どうやら俺はたくさんの世界に転生するらしい【完結】   作:夜紫希

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続きです。


ペルセウスの闇

「………というわけなんです」

 

 

「………………」

 

 

黒ウサギから俺が居なくなってから、今まであった話を全て聞いた。

 

 

「だ、大樹さん?」

 

 

「俺にファンは居なかったのか……」

 

 

(((((普通いないだろ………)))))

 

 

俺はショックを受けた。あの黒い翼の生えた金髪の美少女。レティシアは元【ノーネーム】の仲間だったらしい。

 

 

「それにしてもおんし。【海魔】と【グライアイ】を倒すのは早過ぎではないか?」

 

 

白夜叉は俺に質問する。

 

 

「一発KOだった」

 

 

「ちょっと待て!相手は二体以上いるのだが!?」

 

 

それを一発KOしたんだろ?何がおかしい?

 

 

「白夜叉。考えるのは諦めた方がいいわよ」

 

 

「美琴。軽く俺を人外にしないでよ」

 

 

美琴は白夜叉の肩に手を置く。そして、白夜叉は思考を放棄した。いや、しないでよ。

 

 

「ねぇ黒ウサギ。何でこの二つの球あれば【ペルセウス】とギフトゲームができるの?」

 

 

耀は黒ウサギに質問する。

 

 

「ペルセウスの名が冠する伝説、【ゴーゴン退治】あります。ここに来る途中、十六夜さんが教えてくれましたね?」

 

 

「ええ、教えてもらったわ」

 

 

黒ウサギの言葉にアリアはうなずく。

 

 

「伝説のあるコミュニティはその偉業の誇示と他のコミュニティへの挑戦の意味を込め、【伝説を再現したギフトゲーム】を用意することがあります」

 

 

「なるほどな。それで【海魔】と【グライアイ】か」

 

 

黒ウサギの言葉を聞き、十六夜には分かったようだ。

 

 

「YES。伝説に乗っ取って、これらの化け物を討伐することによって【ペルセウス】に挑むことができるようになったのです。さすが大樹さんです!!」

 

 

「よくも騙したな白夜叉」

 

 

「はて?私はギフトゲームを提供してやったが?」

 

 

「えぇー………」

 

 

どうやら俺はこの和風ロリの白夜叉に騙されたようだ。黒ウサギは喜んでいたが、俺が騙されてるのを知って、微妙な反応になってしまった。

 

 

「おい!【名無し】風情がいつまで僕を無視している!」

 

 

完全に空気となっていたルイオスがついに口を開く。

 

 

「本気なのかこれは!?そんなにゲームをやりたいのかお前らは!」

 

 

「だからこれ持って来たんだろ?」

 

 

ルイオスの大声に淡々と大樹は言う。

 

 

「ほら、旗印賭けたギフトゲームしようぜ」

 

 

「ぐッ、いいだろう………二度と逆らう気がなくなるぐらい徹底的に潰してやる……!」

 

 

ルイオスはもの凄い目力で俺を睨む。対して俺は笑みを浮かべてルイオスを見る。

 

 

「明日、僕の本拠地にてギフトゲームを開催する。逃げるなよ、【名無し】」

 

 

________________________

 

 

 

『ギフトゲーム 【FAIRYTALE IN PERSEUS】

 

・プレイヤー一覧

 

楢原 大樹

 

御坂 美琴

 

神崎・H・アリア

 

木下 優子

 

逆廻 十六夜

 

久遠 飛鳥

 

春日部 耀

 

【ノーネーム】ゲームマスター ジン=ラッセル

 

【ペルセウス】ゲームマスター ルイオス=ペルセウス

 

・クリア条件 ホスト側のゲームマスターを打倒。

 

・敗北条件 プレイヤー側のゲームマスターによる降伏。

 

プレイヤー側のゲームマスターの失格。

 

プレイヤー側が上記の勝利条件を満たせなくなった場合。

 

舞台詳細、ルール

 

・ホスト側のゲームマスターは本拠・白亜の宮殿の最奥から出てはならない。

 

・ホスト側の参加者は最奥に入ってはいけない。

 

・プレイヤー達はホスト側(ゲームマスターを除く)の人間に姿を見られてはいけない。

 

・姿を見られたプレイヤー達は失格となり、ゲームマスターへの挑戦権を失う。

 

・失格となったプレイヤーは挑戦権を失うだけでゲームは続行する事はできる。

 

 

宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の下、【ノーネーム】はギフトゲームに参加します。

 

【ペルセウス】印』

 

 

 

「ここが【ペルセウス】のギフトゲームの舞台ね」

 

 

美琴は目の前にある巨大な宮殿を見て呟く。

 

俺の怪我も身体強化?ですぐに治ったし、ここは一発。

 

 

「壊しt

 

 

「やめなさい」

 

 

アリアに止められた。俺、まだ2文字しか言ってないよ?

