どうやら俺はたくさんの世界に転生するらしい【完結】   作:夜紫希

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後書きに今後の話について書きます。


甦る先祖

「おはよう、みんな」

 

 

「おはよう飛鳥」

 

 

食堂にはみんな揃っており、飛鳥が最後だった。耀は一番はやく返す。

 

 

「おはよう。遅かったわね。どうしたの?」

 

 

アリアが飛鳥に質問する。

 

 

「私、二度寝をしてみたかったのよ」

 

 

「感想は?」

 

 

「首が痛いわ」

 

 

飛鳥は十六夜に向かって首を横に振る。だが、途中で痛みが走り、首を擦る。

 

 

「そういえば大樹と黒ウサギは?ここには居ないみたいけど?」

 

 

「二人ならしばらく帰ってきませんよ」

 

 

飛鳥の疑問にジンが答える。

 

 

「どういうことだ?」

 

 

「これです」

 

 

ジンは十六夜に一枚の紙を渡す。

 

 

『コミュニティのみんなへ

 

一週間くらい修業してきます。お土産も買ってくるから。

 

大樹より』

 

 

「アタシたちは知っていたわ」

 

 

優子がみんなに向かっていう。アタシたちは美琴、アリア、優子のことをさす。

 

 

「『俺はまだ弱いから修業してくる』って昨日の夜話したわ」

 

 

美琴が大樹が修業することを知っていた。

 

 

「じゃあ何で黒ウサギも居ないの?」

 

 

耀の一言で美琴、アリア、優子の動きが止まった。

 

 

「黒ウサギは大樹さんの修業を手伝いたいから休みが欲しいっと言っていました」

 

 

「あ、当たり前よ。それ以外に何があるのよ」

 

 

ジンの言葉を聞き、アリアは動き出す。他の二人もうなずく。

 

 

 

 

 

「二人っきりってデートでもしに行くのか、あいつら?」

 

 

 

 

 

爆弾が投下された。もちろん、十六夜はわざと言った。

 

 

バチバチッ

 

 

「……アリア、優子」

 

 

ガチンッ

 

 

「分かってるわ」

 

 

パキパキッ

 

 

「帰ったら話を聞きましょう」

 

 

美琴の回りに青い電気が走る。アリアは拳銃の整備を始めた。優子は手の準備体操。

 

 

「十六夜、これは…」

 

 

「何も言うな春日部。やり過ぎたと俺ですら思ってる」

 

 

一週間後、彼は生きているのだろうか。

 

 

「あら、このパン美味しいわね」

 

 

「大樹にパンの作り方を教えてもらったのだよ」

 

 

飛鳥はレティシアの作った朝食を食べていた。レティシアは褒められ、ドヤ顔をした。

 

 

________________________

 

 

 

「ッ!?」

 

 

「ど、どうしました?」

 

 

「いや………何か嫌な予感がした………」

 

 

全身に鳥肌が立つ。あれ、何か一週間後にヤバいことが起きそうな気がする。

 

 

「それにしても……」

 

 

俺は目の前にある山を見上げる。

 

 

「雲、突き抜けてるな」

 

 

「大樹さん。これ、登るのですか………?」

 

 

俺は黙ってうなずく。黒ウサギは肩を落とし、落ち込む。

 

 

「一体いつになったら着くのですか!?」

 

 

「俺が聞きたいわ!」

 

 

「もうどれだけ歩いたと思っているのですか!?」

 

 

「………20km?」

 

 

「28kmです!」

 

 

細かッ。

 

 

「一体その方はどこに居るのですか……」

 

 

「知らん。とにかく、この山登るぞ」

 

 

「登る?この山を?」

 

 

「ああ、登る」

 

 

「この山越えても何も無いぞ」

 

 

「何でそこまで知っているんだよ黒ウs」

 

 

俺は言葉に詰まった。

 

黒ウサギは俺の目の前にいて、何もしゃべっていない。それにしゃべり方も違う。

 

俺はゆっくり後ろを振り向く。

 

 

「…………誰?」

 

 

「ん?アタイかい?」

 

 

俺の後ろに赤い着物を着た女性がいた。年は二十代前半。いや、もっと若いか?

