どうやら俺はたくさんの世界に転生するらしい【完結】   作:夜紫希

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明日の投稿。5月13日の投稿はお休みします。


理由は後書きで書きます。


続きをどうぞ。


彼は必ず現れる

【キンジ視点】

 

 

 

「やべぇ!乗り遅れる!」

 

 

俺は大雨の中、急いでバス停まで走る。

 

バスに乗る理由は自転車を修理に出しているからだ。チャリジャックにあったときは何とか無事だったが、何故か昨日の朝には前輪と後輪がパンクされていた。

 

一体誰の嫌がらせだろうか。一応被害届けは出しておいた。犯人に一矢報いたい。

 

「げッ!?」

 

 

バス停には既にバスが来ていた。

 

 

「やった!乗れた!やったやった!おうキンジおはよう!」

 

 

俺の悪友である武藤がバンザイしている。

 

 

「乗せてくれ、武藤!」

 

 

「そうしたいとこだが無理だ!満員!お前チャリで来いよっ」

 

 

バスの中は生徒でギチギチになっており、もう誰一人乗ることが出来ない状態だ。

 

 

「というわけで二時間目に会おう!」

 

 

キラーンっと笑顔で言う武藤。おい、それは遅刻しろと言っているのか!?

 

そんなやりとりをしているうちに時間は過ぎ、バスのドアが閉まる。

 

遅刻が確定した瞬間だった。

 

 

 

 

 

仕方なく俺は大雨の中を傘を差して歩いていた。

 

走っても一時間目は途中参加になるくらいなら二時間目から参加したほうがいいという結論にたどり着いた。

 

 

「前の俺なら受けたいって思ってたな」

 

 

一時間目は一般校区での国語。なぜ受ける必要があるか。

 

それは俺が普通の高校に転校したいからである。

 

 

(もうそんなことやめるけどな)

 

 

俺の家系は代々【正義の味方】をやってきた。

 

時代によって職業は違っていたがヒステリアモードの力を使い、力弱き人のため何百年も戦ってきた。

 

俺の父さんは武装検事として活躍していたし、武偵だった兄さんは俺の目標となる人だった。

 

中学では酷い目に遭わされたヒステリアモードだっていずれ父さんや兄さんみたいに使いこなせるようになるだろう。

 

当時の俺は前向きに物事を考えられた。だが

 

 

 

 

 

俺の目標だった人、兄さんは死んだ。

 

 

 

 

 

浦賀沖海難事故。

 

日本船籍のクルージング船、アンベリール号が沈没し、乗客一名が行方不明となった。

 

行方不明になったのは船に乗り合わせていた武偵

 

 

それが、兄さんだった。

 

 

警察の話によれば乗員乗客を船から避難させ、そのせいで自分が逃げ遅れたそうだ。

 

俺はその話を聞いて、改めて兄さんを誇りに思った。

 

 

 

 

 

だが、周りの人間は兄さんを非難した。

 

 

 

 

 

乗客たちからの訴訟を恐れたクルージングイベント会社、そしてそれに焚きつけられた一部の乗客は事故の後、兄さんを強く非難した。

 

ネットで、

 

週刊誌で、

 

遺族の俺に向かって吐かれた罵詈雑言の数々。

 

 

最悪だった。

 

 

今にでも夢を見てうなされる日がある。

 

 

どうしてこうなった。

 

 

なんであんなことに。

 

 

俺は悩みに悩んだ。もう苦しかった。

 

 

そしてひとつの答えにたどり着いた。

 

 

 

 

 

ああ、そうだ。ヒステリアモードのせいだ。

 

 

 

 

 

こんな遺伝子のせいで兄さんは。

 

 

 

 

 

武偵をやっていたからだ!

 

 

 

 

 

武偵なんて。

 

 

 

 

 

正義の味方なんて。

 

 

 

 

 

戦って、戦って。傷ついた挙げ句、石を投げられる。

 

 

 

 

 

ろくでもない損な役割じゃないか…!