 

 

「姿を見られれば失格、か。つまりゲス(ペルセウス)を暗殺しろってことか?」

 

 

「伝説通りならあのゲス(ルイオス)は眠っているな」

 

 

「でもあのゲス(ルイオス)はそこまで甘くないでしょうね」

 

 

「ならあのゲス(以下略)を倒す前に迷宮をどう攻略するか考えましょう」

 

 

「あ、あははは………」

 

 

十六夜、大樹、優子、アリアの順にここに居ないルイオスを罵倒しまくる。黒ウサギは苦笑い。

 

 

「ま、まずは宮殿の攻略するにあたって作戦をかんg

 

 

「もう決めたぞ」

 

 

「え」

 

 

ジンの発言を十六夜が被せる。

 

 

「大樹、準備は?」

 

 

「完璧」

 

 

十六夜は俺に確認をとる。俺は親指を立てて答える。

 

 

「な、何ですかそれは?」

 

 

黒ウサギは俺の持っている緑色、黄色、赤色のチューブを見ながら質問する。

 

 

「今からこれで【ペルセウス】を地獄に落とすんだよ。へっへっへっ…………」

 

 

「き、気持ち悪いわ………」

 

 

「右に同じ」

 

 

「ねぇ仲間でしょ?ひどくない?」

 

 

飛鳥と耀にドン引きされた。

 

 

________________________

 

 

 

「【名無し】が侵入して来たぞ!」

 

 

「東西の階段を封鎖しろ!」

 

 

「相手は7人だけだ!捨て駒は限られてる!冷静に対処すれば抜かれることはない!」

 

 

「誰だ!冷蔵庫の奥に隠していた俺のプリンを食った奴は!」

 

 

「我らの旗印が掛かった戦いだ!負けられんぞ!」

 

 

号令と共に一糸乱れぬ動きを見せる【ペルセウス】の騎士達(1名除く)。敵の数は圧倒的に【ペルセウス】が有利であった。

 

 

だが、

 

 

 

 

 

ぶすッ

 

 

 

 

 

「ふがッ!?」

 

 

一人の騎士の鼻に何かが刺さった。その瞬間、

 

 

「あああああァァァ!!」

 

 

「「「「「!?」」」」」

 

 

その騎士は床に倒れ、のたうち回った。そして、気絶した。

 

 

「ど、どうした!?」

 

 

「こ、これは!?」

 

 

騎士の鼻には緑色のチューブが刺さっていた。

 

 

「まさか………わs」

 

 

ぶすッ

 

 

「びぎゃあああああァァァ!!」

 

 

「「「「「ひッ!?」」」」」

 

 

また一人、床に倒れ、のたうち回った。そして、気絶した。騎士の鼻には黄色のチューブが刺さっていた。

 

 

「誰だ!?」

 

 

「全員武器を構えろ!」

 

 

「敵は不可視のギフトを持っているぞ!」

 

 

騎士達は武器を構え、周りを警戒する。

 

 

 

 

 

「バァーカ」

 

 

 

 

 

ぶすぶすぶすぶすぶすぶすぶすぶすぶすッ

 

 

「「「「「ぎゃあああああァァァ!!」」」」」

 

 

そして全員床に倒れ、のたうち回った。そして、全員気絶した。

 

 

「「「「「うわぁ………」」」」」

 

 

隠れていた美琴、アリア、優子、飛鳥、耀、ジンが出てくる。

 

 

「それにしてもこれは………」

 

 

「敵だけど同情するわ」

 

 

ジンは両手を合わせ合掌。飛鳥は気絶している騎士達に同情する。

 

 

「あの二人は?」

 

 

「今頃違う騎士を襲っているわ」

 

 

「………地獄絵図」

 

 

美琴の質問にアリアが答える。耀は目をつぶり合掌。

 

 

ぎゃああああああァァァ…………!!