 

髪は赤く、腰まで長く伸びたポニーテールをしていた。

 

俺は驚愕した。

 

 

 

 

 

俺に気付かれずに近づくなんて。

 

 

 

 

 

「あ、あなたは?」

 

 

黒ウサギも驚いていた。自慢のウサ耳にも気付くことが出来なかったことに。

 

そして、女性は俺たちをさらに驚かせる言葉を言う。

 

 

 

 

 

「アタイはこの近くに住んでいる、楢原 姫羅だ」

 

 

 

 

 

「「!?」」

 

 

俺と黒ウサギは目を見開いた。やっと見つけた。

 

 

「そういうアンタらの名前は?」

 

 

両手を組んで、俺たちを見る。

 

 

「黒ウサギといいます」

 

 

「初めまして先祖様。楢原 大樹だ」

 

 

「……………」

 

 

黒ウサギは礼儀正しいお辞儀をする。俺も一応頭を下げた。仮にも先祖だしな。俺の言葉を聞き、姫羅は静かに驚く。

 

 

「なるほど!アタイの孫か!」

 

 

「正確には曾が40個以上は付くぞ」

 

 

そう、この女性が楢原家の先祖。俺の技の原点である人物だ。小さい頃、先祖の事を聞いて、男性ではないことは知っていた。

 

【ノーネーム】の書庫で見つけた姫羅について書かれた本が見つかった。

 

姫羅は昔、俺のいた世界からこの箱庭に招待された人物だったのだ。

 

 

(まさか本当に居るとは思わなかったな)

 

 

そして、姫羅に本題を話す。

 

 

「俺はあんたに鍛えてもらいに来たんだ」

 

 

「ヤダ☆」

 

 

「おい」

 

 

「嘘だよ。とりあえず近くにアタイの家があるから」

 

 

だが、近くに建物は見えない。

 

 

「………どこだよ」

 

 

「案内してやるから、ちゃんとついて来な!」

 

 

そういって姫羅は、

 

 

 

 

 

音速を越えたスピードで飛翔した。

 

 

 

 

 

「「なッ!?」」

 

 

俺と黒ウサギは驚愕する。姫羅はとんでもないスピードで山を登っていく。

 

 

「やべぇ!?」

 

 

このままでは姫羅を見失ってしまう。

 

 

「きゃッ!?」

 

 

「しゃべるな!舌噛むぞ!」

 

 

俺は黒ウサギをお姫様抱っこして、音速のスピードで追いかける。

 

 

「だ、大樹さん!」

 

 

「何だ!?」

 

 

「このくらいのスピードなら黒ウサギも出せます!」

 

 

「分かった!じゃあ今からスピードを上げる!!」

 

 

「へ?」

 

 

黒ウサギは下ろしてほしかったが、大樹はさらにスピードを上げた。

 

 

「ッ!?」

 

 

黒ウサギはそのスピードに驚愕する。

 

そして、姫羅の隣に並んだ。

 

 

「おお!やるじゃないか、孫!」

 

 

「うるせぇ!このアホ先祖!」

 

 

速すぎて黒ウサギが今にも泣きそうじゃねぇか!

 

________________________

 

 

「もう帰りたいです………」

 

 

「いやマジで悪かった」

 

 

俺は黒ウサギに頭を下げる。黒ウサギは両手を組んで俺に説教し始めた。

 

俺たちは山の頂上より少し下にある屋敷の前にいた。

 

 

「なかなかやるじゃないか。さすがアタイの孫だね」

 

 

「その孫って呼び方やめろ。大樹って呼べ」

 

 

姫羅は説教中の俺に話しかける。人にはちゃんと名前があるんだぞ。

 

 

「じゃあ大樹と黒ウサギ。アタイの家で話を聞くよ」

 

 

ガチャッ

 

 

そう言って姫羅は屋敷の扉を開ける。俺と黒ウサギは中に入る。

 

 

「「…………汚なッ」」

 

 

「この家はアタイには大きすぎるんだよ」

 

 

扉を開けるとまず埃まみれになった部屋があった。いや、玄関か。でかいな。

 

 

「アタイの部屋はこっちだよ」

 

 

「いつから掃除していない、これ」

 

 

「10年」

 

 

「これは酷すぎですよ………」

 

 

