そうか」

 

 

なんかゴメン。

 

 

「ッ!」

 

 

俺は直立戦車を見て驚愕する。

 

直立戦車は右手のチェーンソーをパトカーに向かって振り下ろそうとしていた。

 

 

「う、うわあああああ!?」

 

 

パトカーを運転している一人の警察官が悲鳴を上げる。警察の仲間じゃないのか!?

 

 

「クソッ!!」

 

 

俺は右手のコルト・パイソンでチェーンソーを狙う。

 

 

ガキュンッ!!

 

 

カチンッ!!

 

 

だが、全く効いていない。銃弾は簡単に弾かれた。

 

 

「ッ!」

 

 

ギュルルルルルッ!!

 

 

急いでブレーキを入れて、バイクの方向を後ろ向きにする。

 

 

「きゃああああああ!!」

 

 

「うわああああああ!!」

 

 

「……………」

 

 

黒ウサギは涙目。司は失神寸前。エレシスは無表情。やっぱカオスだなと思う。

 

バイクは直立戦車の足元に向かって走る。

 

俺は高速でコルト・パイソンをなおし、代わりにギフトカードを取り出した。そして、【(まも)(ひめ)】を右手に握る。

 

直立戦車の足元まで来た。

 

そして、

 

 

「一刀流式、【風雷神(ふうらいじん)の構え】」

 

 

蒼い炎が燃え上がり、刀が錬成される。

 

 

「【覇道華宵(はどうかしょう)】!!」

 

 

ズバンッ!!

 

 

直立戦車の右足は切断される。直立戦車はバランスを崩した。

 

大きな音を響かせながら倒れる。だが、直立戦車の腕はまだ動いている。

 

もう一度、バイクにブレーキを入れて、進行方向を再び前に変える。片手運転だがこれが意外と上手く操縦できる。

 

 

ギュルルルルルッ!!

 

 

「いやああああああ!!」

 

 

「う、うあぁ……」

 

 

「……………」

 

 

ただし、雑な運転になるから注意だッ!

 

黒ウサギの目から涙が出る。司は目が死んでいる。エレシスは無表情。ワロス。

 

そして、もう一度直立戦車に向かってバイクを走らせる。

 

 

「ハァッ!!」

 

 

ズバンッ!!

 

 

一瞬にして両肩の機関銃、左手のパイルハンマーを真っ二つに切断した。これで攻撃方法は無くなった。

 

敵の沈黙を確認した後、俺は再びアクセルを入れる。

 

 

「「「「「……………」」」」」

 

 

パトカーは停車しており、中にいた警官が外に出て茫然とその光景を見ていた。

 

俺は気にせずパトカーの間を抜けて前に進む。

 

 

「よし、このまま目的地に一直線だ……って」

 

 

「「「……………」」」

 

 

「……何かホントごめん」

 

 

気が付けば黒ウサギは俺の背中に顔をうずめていた。司は口から司の魂みたいなのが出てる。おーい、死ぬな。

 

エレシスはやっぱり無表情。悟りでも開いてるのかよお前は。

 

高速道路から下り、住宅街へと向かった。敵のいる廃病院に向かうために。

 

 

________________________

 

 

「ここか」

 

 

俺はバイクを廃病院の前に止める。

 

エレシスの予想通り、発信機は廃病院で点滅して反応していた。

 

空はもう暗く、星や月が見える。何故こんなに時間が掛かったかと言うと、あの後、めっちゃ警察にまた追いかけられた。もうしつこいったらありゃしない。

 

とりあえず何度か空を飛んだりしたら追跡を逃れることができた。

 

そして、ついに俺たちは病院の門の前まで来ていた。司はまだ震えている。そして、エレシスは無表情。

 

何だこのパーティー。縛りプレイでもしてるのか、俺は?

 

 

「どうします、敵は3人みたいです」

 

 

「少ないな……もっといると思っていたが」

 

 

黒ウサギはフードの中がうごめく。ほらほら、ウサ耳を動かさないで。司の顔が青くなってるだろ?

 

 

「よし、真正面から突入して侵入しよう」

 

 

「侵入というより突撃ですね……」

 

 

黒ウサギは少し困った顔になるが俺は気にしない。漢ならドカンッと構えろ!

