どうやら俺はたくさんの世界に転生するらしい【完結】   作:夜紫希

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投稿が最近毎日できなくて申し訳ありません。

これからも毎日投稿できない場合があると思います。ですが、完成したらすぐに更新します。

頑張って書きますので、どうぞよろしくお願いします。

続きをどうぞ。


最悪のゲームが始まる

「なるほど。多分、祈り方だと思う」

 

 

「祈り方?」

 

 

俺は優子からペンダントのことを聞いた。ブレスレットを持っている俺だけではなく、アリアやみんながガラスの箱に入れたことを。

 

 

「優子がアリアを守りたいって祈ったからアリアもガラスの箱に入れたんだ」

 

 

「でも他の人も入れたのよ?」

 

 

「そこなんだよなぁ……」

 

 

アリアがガラスの箱に入れたのは合点が付く。だが、優子はアリアだけを守ってと祈った。だがアリアだけでなく、他の人も入れた理由が分からない。

 

 

「でもアタシはあの時、みんなを守れたから別にどうでもいいわ」

 

 

「まぁそうだけど………」

 

 

俺は優子にそう言われ思考を中断する。

 

 

「………………」

 

 

俺は空を見上げる。

 

 

(なぁ、神。一体お前は俺たちに何をさせたいんだ?)

 

 

ペンダントにはまだまだ秘密が隠されているような気がした。

 

だが、その心の声に返答はなかった。

 

 

________________________

 

 

 

「なるほど、水神がねぇ………」

 

 

俺と十六夜がぶっ飛ばした水神から大きな水樹の苗を貰ったらしい。あざーすッ。

 

 

「はい!これで水を買う必要も無くなるし、水路を復活させることができますよ♪」

 

 

黒ウサギは両手を挙げて、喜ぶ。

 

 

「それでこれからどうするの?」

 

 

美琴が尋ねる。

 

 

「黒ウサギ、今日はコミュニティへ帰る?」

 

 

「いえ、ジン坊っちゃんは先にお帰りください。ギフトゲームが明日なら【サウザンドアイズ】に皆さんのギフト鑑定をお願いしないと。この水樹もありますし」

 

 

黒ウサギはジンにまだ帰らない理由を説明する。

 

 

「【サウザンドアイズ】ってコミュニティの名前なの?」

 

 

アリアが黒ウサギに質問する。

 

 

「YES。【サウザンドアイズ】は特殊な【瞳】を持つ者達の群体コミュニティ。箱庭の東西南北・上層下層の全てに精通する超巨大商業コミュニティです」

 

 

「ギフト鑑定は?」

 

 

黒ウサギは説明する。次に優子が質問する。

 

 

「そのままの意味で皆さんが持っているギフトの秘めた力や起源などを鑑定することデス。自分の力の正しい形を把握していた方が、引き出せる力はより大きくなります。皆さんも自分の力の出処は気になるでしょう?」

 

 

俺の力の出処は神です。んなこと言えるかハゲ。よし、帰ろう。

 

 

「あいたたたたー、おなかがいたいよー。かえりたいよー(棒読み)」

 

 

「何やってんのよ。はやく行くわよ」

 

 

「………………」

 

 

俺の迫真の演技(笑)が美琴には通じなかった。っておい、誰だ(笑)なんか付けやがった奴。

 

ジンは先にコミュニティに帰り、俺たちは【サウザンドアイズ】を目指した。

 

 

________________________

 

 

 

「お、あれが【サウザンドアイズ】か?」

 

 

しばらく歩くと青い生地にお互いが向かい合う2人の女神像が記されてある旗が見えた。その旗を十六夜が指を差す。

 

 

「YES!その通りで………す!?」

 

 

だが店の前にいた女性店員に看板を下げられそうになる。が、黒ウサギが滑り込みで止める。

 

 

「まっ

 

 

「待った無しです御客様。うちは時間外営業はやっていません」

 

 

訂正。止められなかった。黒ウサギェ………。

 

 

「なんて商気っ気の無い店なのかしら」

 

 

「全くです!閉店時間の5分前に客を締め出すなんて!」

 