 

 

 

 

 

いらない。正義の味方なんて称号。

 

 

 

 

 

捨てたい。武偵なんて肩書き!

 

 

 

 

 

俺はもう武偵をやめたかった。

 

 

 

 

でもあの日、パーティーを結成した日は違った。

 

 

 

 

 

アリアを見て思った。

 

 

純粋に助けを求めていた。

 

 

あの偽りの無い言葉。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺はこの女の子を助けたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

心の底から思った。

 

 

母親のために今までたった一人で命を賭けてきた女の子。

 

 

アリアの母親は兄さんと同じだ。

 

 

懲役864年分の冤罪を着せられている。

 

 

 

 

 

ふざけるな。

 

 

 

 

 

なんで罪の無い人間をここまで傷つける。

 

 

なぜ誰も助けてあげない。

 

 

俺はもう兄さんみたいに傷つけられている人を見たくない。増やしたくない。

 

 

 

 

 

戦ってやるよ。

 

 

 

 

 

そんなふざけた野郎ども、

 

 

 

 

一人残らず、俺が叩きのめしてやるッ!!

 

 

 

 

 

俺はあの日から変わることができた。

 

 

________________________

 

 

大雨の中、傘を指して歩いていると携帯電話がなった。

 

 

「もしもし」

 

 

レオポンのついた携帯電話を耳に当てる。

 

 

『キンジ。今どこ』

 

 

アリアだった。

 

時刻は8時20分。授業中のはずだ。なのに電話してくるとは、どういうことだ?

 

 

「んー、強襲科のそばにいる」

 

 

俺は辺りを見回して、場所を確認してアリアに伝える。

 

 

『ちょうどいいわ。そこでC備に武装して女子寮の屋上に来て。今すぐ』

 

 

「……何があったんだ?」

 

 

嫌な予感がした。

 

 

『事件よ。武偵殺しが現れたわ』

 

 

「ッ!?」

 

 

嫌な予感が的中し、俺は驚愕する。

 

 

「わかった!すぐ向かう!」

 

 

俺は傘を折り畳み、走り出した。

 

 

________________________

 

 

【大樹視点】

 

 

 

俺と美琴は傘をさして登校していた。残念ながら相合い傘じゃない。クッ、不覚。

 

 

「すごい大雨ね」

 

 

「傘さしても服が濡れるぞ、ちくしょう」

 

 

大樹の制服はびしょびしょになっていた。もちろん美琴も。

 

ちなみにまだ冬服の制服なので、服が透けてブラがッ!?っていう展開は無いのでご安心を。……何を安心すればいいんだ。

 

 

「風邪ひいたら覚えとけよ学校」

 

 

「……あんたなら学校の1つや2つ簡単に潰せそうね」

 

 

超電磁砲飛ばせる人に言われたくないな。学校の3つや4つは貫通できそうね。

 

 

「ん?」

 

 

ポケットに入ってる携帯電話が振動する。昨日授業をうけたときのマナーモードを切るのを忘れてたみたいだ。

 

 

「もしもし?」

 

 

『大樹。今どこにいるの?』

 

 

電話してきたのはアリアだった。

 

 

「すまん、もう少しで学校につくから」

 

 

まだ学校に来ていない俺たちを心配して掛けてきたのだろと推理して、アリアの質問に答える。

 

 

『いえ、学校に行かなくていいわ』

 

 

「なんでだ?」

 

 

『事件よ。バスジャックが起きたわ』

 

 

「ッ!?」

 

 

俺は驚くが、すぐに返事をかえす。

 

 

「わかった。すぐ向かう」

 

 

だが、その時。

 

 

 

「………嘘ッ」

 

 

美琴は目を見開いて後ずさりした。

 

 

「………すまんアリア。先に行ってくれ。後から追いかける」

 

 

『ど、どうしたの?』

 

 

ガガガガガガガッ!!