 

 

遠くから騎士の叫びが聞こえる。

 

 

「もう手に負えないわね………」

 

 

優子は溜め息を吐く。

 

史上最強の問題児の二人。止める者はいなかった。

 

 

________________________

 

 

「あああああァァァ!!」

 

 

次々と騎士の鼻にチューブが刺さっていく。だが、刺した者の正体が分からない。

 

 

「どうも。わさび担当の大樹です」

 

 

「からし担当の十六夜様だ」

 

 

「ど、どこだ!?姿をあらわs

 

 

ぶすッ

 

 

「せあああああァァァ!!」

 

 

騎士は(以下略)。

 

 

そう。俺たち二人は【ペルセウス】の騎士の鼻にわさび、からしをぶっ刺しているのだ。威力はご覧のとおり。トラウマ間違いなし。

 

光の速度で相手の後ろに回り込み、わさびを鼻にぶっ刺さす。もしくは投げてぶっ刺す。

 

 

「ッ!」

 

 

俺は後ろを振り向く。

 

 

「そこだあああァァ!!」

 

 

俺はわさびを二本、誰もいない虚空に投げる。

 

 

ぶすッ

 

 

「ぴゃあああああァァァ!!」

 

 

否。誰かいた。

 

悲鳴が響き渡る。見事に鼻の二つの穴に入ったようだ。神業だろこれ。

 

 

「………不可視か。よくわかったな」

 

 

「不可視のギフトは音や気配までは消せてないみたいだな。耳を澄ませれば聞こえた」

 

 

俺は見えない騎士の頭にかぶっている兜を取る。すると、敵の姿が見えるようになった。

 

そして、俺が被る。

 

 

「どうだ?」

 

 

「ああ。バッチリ見えてないぜ」

 

 

あーあ。この俺が不可視ギフトなんて手に入れさせたら………。

 

 

「無双してくる」

 

 

「我慢しろ。さっき言っただろ」

 

 

「チッ、命拾いしたな【ペルセウス】」

 

 

不可視ギフトを手に入れたら真っ先に我らのリーダーことジンにあげる作戦だ。仕方ない。

 

 

「じゃあジン達と合流するか」

 

 

「その前に一つ質問。その赤いチューブはいつ使うんだ?」

 

 

「ああこれ?ルイオスに」

 

 

「中身は何だ?とうがらし?」

 

 

「ハバネロ」

 

 

「死ぬなあいつ」

 

 

白夜叉からいただきました。ルイオスざまぁw。

 

 

________________________

 

 

ここは白亜の宮殿の最奥。闘技場のような造りになっており、上には空が見える。大きさはとても広い。

 

 

「……………」

 

 

黒ウサギは闘技場の一つの門を見つめる。この門から誰にも見つからず大樹達が入ってくるればルイオスと勝負ができる。黒ウサギはみんなが無事に来ることを願っていた。

 

 

「無駄だよ」

 

 

後ろからルイオスに声がかけられる。

 

 

「今までにこのゲームで僕に辿り着いた者は………ゼロだ」

 

 

「果たしてそうでしょうか。私たちのコミュニティは弱くありませんよ」

 

 

「どうせ辿り着いても僕には勝てない。僕の力知っているだろ?」

 

 

ルイオスは首についたペンダントを見せつける。

 

 

 

 

 

「英雄ペルセウスの偉業の証………隷属させた元・魔王」

 

 

 

 

 

「へぇ?そいつは俺たちに勝てるのか?」

 

 

 

 

 

 

 

「「!?」」

 

 

近くから声が聞こえた。

 

 

ドゴンッ!!

