どうやら俺はたくさんの世界に転生するらしい【完結】   作:夜紫希

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続きです。


悪党に裁きの鉄槌を

「ジン坊ちゃーン!新しい方を連れてきましたよー!」

 

 

黒ウサギは一人の門の前に立っている少年に向かって呼ぶ。少年は10歳くらいの小学生みたいに小さい。

 

 

「お帰り、黒ウサギ。そちらの女性5人が?」

 

 

「はいな、こちらの御7人………様……が?」

 

 

少年は黒ウサギの後ろにいる女性を見て、言う。黒ウサギの表情が固まった。

 

確かに女性が5人しかいない。

 

 

「え、あれ?ちょっと目つきが悪くて、かなり口が悪くて、全身から『俺問題児』ってオーラを放っている殿方と『一般人』というTシャツを着たこちらも口が悪い殿方がいませんでしたか?」

 

 

「2人ならどこかに行ったわよ」

 

 

美琴が黒ウサギの質問に答える。

 

 

~10分前~

 

 

『なぁ大樹』

 

 

『ん?』

 

 

『世界の果てを見に行かないか?』

 

 

『何言ってんだよ。今黒ウサギは俺たちを案内してくれてるんだぞ?それなのに今から世界の果てを見に行こうだなんて真似なんかできてもいい気がしてきたよし行こう』

 

 

という会話があった。2人はそのままどこかへ消えてしまった。

 

 

「な、なんで止めてくれなかったのですか!?」

 

 

「「「「「『止めてくれるなよ』って言われたから」」」」」

 

 

「ならどうして黒ウサギに教えてくれなかったのですか!?」

 

 

「「「「「『黒ウサギには言うなよ』って言われたから」」」」」

 

 

「嘘です、絶対嘘です!実は面倒くさかっただけでしょう!!」

 

 

黒ウサギの言葉に代表して優子が答える。

 

 

「あの2人、止めようとしたけど……もう居なかったのよね」

 

 

「「「「「……………」」」」」

 

 

黒ウサギもそれを言われたら何も答えれなかった。

 

沈黙が続く。

 

 

「た、大変です!世界の果てにはギフトゲームのために野放しされた幻獣が!!」

 

 

少年が沈黙を破った。だが少年の顔は真っ青になり、焦っていた。

 

 

「幻獣って何かしら?」

 

 

アリアが黒ウサギに尋ねる。

 

 

「ギフトを持った獣を指す言葉です。世界の果て付近には強力なギフトを持ったものがいます。出くわせば最後、とても人間では太刀打ち出来ません!」

 

 

「「「なら大丈夫ね」」」

 

 

「「へ?」」

 

 

黒ウサギの説明に美琴とアリア。そして優子は安心?した。黒ウサギと少年は目を点にして驚く。

 

 

「大樹は人間をやめているから」

 

 

「大樹はそんなに強いの?」

 

 

アリアはサラッ答える。耀はそれを聞き質問する。

 

 

「ええ、だから幻獣なんか大丈夫よ」

 

 

「それは外界での話です!ここの世界では通用しませんよ!」

 

 

アリアの言葉を否定する黒ウサギ。黒ウサギの髪がピンク色に染まる。

 

 

「ジン坊ちゃん。申し訳ありませんが後のことをまかせてもよろしいでしょうか?」

 

 

「分かった」

 

 

「それでは問題児方を捕まえに参ります。一刻程で戻ります。皆さんはゆっくりと箱庭ライフを御堪能ございませ!!」

 

 

シュパンッ!!

 

 

黒ウサギは弾丸のようなスピードで飛び去り、視界からすぐに消えた。

 

 

「嘘………」

 

 

「優子。いちいちあんなので驚いてたら体が持たないわよ」

 

 

驚愕する優子に美琴は肩を叩き、アドバイスする。全くアドバイスになってはいないが。

 

 

「ウサギ達は箱庭の創始者の眷属。力もそうですが、様々なギフトの他に特殊な権限を持ち合わせてた貴種です」

 

 

「ここのウサギってすごいのね」

 

 

少年の説明に飛鳥は黒ウサギが飛んでいった方角を見ながら言う。

 

 

「黒ウサギも堪能くださいと言っていたし、御言葉に甘えて先に箱庭に入るとしましょ。エスコートは貴方がしてくれるのかしら?」

 