 

俺はフードを取り、門を開く。

 

 

ドゴンッ!!

 

 

「ッ!」

 

 

一発の銃弾が大樹の頭に向かって飛んで来た。

 

銃弾は大樹の額に直撃し、

 

 

 

 

 

後ろに倒れた。

 

 

 

 

 

「だ、大樹さん……?」

 

 

「あ、あぁ……」

 

 

「……………」

 

 

黒ウサギと司は目を疑った。エレシスもさすがにこの時は驚いていた。だが、表情には出さない。

 

 

 

 

 

大樹が撃たれたことに。

 

 

 

 

 

大樹はピクリッとも動かない。

 

黒ウサギは急いで大樹のそばまで駆け付ける。そして、大樹の体を必死に揺さぶった。

 

 

「大樹さん!?起きてください!大樹さん!!」

 

 

 

 

 

「何だ?」

 

 

 

 

 

「いやあああああ!!!」

 

 

ボゴッ!!

 

 

「エバラッ!?」

 

 

焼肉のタレ♪じゃないよ。

 

黒ウサギは急に返答した大樹を思いっきりぶん殴った。司は口を開けて驚いている。

 

 

「ど、どうして生きてるんですか!?」

 

 

「生きてたらダメなのかよ……」

 

 

「だって弾が……………ッ!」

 

 

黒ウサギはあることに気付いた。

 

 

「傷が無い……!」

 

 

「当たり前だ」

 

 

大樹は額を抑えながら立ち上がる。

 

 

 

 

 

「もう普通の銃弾程度じゃやられないだろ?」

 

 

 

 

 

「「「……………」」」

 

 

黒ウサギと司は絶句していた。エレシスは先程から変わらず、何も言わない。

 

 

「ば、化け物じゃn

 

 

「言葉に気を付けろよ?司君?」

 

 

「い、イエッサー……」

 

 

司の顔色が先程からすぐれない。今にも倒れそうだ。どうしたのだろうか?

 

 

「さてと、撃った奴は……もういないか」

 

 

逃げやがったか。

 

大樹は自分の右手の掌を見る。

 

 

(戻ってきたな……)

 

 

大樹は口元を緩めて笑みを浮かべる。自分の強さを改めて確認して。

 

前に大剣を頭に当てて折ったことがあるが、ついに鋭い銃弾さえも跳ね返すことができるようなった。

 

転生してから神の力が弱まっていたが、今は元に戻ってきている。これで翼が出せるようになれば最高だが。

 

目を閉じて集中する。気配を追ってみると、4階の一番奥に人がいることが分かった。

 

 

「よし、行くぞ」

 

 

「待ってくれ、僕は行きたく」

 

 

「よし、行くぞ」

 

 

「放せえええええェェェ!!!」

 

 

俺は司の襟首を持って引きずった。問答無用だコラ。

 

________________________

 

 

「そいッ」

 

 

バキッ!!

 

 

俺は壁に備え付けてあったトラップをぶん殴って壊す。

 

廃病院の中は真っ暗でボロボロだった。酷い場所は虫がわんさかいる。さっき黒ウサギがそれを見て泣きそうになった。

 

壁は血で汚れ……てはいない。さすがにホラーゲームみたいなゾンビがわんさか出てくることはないみたいだ。

 

だが、雰囲気は中々怖いものだ。今度肝試し大会でも開こうかな?

 

 

「ば、爆発したらどうすつもりだ!?」

 

 

「いや、しないだろ」

 

 

司の悲鳴に俺は溜め息を吐きながら答える。

 

 

「こんな場所で爆発させたらこの建物、一発で崩壊するぞ?」

 

 

「それがどうし………そうか。そういうことか」

 

 

司は気付いたみたいだ。

 

こんな場所で爆発させたら建物は崩壊する=四階にいる敵も南無三。簡単なことだ。

 

 

「だからここにあるトラップは全部毒針系のトラップだ。刺さったら即死」

 

 

「ひいッ!!」

 

 

「あ、危ない!司!」

 

 

「うわああああああァァァ!!!」

 

 

「嘘だけどな」

 

 

「もう帰してくれ!ずっと刑務所でいいから!」

 

 

マジかよ。そんなに嫌なのか。

 

 

「楢原さん、つきました」

 

 

いつの間にか目的地の部屋に来ていた。エレシスが俺に教えてくれる。

 

 

「じゃあ行くぞ」

 

 

黒ウサギはギフトカードを構える。エレシスは何も構えない。司はエレシスの後ろに隠れる。な、情けないなぁ……。

 

俺はドアを開ける。

 

 

ドゴンッ!!

