どうやら俺はたくさんの世界に転生するらしい【完結】   作:夜紫希

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続きです。


ペルセウス 舞台準備

「こんな場所からの入室で済まない。ジンには見つからずに黒ウサギに会いたかったんだ」

 

 

金髪の少女はそう言いながら窓から部屋の中に入る。

 

彼女の名はレティシア=ドラクレア。元・魔王で、【箱庭の騎士】と呼ばれる純血の吸血鬼。元ノーネームに所属していた人物である。

 

 

「へぇ、前評判通りだ。目の保養になる」

 

 

十六夜はニヤリと笑みを浮かべながらレティシアに告げる。

 

 

「ふふ、鑑賞するなら黒ウサギも負けてはいないと思うのだが」

 

 

「あれは愛玩動物なんだから弄ってナンボだろ」

 

 

「ふむ、否定はしない」

 

 

「否定してください!!」

 

 

黒ウサギは意気投合した2人に涙目で抗議した。

 

 

「そ、それでどのような要件でここに……?レティシア様は囚われの身のはずでは……」

 

 

「もしかして【サウザンドアイズ】のギフトゲームかしら?」

 

 

黒ウサギの言葉を聞き、優子は思い出し確認をとる。

 

 

「はい、正確にはコミュニティ【ペルセウス】です」

 

 

「え、どういうことかしら?【サウザンドアイズ】ではないの?」

 

 

優子は黒ウサギに質問する。

 

 

「コミュニティ【ペルセウス】は【サウザンドアイズ】の傘下のコミュニティです」

 

 

「私のことはどうでもいい。私がここにきた理由は新生コミュニティがどの程度の力を持っているのか見に来たんだ」

 

 

レティシアは黒ウサギの説明をやめさせ、目的を話す。

 

 

 

 

 

「ガルドに鬼種を与えたのは純血の吸血鬼たるこの私だ」

 

 

 

 

 

「「「「「うん、知ってる」」」」」

 

 

 

 

 

「理由はガルドに鬼種を与え………………………え?」

 

 

レティシアが固まった。黒ウサギは苦笑いだ。

 

 

「それなら大樹から聞いたわよ。空に金髪の美少女が飛んでいたのを見たってね。あなたのことでしょう?」

 

 

「そんなバカな!?黒ウサギからも気づかないほど気配は消したはずだぞ!?」

 

 

飛鳥は大樹が会議で言っていたことを思い出し言う。レティシアは驚愕した。

 

 

「大樹は普通じゃない」

 

 

「ああ、俺より強いぞあいつ。人間じゃねぇ」

 

 

耀と十六夜は大樹を称賛?する。

 

 

「……大樹は

 

 

「あまり深く考えないほうがいいわよ」

 

 

「知るのもやめときなさい」

 

 

美琴とアリアはレティシアに質問をさせない。

 

 

「何者なんだ……大樹は……!?」

 

 

レティシアは自分より強いということが分かり、震えた。

 

だが、みんなは大樹の言葉をもう一度思い出す。

 

 

 

 

 

『空に金髪の美少女が飛んでいたのを見たんだ!あれはきっと俺のファンだ!かっこいい俺の姿を見に来t(以下略)』

 

 

 

 

 

(((((ああ見えて結構アホっぽいところあるとか言えないなぁ……)))))

 

 

 

 

 

大樹のイメージを崩すかどうか悩んでいた。

 

 

________________________

 

 

【アホ(笑)視点】

 

 

「ヘックシュン!!」

 

 

くしゃみが出た。おい大樹視点って書けよそこ。誤字だ。

 

 

「誰か俺の噂でもしてんのか?」

 

 

だったらノーネームだな。あそこが俺を馬鹿にしている。うん、確定。

 

俺は両手にお茶が入ったコップを飲む。

 

 

「うめぇ……」

 

 

「おんし、本当に何しにきたのだ……」

 

 

俺の目の前に座っているのは【サウザンドアイズ】の幹部である白夜叉が座っている。

 

 

「白夜叉先生……!ギフトゲームがしたいです………」

 

 

「嘘泣きはいいから理由を言わんか」

 

 

えー、せっかくボケたのに。

 

 