 

 

門が勢いよく吹っ飛ぶ。吹っ飛ばした人物は。

 

 

「俺の方が飛距離長い」

 

 

「ふっ飛び方は俺の方が綺麗だろ」

 

 

十六夜と大樹がいた。

 

 

「どうして手で開けないのかしら………」

 

 

「男の子だから?」

 

 

「みなさん僕を見ないでください」

 

 

飛鳥の疑問に耀が答えるとみんなの視線がジン集まる。

 

 

「もう何も言わないわよ、あたし」

 

 

「あれは頭に風穴あけないと駄目ね」

 

 

「それでも死なないんでしょ、大樹君は」

 

 

美琴、アリア、優子は呆れていた。

 

 

「みなさん!」

 

 

「失格者が居ないだと!?部下は一体何しているんだ!!」

 

 

黒ウサギは喜ぶ。ルイオスは【ノーネーム】に失格者が0人なことに驚愕した。

 

 

「それは違うわよ。あたしとアリアは失格したわ」

 

 

美琴はルイオスに誤解を解く。

 

 

「まさか本物の【ハデスの兜】があるなんてね。油断したわ」

 

 

美琴は右手に持った兜を持って溜息を吐く。

 

 

「!?」

 

 

ルイオスは目を疑った。

 

 

(あれは完全に気配を消すほどの恩恵を持った【ハデスの兜】だぞ!?)

 

 

レプリカとは比べものにならない。その兜を見破られたことに驚愕した。

 

 

「でもあれはやりすぎだろ。俺みたいだな」

 

 

「あたしをあんたと一緒にしないで!」

 

 

「いや、相手が避けれないほどの電撃を振りまいて部屋を半壊させるとか俺じゃん」

 

 

「……………」

 

 

大樹と美琴の会話を聞いたルイオスの目が死んだ。

 

美琴は見破ったわけでなく、適当に電撃を振りいて当てただけでした。

 

 

「あの騎士、白目向いてたぞ」

 

 

「十六夜君も言わないであげて」

 

 

十六夜の言葉を優子が止める。

 

 

「さて、そろそろ戦おうぜ。あ、優子は後ろに居てくれ」

 

 

「分かったわ」

 

 

大樹は優子を後ろに下がらせ、安全地帯に移動させる。

 

 

「全員無事に帰れると思うなよ………!」

 

 

ルイオスは【ヘルメスの靴】を使って空高く飛ぶ。

 

 

「目覚めろ……」

 

 

ルイオスは首についたペンダントを引き千切る。

 

 

 

 

 

 

 

「【アルゴールの魔王】!!」

 

 

 

 

 

ルイオスは地面にペンダントを落とす。

 

 

ごおおおおおォォォ!!

 

 

ペンダントから黒い光が溢れ出す。その光の中から、

 

 

 

 

 

「ぎゃあああああァァァ!!!」

 

 

 

 

 

頭を狂わせてしまいそうな絶叫と共に悪魔が降臨した。体中に拘束具と束縛具用のベルトを巻いて、灰色の髪をなびかせる。

 

 

ギュインッ!!

 

 

アルゴールの口からどす黒いレーザー光線が上空に発射された。

 

 

「やべぇ!?」

 

 

「チッ!」

 

 

大樹は急いで美琴とアリアの手を引き、優子と黒ウサギの所に走る。十六夜は飛鳥と耀の手を引き、ジンの所に向かって走る。

 

 

「飛べない人間って不便だよね」

 

 

ルイオスは笑う。大樹と十六夜は構える。

 

 

 

 

 

「落ちてくる雲も避けられないんだから」

 

 

 

 

 

その瞬間、レーザー光線に当たった雲が石となって降って来た。

 

 

「二刀流式、【阿修羅の構え】!」

 

 

「おらあああァァ!!」

 

 

大樹は腰から二本の刀を両手に持つ。十六夜は飛翔する。

 

 

「【六刀鉄壁】!!」

 

 

ズズズズズバンッ!!

 

 

音速の速さで石となった雲を斬っていき、みんなを守る。空高くから落下して来た石はとても重かったが、大樹にとっては余裕だ。

 

 

ドゴッ!!