 

 

「ッ!」

 

 

俺たちに向かってものすごい数の銃弾が飛んでくる。

 

美琴が能力を使って全ての弾を電撃で撃ち落とす。そのおかげで一発も被弾しなかった。

 

 

『大樹、大丈夫なの!?』

 

 

「悪い、武偵殺しのオモチャに囲まれた」

 

 

銃をつけたセグウェイに大樹と美琴は囲まれた。

 

 

「こっちを片付けたらすぐそっちに向かう。アリアはバスジャックの解決を急げ」

 

 

『でも…!?』

 

 

「武偵憲章1条」

 

 

『あ……』

 

 

アリアなら分かってくれるだろ?

 

 

 

 

 

『「仲間を信じ、仲間を助けよ」』

 

 

 

 

 

声が重なった。

 

 

「これが終わったら、すぐに助けに行くから」

 

 

『それはこっちの台詞よ、大樹』

 

 

「それじゃあ、また後でな」

 

 

俺は携帯電話の電源を切り、ポケットに直す。

 

 

「美琴、バスジャック事件だそうだ」

 

 

「そう、なら早く片付けましょ」

 

 

「だな。美琴は後ろを頼む」

 

 

「………私なら一瞬で終わるけど?」

 

 

「一瞬は難しいと思うぜ」

 

 

「え?」

 

 

俺は上を見上げる。

 

 

ババババババッ!!!

 

 

「ヘリコプターまでオモチャになってるとはな………武偵殺しって俺たちを警戒しすぎだろ」

 

 

 

 

 

上空に一機のヘリコプターが現れた。

 

 

 

 

 

 

ヘリコプターの下部にはガトリングガンらしき機関銃が取り付けてある。

 

 

「………電撃、届くかしら」

 

 

「ヘリコプターなら俺にまかせろ。美琴はセグウェイを頼む」

 

 

「分かったわ」

 

 

早く終わらせて、アリアを助けに行くぞ。

 

 

 

________________________

 

 

 

【キンジ視点】

 

 

C装備に着替えた俺は屋上についた。

 

 

「なッ!?」

 

 

そして、大樹たちが襲われていることを聞いた。

 

 

「今は大樹たちを信じましょ。それよりも作戦をヘリの中で行うわ」

 

 

俺の頭上には一機のヘリコプターが飛んできていた。

 

 

 

 

 

「バスジャックよ」

 

 

「バス?」

 

 

ヘリコプターの中でアリアから事件の詳細を聞いていた。

 

 

 

 

 

「武偵高校の通学バス。キンジのマンションの前にも7時58分に停留したハズのやつ」

 

 

 

 

 

「ッ!?」

 

 

何だって!?あの中には武藤がいる。それにあのバスはギュウギュウでたくさんの生徒が入っているんだぞ!?

 

 

「………犯人は車内にいるのか?」

 

 

「たぶんそれは無いわ。バスには爆弾が仕掛けられてるから」

 

 

爆弾。

 

俺はチャリジャックを思い出す。

 

 

「俺のチャリジャックの犯人と今回のバスジャックの犯人は同一人物ってとこか」

 

 

「キンジのくせによく分かってるじゃない」

 

 

「くせには余計だ」

 

 

何となく予想はできた。

 

 

「アリアが前に言っていた武偵殺しは真犯人じゃないって言っていたこと、何となく分かってきたぞ」

 

 

武偵殺しが捕まっているならチャリジャックやバスジャックは起きない。簡単なことだ。

 

 

 

 

 

武偵殺しは、まだいる。

 

 

 

 

 

「もう武偵殺しの好きにはさせないわ」

 

 

アリアは手に力をこめる。

 

 

「作戦を言うわ。あたしとキンジがバスに乗り込み人質の救助と爆弾の解除よ」

 

 

アリアは俺の隣の人物に目を向ける。

 

 

「レキはあたしたちの援護をお願い」

 

 

コクッ

 

 

とレキはうなずく。

 

 

(アリアが呼んだのか)

 

 

レキ

 

 