 

飛鳥は愚痴り、黒ウサギが怒る。てか時間ギリギリすぎんだろ。

 

 

「文句があるなら他所へどうぞ。あなた方は今後一切の出入りを禁じます。出禁です」

 

 

女性定員も性質が悪かった。

 

 

「出禁!?これだけで出禁とか御客様舐めすぎでございますよ!?」

 

 

黒ウサギは耳をピンっと伸ばし激怒する。よし、ここは…。

 

 

「なぁ黒ウサギ、もう帰r

 

 

「少し黙っていてください!!」

 

 

「………………」

 

 

どさくさに紛れて帰ろう作戦、失敗。

 

 

「なるほど、【箱庭の貴族】であるウサギを無下にするのは失礼ですね。中で入店許可を伺いますので、コミュニティの名前をよろしいですか?」

 

 

「ッ!」

 

 

黒ウサギは言葉を詰まらせる。コイツ、わざとやってるな。相当性質が悪いぞ。

 

 

「いや、結構だ。こんなゴミみたいなコミュニティに用は無いから帰るわ」

 

 

俺は黒ウサギの腕を引っ張り、こちらに引き寄せる。

 

 

「……その言葉は聞き捨てなりません。謝罪してください」

 

 

女性店員は俺を睨む。

 

 

「悪かったな、クソ野郎の集まるコミュニティさんよぉ」

 

 

「「!?」」

 

 

黒ウサギと女性店員は驚愕した。

 

 

俺は今、巨大コミュニティに喧嘩を売ったのだからな。

 

 

「大樹さん!!」

 

 

「無理。仲間が馬鹿にされるのは見たくねぇ」

 

 

俺は宣戦布告をする。

 

 

「あまり舐めるなよ、クソ野郎」

 

 

超巨大商業コミュニティに。

 

 

 

 

 

「いぃぃやほおぉぉぉぉぉ!!久ぶりだ黒ウサギィィィ!!」

 

 

 

 

 

ドゴンッ!!

 

 

「きゃあああああ!?」

 

 

なんか髪が白い少女が物凄いスピードで黒ウサギに突進した。そして、黒ウサギはそのまま街道の向うにある水路に着物を着た白い髪の少女と一緒に落ちた。

 

 

「「「「「……………」」」」」

 

 

みんな開いた口が塞がらなかった。なんだよ、あれ。なんかいろいろと台無しだよ。

 

 

________________________

 

 

「私がこの【サウザンドアイズ】の幹部様で白夜叉(しろやしゃ)だ」

 

 

「白夜叉様、いい加減はなれてくれませんか?」

 

 

白い髪の少女は白夜叉と言うそうだ。白夜叉は黒ウサギに抱き付いたままはなれない。

 

 

「断る!」

 

 

「はなれてください!!」

 

 

黒ウサギは白夜叉を引き剥がし、頭を掴んで投げつける。

 

 

「てい」

 

 

「ゴバッ!?」

 

 

十六夜が飛んできた白夜叉を蹴り上げて、

 

 

「やあ」

 

 

「ぐふッ!?」

 

 

耀は飛んで、白夜叉を踵落としで叩き落とした。

 

 

「は?」

 

 

ドゴンッ!!

 

 

俺は一瞬、状況を理解できなかった。

 

白夜叉は俺に向かって降って来た。そして直撃。

 

 

「お、おんしらは飛んできた美少女を蹴り上げた挙句、叩き落とすとは何様だ!?」

 

 

「十六夜様だぜ、以後よろしく和装ロリ」

 

 

「耀様。以下同文」

 

 

ぶん殴りたい。こいつらを。

 

 

「おんしも大丈夫か?」

 

 

「ノープロブレム……」

 

 

「………鼻血が出ておるではないか」

 

 

逆に鼻血だけで済んでいるとかやべぇだと。今の威力は相当だぞ。

 

 

「いや、それよりも俺は大事なことが

 

 

「コミュニティを馬鹿にしたことについては私のコミュニティが悪かった。すまない」

 

 

俺が言う前に白夜叉は先回りして謝罪する。

 