 

 

十六夜は降って来た石の雲を粉々に砕き、落下地点に石が降らないようにした。

 

 

「大樹さん!?」

 

 

黒ウサギが俺の名前を呼ぶ。

 

 

「大丈、夫だ……!」

 

 

「でも!ひ、左手が!」

 

 

俺の左手は肩の部分まで石化していた。刀も石になり、折れた。黒ウサギの顔が真っ青になっている。いや、まわりのみんなもだ。

 

 

「十六夜は大丈夫か?」

 

 

「ああ、何ともない」

 

 

十六夜は俺に無事だと言う。俺だけかよチクショウ。

 

 

「あいつは【アルゴルの悪魔】か」

 

 

「ああ、間違いねぇ」

 

 

十六夜の言葉に俺は肯定する。

 

 

「【アルゴルの悪魔】って?」

 

 

優子は俺を心配しながら聞く。俺は説明を始める。

 

 

「星座でペルセウス座は知ってるだろ?その星座には【アルゴル】と呼ばれる恒星があるんだ」

 

 

「そ、それがどうしたのよ?」

 

 

「まだ話は終わってないぞ、美琴。ルイオスが首にペンダントをつけていただろ。それが重要なんだ」

 

 

俺は一度言葉を区切る。

 

 

「恒星の【アルゴル】はペルセウス座の【メデューサの首】と呼ばれている場所にあるんだ」

 

 

「「「「「!?」」」」」

 

 

みんな分かったみたいだな。

 

 

「【アルゴル】は悪鬼。もしくは【アルゴール】と呼ばれている」

 

 

十六夜が俺の説明に付け足す。

 

 

 

 

 

「ルイオスは【アルゴールの魔王】を隷属させているんだ。そして【メデューサ】の力である、石化を持っている」

 

 

 

 

 

「それが…………あの化け物の正体……!」

 

 

優子はアルゴールを睨む。だが、優子の手は震えていた。

 

 

「ご明察とでも言っておこうか」

 

 

ルイオスは宙に浮いたまま話す。

 

 

「星ひとつの力を背負う大悪魔。箱庭最強種の一角、【精霊】が僕の切り札だ!」

 

 

ルイオスはニヤリッと笑う。優子はルイオスから目を逸らす。

 

 

「大丈夫だ。心配するな」

 

 

俺は優子の頭を右手で優しくポンッと撫でる。

 

 

「でも大樹君の左手が!」

 

 

 

 

 

「治ったよ」

 

 

 

 

 

「「「「「え!?」」」」」

 

 

石になった大樹の左手は元通りになっていた。まるで石化なんてなかったようなぐらいに綺麗だった。

 

 

(神の力となるとここまですごいのか)

 

 

致命傷となる傷や怪我に対して異常な回復力を見せるこの力。チートすぎる。

 

 

「大樹さんのギフトは無いはずじゃ……!?」

 

 

黒ウサギは俺の左手を見て目を疑った。

 

 

「んなことは後で話す。それよりも」

 

 

俺は立ち上がり、前に出る。そしてルイオスとアルゴールを見る。

 

 

「レティシアを返して貰うぞ、クソ野郎共」

 

 

「この………【名無し】風情があああああァァァ!!」

 

 

俺の言葉にキレたルイオスはアルゴールを俺に向かって突進させる。

 

 

「一刀流式、【風雷神の構え】」

 

 

左手に持っていた剣は使えないので、右手に持っている残り一本の剣を両手で握り絞める。

 

 

「【覇道華宵】!!」

 

 

光の速さで間合いを詰め、一撃必殺の威力を秘めた剣で斬る。

 

 

ズバンッ!!

 

 

アルゴールの腹部を斬る。重い音が響く。

 

 

「ぎゃッ!?」

 

 

ドゴオオオオオォォォ!!

 

 

アルゴールは一瞬で後ろの壁にまで吹っ飛んだ。

 

 

「馬鹿な!?」

 

 

「余所見してんじゃねぇ!」

 

 

ルイオスが呆気に取られていると、十六夜は第三宇宙速度の速さで宙に浮いたルイオスに近づく。

 

 

ドゴンッ!!

 

 

十六夜の蹴りがルイオスに当たった。とんでもないスピードで地面に落下し、激突する。

 

 

「ぐはッ!?」

 

 

ルイオスの口から血が流れる。

 

 

「き、貴様……人間か!?」

 

 

「ああ、大樹よりは人間だぜ」

 

 

「くそッ!アルゴール!!」

 

 

ルイオスの言葉に十六夜は笑みを浮かべて返答する。ルイオスは自分の隷属した魔王を呼ぶ。だが、

 

 

「あ、アルゴール……?」

 

 

返事は無い。

 

アルゴールが飛んでいった場所。巻き上がった砂埃が晴れる。

 

 

「嘘だろ………!?」

 

 

アルゴールはいた。だが、ピクリッとも動かない。

 

 

「勝負ありだ、ルイオス」

 

 

大樹は刀を鞘に直し、告げる。

 

 

「ふざけるなッ!!」

 

 

ルイオスはギフトカードから炎の弓を取り出す。

 

 

ガキュンッ!!