俺の質問にとんでもない返答が返ってきた。黒ウサギはドン引き。

 

 

ガチャッ

 

 

長い廊下を歩いたその先に扉があった。姫羅はその扉を開ける。

 

 

「ようこそ、アタイの家に」

 

 

「それ玄関で言え」

 

 

今まで見た汚い部屋や廊下はなかったことにしたいらしい。

 

扉を開けたその先の部屋は和室になっていた。この部屋だけはかなり綺麗にしてあった。靴を脱ぎ、あがる。

 

 

「さて、改めて自己紹介をしよう。コミュニティ【神影(みかげ)】の長、楢原 姫羅だ」

 

 

「【神影】ですか?」

 

 

黒ウサギは姫羅の言葉を聞き、呟く。

 

 

「有名なのか?」

 

 

「いえ、聞いたことのないコミュニティだと思いまして……」

 

 

「有名じゃなくて悪かったね」

 

 

姫羅は黒ウサギの言葉を聞き、拗ねる。

 

 

「何でここに住んでるんだ?わざわざ高い山の上に」

 

 

「………負けたからだよ」

 

 

俺の質問に姫羅は答える。

 

 

「アタイらは負けたからここにいるんだよ」

 

 

「負けた?誰に」

 

 

俺は姫羅に質問する。姫羅は目を伏せて言う。

 

 

「魔王だ」

 

 

「「ッ!」」

 

 

俺と黒ウサギは息を飲む。

 

 

「3年前、アタイらのコミュニティは魔王に襲われた。仲間もほとんど死んでしまった」

 

 

姫羅は告げる。

 

 

「弱いアタイのせいで」

 

 

その声は怒りの感情は無かった。ただ、悲しみに満ち、絶望した声だった。

 

 

「それに、魔王のゲームはまだ終わっていないんだ」

 

 

「何だと!?」

 

 

俺は姫羅の言葉に驚愕した。まだ終わっていないだと!?

 

 

「これを見な」

 

 

姫羅は一枚の黒い契約書類(ギアスロール)を着物の袖から取り出す。

 

 

 

『ギフトネーム 存在証明

 

クリア条件 正体を暴くこと。

 

クリア方法 謎を解き、正体を暴く。

 

敗北条件 ホスト側に参加プレイヤー全てが殺害されること。ホスト側が全ての参加プレイヤーを殺害すると敗北となる。

 

 

宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名のもと、ギフトゲームに参加します。

 

【神影】印』

 

 

 

「まさか……これだけ……!?」

 

 

俺は小さな声で尋ねる。姫羅はうなずいた。

 

 

(明らかに情報不足だ……!)

 

 

分かるのは謎を解くということ。それだけだ。

 

 

「黒ウサギが箱庭の中枢に!」

 

 

「ダメだ。余計なことはしないほうがいい」

 

 

俺は黒ウサギがウサ耳に手を伸ばそうするので、やめさせた。

 

 

「姫羅は多分この状況を維持したいんだろ。余計なことをすれば姫羅はまた魔王に襲われる」

 

 

「……………」

 

 

姫羅は黙っていた。

 

 

「で、ではどうすれば!」

 

 

「何もしなくていいんだよ。アタイは今の生活で満足してるから」

 

 

そう言っては微笑む。

 

 

「大樹。こんなアタイの技を習得したいのかい?」

 

 

姫羅の目は真剣だった。

 

 

「俺は強くなりたい。あんたの……先祖の技を教えてくれ」

 

 

俺も真剣な目で返す。

 

 

「さすがアタイの子孫だ」

 

 

こうして、俺の修業が始まった。

 

 

________________________

 

 

 

次の日

 

 

ドゴオオオオオォォォ!!

 

 

「うおッ!?」

 

 

「まだ終わっていないよ!」

 

 

俺と姫羅は戦っていた。姫羅の攻撃はマシンガンのように次々と繰り出される。

 

そして、姫羅は音速を越えたスピードで俺の背後を取る。

 

 

「【無刀の構え】!」

 

 

姫羅は右手の拳が俺の背中に向けられる。

 

 

「【黄泉送り】!!」

 

 

ドゴッ!!