 

飛鳥は振り返り、少年の方へ向く。

 

 

「はい。コミュニティのリーダーをしているジン=ラッセルです。齢11になったばかりの若輩ですがよろしくお願いします」

 

 

「え?」

 

 

優子は驚いた。リーダーがこんなに小さく、幼いことに。黒ウサギというとても強そうな人がいるにも関わらず、この男の子がリーダーなことに。

 

だが違うことも考えていた。もしかしたら黒ウサギより強いかもしれないということ。

 

 

「久遠 飛鳥よ」

 

 

「春日部 耀」

 

 

「御坂 美琴よ」

 

 

「神崎・H・アリア。よろしくね、ジン」

 

 

それぞれみんなが自己紹介していく。

 

 

「優子?」

 

 

「え?あ、木下 優子よ」

 

 

考え事をしていた優子に耀が呼びかける。思考を中断し、優子はすぐに自分の名前を明かす。

 

 

「それじゃあ箱庭の中に入りましょう。案内させていただきます」

 

 

美琴たちは門をくぐって箱庭の中に入って行った。

 

門の中は石造りの通路だった。その通路を通って箱庭の幕下に出る。

 

 

「え?」

 

 

優子の声が漏れる。

 

パァッと上から光が降り注いだのだ。

 

遠くに聳える巨大な建造物と空覆う天幕。

 

 

「外から天幕に入ったのに………」

 

 

優子は天幕を眺めて言う。

 

上空には太陽が見えた。

 

 

「外から見たときは箱庭の内側なんて見えなかったのに」

 

 

耀も驚いていた。

 

都市を覆う天幕を上空から見たときは箱庭の街並みは見えなかった。だが都市の空には太陽が見える。

 

 

「マジックミラーみたいなものかしら?」

 

 

「近いですね。箱庭を覆う天幕は内側に入ると不可視になるんですよ。あの巨大な天幕は太陽の光を直接受けられない種族のために設置されていますから」

 

 

美琴の発言にジンは訂正を加えつつ説明する。

 

 

「あら、吸血鬼でも住んでいるのかしら?」

 

 

「え、居ますけど」

 

 

「………そう」

 

 

飛鳥は冗談を言ったつもりだが、本当にいるとジンは言った。飛鳥は複雑そうな顔をする。

 

 

「あたしの世界にもいたわね」

 

 

「「え」」

 

 

飛鳥と耀はアリアの言葉に驚く。

 

 

「実際には見たこと無いけど不死の力を持っていたわ」

 

 

「それって無敵じゃないの?」

 

 

アリアの発言に飛鳥は眉をひそめて聞く。

 

 

「でも大樹は倒したわ」

 

 

「「………………」」

 

 

飛鳥と耀の2人はこう思う。Tシャツ脱げっと。

 

 

「その……大樹さんという方はそこまで凄い方なんですか?」

 

 

まだ会ったことのないジンは質問する。

 

 

「そうね………1度死んだけど生き返ったこともあるわね」

 

 

「「えぇッ!?」」

 

 

「それって人間?」

 

 

美琴の言葉にジンと飛鳥は驚愕する。耀は無表情のまま言う。

 

 

「あたしの世界では学園都市の230万人の頂点にいる最強の1位を素手で倒していたわ」

 

 

「「「……………」」」

 

 

ドン引きだった。きっとこの場に大樹がいたら泣いていただろう。

 

 

『でもあの兄ちゃん魚をくれるし優しかったわ!』

 

 

「そうだね。いい人だと思うよ」

 

 

「え?もしかして猫と話してるのですか?」

 

 

「ちょ、ちょっと待って。あなた動物と会話できるの?」

 

 

耀は猫に話しかけていたの見ていたジンと飛鳥が尋ねる。

 

 

「うん。生きているなら誰とでも話はできる」

 

 

「すごいわね、耀」

 

 

アリアは耀の動物との意思疎通ができることについて感心する。

 

 

「全ての種と会話が可能なら心強いギフトですね。箱庭において幻獣との言語の壁というのは大きいですから」

 

 

ジンは歩きながら言う。

 

 

「そう………素敵な素敵な力を持っているのね」

 

 

「……飛鳥はどんな力を?」

 

 