青いショートカットの髪に大きなヘッドフォンをしており、小柄な女の子。入試で俺と同じSランクに格付けされ、今も狙撃科でSランクの天才少女だ。

 

苗字は知らない。実は本人も知らないそうだ。

 

レキは狙撃銃であるドラグノフに弾を籠めていた。

 

アリアも銃に弾を籠めていた。

 

 

「見えました」

 

 

弾を籠め終わったレキは窓の外を見て言う。

 

 

「何も見えないぞレキ」

 

 

「ホテル日航の前を右折しているバスです。窓に武偵高の生徒が見えています」

 

 

「よ、よく分かるわね。あんた視力いくつよ」

 

 

「左右ともに6,0です」

 

 

レキはサラッと言う。アリアはその数字に驚いていた。

 

 

「す、すごいなレキ」

 

 

俺は思ったことを言う。

 

 

「いいえ。そんなことありません」

 

 

「いや、すごいだろ。こんなにいい視力を持っている人はいないだろ」

 

 

 

 

 

「ですが、大樹さんは8,0です」

 

 

 

 

 

「「……………」」

 

 

大樹は本当に何者なんだよ。

 

 

「レキは大樹のこと知っているのか?」

 

 

「はい。モニターで特別に見学していました」

 

 

モニターを見てないの俺だけじゃないか。

 

 

「キンジ!無駄口叩かないで準備しなさい!」

 

 

ヘリコプターはもうバスの近くまで来ていた。

 

 

________________________

 

 

 

俺とアリアは強襲用のパラシュートを使ってバスの屋根に降りる。

 

 

「うおッ!?」

 

 

俺は着地する寸前にバランスを崩すが、アリアが腕を掴んでくれたおかげで助かった。

 

 

「あんた大丈夫?」

 

 

「悪い。これでも本気でやってるんだ」

 

 

「いざとなったらあたしがあんたを守ってあげるわ」

 

 

「そうならないことを願うよ」

 

 

俺は車内をこっそり確認する。犯人が中にいる可能性があるからだ。

 

犯人と思われる人はいなかった。

 

俺は窓を叩いて、窓を開けてもらう。

 

 

「キンジ!」

 

 

俺は声がする方へ顔を向けると、俺を見捨てた武藤がいた。

 

 

「武藤。二時限目はまだだが、会っちまったな」

 

 

「あ、ああ。ちくしょう………!なんで俺はこんなバスに乗っちまったんだ?」

 

 

見捨てたバチが当たったな。

 

 

「それよりもキンジ。あれだ」

 

 

武藤は背後にいた女子生徒。いや、女子生徒の持っている携帯電話を指でさした。

 

 

「それは?」

 

 

「女の子が持っていた携帯電話がすり替えられていたんだ」

 

 

『速度を落とすと爆発しやがります』

 

 

すり替えられた携帯電話から機械染みた声が聞こえる。

 

俺は耳についた無線のインカムに手を当てる。

 

 

「アリアの言った通りだ。バスの爆弾は遠隔操作されてる。そっちはどうだ?」

 

 

『爆弾らしいモノがあるわ!』

 

 

「どこだ!?」

 

 

『バスの下よ!』

 

 

くそッ、厄介な場所にあるな。

 

 

『カジンスキーβ型のComposition4(プラスチック爆弾)。見えてるだけでも炸薬の容積は3500立法センチはあるわ!』

 

 

「なッ!?」

 

 

過剰すぎる炸薬量じゃないか!?電車でも吹っ飛ぶぞ!!

 

『潜り込んで解体を』

 

 

言葉は続かなかった。 キンジが外の様子の異変に気づいた。

 

 

「伏せろおおおォォォ!!!」

 

 

ガガガガガガガッ!!!

 

 

真っ赤な車が横に回り込んで、無人の座席から銃を載せた銃座がこちらを狙い射撃した。

 

 

バリンッ!!バリンッ!!バリンッ!!