 

「詫びに店でもてなそう。だから許してくれ」

 

 

「………まぁ謝ってくれるなら別にいいよ。俺も悪かったな」

 

 

俺も謝って白夜叉と握手をする。

 

 

「生憎店は閉めてしまったのでな。私の私室で勘弁してくれ」

 

 

そう言って白夜叉は中へ俺たちを案内した。

 

 

「先程は申し訳ありません」

 

 

「いや、俺も悪かったな」

 

 

途中店員が頭を下げたので俺も謝った。

 

 

「まぁ仲良くしような」

 

 

「そうですね、お断りです」

 

 

「いや、しようよ仲良く」

 

 

この店員、やっぱ性質悪い。

 

 

________________________

 

 

「もう一度自己紹介をしよう。私は四桁の門、三三四五外門に本拠を構えている【サウザンドアイズ】幹部の白夜叉だ」

 

 

やや広い和室の上座に腰を下ろした白夜叉は自己紹介する。その正面に俺たちは座布団の上に座っている。

 

 

「外門って何?」

 

 

耀が質問する。

 

 

「箱庭の階層を示す外壁にある門ですよ。数字が若いほど都市の中心部に近く、同時に強大な力を持つ者達が住んでいるのです」

 

 

黒ウサギは指で空中に図を描く。それを見て

 

 

「………超巨大タマネギ?」by耀

 

 

「いえ、超巨大バームクーヘンではないかしら?」by飛鳥

 

 

「そうだな。どちらかといえばバームクーヘンだ」by十六夜

 

 

「いや、キャベツを切った時の断面図も捨てがたいだろ」by大樹

 

 

「「「「「いや、それはない」」」」」byみんな

 

 

「……………」

 

 

いや、泣いてねぇよ。俺、強いもん。

 

 

「なぁ、お前は四桁だと言ったな」

 

 

十六夜は白夜叉に確認をとる。

 

 

「もしかして強いのか?」

 

 

「ふふん、当然だ。私は【階層支配者(フロアマスター)】だぞ。この東側の四桁以下のコミュニティでは並ぶ者がいない、最強の主催者なのだから」

 

 

十六夜の質問に白夜叉が胸を張って答える。

 

って最強と聞いた瞬間、十六夜と飛鳥と耀の目が輝いたんですが……まさか!?

 

 

「そう、ではあなたに勝てば私達のコミュニティが東側で最強のコミュニティになるのかしら?」

 

 

やっぱり!?コイツら戦う気満々だ!!

 

 

「そりゃ景気のいい話だ。探す手間が省けた」

 

 

十六夜も!?ってああッ!耀も立ち上がって構えてるよ!!

 

 

「え?ちょ、ちょっと御三人様!?」

 

 

黒ウサギも3人を見て焦りだす。

 

 

「よし、俺たちはUNOでもしようぜ」

 

 

「そんなこと言ってないで止めたら?」

 

 

俺がポケットからUNOを取り出すと美琴がUNOを取り上げた。

 

 

「いや、あいつら人間ちゃうもん」

 

 

「あんたもでしょ」

 

 

ひどいよアリア!僕は立派な人間なのに!!

 

 

「ふふふ、そうか。しかし、ゲームの前に1つ確認しておきく事がある」

 

 

白夜叉も立ち上がり、着物の裾から【サウザンドアイズ】の旗印の紋章が入ったカードを取り出し、笑みを浮かべる。

 

 

 

 

 

「おんしらが望むのは【挑戦】か、もしくは【決闘】か?」

 

 

 

 

 

その瞬間、俺たちの目の前が一瞬にして変わった。

 

 

「「「「「!?」」」」」

 

 

俺もみんなも驚愕した。

 

 

 

 

 

一瞬にして白い雪原と凍る湖畔、そして水平に太陽が廻る世界だった。

 

 

 

 

 

「マジかよ……」

 

 

俺は水神なんかと比べものにならないくらい驚いた。

 

 

(何だよこの世界………でたらめすぎんだろ……!)