「俺たち【ノーネーム】は貧乏だ」

 

 

「そうじゃのう」

 

 

「人材が少ない」

 

 

「そうじゃのう」

 

 

「俺イケメン」

 

 

「そうじゃ………のう?」

 

 

はい、余計なことは言わないべきだと学習しました。傷つくわー。

 

 

「だからこう………一気に稼ぎたいんだよ」

 

 

「それでギフトゲームを開催しろと?」

 

 

「もしくはどこかのコミュニティが開催するギフトゲームを紹介してくれ」

 

 

俺の発言に白夜叉は目を細めた。

 

 

「それならとっておきがあるぞ」

 

 

「さすが。どんなギフトゲームだ?」

 

 

俺は白夜叉からコミュニティ、ギフトゲームの話を聞いた。そして、

 

 

「へぇ、そんなこともできるのか」

 

 

俺はお茶を飲みほし、立ち上がる。

 

 

「じゃあ行ってくる。ありがとうな、白夜叉」

 

 

「いや、私も一緒に行こう。目的の場所の案内はあったほうがいいだろう」

 

 

「サンキュー」

 

 

俺と白夜叉は和室の部屋を出て、目的地に向かった。

 

 

________________________

 

 

「土の怪物については私には分からん」

 

 

「そう………」

 

 

レティシアの言葉を聞いた美琴は小さい声で返事する。

 

 

「私も見ていて助けようと思ったが契約(ギアス)が邪魔して入れなかったんだ」

 

 

「ゲームの参加者に書かれてなかったからな」

 

 

十六夜は土人形が出てきた時に上から降って来た黒い契約書類(ギアスロール)を思い出す。

 

 

「って私はコミュニティがどの程度の力を持っているか知りたいんだが!?」

 

 

いつの間にかテーブルの上にはジュースやお菓子が広がっており、みんな座ってくつろぎモードだった。

 

 

「なら簡単な方法があるぜ」

 

 

十六夜はテーブルに置いてあるクッキーを食べながら言う。

 

 

「あんたがその力で試してみればいい。ここじゃ狭い。表へ出ようぜ、元・魔王様」

 

 

十六夜は挑発するかのように窓の外に指をさす。

 

 

「な、何を言い出すのですか十六夜さん!?」

 

 

「ふふ、なるほどな。下手な策を弄さず初めからそうしていればよかったな」

 

 

黒ウサギは十六夜の言葉を聞き、驚く。そして、レティシアは笑い、

 

 

ダンッ!!

 

 

その瞬間、2人の姿が消えた。いや、2人は窓の外から出て広い場所に移動したのだ。

 

 

「ちょ、ちょっとお二人様!?」

 

 

黒ウサギも窓から出て、二人の後を追いかける。

 

 

「私たちも行きましょ!」

 

 

アリアの言葉に残っていた美琴、優子、飛鳥、耀はうなずいた。

 

 

________________________

 

 

玄関の前にはジンがいた。

 

 

「あ、みなさん。そんなに慌てt

 

 

「『そこで阿波踊りしていなさい!』」

 

 

「はいッ!?」

 

 

レティシアはジンとはできれば会いたくないと言っていたことを思い出し、飛鳥はギフトを使ってジンの動きを止める。

 

 

「………恐ろしいわね」

 

 

「いいから行きましょ」

 

 

美琴は苦笑いで言う。飛鳥は後ろを振り向かず、外に出る。

 

 

「だ、誰かッ!助けてくださーいッ!!」

 

 

ジンの声が後ろから聞こえた。

 

 

「「「「「………………」」」」」」

 

 

少女たちが振り向くことはなかった。

 

 

「いたわ!」

 

 

アリアが指をさし、みんなに伝える。アリアが指をさす方向には背中から黒い翼を広げたレティシアがいた。そして、下には十六夜が対立していた。

 

 

「制空権を支配されるのは不満か?」

 

 

「はッ、鳥に猿が不平を漏らしたところで飛べない猿が悪いだけの話だ。それがギフトの競い合いだろ」

 

 

レティシアの言葉に十六夜は鼻で笑う。

 

 

「ふふ、白夜叉の言う話通り歯に衣着せぬ男だな」

 

 

レティシアは懐からギフトカードを取り出す。

 

 

シュンッ!!