 

 

バスの窓が後ろから前まで全て割れる。

 

 

「ぐッ!?」

 

 

俺は一発胸にあたった。防弾ベストのおかげで怪我はないが、強い衝撃が襲い掛かってきた。

 

 

ぐらっ

 

 

バスが妙な動きをしていた。運転手を見ると

 

 

「ッ!」

 

 

負傷していた。右腕からは血が流れている。

 

 

(被弾している……!)

 

 

『有明コロシアムの角を右折しやがれです』

 

 

携帯電話から新たな指示が出される。

 

 

「武藤!運転を変われ!減速させるな!」

 

 

俺は防弾ヘルメットを武藤に投げ渡す。

 

 

「い、いいけどよ!オレこの間改造車がバレてあと一点しか違反できないんだぞ!」

 

 

「そもそもこのバスは通行帯違反だ。良かったな武藤。晴れて免停だぞ」

 

 

「落ちやがれ!轢いてやる!」

 

 

俺は窓から身を乗りだし前の様子を見る。

 

 

「こんな爆発物を都心に入らせる気かよ……!」

 

 

バスはレインボーブリッジに入っていく。

 

入り口の近くの急カーブに近づく。

 

 

「カーブするぞ!みんな左に寄れ!!」

 

 

武藤が言うとバスに乗っている生徒は左に急いで寄る。

 

ギャギャギャギャッ!!

 

 

タイヤの滑る音が大きく聞こえる。数名、生徒たちの悲鳴も聞こえた。

 

 

(生徒たちを左側に集めて重心を保ったのか)

 

 

さすが車輌科の優等生なだけはある。

 

武藤はこう見えて車輌科ではAランクなのだ。

 

俺はバスの窓から体を出し、屋根に上がった。そして、ちょうど俺と同じように屋根に上がろうとしたアリアのところへ行く。

 

 

「おい!アリア!大丈夫か!」

 

 

「キンジ!」

 

 

「アリア、ヘルメットはどうした!」

 

 

「さっきの車に追突されたときにぶち割られたのよ!それよりもあんたこそどうしたの!」

 

 

「運転手が負傷した!今武藤にヘルメットを貸して運転させてる!」

 

 

「危ないわ!そんな無防備じゃ!」

 

 

アリアもバスの屋根に上がる。

 

 

「すぐに車内に隠れ……!?」

 

 

キンジの背後を見て、アリアの目が見開いた。

 

 

 

 

 

「後ろッ!伏せなさいッ!!」

 

 

 

 

 

「え?」

 

 

 

 

 

キンジの後ろ。バスの前にはさっき射撃した真っ赤な車が走行していた。そして

 

 

 

 

 

銃座がこちらに向き、銃がキンジを狙っていた。

 

 

ガガガガガガガッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アリアが急いでキンジに駆け寄る。

 

 

 

 

 

駄目だ、二人とも………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

死んだ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガッガッガチンッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え」

 

 

前方で銃弾をはじくような音がした。

 

 

俺の体には傷一つなかった。

 

 

こちらに駆け寄ったアリアも無傷だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪い、遅くなった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の目の前にはあいつがいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だ、大樹!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アリアが名前を呼ぶ。

 

 

俺の目の前にはライオットシールドを構えている大樹がいた。

 

 

________________________

 

 

【大樹視点】

 

 

何とか間に合った。

 

 

「お返しだッ!!」

 

 

俺は車にライオットシールドを投げつける。

 

 

ガシャンッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

投げつけた勢いが強すぎて、車が宙を舞った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「は?」」」」」

 

 

アリアとキンジだけでなく、バスの中にいる生徒まで声がでた。

 

 

車はバスの上を通りすぎ

 

 

ガシャアアアンッ!!

