どうやら俺はたくさんの世界に転生するらしい【完結】   作:夜紫希

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続きです。


強者を喰らう者

ドガッ!!!

 

 

「がッ!?」

 

 

二メートルは越えている巨体が背後にあった棚を倒しながら吹っ飛ぶ。

 

大樹は怒りにまかせてブラドを殴っていた。

 

 

「図に乗るなッ!!」

 

ブラドはすぐに立ち上がり、大樹に向かって右手で殴る。

 

 

ドゴッ!!!

 

 

「!?」

 

 

ブラドは驚愕する。

 

大樹は右手を前に出すだけでブラドの攻撃を受け止めた。

 

 

「クソッ!!」

 

 

次にブラドは反対の手。左手で大樹を殴る。だが、

 

 

バキッ!!

 

 

「ガッ!?」

 

 

左手は上に90°に曲がって折れた。

 

大樹は左足で蹴りあげた。ただそれだけでブラドの腕を折った。

 

 

バキバキッ!!

 

 

だが、ブラドの腕は嫌な音を立てながら元に戻る。

 

 

「おい」

 

 

大樹はブラドを呼ぶ。

 

 

「今から実験でもしようぜ?」

 

 

「じ、実験だと?」

 

 

ブラドは恐れていた。この男を。

 

 

 

 

 

「ああ、今からお前をどんなにぐちゃぐちゃにしても再生できるかどうかの実験だ」

 

 

 

 

 

「ッ!?」

 

 

ブラドは後ろに下がる。 大樹から溢れるどす黒い殺意がブラドを襲う。

 

黒い瞳は全てを飲み込んでしまうようなドス黒い色をしていた。

 

 

(なんなんだよ、こいつは!?)

 

 

ブラドには再生能力がある。銃弾を何発当てられても一秒後には回復し、元通りになる。

 

だが弱点がある。それは目玉模様が描かれた場所にある4つの魔臓を同時に破壊すること。

 

そうでもしない限り、ブラドは無敵だ。だが

 

ブラドは大樹には勝てない。ブラドの体がそう訴えている。 脳が伝えている。

 

 

「覚悟しろよ、駄犬がああああァァァ!!!!」

 

 

大樹は音速のスピードでブラドに近づく。

 

 

ドゴッ!!

 

 

「グハッ!?」

 

 

ブラドの腹部に強い衝撃が襲いかかった。あまりの衝撃の強さに体内の空気が一気に吐き出される。

 

 

ドンッ!!

 

 

そして、背後の壁に激突する。

 

ブラドは前から倒れる。

 

「立てよ」

 

 

大樹はブラドの目の前まで来る。

 

 

「早く立てよ」

 

 

大樹はブラドの頭を掴み、持ち上げる。

 

 

「グッ!!」

 

 

「何で美琴の血がお前なんかに流れるんだ」

 

 

ブラドは答えない。

 

 

「何で美琴のDNAを悪用するんだ」

 

 

大樹は叫ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何でお前らみたいなクソ野郎に美琴の血を悪用されなきゃならねぇんだよッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドゴオオオオオォォォンッ!!!!

 

 

大樹はブラドを地面に叩きつけた。大きな音が響き渡り、地面にはクレーターが出来た。

 

 

「ッ!?」

 

 

ブラドの顔に痛みが走る。ブラドの無限回復は痛覚までは消すことは出来ていなかった。

 

 

「ッ!!」

 

 

ドゴッ!!

 

 

地面に倒れているブラドを蹴り飛ばした。

 

 

「まだ終わらねぇよ」

 

 

大樹はブラドをゴミでもみるような目で見下す。

 

 

 

 

 

「お前は殺す」

 

 

 

 

 

「ッ!?」

 

 

ブラドは急いでその場から立ち上がり、後ろに下がる。

 

 

「グオオオオオォォォォ!!!!」

 

 

ブラドは凄まじい雄叫びをあげる。

 

 

「この程度で倒せると思うなあああァァ!!!」

 

 

バチバチッ!!