 

 

カードは光り、光の粒子が飛び散る。そして、収束する。レティシアの手には巨大なランスが握られていた。

 

 

「双方が共に一撃ずつ撃ち合い、それを受けて最後に立っていた者の勝利!」

 

 

レティシアは自分の身長の同じくらいあるランスを回しながらゲームの説明をする。

 

 

「悪いが先手は貰うぞ」

 

 

「好きにしな」

 

 

「なるほど、気構えは十分。あとは実力が伴うか否か……」

 

 

ゴオォッ!!

 

 

「「「「「!?」」」」」

 

 

ランスは赤黒い光を身に纏う。その光景に十六夜以外の者が驚愕する。

 

 

「見せてみよッ!!」

 

 

ドゴオオオオォォォ!!

 

 

そして、ランスが勢い良く投擲された。

 

十六夜は右手を握り、

 

 

「しゃらくせえええェェッ!!!」

 

 

ドゴオオオオォォォ!!

 

 

ランスに真正面からぶん殴った。

 

 

バキンッ!!

 

 

ランスは折れ、その残骸が凶器と化し、レティシアに飛んでいく。

 

 

「なッ!?」

 

 

レティシアは驚愕する。

 

 

(これほどか………!この才能ならば………あるいは………!)

 

 

レティシアは避けようとしなかった。

 

 

「レティシア様!!」

 

 

黒ウサギがレティシアに飛び掛かり、凶器となった残骸をレティシアと一緒に避ける。

 

 

「く、黒ウサギ!何を!」

 

 

黒ウサギはレティシアが持っているギフトカードを取り上げた。黒ウサギは助けることと同時に気になることがあった。

 

 

「【純血の吸血姫(ロード・オブ・ヴァンパイア)】。やはり、かつてと名前が変わっています。鬼種が残っているものの神格が残っていません!」

 

 

「……………」

 

 

黒ウサギの言葉にレティシアは下を向き、黙る。

 

 

「鬼種の純血と神格を両方備えていたからこそ【魔王】と呼ばれていたのに……」

 

 

「道理で歯ごたえがないわけだ」

 

 

黒ウサギの声に十六夜は溜め息をつく。

 

 

「もしかして【ペルセウス】に奪われたの?」

 

 

優子がレティシアに聞く。だが、レティシアは答えない。

 

 

「いいえ、ギフトとは魂の一部。隷属させた相手でも合意なしにギフトを奪う事はできません……。どうしてこんなことに……」

 

 

「……………」

 

 

下を向き沈黙を貫くレティシア。黒ウサギの言葉に答えない。

 

 

 

 

 

カッ!!

 

 

 

 

 

黒ウサギの後ろ。上空が赤く光った。

 

 

「えっ?」

 

 

ドガッ!!

 

 

黒ウサギが後ろを振り向こうとする前に、レティシアが黒ウサギに向かって体当たりした。

 

 

「すまない……」

 

 

黒ウサギが元居た場所にレティシアがいた。そして、

 

 

パキパキッ!!

 

 

赤い閃光に飲まれ、

 

 

レティシアの体は石に変わった。

 

 

「嘘……!?」

 

 

美琴はその光景に目を疑った。他のみんなも。

 

 

「吸血鬼は石化させた。すぐに捕獲しろ」

 

 

「【ノーネーム】の連中もいるようだが、どうする?」

 

 

「構わん。邪魔するなら切り捨てろとの命令だ」

 

 

赤い光が閃光した上空には約10人程度の人数が居た。そのうちの一人が持っている旗には、

 

 

「ゴーゴンの首を掲げた旗印……!?まさか【ペルセウス】!?」

 

 

黒ウサギは石になったレティシアを抱えながら大声を出す。

 

 

ドゴッ!!