飛鳥は耀の力を聞いて羨ましいと思った。

 

優子は飛鳥に力について聞く。だが

 

 

「おんやぁ?誰かと思えば東区画の最底辺コミュ【名無しの権兵衛】のリーダー、ジン君じゃないですか。今日はオモリ役の黒ウサギは一緒じゃないんですか?」

 

 

歩いていると道の角から2mを越える巨体のピチピチのスーツを着た男が出てきたと思ったら、こちら話しかけてきた。

 

 

「私の力は酷いモノよ」

 

 

「そうなの?」

 

 

「ええ、だって」

 

 

「無視すんなゴラァ!!」

 

 

無視して通り過ぎようとしたら追いかけてきた。

 

 

「僕らのコミュニティは【ノーネーム】です。【フォレス・ガロ】のガルド=ガスパー」

 

 

「黙れ名無しが。コミュニティの誇りである名と旗印を奪われてよくも未練がましくコミュニティを存続させることなどできたものだな」

 

 

ガルド。この男はガルドというらしい。

 

 

「誰なの、あなたは」

 

 

飛鳥が男に向かって尋ねる。

 

 

「おっと失礼。私は箱庭上層に陣取るコミュニティ【六百六十六の獣】の傘下である

 

 

「烏合の衆」

 

 

のリーダーをしているって待てやゴラァ!!誰が烏合の衆だ小僧!!」

 

 

ガルドは横槍を入れたジンに怒鳴る。

 

 

「口を慎めや小僧……紳士で通っている俺にも聞き逃せねぇ言葉があるんだぜ……?」

 

 

「「「「「紳士(笑)」」」」」

 

 

「ぶっ飛ばすぞ!?」

 

 

ガルドはさらに激怒する。

 

 

「はぁ、それで何の用なの?」

 

 

飛鳥は溜め息交じりに聞く。

 

 

「え?あ、はい。実は私のコミュニティに入らないかと勧誘しに来ました」

 

 

「なッ!?」

 

 

急に真面目な質問をされ、ガルドは慌てたがすぐに本題に入る。ジンはそのことを聞いて驚愕した。

 

 

「お嬢様方は【ノーネーム】の置かれている状況をご存知なのですか?」

 

 

「ッ!」

 

 

ガルドの言葉にジンは何も言えなくなった。

 

 

「どういうこと?」

 

 

アリアが尋ねる。

 

 

「おやぁ?知らないのですか?」

 

 

ガルドはわざとらしく言う。ジンへの嫌がらせに聞こえた。

 

 

 

 

 

「ジン=ラッセル率いるコミュニティは名も旗印も奪われた正真正銘最底辺コミュニティです」

 

 

 

 

 

「くッ」

 

 

ジンは悔しそうな顔をする。だがジンはガルドを睨み付ける。

 

 

「何だよその目は?俺はお前らのコミュニティを紹介してやっただけだが?」

 

 

「名と旗印が奪われたってどういうことなの?」

 

 

優子がガルドに尋ねる。

 

 

「名と旗印の説明は?」

 

 

「してくださるかしら?」

 

 

「承りました。コミュニティには【名】と【旗印】が必要不可欠です」

 

 

ガルドは知っているかどうか確認をとり、飛鳥はそれに答える。そしてガルドは丁寧に説明を始める。

 

 

「旗印はコミュニティの縄張りを主張する大事な物です」

 

 

「あれのことかしら?」

 

 

アリアは道の横にある店頭に掲げられた旗を指す。

 

 

「はい。ここの一帯は私のコミュニティの縄張りであることを示しています。そこに元々あった旗印は両者合意での【ギフトゲーム】をして、勝ち取りました。そうやって私のコミュニティを大きくしていったのです」

 

 

自慢げにガルドは話す。ガルドの胸には店頭に掲げてある旗印と同じ模様があった。

 

 

「旗が無いと縄張り主張ができないのね。名も同じことかしら?」

 

 

「はい。名が無いと名前の無いその他大勢、【ノーネーム】と呼ばれるのです」

 

 

飛鳥の質問にガルドは答える。

 

 

「では、なぜそのようなことになったのか。今から説明します」

 

 

ガルドは続ける。

 

 

「彼らは数年前まで東区画最大手のコミュニティでした。とはいえリーダーは別人でしたが」

 