 

 

この世界は今までの世界とは違う。格が違う。

 

 

「今一度名乗り直し、問おうかのう。私は【白き夜の魔王】。太陽と白夜の星霊・白夜叉。おんしらが望むのは、試練への【挑戦】か?それとも対等な【決闘】か?」

 

 

【星霊】とは惑星級以上の星に存在する主精霊を指す。妖精や鬼・悪魔などの概念の最上級種であり、同時にギフトを【与える側】の存在でもある。

 

 

(これで四桁……!白夜叉より強い奴がいるのか……!)

 

 

俺はいつの間にか右手を強く握っていた。

 

 

「水平に廻る太陽と………そうか、白夜と夜叉。あの水平に廻る太陽やこの土地は、お前を表現してるってことか」

 

 

十六夜は推理して白夜叉に向かって言う。それを聞いて白夜叉は笑みを浮かべる。

 

 

「如何にも。この白夜叉の湖畔と雪原。永遠に世界を薄明に照らす太陽こそ、私がもつゲーム盤の1つだ」

 

 

待て待て待て。まだ他にゲーム盤があるのかよ!?滅茶苦茶だなおい。

 

 

「白夜って太陽が沈まない現象よね?」

 

 

「ああ、特定の経緯に位置する北欧諸国で見られるやつだ」

 

 

美琴の質問に俺が答える。そして俺は続ける。

 

 

「【夜叉】はインド神話に登場する鬼神だ。森林に棲む神霊でもあり、人を食らう鬼神でもあるな」

 

 

「なかなかの博学ではないか」

 

 

「まぁーな」

 

 

俺は白夜叉に褒められる。完全記憶能力って超便利ー。

 

 

「して、おんしらの返答は?」

 

 

「「「……………」」」

 

 

十六夜、飛鳥、耀は答えられない。だが

 

 

「参った。やられたよ。降参だ、白夜叉」

 

 

十六夜は両手を挙げ、笑う。

 

 

「ふむ?それは決闘ではなく、試練を受けるということかの?」

 

 

「ああ。これだけのゲーム盤を用意出来るんだからな。あんたには資格がある。いいぜ。今回は黙って試されてやるよ、魔王様」

 

 

白夜叉の問いに十六夜は悪魔でも上から目線を忘れず答える。でも、なんか一周回ってかっこ悪いな……。

 

 

「そこの4人はどうする?」

 

 

白夜叉は俺、美琴、アリア。そして優子を見る。

 

 

「いや、俺たちはここでUNOを」

 

 

「「「「「参加しろよ」」」」」

 

 

「あ、はい」

 

 

強制参加されちゃったよ。

 

 

「じゃあ参加してもいいけど危険なことをするのは無しな」

 

 

「心配しすぎじゃない?」

 

 

俺の言葉にアリアが聞く。

 

 

「何度も言うけど、俺はお前らが大切なんだよ。お前たちが怪我なんかしたら号泣して切腹できる自信はあるね」

 

 

「……………そ、そう」

 

 

あれ?アリアさん、ツッコミは?顔を赤くしてどうした。いや、美琴も優子もどうした。

 

 

「大樹ってジゴロ?」

 

 

「ぶん殴るぞ」

 

 

失礼過ぎんだろ、耀。

 

 

「では【挑戦】というわけだな?」

 

 

「ああ、それにしてくれ」

 

 

「おんし1人だけが【決闘】でも良いのだが?」

 

 

白夜叉は笑みを浮かべて問う。

 

 

「死にたくないわボケ」

 

 

いやいや、勝てねぇだろこれ。

 

 

「では全員が【挑戦】だな」

 

 

白夜叉は確認を取り、みんなはうなずく。それを見た黒ウサギはホッ息を付く。

 

 

「もう!お互いにもう少し相手を選んでください!【階層支配者】に喧嘩を売る新人と、新人に売られた喧嘩を買う【階層支配者】なんて冗談にしては寒すぎます!」

 

 

黒ウサギは十六夜、飛鳥、耀に向かって怒る。あ、でもあの3人絶対反省してないぞ。顔が少し笑ってる。

 

 