 

 

「ッ!?」

 

 

背中に強い衝撃が襲い掛かる。俺は息をすることもできず吹っ飛ばされる。

 

 

ドゴオオオオオォォォ!!

 

 

目の前にあった山に激突した。

 

 

「いってぇ……」

 

 

「アタイの勝ちかい?」

 

 

「ハッ、まだだッ!!」

 

 

俺は鼻で笑い、姫羅に向かって突進する。

 

 

「二刀流式、【阿修羅の構え】!」

 

 

俺は腰にぶら下げた二本の刀を両手に持つ。もう一本の刀は折れてしまったので、姫羅からの借り物だ。

 

 

「二刀流式、【阿修羅の構え】」

 

 

「何ッ!?」

 

 

姫羅は山吹色のギフトカードから二本の刀を取り出し、両手に持つ。そして、同じ【構え】をする。

 

 

「【六刀暴刃】!!」

 

 

「【六刀鉄壁】!」

 

 

ガキンッ!!

 

 

俺は刀から六つのカマイタチを姫羅に向かって撃ち出す。だが、姫羅は全てのカマイタチを防ぐ。

 

 

「ッ!」

 

 

ガキュンッ!!

 

 

右手に持った刀を鞘に直し、服の内側に入れてある銃。コルト・パイソンで【不可視の銃弾】を繰り出す。

 

 

「遅いぞ」

 

 

ガチンッ!!

 

 

姫羅は刀を少しずらして銃弾を弾いた。

 

 

「二刀流式、【紅葉鬼桜の構え】」

 

 

「……………」

 

 

俺は刀を十字に重ねる。姫羅は俺の構えを見て、静かに驚く。

 

 

「【双葉・雪月花】!!」

 

 

そして、光の速度で姫羅を斬りかかった。

 

 

ドゴオオオオオォォォ!!

 

 

姫羅の後ろにある山を十字形に一気に抉り取り、粉砕する。山の頂上が無くなった。山の標高が低くなった。

 

 

(うわッ!?やりすぎた!!)

 

 

俺は急いで辺りを見回す。だが、居ない。

 

 

「……………ッ!」

 

 

ガキンッ!!

 

 

「ほう、やっとアタイの気配を悟ったか」

 

 

後ろから姫羅が斬りかかって来た。俺は手を背中に回して受け止める。

 

 

「気配を消すギフトだな」

 

 

「さぁどうかな?」

 

 

俺は音で分かった。微かに聞こえたんだ。

 

 

 

 

 

姫羅の着ている着物が擦れる音を。

 

 

 

 

 

「何で気配が無いんだよ!」

 

 

「全てを研ぎ澄ますんだ!」

 

 

「研ぎ澄まし過ぎて3km先でコインが落ちても聞こえるわ!」

 

 

「…………化け物?」

 

 

「よーし、ぶっ飛ばす!俺の言われたくない言葉ランキング5に入る言葉を言いやがったテメェを!」

 

 

俺は構える。問答無用。本気。超本気。ウルトラスーパーデラックス超本気。

 

 

「この貧乳が!お前のせいで俺の姉は貧乳だぞこの野郎!」

 

 

「あっは!久々にキレたぞアタイの子孫よ!」

 

 

姫羅は両手に刀を持って構える。そして、同時に動き出す。

 

 

「「くたばれえええええェェェ!!」」

 

 

 

 

 

「大樹さん!姫羅さん!おにぎりとお茶を持ってきましたよ!」

 

 

 

 

 

「「わーい!」」

 

 

そう言って俺は刀を鞘に収め、姫羅は刀をギフトカードに直す。そして、黒ウサギのところへ直行。

 

黒ウサギが昼飯持ってきたので喧嘩終了。休憩タイム。

 

俺たちはビニールシートを引き、靴を脱いで座る。

 

 

「大樹さん、調子はどうですか?」

 

 

「打倒先祖」

 

 

黒ウサギからお茶を貰い、豪快に飲む。

 

 

「大樹。さっきの技は何だ?アタイの知らない技があったんだが?」

 

 

「自作……共作?とにかく俺の大切な人と考えた技だよ」

 

 

ここでの大切な人とは双葉のことだ。

 

 

「あの技は素晴らしいと思う。だが」

 

 

姫羅は俺の腕を軽く叩いた。

 