 

 

「ぐッ!?」

 

 

一発の銃声が鳴り響く。

 

ルイオスは手に痛みを感じ、弓を放した。弓は地面に落ちる。

 

 

ガキュンッ!!

 

 

また一発の銃声が鳴り響いた。

 

銃弾は弓に当たり、遠くに飛んでいった。

 

 

「お前……何をした……!?」

 

 

ルイオスは俺を見る。ルイオスの顔は真っ青だった。

 

 

【不可視の銃弾】

 

 

目に見えない速さで早撃ちをしたのだ。まぁ、パクッた技だけどな。

 

 

「お前……本当に面白いな」

 

 

十六夜がその光景を見て笑う。

 

 

「ルイオス。お前の負けだ」

 

 

「……くそッ」

 

 

ルイオスは悔しそうな顔をする。

 

 

「僕の負k

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃァァァ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「!?」」」」」

 

 

そこにいた全員が驚いた。

 

アルゴールは気味の悪い声で叫んでいた。

 

 

「ぎゃあああああァァァ!!」

 

 

「そうだ……それでいいアルゴール!ハハ、まだ終わってないぞ!!」

 

 

アルゴールはどす黒いオーラを放出しながら立ち上がった。ルイオスは笑いながらアルゴールに近づく。

 

 

「行け!アルゴール!!【名無し】を叩き潰せ!」

 

 

「待てルイオス!!」

 

 

俺はルイオスに向かって走る。なぜなら、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アルゴールはルイオスに向かって拳を振り上げていたから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え?」

 

 

「ぎゃあああああァァァ!!」

 

 

ドゴッ!!

 

 

間一髪の所で俺はルイオスに突進して、一緒にかわした。

 

 

ドゴオオオオオォォォ!!

 

 

アルゴールの叩きつけた拳は地面に振り下ろされた。地面は割れていき、辺り一帯を揺らす。

 

 

「何であんなに元気になってんのよ!?」

 

 

「危ない優子!」

 

 

優子はアルゴールの豹変振りを見て、驚愕した。耀は運動神経がない優子を地震から守る。

 

 

「十六夜!全員ここから脱出させろ!」

 

 

俺はルイオスを十六夜に向かって投げる。

 

 

「んなッ!?」

 

 

「お前はどうするつもりだ大樹!」

 

 

ルイオスは投げられて、驚愕する。十六夜はルイオスの服の襟を掴み、キャッチする。

 

 

「俺の一番強い技でアルゴールをぶっ飛ばす」

 

 

「………いいぜ。その役くれてやる」

 

 

「サンキュー」

 

 

十六夜はみんなと一緒に脱出する準備を始めた。

 

 

「ぎゃあああああァァァ!!」

 

 

「ったくうるせぇ奴だ…………ん?」

 

 

俺はアルゴールを見て異変に気付いた。

 

 

 

 

 

アルゴールの体中に拘束具と束縛具用のベルトを巻いてたモノが全て消えていたのだ。

 

 

 

 

 

(待て。一体誰がこんなことを……?)

 

 

ルイオスにそんな暇はなかった。俺の攻撃で外れた?いや、そんな馬鹿な。

 

 

「第三者がやった………」

 

 

それしか考えられなかった。

 

 

「ぎゃあああああァァァ!!」

 

 

「………今はそれどころじゃないか」

 

 

俺は一本の刀を両手で握る。

 

 

「一刀流式、【紅葉鬼桜の構え】」

 

 

全ての力を一本の刀に集中させる。

 

 

「ぎゃあああああァァァ!!」

 

 

ギュインッ!!!!

