どうやら俺はたくさんの世界に転生するらしい【完結】   作:夜紫希

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ついに終わります。

『問題児が異世界から来るそうですよ?』編が今回で最後です。


続きをどうぞ。


転生者は愛する人のために

「「……………」」

 

 

部屋にはベッドが二つあった。どちらも患者が寝る白いベッドである。ベッドの上には包帯でグルグル巻きにされた二人の少年が寝ていた。

 

 

「…………なぁ原田」

 

 

「……何だ?」

 

 

「……お前、負けたの?」

 

 

「………………」

 

 

「俺、勝ったんだけど?」

 

 

「…………リュナは桁違いに強すぎだ」

 

 

原田は溜め息を吐く。

 

 

「ペストを倒したことに関してはよくやったと思う」

 

 

「どうも」

 

 

「…………リュナについて何か分かったことは?」

 

 

「悪い」

 

 

原田は申し訳なさそうに言う。手掛かりはないようだ。

 

原田はペストを倒した後、リュナに遭遇してボコボコにされた。ペストを一人で倒すことができるのにリュナには敵わなかった。当たり前だ。相手は神の力を持っているのだから。

 

 

「まぁいいさ。無事で良かったよ」

 

 

俺は素直にそう思った。

 

 

「「……………」」

 

 

再び沈黙が部屋を支配する。

 

 

((……暇すぎる))

 

 

二人はそんなことを考えていた。

 

俺は話題を頑張って作る。

 

 

「原田はどこを怪我をしたんだ?」

 

 

「両足の骨、あばら骨、左腕の骨を粉砕された」

 

 

「折れたって言わないところが怖い」

 

 

粉砕って治るのか?どんだけリュナにボコボコにされたんだよ。

 

 

「大樹は?」

 

 

「両腕と右足が折れて、あばらの骨は2本以外折れてた。頭蓋骨にもヒビが入ってるし、臓器は60パーセントが損傷していて、それから

 

 

「もういい。聞きたくない。お前が怪物なのは分かった」

 

 

何を言っている。俺は神になったんだぞ。

 

 

「「……どっちも怪物だな」」

 

 

ハハハっと笑い合い、

 

 

「「………はぁ」」

 

 

二人にとって自虐ネタは上級者向けだった。

 

 

「そういえば、ついに俺にも翼を出すこと出来るようになったぜ」

 

 

「おそい」

 

 

「えぇ……」

 

 

お褒めの言葉を頂くどころかいちゃもんつけられた。

 

 

「他の保持者はその日に出してたぞ」

 

 

「俺以上の人外!?」

 

 

俺を越える奴はまだいた!むしろ今まで俺が一番人間に近かったんじゃねぇのか?

 

 

「………バトラーはどうだった?」

 

 

原田が尋ねる。この場合の返し方は、

 

 

「救えたと思う」

 

 

「そうか」

 

 

バトラーは優しい人なのに、憎しみで人はあんなにも変わってしまった。俺は哀れな彼を救い出したかった。原田から事前に聞いた情報には間違いがあった。いや、真実が隠蔽工作がされていたんだ。殺人を自殺に。

 

 

「バトラーは俺が死んだら復讐できると言ってたがどういう意味だと思う?」

 

 

「……バトラーが言っていたのか?」

 

 

原田は俺の言葉を確認する。俺はうなずいて肯定する。

 

 

「………………分からない」

 

 

「は?」

 

 

「分からないんだよ」

 

 

「分からないって、俺が死んだら社長に復讐できるってことだろ?なら、俺が死んだら………あれ?」

 

 

自分で言っておいて理解できなくなった。

 

 

「俺が死んでも神が危機に晒されるだけじゃねぇか」

 

 

「そうだ。それだけなんだ」

 

 

原田は考える。

 

 

「そもそもバトラー達はどうやってこの世界に来た?」

 

 

「え?簡単にできるもんじゃねぇのか?」

 

 

「やるにはゼウスの力が必要なんだ。他の保持者も他の世界に行くときはゼウスの力を使っているんだ」

 