 

「ッ!」

 

 

それだけで俺は持っていたおにぎりを落とした。

 

 

「あの【構え】は諸刃だ。使いすぎたら体を壊すぞ。最悪の場合……死ぬぞ?」

 

 

姫羅は声を低くして言う。黒ウサギは姫羅の言葉を聞き、息を飲む。

 

 

「分かってる。あれは切り札にしておく」

 

 

「何も分かっていないな。その切り札が相手に破られたら死ぬって言っているんだ」

 

 

「……………」

 

 

何も返せなかった。

 

 

「今日はここまでにしておこう。アタイは部屋に戻るよ」

 

 

そう言って姫羅は屋敷に帰って行った。

 

 

「大樹さん」

 

 

姫羅が居なくなった後、黒ウサギが俺の手を握った。

 

 

「大樹さんは私たちが大切だと言ってくれました」

 

 

黒ウサギの綺麗な瞳が俺の目を見る。

 

 

「ですから、大樹さんに大切なことを言っておきます」

 

 

黒ウサギは告げる。

 

 

 

 

 

「私も大樹さんが大切な人です!だから、自分を傷つけるようなことはしないでください!」

 

 

 

 

 

「ッ!」

 

 

黒ウサギの大声に驚く。

 

 

「黒ウサギと約束してください」

 

 

「な、何を?」

 

 

「この技を使わないことを」

 

 

「それは………」

 

 

はいっとすぐに答えれなかった。この技は俺の使える技で最強の技。それを禁止されるのは痛い。

 

 

「なるべく使わないようにするよ」

 

 

「ダメです!使わないでください!」

 

 

どうやら黒ウサギは考えを捻じ曲げる気は無いらしい。

 

 

「………俺にメリットが無いだろ?だから無効」

 

 

「じゃあ黒ウサギが何でもしてあげます!」

 

 

「ぶふッ!?」

 

 

俺はお茶を噴き出した。な、何でもだとおおおおおォォォ!?

 

 

「な、何でも……!」

 

 

「ッ!?いやらしいことはダメです!」

 

 

「何ッ!?」

 

 

黒ウサギは顔を赤くして拒否する。この好機を逃してたまるか!

 

 

「なら無効な」

 

 

「なッ!?」

 

 

黒ウサギはやられた!みたいな顔をする。

 

 

「で、では手を繋ぎましょう!」

 

 

「断りたくないけど断る!」

 

 

「じゃあ断らないでください!」

 

 

「せめて………せめて………!」

 

 

そうだ!行くんだ俺!ここでエロいことをするんだ!

 

 

「…………膝枕だ!」

 

 

「…………へ?」

 

 

ぎゃあああ!!言えなかった!俺には無理だったあああ!!

 

 

「わ、分かりました。少しだけですよ……」

 

 

「お、おう」

 

 

俺は黒ウサギの膝に頭を乗せる。

 

 

「どうでしょうか………?」

 

 

「やわr

 

 

バシンッ!!

 

 

「言わないでください!」

 

 

顔を真っ赤にさせた黒ウサギに頭を叩かれる。えぇ………理不尽すぎるだろ………。

 

 

「………寝ても?」

 

 

「………いいですよ」

 

 

黒ウサギに許可を取り、俺は目を瞑る。

 

 

「………分かったよ」

 

 

「え?」

 

 

俺は右手の小指を立てる。

 

 

「約束する。違う技で頑張るよ」

 

 

「大樹さん……!」

 

 

黒ウサギも右手の小指を立てて、俺の小指と絡めた。

 

 

「約束です」

 

 

「おう。約束な」

 

 

俺と黒ウサギは笑い合い、俺は眠りについた。

 

________________________

 

 

 

【大樹の修業日記】

 

 

『修業二日目』

 

屋敷を綺麗に掃除した。玄関などの埃を隅々ふき取った。時々、〇〇や〇〇〇〇などがあったが適切な処理をした。ヤバかった。

 

もちろん、午後にはしっかり修業をした。『アタイが居なくなった後にいちゃいちゃしやがって!』と言っていたが、無視した。

 

 

 

『修行三日目』

 

山の中に温水を見つけた。

 

姫羅と戦っていると、山がどんどん削れていく。その時に、洞穴を見つけ、奥には温水があったのだ。天然だ。もちろん、入ることにした。だが、『大樹さんは出て行ってください!』黒ウサギと姫羅に拒否された。まぁ当たり前だが。

 

だがしかし!ここで諦めるわけがない!