「それに白夜叉様が魔王だったのは、もう何千年前も前の話じゃないですか!」

 

 

おい白夜叉。お前超ババァだったのかよ。ロリな姿してんじゃねぞ。

 

 

「何?じゃあ元・魔王様ってことか?」

 

 

「はてさて、どうだったかな?」

 

 

十六夜の問いに白夜叉ははぐらかす。

 

 

「ふむ………あやつか。おんしらを試すには打って付けかもしれんの」

 

 

白夜叉は遠くの空を見る。白夜叉は手招きをする。

 

 

「何か近づいてきてるわ……」

 

 

優子は俺の後ろに隠れてながら様子を見る。

 

やってきたのは体長5mはあろうかという巨大なグリフォンだった。もう一度言う。グリフォンだ。鷲の翼と獅子の下半身を持つ獣だ。

 

 

「嘘、本物!?」

 

 

耀は驚愕した。でもその驚きには喜びの感情があった。

 

 

「あやつこそ鳥の王にして獣の王。【力】、【知恵】、【勇気】のいずれかを比べ合い、背に跨って湖畔を舞う事が出来ればクリア、ということにしようか」

 

 

白夜叉がゲームの説明をする。

 

白夜叉が再びカードを取り出す。すると輝く羊皮紙が現れた。【主催者権限】にのみ許されるものだ。

 

羊皮紙にはこう書かれていた。

 

 

 

『ギフトゲーム名 【鷲獅子の手綱】

 

・プレイヤー一覧

 

逆廻 十六夜

 

久遠 飛鳥

 

春日部 耀

 

楢原 大樹

 

御坂 美琴

 

神崎・H・アリア

 

木下 優子

 

 

・クリア条件 グリフォンの背に跨り、湖畔を舞う。

 

・クリア方法 【力】、【知恵】、【勇気】の何れかでグリフォンに認められる。

 

・敗北条件 降参か、プレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合。

 

 

宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名のもと、ギフトゲームを開催します。

 

【サウザンドアイズ】印』

 

 

 

「これがギフトゲーム……」

 

 

俺は読み終わり、呟いた。

 

 

「私がやる」

 

 

次に読み終わった耀は手を挙げて、立候補した。

 

 

「ふむ。自信があるようだが、これは結構な難物だぞ?失敗すれば大怪我では済まんが」

 

 

「大丈夫、問題ない」

 

 

あれ?何か死亡フラグ立ちませんでした?

 

 

「春日部………死ぬなよ……!」

 

 

「大丈夫。帰ってきたら私は」

 

 

「おい待て馬鹿やめろ」

 

 

俺は慌てて止める。十六夜がわざと死亡フラグを立てようとしやがった。いや、乗ってくる耀も問題がある。

 

 

「行ってもいい?」

 

 

「まぁいいんじゃねぇの?」

 

 

耀はみんなに向かって言い、十六夜がみんなに確認をとる。みんなはうなずく。

 

耀はグリフォンに駆け寄る。

 

 

「え、えーと。初めまして、春日部 耀です」

 

 

『!?』

 

 

グリフォンがびっくりしたのが分かった。

 

 

「ほう………あの娘、グリフォンと言葉を交わすか」

 

 

白夜叉が称賛する。

 

 

「私をあなたの背に乗せ………誇りを賭けて勝負をしませんか?」

 

 

『何……!?』

 

 

耀はグリフォンに挑発をした。耀は続ける。

 

 

「あなたが飛んできたあの山脈。あそこを白夜の地平から時計回りに大きく迂回し、この湖畔を終着点と定めます」

 

 

耀は遠くに見える山を指さす。

 

 

「湖畔までに私を振るい落せば勝ち。私が乗っていられたら私の勝ち。………どうかな?」

 

 

『娘よ。お前は私に【誇りを賭けろ】と持ちかけた。お前の述べるとおり、娘1人振るい落せないならば、私の名誉は失墜するだろう』

 

 

俺たちはグリフォンの言葉は分からない。交渉成立したのかどうかも分からない。

 

 

『だがな娘。誇りの対価にお前は何を賭す?』

 