 

ガルドは勘違いされないようすぐに訂正をいれる。ジンは下を向いたまま何もしゃべらない。

 

 

「だが、彼らは敵に回してはいけないモノに目をつけられたのです。そしてたった一夜で滅ぼされた」

 

 

「一夜ですって!?」

 

 

優子が驚愕する。

 

 

「そうです。この箱庭の世界、最悪の天災によって滅ぼされたのです」

 

 

「天災?」

 

 

耀が聞き返す。

 

 

「はい。彼らは箱庭で唯一最大にして最悪の天災」

 

 

ガルドは一度言葉を区切り、言う。

 

 

 

 

 

「【魔王】です」

 

 

 

 

 

「「「「「魔王?」」」」」

 

 

みんながその言葉を言った。ジンの顔が強張った。

 

 

「彼らは【主催者権限(ホストマスター)】を持っており、ギフトゲームを挑まれたら断ることができないのです。」

 

 

「そして負けて名と旗印を奪われたと」

 

 

「はい」

 

 

飛鳥の言葉をガルドは肯定した。

 

 

「名も旗印も、主力陣も全てを失い、残ったのは膨大な居住区画の土地だけ。もしもすぐにコミュニティを新たに結成していたら、まだ有終の美を飾っていたでしょうがね」

 

 

「それはダメだ!!」

 

 

ジンが大声をあげる。

 

 

「改名はコミュニティの完全解散を意味する!それはダメなんだ……僕達は仲間達の帰る場所を守りたい……!」

 

 

ジンは手を強く握る。

 

 

「だから僕らはあなた方を呼んだのです」

 

 

ジンは美琴たちを見る。

 

 

「僕達のコミュニティを救っていただくために」

 

 

「はッ、今更何を言っているんだ。隠していたクセに、この寄生虫が」

 

 

ガルドはジンの言葉を聞き、鼻で笑い、馬鹿にする。

 

 

「黒ウサギが居なければ何もできない奴がでしゃばるな。毎日毎日クソガキのオモリをして身を粉にして走り回り、わずかな路金でやりくりさせやがって。本来ならウサギは破格の待遇で愛でられるはずなんだぞ」

 

 

「………………」

 

 

ジンは黙る。

 

 

「そう、事情は分かったわ。用は崖っぷちなのね」

 

 

飛鳥は【ノーネーム】の状況を把握する。

 

 

「はい。ですから私たちのコミュニティに

 

 

「結構よ」

 

 

飛鳥はガルドの誘いを断る。

 

 

「私たちはジン君のコミュニティで間に合ってるわ」

 

 

ガルドはその言葉に呆気を取られる。

 

 

「そうね、みんなもそうでしょ?」

 

 

美琴はみんなに聞く。アリア、優子、耀はうなずいた。

 

 

「私は友達と一緒のコミュニティがいい」

 

 

「あら、じゃあ大樹も十六夜君もあとで入れましょ」

 

 

耀は理由を言い、飛鳥はもう入る気満々だ。

 

 

「ど、どうしてd

 

 

「『黙りなさい』」

 

 

ガチンッ!!

 

 

ガルドは理由を聞こうとしたが、飛鳥の声を聞いた瞬間、ガルドは無理矢理口を閉ざされた。

 

 

「『地面にひれ伏し、私の質問に答え続けなさい』」

 

 

ドゴンッ!!

 

 

ガルドはすごい勢いで地面にひれ伏した。

 

 

「あなたには聞きたいことが山程あるわ。あなたはこの地域のコミュニティに『両者合意』で勝負を挑み、そして勝利したと言ったわね。ねぇジン君、コミュニティそのものを賭けてゲームをすることはそうそうあるのかしら?」

 

 

「や、やむを得ない状況なら稀に。しかしコミュニティ存続をかけたゲームとなるとかなりレアケースです」

 

 

飛鳥はジンの言葉を聞く。そして質問する。

 

 

「そうよね。私でもそのくらい推測できたわ。では、どうしてそんなに簡単にコミュニティの存続を賭けたゲームができたのか、『教えてくださる?』」

 

 

ガルドは必死に抵抗するが、

 

 

「強制させる方法は様々だ。一番簡単なのは相手のコミュニティの女子供をさらって脅迫することだ」

 

 