 

 

「ッ!?」

 

 

大樹はブラドの電気に驚愕した。そしてブラドの体から青い電撃が大樹に向かって飛ばされる。

 

 

「ッ!?」

 

 

ブラドはそこで気付いた。大樹を倒すことだけを考えていたせいで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは火薬庫であることを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドゴオオオオオォォォ!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、もう遅かった。

 

 

火薬庫は大爆発した。

 

 

 

 

________________________

 

 

 

 

「ガハッ!」

 

 

ブラドはそれでも生きていた。体の上に乗った瓦礫をどける。

 

地下倉庫は完全に大破した。地下から這い上がり、ブラドの体は太陽に照らされる。だが太陽に当たっても克服しているので全く痛くも痒くもなかった。

 

 

「ッ」

 

 

大樹の姿は見えない。

 

 

「………ゲゥゥウアバババハハハハ!!」

 

 

ブラドは大声で笑った。

 

 

「人間はやっぱりもろいものだな!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うるせぇよ駄犬」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ!?」

 

 

ブラドの後ろから聞き覚えのある声が掛けられた。ブラドは恐る恐る振り返る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこには全くの無傷の大樹がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

________________________

 

 

 

「なッ!?」

 

 

ブラドは俺の姿を見て驚く。

 

俺が無傷なのは単純。

 

 

 

 

 

入り口まで音速のスピードで逃げた。ただそれだけ。

 

 

 

 

 

ブラドと戦う前に、俺は一度ここに訪れた。そしてこの地下倉庫を全てを把握しておいた。絶対記憶能力を使って。

 

そして、爆発と同時に入り口まで音速のスピードで逃げた。ただそれだけだ。

 

 

「あの爆発でもよくお互いに生きていたな、ブラド」

 

 

だが、俺は爆発の中でも無傷だったという演出をしている。

 

ブラドは動けない。まるで金縛りにあったかのように。

 

 

「それよりも俺は気になることがあるんだが……」

 

 

大樹はブラドに向かって歩きだす。

 

 

「お前、何で美琴の能力使えるんだよ」

 

 

ブラドは大樹が近づくたびに後ろに下がる。

 

彼から溢れ出る恐怖のオーラ。それが怖くて仕方なかった。

 

 

「俺たちを舐めているのか?本当にバカな奴だな」

 

 

大樹は服の内側から銃を取り出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いい加減にしやがれええええェェェ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガッガッガッガキュンッ!!!!

 

 

「うぐッ!?」

 

大樹は撃った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目玉模様がある右肩、左肩、右脇腹。そして口の中にある舌を撃ち抜いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何故射撃テストでEランクなのに銃弾が弱点の目玉模様に当たったのか。

 

 

大樹はデリンジャーを使ったのだ。

 

 

デリンジャーとは狙って撃つのではなく、対象物に押しつけて撃つ技だ。

 

この技ならどんなに下手でも当てることができる。

 

 

 

 

 

大樹は音速のスピードでこれを一秒間で四回行った。

 

 

 

 

 

「う、うぐゥ…………」

 

 

弱点を撃たれたブラドは倒れた。太陽の光がブラドの体を焼く。

 

 

ドゴッ!!

 

 

「ぐふッ!?」

 

 

ブラドは大樹に蹴り飛ばされた。

 

 

「まだ終わらねぇって言ってるだろ」

 

 

大樹は銃をブラドの頭に押しつける。

 

 

「…………………ッ」

 

 

ブラドは何も喋れない。死がそこまで迫っている恐怖で。

 

 

「言っただろ」

 

 

大樹はトリガーに手をかける。

 

 

「絶対に殺すって」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『やめて!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガキュンッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

銃弾はブラドを外した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ!?」

 

 

大樹の頭の中で、あの女の子の声が響いた。

 

それに驚いて銃口をずらしてしまった。

 

 

「……………」

 

 

大樹は自分の拳銃を見る。

 

 

「お、俺は………!!」

 

 

冷静になった瞬間、状況が分かり、体が震えだした。

 

 

殺そうとした。命を奪おうとしていた。

 

 

そのことに今さら気付いた。

 

 

「ッ!」

 

 

大樹は拳銃を強く握り締め、再びブラドに銃口を向ける。

 

 

「……………どこだ」

 

 

大樹はブラドを睨み付けたまま言う。

 

 

「理子のペンダントはどこだ」

 

 

「……………」

 

 

ブラドは答えない。

 

 

「死にたいなら死なせてやるぞ」

 

 

「……………」

 

 

ブラドはズボンのポケットから青く輝いた十字架をゆっくりと取り出した。

 

大樹はそれを取り上げる。だが、

 

 

 

 

 

「ガアアアアアァァァ!!!!」

 

 

 

 

 

バチバチッ!!!

 

 

ブラドは最後の力を振り絞って、電気を大樹に流した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで満足か?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!?」

 

 

大樹には全く効いていなかった。

 

ブラドをゴミのように見下した大樹の瞳がブラドを映す。真っ黒い瞳が。

 

 

ゴスッ!!