 

 

 

 

「命を賭けます」

 

 

 

 

 

「「「「「なッ!?」」」」」

 

 

いきなり耀が恐ろしい事を言い出した。驚いていないのは白夜叉と十六夜くらいだ。

 

 

「だ、ダメです!!」

 

 

「耀!やめて!!」

 

 

黒ウサギとアリアが叫ぶ。だが、

 

 

「あなたは誇りを賭ける。私は命を賭ける。もし転落して生きていても、私はあなたの晩御飯になります。………それじゃダメ?」

 

 

耀は無視して続けた。

 

 

「下がらんかおんしら。これはあの娘が切り出した試練だぞ」

 

 

白夜叉は黒ウサギたちを止める。

 

 

「大丈夫なのか、耀」

 

 

俺は真剣な目で見つめる。

 

 

「うん」

 

 

耀はうなずいた。耀の瞳には敗北の2文字など初めから無い。あれは勝ってみせる自信に満ち溢れていた。

 

 

「なら行って来い」

 

 

「大樹さん!!」

 

 

「黒ウサギ、耀なら大丈夫だ」

 

 

黒ウサギは俺に怒っていたが、俺は冷静な声で言う。

 

 

「もっと仲間を信じろ。そして応援しろ」

 

 

「……………はい、そうですね」

 

 

黒ウサギは俺の言葉を聞き、驚いていたがすぐに顔を笑顔にする。

 

 

「耀さん!!頑張ってください!!」

 

 

「まかせて」

 

 

黒ウサギの応援に耀は右手の親指を立て、黒ウサギに見せる。

 

 

『乗るがいい、若き勇者よ。鷲獅子の疾走に耐えれるか、その身で試してみよ』

 

 

耀はグリフォンの言葉を聞き、グリフォンの背中に跨る。

 

 

「始める前に一言だけ」

 

 

耀はグリフォンだけに聞こえる声で呟く。

 

 

「私、あなたの背中に跨るのが夢の1つだったんだ」

 

 

『………そうか』

 

 

グリフォンはその言葉を聞き、走り出した。

 

翼を羽ばたかせ、大地を踏みぬくようにして空に飛び出した。

 

 

「凄い………!あなたは、空を踏みしめて走っている……!!」

 

 

耀はその光景を見て歓喜に打ち震えた。

 

鷲獅子は旋風を操るギフトで空を疾走しているのだ。

 

 

「ねぇ大樹」

 

 

耀を見ながら美琴が俺に声をかけてきた。

 

 

「もうあんな無茶しちゃダメよ」

 

 

「……………ああ」

 

 

美琴の声に俺は小さな声で返答する。

 

美琴はあの時のことを言っているのだろう。サウザンドアイズに喧嘩を売ったことを。

 

 

(ただでさえコミュニティが崖っぷちなのにこれ以上は迷惑かけれないな……)

 

 

自分勝手な行動は慎もう。

 

 

「悪いな、心配させて」

 

 

「別にいいわよ。貸し1つね」

 

 

「へいへい。今度何か奢るよ」

 

 

俺と美琴は笑い合う。

 

 

 

 

 

「ッ!?」

 

 

 

 

 

寒気を感じた。

 

 

(この感じは……!?)

 

 

落ちてきた湖で感じた視線だ。

 

俺は周りを見渡すが、怪しい人はいない。

 

だが、絶対にいる。

 

 

「はッ!?耀はどこだ!?」

 

 

俺は見失っていた耀とグリフォンを探す。

 

 

「あぁ?もうすぐ山脈の後ろから出てくるぜ」

 

 

十六夜は指を差し教える。

 

そして、山脈の後ろからグリフォンに跨った耀が現れる。

 

 

「ッ!?」

 

 

直感で分かった。

 

 

 

 

 

耀たちの頭上に見えない何かがいるのを。

 

 

 

 

 

「クソがッ!!」

 

 

俺は光速の速さで耀のいるところに一瞬で向かう。

 

 

 

 

 

シュパンッ!!!!