逆らえなかった。そう、飛鳥の命令には逆らえないのだ。

 

ガルドは続ける。

 

 

「徐々に他のコミュニティを取り込んだ後、ゲームに乗らざるを得ない状況に圧迫していった」

 

 

「まぁ、そんなところでしょう。でも吸収した組織はあなたの下で従順に働いてくれるのかしら?」

 

 

「各コミュニティから人質を数人取ってある」

 

 

「………何ですって?」

 

 

アリアが一番に反応した。他の者も不愉快に感じただろう。

 

 

ガチャッ

 

 

「人質はどこにいるの」

 

 

アリアは地面にひれ伏したガルドに拳銃を突きつける。

 

 

「……………」

 

 

「『アリアの質問に答えなさい』」

 

 

 

 

 

「もう殺した」

 

 

 

 

 

「「「なッ!?」」」

 

 

「嘘でしょ……!?」

 

 

美琴、アリア、ジンは驚愕した。優子は口を手で抑えている。

 

 

「素晴らしいくらいに外道ね。ねぇジン君。この外道を裁くことはできるかしら?」

 

 

「厳しいです。吸収したコミュニティから人質をとったり、身内の仲間を殺すのは勿論違法ですが、裁かれるまでに彼が箱庭の外に逃げ出してしまえば、そこまでです」

 

 

「ダメよ。こいつは逃がしたくない」

 

 

ジンは裁くのは厳しいと説明するが、アリアはどうしても逃がしたくないことを主張する。

 

 

「こ、小娘がああああァァァ!!!」

 

 

「!?」

 

 

ガルドは雄叫びをあげ、タキシードを破り、狼男のような姿になった。

 

 

「調子に乗るなあああァァァ!!」

 

 

ガルドはアリアに襲いかかる。

 

 

(お願い!アリアを守って!!)

 

 

優子はとっさにペンダントを持ち、祈る。

 

 

シュピンッ!!

 

 

「がッ!?」

 

 

優子を中心にして、ガラスの箱が大きくなり、ガルド以外の人間を包み込んだ。

 

ガルドはガラスの箱に弾かれた。

 

 

(あれ?もしかして大樹君以外もガラスの中に入れるの?)

 

 

大樹が身に付けているブレスレットが無いと入れないと言われていたので優子は疑問に思った。

 

 

(でもアタシからしたらこれは好都合だわ)

 

 

ガルドから攻撃されない。だがそれは1分間だけの話だ。

 

 

「クソッ!一体何だこr

 

 

ドゴンッ!!

 

 

「ッ!?」

 

 

ガルドの言葉が止まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいテメェ、俺の大切な人に何してんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大樹がガルドを踏み潰した。

 

 

 

 

 

「「「「「!?」」」」」

 

 

「はやいわよッ!?」

 

 

全員は急に現れた大樹を見て驚愕した。優子は大樹が助けに来るとは言っていたが早すぎた。

 

 

________________________

 

 

俺と十六夜は競争していた。とんでもない速度で。

 

 

「はは、やるじゃねぇか大樹」

 

 

「お前もな十六夜」

 

 

俺たちは森の中を飛び回り、世界の果てを目指していた。

 

 

「なぁ十六夜。マ◯オカートはやったことあるか?」

 

 

「マリ◯カート?まぁ一応あるぜ」

 

 

「それは良かった。はい、緑コウラ」

 

 

バシュンッ!!

 

 

俺は近くにあった石を投げた。

 

 

「おい!?」

 

 

十六夜は上半身を後ろにひねり、避けた。チッ、外したか。

 

 

「なるほど。じゃあスターで」

 

 

ドゴンッ!!

 

 

「うおッ!?」

 

 

十六夜が突っ込んできた。そのまま滝に近くの崖に落ちる。

 

 

「よーし喧嘩だこの野郎」

 

 

「おk、その喧嘩買ったわ」

 

 

俺の言葉を十六夜は買った。崖の上で睨みあう二人。

 

 

ドシャアアアン!!