 

「……………まさか!?」

 

 

俺は最悪の結末に辿り着いた。

 

 

 

 

 

「ゼウスが……主犯者……!?」

 

 

 

 

 

「それは無い!!」

 

 

原田が強く否定する。

 

 

「味方である神がそんなこと……!」

 

 

「……悪い」

 

 

「いや、俺も怒鳴ってスマン……」

 

 

俺と原田はお互いに謝る。

 

 

「だけど、その線は簡単に捨てられない。原田、調べてくれ」

 

 

「………分かった」

 

 

原田にとって嫌な選択かもしれない。自分側の者が敵に付くことなど思いたくもない。だが、原田は受けてくれた。

 

 

(………分からないよ、神)

 

 

いつになったら、この戦いは終わるのだろうか。

 

誰が敵なんだ。

 

お前はどっちの味方なんだ。

 

 

その答えは誰も教えてはくれない。

 

 

________________________

 

 

 

『ギフトゲーム名 【アスベストスの疾走者】

 

・プレイヤー一覧

 

コミュニティ【サラマンドラ】

 

サンドラ=ドルトレイク

 

マンドラ=ドルトレイク

 

 

コミュニティ【ノーネーム】

 

春日部 耀

 

楢原 大樹

 

 

・勝利条件

 

制限時間以内に指定されたゲーム舞台に散乱した【サラマンダーの皮】を相手プレイヤーより多く集める。

 

 

・敗北条件

 

対戦プレイヤーが指定されたアイテムを自分より多く持っていた場合。

 

 

・禁止事項

 

ギフトを使った相手への攻撃。(故意にやった場合のみとする)

 

上記を破った場合、プレイヤーは一分間その場を動くことはできない。

 

 

宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の下、両コミュニティはギフトゲームに参加します。

 

【ノーネーム】印

【サラマンドラ】印』

 

 

 

________________________

 

 

 

ドゴオオオオオォォォ!!

 

 

「うおッ!?」

 

 

俺に向かって建物が次々と倒れてくる。

 

 

ここはゲームの舞台である【廃墟になった都市】というゲーム盤。たくさんの高層ビルが建ち並んでいるが、全てボロボロとなり、木々などが生い茂っていた。

 

 

「はああぁ!!」

 

 

サンドラは近くにある建物に向かって火の玉を放つ。

 

 

ドゴオオオオオォォォ!!

 

 

建物は崩れ、瓦礫が俺に向かって落下する。

 

 

「ッ!!」

 

 

包帯でグルグル巻きにされていて少し動きずらいが、問題なく避ける。

 

 

「オイ待てやゴラァ!!禁則事項破っているだろう!?」

 

 

「いいえ!私は建物を破壊しているだけです!」

 

 

「絶対に悪意があるだろこの子!!」

 

 

故意にやった場合は体の自由が奪われるはず。なのにサンドラはピンピンしていた。

 

 

「マンドラ兄様が【サラマンダーの皮】を持ってきていただければ……!」

 

 

「………………」

 

 

俺はサンドラに見えぬように笑っていた。

 

 

________________________

 

 

「ええい!一体どこにあるというのだ!?」

 

 

マンドラは走りながら辺りを見まわす。

 

 

(【サラマンダーの皮】というほどならば……)

 

 

生き物。マンドラはずっと探しているが、

 

 

(生き物が一匹も見つからないということはどういうことだ!?)

 

 

マンドラは焦る。

 

 

ドゴオオオオオォォォ!!