 

 

後ろで粉々になった。

 

 

アリアとキンジは大樹の滅茶苦茶さに絶句する。

 

 

「おい、いつまで座ってる」

 

 

大樹の声でハッとなる。

 

 

「第二ラウンドだ。……いや俺は3か?」

 

 

大樹の声で後ろを見ると、

 

 

「「!?」」

 

 

先程と同じ車種の五台の車が迫ってきた。

 

 

「まだいるのかよッ!」

 

 

キンジは銃を構える。

 

 

「いや、応戦の必要は無い」

 

 

俺は遠山の銃をおさえる。

 

 

「運転手!死にたくなかったらアクセル全開ッ!!」

 

 

「え!?大樹!?」

 

 

「死にたい?」

 

 

「アクセル全開行きます!!」

 

 

ギュルルルルッ!!

 

 

バスのスピードが上がる。

 

 

 

 

 

「美琴ッ!!今だ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドシャアアアアアアンッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひゃうッ!?」

 

 

バスがさっきいた場所に巨大な落雷が落ちる。あ、アリアは雷苦手だったな。ごめん。

 

迫ってきた車が吹っ飛んだ。あるいは消し炭になった。

 

 

 

 

 

「ふぅ、終わったわよ」

 

 

 

 

 

上から美琴が落ちてきた。

 

 

「「え」」

 

 

「お疲れ様。あとやり過ぎだ」

 

 

何故美琴が上から落ちてきたか説明すると。

 

俺と美琴は無事に武偵殺しのオモチャを全て破壊した。

 

その後、俺は美琴を担いで(お姫様だっこ)で急いでレインボーブリッジに先回りしていた。

 

でもバスはすぐ来たので正直ギリギリだった。

 

俺は遠山が撃たれそうになったので、美琴をレインボーブリッジの橋の上で降ろして、急いで助けにいった。

 

ライオットシールドはセグウェイがつけていた。邪魔臭かったので引き剥がして俺の装備品として役立てていた。役に立ってよかった。

 

 

「遠山、インカム貸してくれ」

 

 

「あ、ああ」

 

 

俺は遠山からインカムをもらう。

 

 

「レキ、聞こえるか?」

 

 

『はい、聞こえてます』

 

 

「よし、爆弾の解除は美琴がやるからレキは俺の援護を頼む」

 

 

『わかりました』

 

 

俺はインカムを遠山に返す。

 

 

「おい、援護って何だよ?」

 

 

「前見ろ、前」

 

 

俺は前を指をさす。

 

 

 

 

 

二台の車。そしてヘリコプターが迫っていた。

 

 

 

 

 

「「!?」」

 

 

「さっきから多いなぁ………どんだけあるんだよ」

 

 

アリアと遠山は驚愕し、俺は嫌な顔をする。

 

 

「やるしかないか……」

 

 

俺は深呼吸をして、

 

 

「美琴は爆弾の解除を頼む」

 

 

「分かったわ」

 

 

美琴はうなずく。

 

 

「遠山とアリアは二台の車を任せる。間違ってもバスなんかに当てるなよ」

 

 

アリアと遠山は肯定しない。いやできない。

 

 

「大丈夫だ。お前らならできる」

 

 

俺は二人の肩を軽く叩く。

 

 

 

 

 

「いや、俺達ならできる」

 

 

 

 

 

二人は驚くが、

 

 

「そうね、やってみせるわ」

 

 

「ああ、絶対に成功してやる」

 

 

自信満々に言い切り、銃を構えた。

 

 

「俺とレキがヘリコプターをどうにかする」

 

 

 

「「できる?」」

 

 

こいつら……仕返しかよ。

 

 

俺は笑みを浮かべて返答する。

 

 

 

 

 

「まかせろ、絶対に成功させる」

 

 

 

 

 

俺も自信満々で言ってやった。

 

 

バチバチッ

 

 

美琴は俺の言葉を聞いたあとすぐに爆弾の解除に取り掛かる。

 

 

遠山とアリアは車に向かって射撃する。

 

 

ズキュンッ!ズキュン!ガヒュンッ!!

 

 

遠山は一発、アリアは両手に持った銃からそれぞれ一発ずつ撃つ。

 

 

アリアの撃った弾は左側の車の二つの前輪を破壊する。

 

 

ギュルルルルッ!!!