 

 

 

 

 

滝の中から巨大な白い蛇が現れた。

 

 

 

 

 

「ふッ」

 

 

俺は笑う。

 

もうこの程度ではビビらねぇよ。

 

 

『挑戦者か、人間よ?』

 

 

「はい?」

 

 

『では試練を選べ』

 

 

白い蛇は訳のわからないことを話だし、俺は聞き返したつもりだが、蛇は肯定したと勘違いした。

 

 

「大樹」

 

 

「あー、俺も多分同じこと考えてる」

 

 

2人は蛇を睨む。

 

 

「「吹っ飛べ」」

 

 

ドゴンッ!!!

 

 

 

 

 

 

大樹は右手で殴り、十六夜は右足で蹴り飛ばした。

 

 

 

 

 

ドシャアアアン!!!

 

 

蛇は湖に大きな音を出して、沈んだ。

 

 

「「よし、続きをしようぜ」」

 

 

「見つけましたよ!大樹さん!十六夜さん!」

 

 

髪の色がピンクになった黒ウサギが来た。

 

 

「大樹。こいつもぶっ飛ばしていいか?」

 

 

「何言っているんですか!?」

 

 

「許可しよう」

 

 

「しないでください!!」

 

 

バシンッ!!

 

 

黒ウサギはハリセンで俺たちの頭を叩いた。そのハリセンはどこから取り出したんだ?

 

 

「ともかく御二人が無事で良かったデス。水神のゲームを挑んだとユニコーンに聞いて肝を冷やしましたよ」

 

 

ユニコーンってあれか?馬に1本の角が生えた奴か?見てみたいな。

 

 

でも、

 

 

「す、水神………か…………」

 

 

俺は汗だくになる。

 

 

「水神?ああ、あれのことか」

 

 

「え?」

 

 

黒ウサギは十六夜の言葉を聞き、硬直した。

 

 

ズバアアアアン!!!

 

 

『よくもやってくれたな、小僧どもおおおおォォォ!!!』

 

 

「蛇神………!ってどうやったらこんなにおこらせれるんですかあああァァァ!?」

 

 

殴ったり、蹴ったりすれば、かな?

 

 

「とりあえず俺たちが喧嘩しようとしたら邪魔してきたから蹴り飛ばした」

 

 

「このおバカ!!!」

 

 

『付け上がるな人間が!!我がこの程度の事で倒れるか!!』

 

 

水神様は丈夫なようです。

 

 

『この一撃を凌げば貴様らの勝利を認めてやる』

 

 

水神様は上から目線で偉そうにしてムカつく。

 

 

「寝言は寝て言え。決闘は勝者が決まって終わるんじゃない。敗者を決めて終わるんだよ」

 

 

十六夜さん、かっけー。

 

 

『フン!その戯言が貴様の最期だ!!』

 

 

ズバアアアアン!!!

 

 

湖から巨大な水の竜巻が舞い上がった。さすが神。

 

 

「【無刀の構え】」

 

 

久しぶりに本気を出そうか。

 

 

「【鳳凰炎脚(ほうおうえんきゃく)】!」

 

 

ズドオオオオオン!!!

 

 

竜巻を両足で凄い勢いで蹴り飛ばした。竜巻は消える。

 

 

「えッ!?」

 

 

『馬鹿な!?』

 

 

ちなみに足に炎は纏いません。いや、ちょっとそれは無理だろ。

 

だが威力は申し分ない。

 

 

「十六夜!」

 

 

「まかせろ!」

 

 

俺は名前を呼び、十六夜が水神に止めをさしに飛翔する。

 

 

「オラあああァァァ!!」

 

 

ドゴオオオン!!!

 

 

水神をぶん殴った。そう、ぶん殴っただけ。それだけで水神は倒れた。

 

 

「うわー………」

 

 

十六夜も俺と同じくらい滅茶苦茶だな。

 

 

「これがあれば………」

 

 

黒ウサギは俺たちを見て、呟いた。

 

 

シュピンッ!!

 

 

「!?」

 

 

俺の身に付けてるブレスレットが光だした。

 

 

(優子!!)

 

 

「大樹さん?どうしt

 

 

その瞬間、大樹が消えた。

 

 

否、光速の速さで走り去ったのだ。

 

 

ズバアアアアアン!!!!