 

 

「キャッ!?」

 

 

その時、黒ウサギが後ろに倒れた。まるで蹴り飛ばされたかのように。

 

 

「大丈夫!?黒ウサギ!?」

 

 

「は、はい」

 

 

すぐにアリアが駆け寄って来た。

 

黒ウサギから離れたレティシアはふっと上に向かって浮き始めた。いや、

 

 

「………不可視のギフトか」

 

 

十六夜はすぐに見抜いた。

 

レティシアは浮いたのではなく、【ペルセウス】の手下が不可視のギフトを使い、レティシアを回収したのだ。黒ウサギが後ろに飛ばされたのも、手下が蹴ったからだ。

 

宙に浮いている手下の中にリーダーらしき人物の右手には………

 

 

「ゴーゴンの首か。それに足には翼の生えた靴。まさに伝説通りだな」

 

 

十六夜は【ペルセウス】の連中を見て言う。

 

 

騎士ペルセウスがゴーゴンという化け物を倒したかの有名なゴーゴン退治の伝説。アテナの楯、ヘルメスの翼のあるサンダル、ハデスの隠れ兜などを身につけて、ゴーゴンの首を切り落としたといわれている。

 

まさに、目の前にそんな姿をした人達がいた。

 

 

「よし、回収したならすぐに撤収するぞ」

 

 

「黒ウサギを蹴っ飛ばして何様よ、あなたたち!?」

 

 

「【名無し】風情などに謝るなど我らの旗に傷がつく。今すぐ失せろ」

 

 

優子の怒りの言葉に【ペルセウス】の手下は侮蔑の言葉を吐く。

 

 

「ありえない………ありえないですよ………!」

 

 

黒ウサギはユラユラと立ち上がる。

 

 

「本拠への不当な侵入、武器を抜く暴挙、侮辱の言葉の数々………」

 

 

黒ウサギの懐から白黒のギフトカードを取り出す。

 

 

 

 

 

「もう絶対に許しませんよッ!!」

 

 

 

 

 

ドゴオオオオォォォッ!!

 

 

 

 

 

「うにゃあッ!?」

 

 

黒ウサギのギフトカードから槍が出現し、大きな雷が落ち、槍に纏った。アリアはその音に驚き、耳を塞いでうずくまった。

 

 

「ば、馬鹿な!?インドラの武具だと!?」

 

 

「お覚悟をッ!!」

 

 

黒ウサギは【ペルセウス】に向かって槍をふr

 

 

 

 

 

「てい」

 

 

「にぎゃあッ!?」

 

 

 

 

 

ドゴオオオオォォォッ!!

 

 

十六夜が黒ウサギのウサ耳を引っ張り、軌道をずらした。槍は全く違う方向に投げられ、空気を揺るがすほどの威力をもって、飛んでいった。

 

 

「「「「「………………!」」」」」

 

 

その威力に【ペルセウス】だけでなく、美琴たちも驚いた。

 

 

「何するんですか、十六夜さん!?」

 

 

「お・ち・つ・け・よ」

 

 

黒ウサギは涙目で十六夜に向かって言う。十六夜は黒ウサギの耳元に口を近づける。

 

 

「ここで【ペルセウス】……いや、【サウザンドアイズ】と揉め事を起こしていいのか?」

 

 

「そ、それは………」

 

 

十六夜の言葉を聞き黒ウサギは冷静になる。

 

レティシアは【ペルセウス】の所有物。ここで問題を起こせば困るのは自分たちだろう。

 

 

「つか俺が我慢してやってるのにひとりでお楽しみとはどういう了見だオイ」

 

 

「ってそれが本音ですかッ!?にぎゃああああァァァ!?」

 

 

十六夜はさらに強くウサ耳を握る。黒ウサギは悲鳴をあげる。

 

 

「で、ですが!あの無礼者どもの対処を

 

 

「もうみんな帰ったぞ」

 

 

そこにペルセウスの姿はいなかった。石になったレティシアも。

 

 

「逃げ足はやッ!?」

 

 

黒ウサギはあたりを見渡すが【ペルセウス】は見当たらない。だが、

 

 

「まさか………不可視のギフト!」

 

 

黒ウサギは耳を澄ませるとまだ近くに声や足音が聞こえた。

 

 

「正真正銘の【ペルセウス】のコミュニティならそうだろうな」

 

 

十六夜は空飛ぶ靴に透明になる兜が実在するのを目の当たりにして、感心していた。

 

 

「追いかけないと!」

 

 

「やめとけ」

 

 

十六夜は黒ウサギの肩を掴んで静止させる。

 

 