 

 

「ッ!?」

 

 

マンドラは後ろで爆発する音が聞こえて振り向く。

 

 

「のあッ!?」

 

 

飛んで来たのは大樹だった。

 

 

「マンドラ兄様!!」

 

 

上から妹であるサンドラが降りてくる。

 

 

「見つかりましたか?」

 

 

「ダメだ。全く見つからない」

 

 

マンドラは首を振った。

 

 

「この街には生き物一匹もいない」

 

 

「ふふふふ……」

 

 

マンドラの言葉に大樹は不気味に笑う。

 

 

「何がおかしい!?」

 

 

「いやいや、だってさぁ……」

 

 

大樹は告げる。

 

 

 

 

 

「【サラマンダーの皮】を生き物から取れると思っているからなぁ」

 

 

 

 

 

「「!?」」

 

 

そのことに二人は驚愕する。

 

 

「マルコ・ポーロって人物は知っているか?」

 

 

ヴェネツィア共和国の商人であり、ヨーロッパへ中央アジアや中国を紹介した【東方見聞録】が有名だ。

 

 

俺は二人にそのことを説明し、

 

 

「その【東方見聞録】が重要なんだよ」

 

 

「……それがどうした」

 

 

マンドラは恐る恐る聞く。

 

 

「そいつに記されてんだよ、【サラマンダーの皮】について……」

 

 

俺は告げる。

 

 

 

 

 

「【サラマンダーの皮】とは鉱物のことを示しているんだ」

 

 

 

 

 

「「!?」」

 

 

鉱物。生き物の皮でないことに驚く二人。

 

 

「そして、他にも鉱物だと決めつける決定的な証拠がちゃんと記されているんだ……契約書類(ギアスロール)に」

 

 

「なんだと……!?」

 

 

マンドラの額から汗が噴き出る。

 

 

 

 

 

「『アスベストス』は言いかえると【石綿】という意味になるんだぜ?」

 

 

 

 

 

「「なッ!?」」

 

 

そう、このゲームは最初から鉱石種類が決まっていた。ギフトゲーム名で。

 

【石綿】とは蛇紋石や角閃石が繊維状に変形した天然の鉱石で無機繊維状鉱物の総称のことをさす。

 

 

「大樹」

 

 

耀が後ろから走ってくる。

 

俺はすぐに謎を解き、耀に探させたのだ。

 

 

「どうだ、見つけたか?」

 

 

「うん、見つけたけど………」

 

 

耀の歯切れの悪い言葉に俺は嫌な予感がした。

 

 

「大樹に言われた通りにモグラさんの力を借りて地面を掘ったよ」

 

 

「お、おう。それで?」

 

 

「それっぽい鉱石見つけた」

 

 

「………………それから?」

 

 

「あれが鉱石」

 

 

耀は振り向き指をさした。

 

 

 

 

 

「ガアアアアアアアアァァァ!!!」

 

 

 

 

 

縦に約15m。横に200m以上はあるトカゲの怪物に遭遇した☆

 

 

 

 

 

「「「嘘…………」」」

 

 

「あの背中にある」

 

 

耀の指さす方向。トカゲの怪物の背中に大きな鉱石が引っ付いていた。

 

 

「ちくしょう………多分あれだ」

 

 

「「………………」」

 

 

きっと俺の目は死んでいるだろう。サンドラとマンドラも。

 

 

「誰だよあんなの用意した奴は白夜叉ですね分かります」

 

 

犯人特定したった。

 

鉱石が化け物についてるのは予想外だった。さすが箱庭。ドン引きだわ。

 

 

「倒せそう?」

 

 

「頑張る」

 

 

「無理って言わないんだ……」

 

 

あれ?耀に引かれた。

 

 

「ぶっ飛ばすから離れてろ」

 

 

「うん」

 

 

そう言って耀は俺から距離を取る。さりげなくサンドラとマンドラも距離を取った。

 

俺はギフトカードから刀と銃を取り出す。

 

 

「右刀左銃式、【零の構え】」

 

 

鬼種のギフトを纏わせた銃弾を放つ。

 

 

「【白龍閃・零】!!」

 

 

そして、刀を振り下ろす。

 

 

ドゴンッ!!

 

 

銃弾は勢い良く飛んでいき。

 

 

ドゴオオオオオォォォ!!

 

 

 

 

 

トカゲの怪物を空高く飛ばした。

 

 

 

 

 

「「「えぇ……………」」」

 

 

有り得ない光景にもう驚く事すらできなくなった。

 

 

ドゴオオオン!!!