 

 

蹴っ飛ばして。

 

 

「「「ッ!?」」」

 

 

予想外の出来事に三人は驚く。部屋の中にいた三人は急いで横に避けて飛んで来たドアを回避する。

 

 

「よお、そこのお姉さんはさっきぶりだな?」

 

 

俺はゆっくりと歩き、中に入る。

 

 

「ふふふ、礼儀がなっていないわね。ちゃんとノックをしたらどうかしら?」

 

 

「ノックなんて必要ねぇよ。お前らも俺が来ること分かっていたんだろ?」

 

 

ドレスのような赤いドレスの服を着た女は黒い髪をなびかせ笑みを浮かべる。

 

 

「何だよ、ただのガキじゃねぇか。こんな奴に失敗したのかよ」

 

 

男の声は部屋の右から聞こえた。

 

男は黒いタキシードに身を包み、サングラスをかけていた。頬には大きな傷跡がある。

 

 

「ぷー、姉貴。腕落ちた?」

 

 

今度は左から笑い声が聞こえた。

 

左にいた人物も男だった。男は太っており、タキシードがはちきれそうだ。

 

 

「うるさいわよ、愚弟たち。油断しないで」

 

 

兄妹なのか?全然似てないぞ。

 

女は右手に携帯端末型のCADを持って構える。

 

 

「へいへい、あー怠いな」

 

 

「早く帰りたいよ、僕も」

 

 

サングラスをかけた男は肩に下げていた狙撃銃を俺に向かって構える。こいつが門で俺を撃ったやつか。

 

太った男の両手には刀。二刀流だ。

 

 

「こいつら……思い出したぞ!」

 

 

エレシスの後ろに隠れていた司がハッとなる。

 

 

「楢原、そいつらは【無 頭 龍(NO HEAD DRAGON)】の配下……暗殺部隊不龍(ふりゅう)三姉弟!」

 

 

「くぎゅう?」

 

 

「不龍だ!」

 

 

知ってる。ちょっとボケただけだ。

 

というか最近、暗殺者に会いすぎだろ。どんだけ~。

 

 

「あら、やっぱり知っていたのね。殺しましょうか」

 

 

「ひいッ!!」

 

 

なるほど、狙いは司だったのか。

 

見えてきたぞ。

 

 

「お前らは司と接触して殺したかった。だが、できなかった。そこで俺たちを囮に使ってどさくさに紛れて司を殺そうとした。どうだ?雑な説明だけど合ってるだろう?」

 

 

「ほう、さすが俺の弾丸を食らっておいて生きている奴だ。そこらにいる雑魚と格が一つ違う」

 

 

俺の言葉にサングラスの男は素直に感心する。

 

 

「接触できなかった理由は僕たちが暗殺者っていう理由だね」

 

 

太った男が補足する。

 

 

「どうする?あなた今指名手配中でしょ?私たちの仲間にならない?」

 

 

「断る。俺は人を殺すのことだけは絶対に嫌だからな」

 

 

「あら……じゃあ」

 

 

赤い服を着た女性はCADに起動式を出力させる。

 

 

「死になさい!」

 

 

ダンッ!!

 

 

二人の男も動き出した。

 

サングラスかけた男は俺に向かって狙撃する。本来、狙撃銃は遠距離の相手にしか有利ではない。だが、

 

 

ドゴンッ!!

 

 

近距離で当たれば威力は絶大だ。狙撃銃は遠くの標的に当てるため、威力が普通の銃と全く違う。

 

絶大の威力を誇った銃弾は俺の額に向かって飛んで行く。

 

 

キンッ!!