「詳しい事情を聞きたいなら順序を踏むんだ。事情に詳しい奴が他にもいるだろ」

 

 

「白夜叉ね」

 

 

十六夜の言葉に美琴がいちはやく反応した。

 

 

「大樹は………居ても問題起こしそうだし、ジンに留守番させておくか」

 

 

「じゃあみんなで行くの?」

 

 

十六夜は大樹をどうするか考えたが思考を放棄した。耀は確認をとる。

 

 

「はやく行きましょ。【ペルセウス】の奴らには風穴開けないと気が済まないわ」

 

 

アリアは雷鳴を聞いてから機嫌が最高に悪くなった。

 

 

(((((八つ当たりだな……)))))

 

 

その気持ちは口に出さない。口は災いを呼ぶから。

 

 

(そういえば何か忘れているような気がするわ……)

 

 

飛鳥はそんなことを考えていた。

 

 

________________________

 

 

 

 

 

「ジン君、何してるの?」

 

 

「だ、誰かッ………止め、て………くだ、さ………いッ!」

 

 

 

 

________________________

 

 

 

「わざわざ用事がある中、はやく帰って来たやったのだ。【ペルセウス】を継ぐお坊ちゃんが私に何の用だ」

 

 

白夜叉は目の前にいる人物を睨み付ける。

 

 

「姑息で陰湿などこかの誰かの嫌がらせでうちの大事な商品が逃げ出しちまってですね………何か知りませんかねぇ?」

 

 

白夜叉と同じく、【サウザンドアイズ】の幹部に当たる人物。亜麻色の髪に蛇皮の上着を着た若い男。

 

 

コミュニティ【ペルセウス】のリーダー、ルイオス。

 

 

「……レティシアを逃がしたことなら隠す気はない。先に【双女神の旗】に泥を塗ったのは貴様らだ」

 

 

「ゲームを取り下げたことへの報復ですか。よほどあのゲームを開催させたかったとみえる」

 

 

白夜叉の睨みに、ルイオスは全く動じない。冷静だ。

 

 

「……そんなにあの吸血鬼を古巣へ返したいのかい?」

 

 

「貴様、そこまで気づいて……」

 

 

ルイオスはニヤリッと笑う。白夜叉は苦虫を噛み潰したような顔をする。

 

 

「脱走の原因は古巣への執着だろ?ちょうど今頃僕の部下が乗り込んで【名無し】連中を潰している頃さ」

 

 

「誰がなんですって?」

 

 

その時、部屋のふすまが開く音がしたと同時に声がした。

 

 

「………うわぉ」

 

 

ルイオスは入って来た者達に驚いた。

 

 

「【ペルセウス】のリーダー、ルイオス様ですね。あなたの部下が振るった無礼をきっちり抗議しに参りました」

 

 

黒ウサギを初めとする総勢7名の【ノーネーム】がいた。黒ウサギはルイオスの真正面に立つ。

 

 

「部下の無礼?なんのことかな……?」

 

 

「【ペルセウス】が所有するヴァンパイアとその追手が身勝手にも【ノーネーム】の敷地内で行った暴挙の数々のことです!」

 

 

とぼけるルイオスに大きな声で黒ウサギは言う。

 

 

「この屈辱は両コミュニティに決闘をもって、決着をつけるしかありません!」

 

 

「いやだ」

 

 

だがルイオスは拒否した。

 

 

「それ証拠あるの?っていうかさぁ……実はお前たちが盗んだんんだろ?元お仲間さん」

 

 

「そんなッ」

 

 

黒ウサギは反論しようとしたができない。

 

 

「言いがかりをつけて直接対決に持ち込む作戦なら無駄。第三者の目がなかったのは両方でしょ?」

 

 

ルイオスは白夜叉を見る。

 

 

「事実を明らかにしたいなら吸血鬼が逃げ出した経緯を調査してもいいけど………その場合、困るのはまったく別の人だろうね」

 

 

「小僧………!」

 

 

白夜叉もルイオスの言葉に何も言えない。

 

 

「それにしても知ってる?あの吸血鬼の買い手は箱庭の外のコミュニティなんだ」

 

 

「「なッ!?」」

 

 