 

 

そして、落下して来た。

 

 

「よし、回収するぞー」

 

 

大樹は刀を使ってトカゲの怪物の剥ぎ取りをし始めた。

 

 

「よし、一個ゲット」

 

 

まだまだ数はたくさんある。これを全て回収するのは骨が折れる。そんなことを思っていたら、

 

 

ビーーー!!

 

 

試合終了の合図が鳴った。

 

 

________________________

 

 

『勝者、【ノーネーム】!!』

 

 

黒ウサギの声で観客は大きな歓声上げる。

 

 

「お疲れ、大樹」

 

 

「ああ、耀もな」

 

 

俺と耀はハイタッチを交わす。

 

 

『それでは、【階層支配者】から【ノーネーム】に恩恵を授与して頂きます!』

 

 

「行って来い」

 

 

「うん」

 

 

俺はサポート。恩恵は耀が貰うべきだ。

 

耀に壇上に上がらせ、俺は速やかに退場する。

 

 

「よぉ、シスコン」

 

 

「チッ、何の用だ」

 

 

出口にはマンドラがいた。

 

 

「別に用はねぇよ。ただお前をからかってるだけだ」

 

 

「フン、名無しが」

 

 

マンドラは鼻で笑い、怒らなかった。

 

 

「…………十六夜にバレただろ?」

 

 

「…………知っていたか」

 

 

「当たり前だ、俺は審議決議の前から気づいてんだよ」

 

 

俺はマンドラに向かって言う。

 

 

 

 

 

「二度と魔王なんか招き入れるんじゃないぞ」

 

 

 

 

 

「………………」

 

 

マンドラは何も喋らない。

 

魔王が指定した勝利条件のゲーム内容に130枚のステンドグラスがあった。130枚のステンドグラスが無名での登録出展なら、普通に考えて怪しいはずだ。なのに主催者側の奴らは何もしなかった。いや、そうしたかったんだと推理できるんだ。

 

そして、サンドラへの信頼度を上げる根端だったわけだ。

 

 

(もう十六夜が制裁下してるし何もしなくていいか)

 

 

俺はマンドラの頬が赤くなっていたことを見落とさなかった。

 

仲間思いのあいつがキレないわけがない。仲間が実際に居なくなっているんだ。

 

 

だが、本気でキレていたら、その程度ではすまないだろう。

 

 

「じゃあな、次は平和な祭りを招待してくれよ」

 

 

俺はそう言って、その場を後にした。

 

 

________________________

 

 

「は?俺に?」

 

 

「うん」

 

 

俺は温泉に浸かり、白夜叉の店でくつろいでいた。そこに、刀を持った耀が俺の所に来て、刀をあげると言いだした。

 

 

「ど、どうして」

 

 

「大樹にしかできないから」

 

 

耀は真剣な目で俺を見る。

 

 

「美琴たちを助けるのは」

 

 

「ッ!」

 

 

俺は耀の言葉に驚く。

 

耀は美琴たちのことを心配している。助けに行きたいと思っている。でも、それは無理なことだ。

 

 

「私にはこんなことしかできないけど……」

 

 

「………いや、十分だ」

 

 

俺は耀の持っている刀を貰う。

 

 

俺は耀の期待に応えたい。

 

 

「約束する。必ず助けて、また会いに来る」

 

 

「………うん」

 

 

俺と耀は右手の小指同士を絡め、約束した。

 

 

(もう約束を破るのは終わりだ)

 

 

今度こそ、美琴を。アリアを。そして、優子を守ってやる。

 

 

________________________

 

 

次の日。

 

俺たちは街の復興を手伝っていた。昨日は魔王を倒した晩餐会だったが、今日はみんなで街の修繕に取り掛かっていた。

 

 

「大樹!」

 

 

後ろから男の声が俺を呼ぶ。

 

 

「ルイオス、そっちはどうだ?」

 

 