 

 

「ガッ!?」

 

 

大樹はブラドの頭を蹴りあげた。そのまま後ろに倒れ、動かなくなった。ブラドはもう戦えない。

 

 

「……………クソが」

 

 

大樹は吐き捨てる。

 

 

 

 

 

「もう忘れたいんだよ…!」

 

 

 

 

 

大樹の脳裏には、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

頭から血を流した女の子を思い出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちくしょう………!!」

 

 

大樹はその場で膝をついて、震える腕を憎らしげに見つめた。

 

 

________________________

 

 

 

爆発事故。

 

俺とブラドの戦いは俺のミスで引き起こった事故として扱われた。そしてその後は教務科が駆けつけて来た。ブラドのことを話すと、教務科は事件について一切の他言無用をするように言った。

 

 

だが、美琴たちにはすぐにバレるだろう。

 

 

俺は事件のことを尋問科にいろいろと聞かれた後、帰宅していた。現在の時刻は午後8:00だ。

 

 

「はぁ………」

 

 

俺は正直今日は帰りたくなかった。ブラドの戦いのあとはテンションがどうしてもあげれなかった。

 

俺は部屋の前まで行く。

 

 

(いつも通り、いつも通り)

 

 

そう言い聞かせ、ドアを開けた。

 

 

「ただいまー」

 

 

 

 

 

ガッガキュンッ!!ダンッ!!ガキュン!!

ガガガガッ!!ドゴンッ!!

 

 

 

 

 

「ぎゃああああァァァッ!?」

 

 

ドアを開けた瞬間、一斉に射撃された。

 

「何すんだこの野郎!!」

 

 

「「「大樹!!」」」

 

 

「うぐッ!?」

 

 

美琴とアリアと理子に突進された。いや抱きつかれた?

 

 

「ど、どうしたんだよ!?」

 

 

「大樹のバカ………」

 

 

美琴の震えた声が聞こえる。

 

 

「あんた、何で一人で戦ったのよ……」

 

 

「……………」

 

 

俺はその質問に答えれない。

 

 

「ママの冤罪が証明されたことは感謝するわ」

 

 

アリアは俺の服を強く掴む。

 

 

「でも一人で戦わないで!!」

 

 

アリアが大声をあげる。

 

 

「悪い……」

 

 

もう知っていたのか。

 

 

「もう次からはしないよ」

 

 

俺は美琴とアリアに約束した。

 

 

「だいちゃんは理子に約束してくれたね」

 

 

理子は涙を流しながら言う。

 

 

「ありが、とう……!」

 

 

「理子……」

 

 

俺はポケットからペンダントを取り出す。

 

 

「ほら、もう泣くな」

 

 

「ッ!?」

 

 

俺は理子の首にペンダントをつけてあげる。

 

 

「だいちゃん!!」

 

 

ゴッ!!

 

 

「うぐッ!?」

 

 

理子が再び抱きつき、押し倒された。そして、地面に後頭部を強打。

 

 

「ちくしょう………裏切り者……」

 

 

玄関から武藤の声が聞こえた。玄関では武藤、遠山、白雪、レキ、夾竹桃、ジャンヌの昨日のメンバーがいた。

 

 

「見てたのかよ……」

 

 

てかお前ら、さっき撃ったな?手に銃を持っているし。

 

 

「何で抱きつかれてるか知らねぇけど後で轢いてやる」

 

 

あ、武藤だけブラドのことを知らないんだ。やーい仲間外れざまぁ。

 

 

「轢いてみろよ。返り討ちにしてやる」

 

 

「ごめんなさい」

 

 

武藤はすぐに謝った。おい、それは俺が本当に返り討ち出来ると思ってるのか?………できるけど。

 

 

「……………」

 

 

「ん?」

 

 

夾竹桃がこちらに近づき

 

 

「足元がすべったわ」

 

 

そんなことを言って、俺に向かって転けた。いや抱きついてきた!?

 

 

「ちょッ!?」

 

 

これで合計四人が俺に抱きついているハーレム状態が完成。

 

 

「ちょっとあんたたち離れなさいよ!」

 

 

「あたしのパートナーに何すんのよ!」

 

 

「だいちゃんは理子のモノだもんねー」

 

 

「あなたにそういう権利は無いわ」

 

 

修羅場が降臨。

 

遠山とジャンヌは苦笑い。レキは無表情。白雪は遠山を見て、抱きつこうか悩んでいる。武藤は……あれだ。

 

俺は四人に向かって、

 

 

「お前ら!!少しは落ち着けえええェェェ!!」

 

 

俺の声がマンションに響いた。

 

そして、俺のどんよりしていた心はいつの間にか消えていた。

 

 




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