白夜叉と黒ウサギは驚愕する。

 

 

「ねぇ、吸血鬼って……」

 

 

「ああ、吸血鬼は不可視の天蓋で覆われた箱庭でしか生きられない」

 

 

「最低ッ………!」

 

 

優子の質問に十六夜は答える。飛鳥はルイオスを睨み付ける。

 

 

「あいつは太陽の下っていう天然の牢獄の中で永遠に玩具にされるんだ………エロくねぇ?」

 

 

「ッ!」

 

 

「やめろ春日部」

 

 

ルイオスに飛び掛かりそうになる耀。十六夜が止める。

 

 

「己のギフトを魔王に譲り渡してまで手に入れた仮初の自由を使って古巣に駆け込んだってのに」

 

 

「ギフトを魔王に譲り渡した?」

 

 

「ッ!?」

 

 

ルイオスの言葉に疑問を持った美琴は口に出す。黒ウサギはハッなる。

 

 

「レティシア様のギフトのランクが暴落していたのは私達のところに駆け付けるための代償だった……!」

 

 

黒ウサギの顔が真っ青になるのが分かる。

 

 

「でも、君たち【名無し】と取引してもいいよ」

 

 

ルイオスは黒ウサギに指をさす。

 

 

 

 

 

「吸血鬼を返してやるから君は生涯、僕に隷属するんだ」

 

 

 

 

 

黒ウサギはルイオスの言葉を聞き、一歩後ろに下がった。

 

 

「うちに来いよ。三食首輪付きで毎晩かわいがるぜ?」

 

 

「……………」

 

 

黒ウサギは下を向いたまま震える。

 

 

「ほらほら、君は【月の兎】なんだろ?自己犠牲を帝釈天に売り込んで箱庭に招かせたんだろ?」

 

 

「ダメよ黒ウサギ!」

 

 

アリアは黒ウサギに向かって呼ぶ。

 

 

「ホラ、本能に従って炎に飛び込めy

 

 

ガラッ

 

 

 

「お、オーナーッ!」

 

 

「チッ」

 

 

タイミング悪く、【ノーネーム】の後ろのふすまが開き、店の前で意地悪した女性店員が入って来た。

 

 

「彼がッ!」

 

 

「…………ほう」

 

 

白夜叉はその言葉を聞き、笑った。

 

 

「残念だったなルイオス。【ペルセウス】と【ノーネーム】はギフトゲームをしなければならなくなったのう」

 

 

「はぁ?だからやらねぇって言っt

 

 

 

 

 

「あれ?何でお前ら居るの?」

 

 

 

 

 

「……………」

 

 

ルイオスの言葉がまた遮られた。遮ったのは、

 

 

「「「「「大樹!?」」」」」

 

 

「お、おう」

 

 

そこには大樹が居た。そして、

 

 

「「「「「………臭い」」」」」

 

 

「生臭いって言って欲しいな………」

 

 

「変わらんじゃろ」

 

 

大樹はずぶ濡れになっており、生臭かった。

 

 

「大樹。こやつが【ペルセウス】のリーダーだ」

 

 

「お、じゃあ早速使うか」

 

 

大樹は懐から黄色いギフトカードを取り出す。

 

 

ドゴドゴッ

 

 

「「「「「?」」」」」

 

 

中からふたつの球体が出てきた。だが、誰もその物体が分からない。だが、

 

 

「ば、馬鹿な!?」

 

 

ルイオスの顔が青ざめていた。

 

 

「【海魔】と【グライアイ】を打倒した証だと!?」

 

 

「嘘ッ!?」

 

 

黒ウサギがやっと理解した。

 

 

「黒ウサギ、これは?」

 

 

「簡単に言いますと………これで【ペルセウス】との旗印を賭けてのギフトゲームができます!」

 

 

「「「「「なッ!?」」」」」

 

 

美琴の質問に黒ウサギは答える。

 

 

「さぁ【ペルセウス】のリーダーさんよ」

 

 

大樹はルイオスに向かって言う。

 

 

 

 

 

「金髪の美少女………俺のファンを返してもらうぜ!!」

 

 

 

 

 

「「「「「……………は?」」」」」

 

 

全員が間抜けな声を出した。

 

 





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