「完璧だ。次はどこの修繕をやる?」

 

 

ルイオスは俺の指示を待つ。

 

 

「じゃあ次は東側を頼む。あそこが一番被害が大きいから【サラマンドラ】と協力してきてくれ」

 

 

「分かった。おい、行くぞ!」

 

 

「「「「「はッ!」」」」」

 

 

ルイオスは部下を連れて新たな修繕する場所へと向かった。

 

コミュニティ【ペルセウス】は俺たちを心配して駆けつけてくれた。魔王とのゲームが終わった後、一番に助けに来てくれたコミュニティでもある。

 

 

「おかげさまで早く元通りになりそうだな」

 

 

感謝感謝。ルイオスには【ノーネーム】の生活費にも助かってる。

 

 

「大樹さん!」

 

 

「おう、黒ウサギ」

 

 

ルイオスに感謝していると、黒ウサギが走って来た。

 

 

「大樹さんが言った通り、予算は十分足りるみたいです」

 

 

「だろ?俺の知識があれば予算の節約なんて……」

 

 

「ですが、この紙に書いてある金額の足し算、引き算が無茶苦茶ですよ……せっかく足りているのに、赤字になっているじゃないですか……」

 

 

「………………」

 

 

数学。未だに克服できず。

 

 

「ごめんなさい……」

 

 

「だ、大丈夫です!黒ウサギがちゃんと修正しておきましたから!」

 

 

わーい、黒ウサギ大好きー!

 

 

「悪いな、迷惑かけて」

 

 

「いいんですよ。これからもかけても」

 

 

「……あぁ、そうだな」

 

 

俺と黒ウサギは笑い合う。

 

俺は黒ウサギと一緒にみんなを探しに行く。黒ウサギが俺のことを………ッ!?。

 

 

「うおおおおォォォ!!!」

 

 

ドゴンッ!ドゴンッ!ドゴンッ!

 

 

俺は壁に頭を打ち付ける。

 

 

「大樹さん!?」

 

 

恥ずかしい!今思い出せば恥ずかしい!

 

黒ウサギに真正面からの告白をされた俺は思い出し、恥ずかしくなった。それに、黒ウサギに弱音吐くとこを見られっぱなしじゃねぇか!

 

 

「イケメンに生まれたかった……」

 

 

「えぇ!?」

 

 

俺は膝を抱え落ち込んだ。

 

 

「だ、大樹さんは今のままでも十分カッコいいですよ」

 

 

「……………お、おう」

 

 

「「………………ッ!?」」

 

 

俺と黒ウサギは顔を真っ赤に染めた。何やってんだ俺たち。

 

 

「何サボってんだ二人とも」

 

 

「「!?」」

 

 

後ろから十六夜に声をかけられ、驚く二人。

 

 

「な、なな何でもないですよ!!」

 

 

「そ、そそそそそそそそそそそうだ!次は何すればいい!?」

 

 

「とりあえず落ち着け」

 

 

というわけで深呼吸して、落ち着いた。

 

 

「ルイオスが東側やってるから後は細かい作業だけだな」

 

 

「そうか、じゃあもう帰っていいか?」

 

 

俺の報告を聞き、十六夜は背伸びしながら問いかける。

 

 

「いいぜ。途中飛鳥と耀にも声かけておいてくれ」

 

 

「あいよ」

 

 

十六夜はそう言って帰って行った。

 

 

「じゃあ俺はまだ作業が少し残ってるから先に帰ってていいよ」

 

 

「いえ、黒ウサギも手伝いますよ」

 

 

「あー、じゃあ……お願いしようかな」

 

 

「はい!」

 

 

俺は黒ウサギの好意に甘えることにした。

 

 

________________________

 

 

「それじゃあ………行ってくる」

 

 

俺はみんなに向かって別れを告げる。

 

【ノーネーム】の本拠地に帰って来てから数日後。俺と黒ウサギが転生する日がやって来た。

 

 

「ああ、向うでも暴れろよ」

 

 