 

俺は気配を消し、忍び込む。そして、俺は見た。

 

黒ウサギn…………………※赤い液体が染み込んで文が読めない。

 

姫羅も居たが、相変わらず貧n…………※ページが破られている。

 

 

 

『修行四日目』

 

姫羅がギフトカードから刀だけでなく、槍、銃、大剣、弓、斧などを取り出し、攻撃して来やがった。

 

姫羅は多くの武器を使いこなすことで力を発揮するらしい。自分で言ってた。俺は苦戦を強いられることになった。さすが先祖だと思った。

 

修業終わり、満身創痍になった。体中包帯で巻かれている。最近包帯に巻かれている自分が怖い。その日、温泉は地獄だった。

 

明日の修業で倍返しだ。

 

 

『修行五日目』

 

 

 

 

 

 

………魔王のゲーム。謎を解いてしまった。

 

 

 

 

 

とても後悔した。

 

 

 

『修行六日目』

 

修業に身が入らず、今日は早く修業をやめた。

 

何故。どうして。

 

昨日のことが頭でいっぱいになり、パンクしそうだ。

 

 

夜。眠れない。そんな時、俺は台所に行って水を飲もうと部屋を出た。

 

一つの部屋に明かりがまだついている部屋があった。

 

俺はその部屋をそっと覗く。

 

 

俺は目を疑った。

 

 

その光景を見て、しばらく動けなかった。だが、力を入れて自室に戻る。

 

俺は決意した。

 

 

明日で最後の修業だ。そして、

 

 

 

 

 

これでお別れだ。

 

 

 

 

 

ここで日記は終わっていた。

 

 

________________________

 

 

俺と姫羅は向かい合っていた。近くには黒ウサギが見学している。

 

 

「もういいのか?今度こそ集中できる?」

 

 

「ああ。できる」

 

 

「そう。じゃあ始めるぞ」

 

 

姫羅は山吹色のギフトカードから刀を取り出す。

 

 

「なぁ姫羅」

 

 

俺は真剣な目で言う。

 

 

 

 

 

「魔王の謎。解いたぞ」

 

 

 

 

 

「え?」

 

 

「ッ!?」

 

黒ウサギは驚く。だが、姫羅の顔色が一瞬にして変わった。

 

 

「姫羅。あの契約書類………」

 

 

姫羅の顔色なんか気にせず、構わず続ける。

 

 

「誰の何だ?」

 

 

「な、何を言っている。魔王だろ」

 

 

「違うな」

 

 

俺は姫羅の言葉を否定する。

 

 

「あれを書いた人物は………」

 

 

俺は告げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前だ、楢原 姫羅」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………」

 

 

「嘘ッ!?」

 

 

姫羅の顔が真っ青になった。黒ウサギは口を抑える。

 

 

「もう一度確認してみよう。ギフトゲームを」

 

 

俺は姫羅を見る。姫羅は静かに着物の裾から黒い羊皮紙の契約書類を出す。

 

 

 

『ギフトネーム 存在証明

 

クリア条件 正体を暴くこと。

 

クリア方法 謎を解き、正体を暴く。

 

敗北条件 ホスト側に参加プレイヤー全てが殺害されること。ホスト側が全ての参加プレイヤーを殺害すると敗北となる。

 

 

宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名のもと、ギフトゲームに参加します。

 

【神影】印』

 

 

「まずおかしい点から説明するぞ」

 

 

俺は契約書類に指さす。

 

 

「まずこれには参加プレイヤーが誰なのか。ホスト側のプレイヤーが誰なのか記されていないんだ」

 

 

「でもそれは謎解きに関係あるんじゃないでしょうか?」

 

 

「そうだな。でもまだあるんだ」

 

 

黒ウサギが言っていることには一理ある。

 

 

「ホスト側の勝利条件。それは何だ?」

 

 

「え?参加プレイヤーを殺害…………あッ!」

 

 

黒ウサギは驚愕した。

 