 

 

車はスリップする。

 

 

遠山が撃った弾は右側の車の前輪の右のタイヤを破壊させる。

 

 

ギュルルルルッ!!!

 

車は左側にスリップする。

 

 

 

 

 

そして衝突した。

 

 

 

 

 

ガシャアアンッ!!!

 

 

 

 

 

「うおッ!?」

 

 

運転している武藤が声をあげる。

 

互いにぶつかった勢いで左側の車は左に衝突。右側の車は右に衝突した。

 

 

 

 

 

そして、真ん中に道が空いた。

 

 

 

 

 

(ヒステリアモードのキンジじゃなくても十分すごいな)

 

 

遠山はやはり強い。改めて実感した。

 

バスは二台の車の間をすり抜ける。

 

 

 

 

 

「「大樹!」」

 

 

 

 

 

遠山とアリアは俺の名前を呼ぶ。

 

次は俺の番だ。

 

ヘリコプターは約30メートルも上にいる。

 

そんな場所からヘリコプターは機体の下についた多銃身機関銃(ガトリングガン)で一斉に射撃しようとした。

 

その瞬間、

 

 

 

 

 

「私は一発の銃弾。銃弾は人の心を持たない。故に何も考えない。

 

 

 

 

 

ただ目的に向かって飛ぶだけ」

 

 

 

 

 

ガシャンッ!!!

 

 

多銃身機関銃が爆発し、破壊された。

 

レキの撃った弾は多銃身機関銃の一つの銃口に入り、中から破壊したのだ。

 

 

「あとはまかせろッ!!」

 

 

俺はバスから飛び降りる。

 

レインボーブリッジの橋のアスファルトに着地する。

 

そして、足に力を入れて、勢いを殺す。

 

 

ズシャアアアッ

 

 

着地成功。

 

俺は上空にあるヘリコプターを見上げる。

 

 

(余裕だな)

 

 

笑みを浮かべた後、俺は足に力を入れる。そして、

 

 

ダンッ!!

 

 

飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヘリコプターの目の前まで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「はああああァァァ!?」」」」」

 

 

美琴以外の全員が驚きの声をあげている。あり得ない光景に。

 

俺が元いた場所には大きなクレーターができていた。飛ぶ勢いが強過ぎたせいだ。

 

 

「落ちろッ!超スピードでッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺はヘリコプターを両足で踏みつけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガシャアアアンッ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は反動を利用してヘリコプターだけ落として、俺は空中で後ろに回転する形になった。

 

ヘリコプターはものすごいスピードで海に落ち、

 

 

 

ザバアアアンッ!!!

 

 

 

レインボーブリッジと同じくらいの高さの水しぶきをあげた。

 

大樹は無事に橋のアスファルトに着地した。

 

 

 

 

 

「解除したわ」

 

 

 

 

 

ちょうど美琴の作業が終わった。

 

 

「二回目よ、それ見るの」

 

 

美琴は呆れた顔をする。

 

だが距離が遠くて大樹には聞こえない。ちなみに最初のヘリコプターは右手で叩きつけた。

 

 

 

 

 

「ミッションコンプリィィィトッ!!」

 

 

 

 

 

俺は右手を空に向かって突きだし、笑顔で言った。

 

 

「……滅茶苦茶だなあいつ」

 

 

「え、ええ」

 

 

キンジとアリアは大樹の強さにド肝抜かれた。

 

 

バスは止まり、遠山たちが降りて来る。そして、俺のところに走って来た。

 

 

「ほら、俺達ならできただろ?」

 

 

笑顔で聞いてくる大樹。

 

美琴、キンジ、アリアは声を揃えて言った。

 

 

「「「当たり前だ、バカ」」」

 

 

 




明日の投稿はお休みです。

本当にすいません。理由は





深刻なネタ切れです。






全く続きが書けません。

ですが明後日の18:00までには投稿してみせます。

本当に申し訳ありません。


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