「ダメです!」

 

 

「まかせろ」

 

 

「ダメですからね!!」

 

 

俺は十六夜と約束を黒ウサギが邪魔する。

 

次に飛鳥が前に出て来て、

 

 

「必ず…………暴れてきなさい」

 

 

「ッ!…………ああ、まかせろ!」

 

 

「いい感じに言ってもダメです!!」

 

 

飛鳥との約束も邪魔された。

 

次は耀が前に出て来る。

 

 

「…………………」

 

 

「耀?」

 

 

耀は俯いたままだ。

 

 

「……私……わた、しッ……!!」

 

 

耀は勇気を出して叫ぶ。

 

 

「お土産は食べ物がいい!!」

 

 

「時間を返してください!!」

 

 

「分かった…………牛肉35トンを持ってくる!!」

 

 

「多ッ!?」

 

 

「今日から何も食べない!」

 

 

「食べてください!絶対食べてくださいよ、耀さん!」

 

 

この問題児たちはまともに別れの挨拶ができないようですね(笑)

 

 

「あなたたちはまともに別れの挨拶ができないんですか!?」

 

 

黒ウサギも俺と同じことを考えていたようだ。見事に被った。

 

 

「大樹さん。黒ウサギ。体調には気を付けて」

 

 

「はい!ジン坊ちゃんもお気を付けてください」

 

 

「………………」

 

 

ジンの言葉に黒ウサギは喜ぶが、俺は無言を貫く。

 

 

「えっと、大樹さん?」

 

 

「………………」

 

 

「……僕は……やりませんよ……」

 

 

「………………」

 

 

「………………やりません」

 

 

「………………」

 

 

「くッ……!」

 

 

ジンは諦めた。

 

 

「僕のお土産はエロ本でお願いします!!」

 

 

「ジン坊ちゃん!?」

 

 

「分かった。飛びっきりエロい本を……」

 

 

「未成年になんてモノをあげようとしてんですか!!」

 

 

スパンッ!!

 

 

黒ウサギにハリセンで叩かれる。ちょっと待て。今ギフトカードから出したなそのハリセン。一体どんな恩恵があるんだよ。

 

 

「この流れからして私もかね?」

 

 

「レティシア様は絶対にしないでください!」

 

 

「というフリだ」

 

 

「違います!!」

 

 

スパンッ!!

 

 

痛い。

 

 

「では私はこけしにしようかな」

 

 

「「「「「何故こけし!?」」」」」

 

 

全員が驚愕した。分からない。何でこけしをチョイスした!?

 

 

「大樹お兄ちゃん!ちゃんと帰って来てね!」

 

 

「おう!いい子にしてろよお前ら!」

 

 

「「「「「はーい!」」」」」

 

 

子供たちの元気な声に耳が痛くなるが、それが心地よかった。

 

 

「大樹、準備ができたぞ」

 

 

後ろから白いチョークで書いた文字の円。魔方陣を書き終えた原田が俺に声をかける。

 

 

「結構時間かかったな」

 

 

「当たり前だ。元々俺みたいなやつがゼウスと同じことなんかできるわけないんだ」

 

 

「だけど、できるんだろ?」

 

 

「お前の力を使ってな」

 

 

原田は魔方陣の真ん中に白く光る石を投げ込む。

 

 

シュピンッ!!

 

 

そして、魔方陣の白い文字が青く光る。

 

 

俺の左手につけたブレスレットも。

 

 

「ッ!?」

 

 

俺はその光に驚く。周りにいるみんなも。

 

 

「大樹、ゼウスはこのことを予期していたのかもしれない」

 

 

原田は冷静に言う。

 

 

「そのブレスレットがあれば、木下優子の居場所が分かる」

 

 

「ほ、本当かッ!?」

 

 

俺は驚くと同時に喜びが込み上げた。

 

優子は三人の中で一番心配だった。能力も武器も持っていない彼女が。

 