 

「書かれていません!」

 

 

「正解だ」

 

 

この紙には書かれていないのだ。

 

 

「じゃあ何故?という話になるがまだおかしな点がある」

 

 

「………………」

 

 

姫羅は一言も喋らない。

 

 

「最後の印だ」

 

 

「そ、それがですか?」

 

 

「ここには普通、魔王のコミュニティの名前が入るんだよ。ここの屋敷に魔王とのギフトゲームに関する資料があった」

 

 

俺は右手に分厚い紙の束を持つ。これは掃除している時に見つけたモノだ。

 

 

「では………この契約書類は!」

 

 

「コミュニティ【神影】が作ったんだ」

 

 

俺と黒ウサギは姫羅を見る。

 

 

「それがどうしたんだい?アタイにはわかr

 

 

「じゃあ教えてやるよ」

 

 

俺は姫羅の発言を被せる。

 

 

「『謎を解き、正体を暴く』と書かれている『謎』とはコミュニティ【神影】。『正体』とは姫羅を指しているんだよ」

 

 

俺は説明を始める。

 

 

「神影とは『御影』を変えた言葉だ。『御影』は神や貴人の霊魂という意味があるが………」

 

 

俺は顔を真っ青にした姫羅に向かって告げる。

 

 

 

 

 

「死んだ人の姿………そう意味もあるんだ」

 

 

 

 

 

「そんな………!?」

 

 

黒ウサギの目には涙があった。それでも俺は続ける。

 

 

「これが『謎』を解くということだ。そして、楢原 姫羅」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前の『正体』は………【死んだ亡霊】だ……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………嘘、ですよね?」

 

 

黒ウサギが姫羅の手を掴む。涙を流しながら。

 

 

「嘘だと言ってください!」

 

 

「………大樹」

 

 

姫羅が口を開く。

 

 

 

 

 

「正解だ」

 

 

 

 

 

姫羅はそう言って、微笑む。

 

 

「アタイは三年前に死んだ」

 

 

姫羅は小さな声で言う。

 

 

「アタイは復讐をしたかったかもしれない。技を伝えて、ね」

 

 

姫羅は右手に刀を持つ。

 

 

「でもいいの。そんなことに使うために技を伝えるのはダメなのよ」

 

 

そして、ギフトカードから銃を取り出す。長さは70cmはある大きな銃だ。

 

 

「だから、違う目的のために伝える」

 

 

左手に銃を持つ。

 

 

 

 

 

「大樹!アタイの技で大切な人を救いな!アタイの全部を!何もかも教えてやるから!」

 

 

 

 

 

姫羅は俺に刀と銃を向ける。

 

 

「ああ!言われなくてもそのつもりだ!」

 

 

俺は両手で一本の刀を持つ。

 

 

「右刀左銃(うとうさじゅう)式、【雅(みやび)の構え】!」

 

 

姫羅は右手の刀を逆手に持ち、一回転する。

 

 

「【竜巻ガンライズ】!!」

 

 

ズバンッ!!

 

 

ガキュンッ!ガキュンッ!ガキュンッ!

 

 

姫羅は小さな竜巻を起こし、竜巻の中に銃弾を撃ち込んだ。竜巻は俺に向かって突き進む。

 

 

「ッ!」

 

 

俺は横に避け、姫羅に突進する。

 

 

ドスッ!!

 

 

「がッ!?」

 

 

肩に痛みが走った。

 

俺は急いで横に飛ぶ。

 

 

ドスッ!ドスッ!!

 

 

地面に2発の銃弾が刺さった。

 

 

「まさか……!?」

 

 

俺は竜巻を見る。

 

 

 

銃弾を竜巻に乗せて、威力を上げた!?

 

 

 

「余所見してんじゃないよ!」

 

 

姫羅は俺に銃を向ける。

 

 

「クソッ!」

 

 

俺も姫羅に銃を向ける。

 

 

ガキュンッ!ガキュンッ!

 

 

同時に銃弾が撃たれた。

 

 

ガチンッ!

 

 

お互いにぶつかり、弾いた。

 

 

ドスッ!!