 

 

同時に反対方向から二刀流の太った男が突撃してくる。しかも速い。

 

さすが暗殺者。秘められた身体能力を発揮している。

 

さらに、前にいる赤い服の女性は魔法を発動する。

 

魔法は空気を圧縮させて相手に飛ばす魔法。

 

 

三方向同時攻撃が俺に向かって来た。

 

 

(これが回避不可能と呼ばれたコンビネーション……!)

 

 

司は心の中で言う。

 

腕の良い魔法師も簡単に暗殺してしまう暗殺部隊。裏の仕事をやっているときに、ふと耳にはさんだことがあった。

 

彼はあの姉弟に勝つことはできない。

 

 

(一人で勝てるわけが……!)

 

 

圧倒的力を持った司波ならどうにかできるかもしれないが、二科生の彼に何もできるはずがない。

 

 

ドゴンッ!!

 

ガチンッ!!

 

ドンッ!!

 

 

そして、大樹の体に3つの攻撃が叩きこまれた。

 

 

「「「なッ!?」」」

 

 

三姉弟は目を疑った。

 

 

「嘘……だろ……!?」

 

 

司も驚いた。

 

三姉弟は知らない。彼がどんな人物なのかを。

 

司は知らない。彼がどれだけ最強なのかを。

 

 

 

大樹の額に当たった銃弾は弾かれた。

 

 

 

体を斬ろうとした二本の刀は折れた。

 

 

 

風圧の魔法は右手を前に出すだけで受け止めていた。

 

 

 

「「「「なッ!?」」」」

 

 

「ハッ、その程度で俺を倒す?……笑わせるな」

 

 

バシュンッ!!

 

 

俺は右手で受け止めた風圧の魔法を握りつぶす。

 

 

「ッ!!」

 

 

ダンッ!!

 

 

一瞬にして太った男との距離をゼロにする。

 

 

「二刀流、舐めてんじゃねぇぞ」

 

 

ドゴッ!!

 

 

右ストレートが太った男の顔面にクリーンヒット。歯が砕け、鼻からは血が飛び出す。

 

 

「がはッ……!」

 

 

太った男は大きな音を出して壁に叩きつけられた。巨体はゆっくりと地面に倒れる。男は白目を剥き、気絶していた。

 

 

「くそッ!この野郎!!」

 

 

サングラスをかけた男はスナイパーライフルを放り棄て、腰からサブマシンガンを……

 

 

バチンッ!!

 

 

「ぐあッ!?」

 

 

男の体に電撃が全身に走った。あまりの痛さにサブマシンを落とし、

 

 

ドタッ

 

 

そのまま気絶して、崩れ落ちた。前に勢い良く倒れる。

 

 

「大樹さんには手を出させません!」

 

 

電撃を出したのは黒ウサギだった。手には白黒のギフトカードを握っていた。

 

 

「どうする、後はアンタだけだ」

 

 

「くッ……」

 

 

赤い服を着た女性は苦悶の表情を浮かべ、後ろに下がる。後ろには壊れた窓が道を塞いでいた。

 

ここは四階。飛び降りて逃げたとしても、すぐに捕まえることができる。

 

逃げ場はもう、無い。

 

 

「……ふふッ」

 

 

だが、女性は突然、笑い始めた。

 

 

「ねぇ……あなたはこの建物の地下を見たかしら?」

 

 

「地下だと?」

 

 

「ええ」

 

 

女性の右手には何かが握られていた。

 

 

 

 

 

「そこには大量の爆弾が置いてあるの」

 

 

 

 

 

「「「ッ!?」」」

 

 

「じゃあね、皆さん、愚弟」

 

 

カチッ

 

 

俺たちは何か行動する前に女性は起爆スイッチのボタンを押した。

 

その瞬間、地面が光り……。

 

 

ドゴオオオオオォォォ!!

 

 

廃病院は瓦礫の山と化した。

 

 

________________________

 

 

 

「うふふ……」

 

 

瓦礫の山になった廃病院を遠くから見た女性は静かに笑う。

 

病院からの窓から飛び降り、移動魔法を発動することによって、崩壊に巻き込まれることはなかった。

 

だが、自分の弟を犠牲にしてしまった。

 

 

「でも、仕方のないことよね」

 

 

不出来な者は殺される。負けてしまった弟が悪い。

 

 

「安心なさい。仇は取ってあげたから」

 

 

女性は振り向き、その場を立ち去った。

 

 

________________________

 

 

 

ドゴオオオオオォォォ!!!