決して美琴とアリアが心配ではないというわけではない。二人の彼女たちが強くても、俺は胸が張り切れそうなくらい心配している。全てを投げ出してもいい。はやく優子を助けて、美琴とアリアも助け出す。

 

 

「美琴とアリアの居場所は!?」

 

 

「それは木下優子が持っているペンダントについているクリスタルが必要だ」

 

 

優子が首から下げているペンダント。それに付いているクリスタルは【絶対防御装置】が必要と言われ、俺は美琴とアリアがどう関係するか理解できなかった。

 

 

「どういう意味なんだ?」

 

 

「ゼウスがそのクリスタルに細工したんだ。みんなの居場所が分かるように、な」

 

 

「じゃ、じゃあ!?」

 

 

「ああ。あれがあればみんなの居場所が分かる」

 

 

絶望で満ちていた暗い道が希望で照らされる。

 

 

(まだ……終わっていない)

 

 

俺は覚悟を決める。

 

 

「黒ウサギ」

 

 

「はい」

 

 

俺はもう一度聞く。

 

 

「俺を助けてくれるか?」

 

 

黒ウサギに手を伸ばす。

 

 

「YES!黒ウサギはずっと大樹さんの味方です!」

 

 

黒ウサギは俺の手を両手で掴む。しっかりと強く握る。

 

黒ウサギの手を引いて魔方陣の中央に立つ。

 

 

「大樹。着いたら俺に連絡してくれ」

 

 

原田は魔方陣の上には乗らなかった。

 

 

「一度上の者に報告してからすぐに行く」

 

 

「分かった」

 

 

「当然だが裏切り者の保持者には気をつけろ。もしかしたらいるかもしれない」

 

 

敵はバトラーとリュナだけではない。まだいるんだ。

 

 

「目立つ行動は避けろ。それが奴らに見つからない策だ」

 

 

「大丈夫だ。俺はもう負けないからな」

 

 

「はぁ………会話のキャッチボールできてねぇよ……」

 

 

俺の返答に原田は溜め息を吐く。

 

 

「次の世界はどんな場所か全く分からない。何度も言うが気を付けろ」

 

 

「ああ。分かったよ、母ちゃん」

 

 

俺の言葉に黒ウサギが笑う。原田は呆れるように笑う。

 

 

「じゃあ行くぞ」

 

 

俺は黒ウサギの手を強く握り返す。

 

 

 

 

 

「今、助けに行くぞ」

 

 

 

 

 

ブレスレットが強い光を放つ。

 

 

俺と黒ウサギ。

 

 

二人が新しい世界へと転生した。

 

 

________________________

 

 

「しまったッ!?」

 

 

「「「「「!?」」」」」

 

 

レティシアが顔を青くして叫ぶ。

 

 

「私としたことが……大樹に注意するのを忘れていた……!」

 

 

「な、何をかしら?」

 

 

飛鳥が恐る恐る聞く。

 

 

「私は大樹に鬼種のギフトを与えている。もしこのまま太陽の光を浴びれば……!!」

 

 

「吸血鬼って太陽の光を浴びると生きられないんだよね?」

 

 

耀の言葉に今度は全員の顔が青くなった。

 

 

「おい!?大樹が死ぬって、マジで言ってんのか!?」

 

 

何も知らない原田がレティシアに言い寄る。

 

 

「い、いや死にはしない!大樹は4分の1が吸血鬼になっただけだ!ハーフ&ハーフ吸血鬼だ!」

 

 

「そんなことはどうでもいい!大樹はどうなるんだ!?」

 

 

死ぬのは洒落にならない。

 

 

「わ、私が分かるかああああああァァァ!!」

 

 

「「「「「ええええええェェェ!?」」」」」

 

 

涙目で叫ばれた。みんなが驚愕する。

 

 

「太陽の光なんか当たったことないから、私には分からん!」

 

 

「……………大樹……生きててくれ……」

 

 

レティシアは腕を組んで拗ねる。原田は膝をついた。

 

 

 

 