 

 

「がはッ!?」

 

 

「大樹さんッ!!」

 

 

弾いた瞬間、刀が既に俺の目の前にあった。

 

避けることも出来ず、床に膝をつく。

 

 

「どうした大樹!本気を見せてみろ!」

 

 

姫羅は声を荒げる。

 

 

「右刀左銃式、【零(ぜろ)の構え】!!」

 

 

姫羅は刀と銃を前に突き出す。これが姫羅の最強技だろう。

 

 

「【紅葉……】!」

 

 

俺は黒ウサギとの約束を思い出した。

 

 

(使うのダメだったな)

 

 

なら、どうする。

 

 

「もうこれしかない……!」

 

 

俺は左手を刀から離し、

 

 

 

 

 

左手に拳銃のコルト・パイソンを握った。

 

 

 

 

 

「「!?」」

 

 

二人は驚愕する。

 

 

「右刀左銃式、【零の構え】」

 

 

「………さすがだ。さすがだよ、大樹」

 

 

姫羅は笑う。

 

 

「次で決めるよ」

 

 

「ああ。かかって来い」

 

 

音速を越えたスピードで俺に向かってくる。

 

 

「【インフェルノ・零】!!!」

 

 

ガガガガガガキュンッ!!

 

 

姫羅は六発の銃弾を撃ち、一直線に並べる。

 

 

ガチンッ!!

 

 

その銃弾の最後尾から刀で突き刺し、銃弾同士、次々と当てていき、威力を上げる。

 

 

ドゴオオオオオォォォ!!

 

 

その威力は今までのとは桁違いだ。それでも、

 

 

「【白龍閃(びゃくりゅうせん)・零】!!!」

 

 

一発の銃弾を撃つ。右手の刀で上から地面に向かって叩きつける。

 

 

ドゴンッ!!

 

 

銃弾は勢いをつけ、都市をも破壊する兵器となり、姫羅に向かって飛んでいく。

 

 

二つの攻撃がぶつかった。

 

 

ドゴオオオオオォォォ!!

 

 

「きゃあッ!?」

 

 

黒ウサギが悲鳴をあげる。

 

攻撃は姫羅の方が押していた。

 

 

 

 

 

「まだだッ!!」

 

 

 

 

 

「「!?」」

 

 

大樹は右手の刀を両手で持ち、光の速度で自分の撃ち出した銃弾を横から斬りかかる。

 

 

「貫けえええええェェェ!!!」

 

 

 

 

 

ガキンッ!!

 

 

 

 

 

その瞬間、刀が折れるような音が聞こえた。

 

 

 

 

 

「アタイの負けだよ」

 

 

 

 

姫羅の刀が折れた。

 

 

「今日まで教えてきた技、大切にしてほしい」

 

 

「……………昨日、見たんだ」

 

 

俺は思い出す。あの光景を。

 

 

 

 

 

「泣いているお前を」

 

 

 

 

 

「見っとも無いな、アタイは」

 

 

姫羅は溜め息を吐く。

 

 

「俺は……姫羅を救えたか?」

 

 

「大丈夫だよ」

 

 

姫羅は俺に近づく。

 

 

「アタイは大樹のおかげ救われたよ」

 

 

姫羅は俺に抱き付いた。

 

 

「ありがとう」

 

 

姫羅の体が黄色く光る。

 

 

「黒ウサギもありがとうな」

 

 

次に姫羅は黒ウサギを抱きしめる。

 

 

「どうか安らかにお眠りください」

 

 

黒ウサギは涙を流しながら抱きしめ返す。

 

 

「そうするよ」

 

 

姫羅は最後の言葉を言う。

 

 

 

 

 

「ずっと……見守ってるよ、大樹。黒ウサギ」

 

 

 

 

 

そして、姫羅の体は消えた。

 

 

1本の刀と一丁の銃を残して。

 

 

刀の鞘にはこう刻まれていた。

 

 

 

 

 

『愛する人を守る者に』

 

 

 

 

 

姫羅が大樹に送る最初で最後のメッセージだった。

 

 

 




次回話から本格的に大樹の秘密などに触れていきたいと思います。

何故大樹はこのような力を手に入れたのか?

どうしてヒロインを他の世界につれていくのか?

黒幕はいったい誰なのか?

問題児第二巻のハーメルン戦で明らかにしていきたいと思っています。


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