 

 

瓦礫に山……廃病院から大量の水が空に向かって噴き出す。

 

 

「あー、ちくしょう。やってくれたな」

 

 

水の中から大樹が姿を現す。右手にはサングラスをかけた男。左手には太った男がいた。

 

 

「しかも臭い!」

 

 

「げ、下水道ですからね……あと、薬品……ですかね。変な液体も混ざっています」

 

 

後ろから黒ウサギも出てきた。

 

水の色は黒緑をしており、異臭を放っていた。

 

 

「お、おえッ!」

 

 

「司とか吐いてるよ……」

 

 

司は水の中から出てきた瞬間、膝をついてリバース。

 

 

「この方法しかありませんでした」

 

 

水を操った主。エレシスが最後に現れる。

 

今回はエレシスに助けてもらった。水で崩壊から守ってもらい、無傷で済むことが出来た。

 

でも、綺麗な水は無かった。

 

エレシスは建物にあった、ありとあらゆる水を全て混ぜて俺たちを守った。どんな水を使ったのか考えたくもない。……薬品、トイrおええええェェェ!!

 

すいません、この話題はやめましょう。

 

水の噴水(汚物だらけ)はやがて消え、場に静寂が訪れる。

 

 

「風呂……風呂に入りたいな」

 

 

「そうですね。では、行きましょうか」

 

 

「ああ、司を刑務所に戻してからな」

 

 

「待ちたまえ!僕も風呂に入れてくれ!」

 

 

「やだよ。臭いし」

 

 

「お前もだろ!?」

 

 

司は怒鳴り声を上げ、泣いていた。馬鹿野郎、冗談だから無くなよ。

 

 

「それにしても……あの女は逃がしたな」

 

 

「また来るでしょうか?」

 

 

「多分、な」

 

 

俺は気配を研ぎ澄ますが、もう近くにいない。

 

トボトボとバイクのある場所まで歩く。本当に臭い。おえッ。

 

 

「さてと……お迎えが来たみたいだ」

 

 

俺は病院の入り口の門を見ながら言う。

 

門の近くには何十台も並んだ車。何十人もの武装警備隊が待ち構えていた。

 

 

「この二人をあっちに引き渡せば終わりだな」

 

 

「一件落着ですね」

 

 

黒ウサギは安堵の息を吐く。

 

 

「ついでに司もな」

 

 

「これでやっと安心できるよ……」

 

 

司は警察を見て感動していた。どんだけ俺のこと嫌いなんだよ。

 

俺たちは警察のいる所まで行った。警察は皆銃口をこちらに向けている。

 

 

「動くなッ!」

 

 

「……まぁとりあえず言うこと聞くか」

 

 

俺たちは両手を上げる。下手に刺激するのもダメだよな。

 

 

「武器を捨てろ!」

 

 

「ねぇよ」

 

 

「ならそのまま床に伏せろ!」

 

 

「えぇ……マジかよ」

 

 

ゆっくりと俺たちは床に伏せる。何でここまでしなくちゃいけないんだよ。ヒーローだろ?

 

 

「確保!」

 

 

俺たちは警察に抑えられ、

 

 

カチャンッ

 

 

「え?」

 

 

カチャンッ?え、どういうことだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の手には手錠がはめられていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

周りを見れば黒ウサギも。司も。そして、エレシスも。

 

 

 

 

 

手錠がついていた。

 

 

 

 

 

「来い!」

 

 

俺たちは乱暴に車の中に連れ込まれ、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

逮捕された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楢原 大樹 懲役8年

 

楢原 黒ウサギ 同じく懲役8年

 

新城 陽 同じく懲役8年

 

司 一 懲役18年から懲役36年に

 

 

上記の者を刑務所【ギルティシャット】に牢獄する。

 

 

刑務所の食事は結構不味いです。

 

 

六月。それは俺が逮捕される月。

 

 

 

 

 

……………助けて。

 

 

 



















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