今回の後書きは長いです。興味の無い方はこのままブラウザバックして頂いて構いません。物語に支障はないので。


次の世界はアンケートで多かった『魔法科高校の劣等生』ですね。ですが、問題があります。


そういえば、アニメまだ終わってない。


テロリストとあんなことやこんなこと(卑猥なことじゃありません)。九校戦で〇〇や〇〇〇をしたいんです(絶対に卑猥じゃない)。

物語はアニメを土台として、書きたいです。ですので、現在書くにはアニメが終わって九校戦編を書く予定です。入学編は書けそうなので頑張って書いてみます。


次に物語の新たな展開についてですが、


神の力を持った敵ですか……。


やり過ぎた感があります。ですが、後悔はしません。書き終えて見せます。

これからオリジナルの敵が一人か二人、物語の編ごとに出てくる予定です。多すぎないようにしたいと思っています。


次に大樹についてですが。


やっちゃった。


強すぎる。

現在の大樹のステータスを一覧にまとめて見ましょう。

・神の力(ゼウスの保持者)

・鬼種のギフト

・先祖の形見の刀&銃、耀に貰った刀、コルトパイソン(対人間用拳銃)

・完全記憶能力=天才(数学除く)

・楢原家に伝わる技&【不可視の銃弾】など

・料理スキルMAX(三ツ星シェフが裸足で逃げ出すレベル)


誰だ貴様。


『魔法科高校の劣等生』で登場する全ての敵を瞬殺できるじゃないかごめんなさい反省してます。


次に小説の内容についてですが………友達にこんなことを言われました。


「最近ネタが面白くないけど、もしかしてネタ切れww?」


友達をDISってじゃねーよ。


確かに自分でも読み返して思っていました。今後の目標はネタのレベルアップと考えております。できなかったら申し訳ありません。


最後に『魔法科高校の劣等生』について報告があります。

物語で【CAD(シーエーディー)】というモノがあります。それは、

※読まなくて大丈夫です。↓


術式補助演算機(Casting Assistant Device)の略称。デバイス、アシスタンスとも略される他、ホウキ(法機)という異称もある。サイオン信号と電気信号を相互変換可能な合成物質である「感応石」を内蔵した、魔法の発動を補助する機械。魔法の行使自体にCADは不要だが、CAD抜きでは発動スピードが極端に低下してしまうため、実質的には魔法師にとって必要不可欠なツールである。なお、魔法科高校での実技試験もCADを使用した結果を評価対象としている。現代魔法の優位性を象徴する魔法発動補助具ではあるが、使用者のサイオン波特性に合わせたチューニングを始めとして、精密機械であるが故のこまめなメンテナンスを必要とする点で、古式魔法の伝統的な補助具に劣っている。そのためハード・ソフトの両面で使用者や使用用途に合わせてカスタマイズできるエンジニアの需要が高い。CADの形状は携帯端末型、腕輪型、指輪型、拳銃型など多様であるが、大別して汎用型と特化型に分けられる。汎用型CADは多くの起動式(魔法系統を問わず、最大99種類)をインストール可能であり、特化型CADは同一系統の魔法のみを最大9種類インストール可能で魔法の発動速度に優れる。特化型CADが拳銃形態の場合、銃身にあたる部分には魔法式の照準補助システムが組み込まれており、長い銃身であるほど機能が充実している。特化型はその性質上、攻撃的な魔法がインストールされているものが多い。

wiki参照。


すごく………長いです……!


嘘だろって思いました。


他にもあるんですが、長いんです。説明どうしようか悩みます。

小説では自己流で簡単に説明する。これで大丈夫なのか心配なことです。問題児でもそのような表現をして大丈夫か心配だったので不安です。

アドバイスをくれると大変助かります。些細なことでも、よろしくお願いします。


以上が今回の後書きで書きたかったことです。最後まで読んでくださりありがとうございます。お疲れ様でした。

こんな未熟な自分がみなさんの期待に応えれるよう頑張っていきますのでよろしくお願いします。


感想や評価をくれると大変とても嬉しいです。


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