 

 

「「!?」」

 

 

音は遅れて聞こえた。木々が薙ぎ倒れ、あるいは吹っ飛んだ。

 

 

「え?ちょっと大樹さん!?どこ行くのですかあああァァァ!?」

 

 

黒ウサギの声は大樹には届かなかった。

 

 

大樹はブレスレットがあれば優子の位置は分かっていた。

 

 

よって、現在。

 

 

「おい駄犬。喧嘩売ってんのか?」

 

 

「ヒィッ!?」

 

 

俺はガルドの胸ぐらを掴み、殺気を出しながら言う。ガルドは悲鳴を漏らす。

 

 

「あれが大樹さん………」

 

 

ジンはこの男が相当強いことを確信した。

 

 

「あら、大樹じゃない」

 

 

「おう飛鳥。今からこの犬をボコボコにした後、吊し上げてサンドバッグにして、一儲けしようと思うんだがいいか?」

 

 

「「「「「やっておしまい」」」」」

 

 

「あらほらさっさー」

 

 

「ま、待ってください!それでは大樹さんが捕まってしまいます!」

 

 

美琴たちの許可を得たが、少年に拒まれた。

 

 

「誰だお前?ってもしかして黒ウサギが言っていたジンか?」

 

 

「はい!ジン=ラッセルです!」

 

 

「ところでジン。こいつを斬り刻んだ後、ミキサーにかけてジュースにしたいんだが……どうして止める?」

 

 

「グロッ!?……じゃなくてあなたが捕まるからです!」

 

 

ああ、そういうことね。

 

 

「大樹君、提案があるのだけど?」

 

 

ガラスの中に入った飛鳥が尋ねる。ってそういえば何でガラスに入れるんだよお前ら。

 

 

「何だ?」

 

 

「そこのガルドと『ギフトゲーム』をしたらどうかしら?勿論私も入れてね」

 

 

「お前天才か」

 

 

俺と飛鳥は笑みを浮かべる。

 

 

「ガルド。私達と『ギフトゲーム』をしましょう。あなたの【フォレスト・ガロ】存続と【ノーネーム】の誇りと魂を賭けて、ね」

 

 

「勿論、受けるな?」

 

 

俺と飛鳥はガルドに向かって喧嘩を吹っ掛けた。一方的な喧嘩を。

 

 

________________________

 

 

「なるほどな、取り敢えず」

 

 

俺はジンの肩を叩き、

 

 

「一発殴らせろ☆」

 

 

「ごごごごごめんなさい!!」

 

 

俺たちを騙そうとしたジンは謝る。

 

 

「助けて欲しいならそう言えよな」

 

 

「え?」

 

 

大樹の予想もしない言葉を聞き、ジンは驚く。

 

 

「ジン、俺を【ノーネーム】に入れてくれるか?」

 

 

俺は右手をジンに差し出す。

 

 

「はい!よろしくお願いします!!」

 

 

その手をジンは両手で掴んだ。

 

 

「あぁ!!見つけましたよ、大樹さん!!」

 

 

あ、黒ウサギだ。あと十六夜も。

 

 

「黒ウサギ、実は………」

 

 

ジンは先程の出来事を話した。ガルドとギフトゲームをする事になったことを。

 

 

「な、なんであの短時間に、【フォレスト・ガロ】のリーダーと接触してしかも喧嘩を売る状況になったのですか!?」「しかもゲームの日取りは明日!?」「それも敵のテリトリー内で戦うなんて!」「準備している時間もお金もありません!」「一体どういう心算があってのことです!」「聞いているのですか!!」

 

 

「「はいはい、反省してるから」」

 

 

「してないでしょ!?」

 

 

バチンッ!!

 

 

俺と飛鳥は黒ウサギにハリセンで叩かれた。いや、だからどこから出した。

 

 

「でも大樹さんと十六夜さんが出れば楽勝でしょう」

 

 

「何言ってんだよ。俺は参加しねぇよ?」

 

 

「え!?」

 

 

黒ウサギは十六夜の言葉を聞き慌てる。

 

 

「この喧嘩はコイツらが売った。そして奴らが買った。なのに俺が手を出すのは無粋だ」

 

 

「あら、分かってるじゃない」

 

 

飛鳥は腰手を当てながら言う。

 

 

「勿論俺はするけどな」

 

 

「だ、大樹さんなら大丈夫ですね」

 

 

黒ウサギは俺の言葉を聞き、安心していた。

 

 

「「「「……………」」」」

 

 

完全に美琴、アリア、優子、耀は空気だった。

 

 




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