 

 

アルゴールは口から赤いレーザー光線を出す。さきほどのレーザー光線とは格が違う。

 

 

だが、それがどうした。

 

 

そんなモノ、貫いてやる。

 

 

 

 

 

「【一葉(いちよう)・風鈴閃(ふうりんせん)】!!」

 

 

 

 

 

刀を前に突き出し、光の速度で駆け抜ける。

 

刀の先端にレーザー光線が当たる。

 

 

パキンッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レーザー光線が砕けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うおおおおおおォォォ!!」

 

 

そのままレーザー光線を破壊しながらアルゴールに向かって突進する。

 

 

ドスッ!!

 

 

「ぎゃあッ!?」

 

 

刀がアルゴールに突き刺さる。

 

そして、そのまま光の速度で走り抜ける。

 

 

ドゴオオオオオォォォ!!

 

 

アルゴールと共に後ろの壁にぶち当たった。闘技場が崩壊していく。そして、

 

 

 

「ぎゃ……ぁ……」

 

 

 

「はぁ、はぁ……」

 

 

 

俺は肩を上下させ、呼吸を整える。アルゴールは地面に倒れ、刀を引き抜く。

 

 

 

アルゴールは黒い光の粒子となり、消えた。

 

 

 

________________________

 

 

 

「…………ぅん?」

 

 

「だ、大樹さん!?」

 

 

目が覚めると俺の目の前には黒ウサギの顔があった。

 

 

「…………我は誰だ?」

 

 

「一人称が変わってる!?」

 

 

「冗談だ。何で俺はここで寝てんだ?」

 

 

アルゴール倒して…………あれ?その先の記憶が全く思い出せない。

 

 

「大樹さんは白亜の宮殿を壊して生き埋めになっていたんですよ!」

 

 

「はぁいいいい!?」

 

 

嘘だろ!?何があった俺!?

 

 

「何日寝ていたんだ俺は!?」

 

 

「えっと、まだ12時間は経ってないと思いますが……」

 

 

「…………え?」

 

 

「ゲームが終了して12時間は経ってないと言っています……」

 

 

「 (´・ω・`)? 」

 

 

「本当です。黒ウサギは嘘を吐きません」

 

 

吐いてほしかった。

 

 

「まぁいいか。慣れたわ」

 

 

「それとですね……」

 

 

黒ウサギは俺に向かってお辞儀をした。

 

 

「助けてくれt

 

 

ペチンッ

 

 

「ふぎゃッ!?」

 

 

俺は黒ウサギに凸ピンをかました。

 

 

「何するのですか!?せっかく黒ウサギがちゃんとお礼を!」

 

 

「いらねぇよ」

 

 

「え?」

 

 

俺は笑って答える。

 

 

「コミュニティの仲間を助けるぐらい当たり前だ。当たり前なことをしただけ。礼なんかいらねぇよ」

 

 

「大樹さん……」

 

 

黒ウサギも笑う。

 

 

「俺はこのコミュニティが大好きだ。守りたい。幸せに導きたい」

 

 

俺は告げる。

 

 

 

 

 

「そんな場所に居たいから、これからもよろしくな」

 

 

 

 

 

「YES!黒ウサギは大樹さんを歓迎します!」

 

 

 

 

 

黒ウサギは元気に答えてくれた。

 

 

 

________________________

 

 

 

【ペルセウス】とのギフトゲームが終わって3日後。

 

 

 

「ほい、ハンバーグ」

 

 

「「「「「わぁ!!」」」」」

 

 

俺は久しぶりにキッチンで料理をしていた。俺の料理を見て子供たちは目を輝かせる。

 

 

「どうして肉を使っていないのに肉の味がするのだ……」

 

 

「おいレティシア。つまみ食いするな」

 

 

レティシアは俺が作った白いハンバーグを食べていた。

 

 

「メイドがそんなことするなよ」

 

 

「私としては大樹がメイドになってほしい」

 

 

「そんなフリフリな服は俺には似合わん」

 

 

レティシアは純白のメイド服を着ていた。

 

何故レティシアがメイドになったかというと……

 

 

「十六夜、飛鳥、そして耀。ものすごいこと言い出したなあいつら」

 

 

「私は今回の件で恩義を感じている。家政婦をしろというなら喜んでやるよ」

 

 

あの問題児三人衆がレティシアに向かって「今日からよろしく、メイドさん」と言いやがった。それをレティシアは受け入れた。よってこの状況。

 

元・魔王で【箱庭の騎士】と呼ばれた方がこんなことでいいのか?