 

 

 

 

 

その瞬間、何千本もの輝く光の槍が出現した。

 

 

 

 

 

「え?」

 

 

耀は何が起こったのか分からなかった。

 

 

(ヤバい!?数が異常に多すぎる!!)

 

 

俺は両手に2本の刀を持つ。

 

 

「グリフォン、耀!!逃げろッ!!」

 

 

ドゴンッ!!

 

 

『!?』

 

 

俺はグリフォンを右足で蹴っ飛ばした。そのままグリフォンと耀は遠くに飛んでいき、光の槍の攻撃範囲から逃れる。

 

 

ズバアアアン!!!!

 

 

次の瞬間、俺に向かって何千本もの光の槍が襲ってきた。

 

 

「二刀流式、【阿修羅の構え】!」

 

 

この数は全てを撃ち落せない。致命傷になりそうなものだけを確実に落とすことに集中する。

 

 

「【六刀鉄壁】!!」

 

 

だが、うまくはいかなかった。

 

 

 

 

 

光の槍は刀をすり抜け、俺の体に刺さった。

 

 

 

 

 

「があッ!?」

 

 

「大樹!?」

 

 

全身に痛みが走る。とっさに避けても百本近いくらい光の槍が体に当たった。これでまだ生きているのは奇跡に近いのだろう。耀は遠くから俺の名を叫ぶ。グリフォンは耀と一緒に白夜叉のところへ走って行った。

 

 

ドシャンッ!!

 

 

そのまま地面に落下する。光の槍の痛みが強すぎて感じない。体からは大量の血が流れ出す。

 

 

 

 

 

「さすが最強の神の【保持者】ですね」

 

 

 

 

 

倒れている俺の横から声がした。

 

 

「誰………だ……!!」

 

 

「申し遅れました。私はリュナと言います」

 

 

俺は倒れた状態から見る。

 

俺と同い年くらいの女の子がいた。服は白い衣のようなモノを着ていて神々しかった。まるで天使とでもいうのだろうか。

 

だが右手には大きな黒い弓を持っていて天使とは思えない。天使が悪魔になったとでもいえるようだった。

 

 

「嘘………だろ……!?」

 

 

そんなことはどうでもよかった。

 

彼女の髪は綺麗な黒いロングヘアーで、顔は整った美人だった。

 

俺は知っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「双葉………!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の目の前にはあの時死んだ彼女がいた。

 

 

「それは誰ですか?私の名前はリュナですよ」

 

 

「違うッ!!お前は双葉だ!!」

 

 

俺は痛みを我慢して立ち上がる。いや、双葉だと分かった瞬間、痛みなんて分からなかった。

 

 

「何度も言いますが……いえ、そろそろあなたの仲間が来てやっかいになりそうですね」

 

 

双葉………リュナは後ろを振り向く。

 

 

「誰だおんしは。どうやってここへ入った」

 

 

白夜叉は尋ねる。だが声は低く、怒っているのが分かった。

 

 

「答える必要はないです。それよりも」

 

 

リュナは俺の方を向く。

 

 

「今日はご挨拶で来ただけですのでご安心ください」

 

 

リュナはそう言って、背中に2つの白い翼を広げる。

 

 

「それと伝言を頂いています」

 

 

リュナは誰の伝言かも言わずに続ける。

 

 

「『ゲームはもう始まっている』だそうです」

 

 

「何だと……!?」

 

 

意識が朦朧としてきたが、しっかりと聞く。

 

 

「では、また会いましょう」

 

 

「待たんか!!」

 

 

シュンッ!!

 

 

白夜叉が止めようとしたが、白い翼がリュナで包み込んだ瞬間、その場から消えた。残ったのは空中を舞う、数枚の羽根だけだ。

 

 

「双葉………」

 

 

俺は消えた虚空に手を伸ばす。

 

 

「どう……し…て……?」

 

 

そこで俺の意識は刈り取られ、倒れた。

 

 

そして、【最悪】は動き出した。

 

 




というわけで、いよいよ本格的なオリジナルストーリーに入って行きます。まだまだ続きますので、どうぞよろしくお願いします。

感想や評価をくれると嬉しいです。

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