 

 

「メイド服も悪くないな」

 

 

レティシアは笑顔でその場を一回転。いや、良いわ。守りたい、この笑顔。

 

 

「はい、チャーハン」

 

 

「待て!?白ごはんどころか小麦粉もないのにどうやって作った!?」

 

 

俺の料理を見て、レティシアは驚愕した。

 

 

________________________

 

 

 

「ふがふふがふふはんが?」(何で外なんだ?)

 

 

「食べながらしゃべるな」

 

 

美琴にチョップされた。地味に痛い。

 

 

「何で外で食事するんだ?」

 

 

歓迎会は星空がよく見える夜の水樹の貯水池付近で行われていた。わざわざ外に出る理由が分からなかった。

 

 

「黒ウサギが外に来てって」

 

 

「それにしても寒いわ」

 

 

耀が理由を説明する。どうやら発案者は黒ウサギみたいだ。飛鳥は手に息を吹きかけて手を温める。

 

 

「俺のパーカー着るか?」

 

 

「いいのかしら?」

 

 

「ああ、俺は大丈夫だ」

 

 

俺はTシャツの上に着ていた黄色いパーカーを飛鳥に着させる。

 

 

「ありがとう大樹。でもそのTシャツは脱いでほしいわ」

 

 

「断る」

 

 

俺は『一般人』と書かれたTシャツを着ていた。

 

 

「何枚あるのよ……」

 

 

「毎日作ってます」

 

 

「はぁ………」

 

 

「大樹は裁縫もできるのか」

 

 

美琴が呆れていた。だが、俺は衝撃の事実を伝えた。その瞬間、美琴は溜め息をついた。レティシアは俺を尊敬の眼差しで見ていた。いやいや、照れますなぁ。

 

 

「それでは新たな同志を迎えた歓迎会を始めます!」

 

 

黒ウサギはみんなに聞こえるように大きな声で言う。歓迎会は今始まったみたいだ。ごめん。もう食ってた。

 

 

「ねぇ黒ウサギ。何で外で歓迎会するの?」

 

 

俺たちが一番疑問に思っていたことをアリアが代表して尋ねる。

 

 

「先日打倒した【ペルセウス】のコミュニティですが、一連の騒動の責任から」

 

 

黒ウサギは一度言葉を区切る。

 

 

 

 

 

「あの空から旗を下ろすことになりました」

 

 

 

 

 

「「「「「「ん?」」」」」

 

 

黒ウサギは星が輝く空に指をさす。

 

 

「……おい黒ウサギ。まさか……」

 

 

十六夜はその意味を理解したようだ。俺も分かった気がする。

 

 

「みなさん!箱庭の天幕にご注目ください!」

 

 

 

 

 

夜の空に流星群が現れた。

 

 

 

 

 

ペルセウス座を消して。

 

 

 

 

 

「綺麗……」

 

 

優子はその光景に目を奪われた。いや、優子だけでない。みんなだ。

 

 

「ハハ、やっぱ箱庭はすげぇな」

 

 

十六夜は笑う。

 

 

「なぁ、大樹」

 

 

「賛成」

 

 

「やっぱ分かってたか」

 

 

十六夜は俺に質問しようとするが、俺には分かっていた。いやー、考えてることは同じだな。

 

 

 

 

 

「あそこに俺たちの旗を飾る」

 

 

 

 

 

「正解」

 

 

「「「「「!」」」」」

 

 

俺の答えに十六夜は拍手する。みんな呆気を取られた。

 

 

「じゃあ目標は………」

 

 

俺は右手を高く上げる。

 

 

 

 

 

「俺たちの旗をあの星空に飾ることだ!!」

 

 

 

 

 

「「「「「おぉッ!!」」」」」

 

 

 

みんなも右手を挙げる。

 

 

みんなの心が一つになったような気がした。

 

 

________________________

 

 

 

「まさか覚醒した【アルゴルの悪魔】を倒すとは………」

 

 

一人の青年がコミュニティ【ノーネーム】を見ながら静かに呟く。

 

 

「最強の神の【保持者】、か………果たしてそうかな?」

 

 

青年は笑う。

 

 

 

 

 

「その力が冥府の神の【保持者】に勝てるのか?」

 

 

 

 

 

そして、青年は姿を消す。

 

 

 




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