どうやら俺はたくさんの世界に転生するらしい【完結】   作:夜紫希

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いよいよこの時が来ました。

大樹たちの物語が、ついに終わりを迎えようとしています。

最後までどうなるか分からない展開と結末。

最後まで何をするのか分からない大樹たちにご期待を。

そしてここまで読んでくださった方々に最高で最強の感謝を込めて、


―――この物語のラストを、書かせていただきます。


原点世界終章・最終決戦編をどうぞ。


原点世界終章・最終決戦編
英雄はただ一人…この日を最後に明日は来ない…


―――この世界が、大切な人を殺した。

 

 

くだらない理由で、どうしようもない運命が、抗うことも許されず、無慈悲に命を奪って行ったのだ。

 

言葉は届かず、思いも届かず、一人の少女の願いは虚しくさびれた。

 

決して交わることのない二人が、それぞれの愚かな選択をする。

 

ある者はそれを忘れて———(いばら)の道から目を逸らした。

 

ある者は脳裏に強く焼き付けて———茨の道を選び、地獄まで足を運んだ。

 

しかし、正義は目を逸らした者に与えられ、地獄から生還した者を悪とした。

 

理不尽に不名誉な烙印(らくいん)を押されたわけじゃない。本人がそれを望んだからだ。

 

忘れていた事を思い出し、あらゆる大切な物を手に入れて『全てを救う』と決めた男。

 

大切な物を全て捨て、感情すら闇に消して『全てを壊す』と決めた男。

 

両者が争うことにそれ以上の理由は必要ない。

 

―――それが定められた運命なのだから。

 

逃れることも、絶対的不可能なのだ。

 

 

 

死ぬまで、戦うことしかできない不器用な男たちなのだ。

 

 

________________________

 

 

 

塩の香りより、焼けた臭いが鼻につく砂の浜。黒い煙が一帯に蔓延(まんえん)していた。

 

その中心に大樹は居た。左目からは血を流し、右目から涙がボロボロと地面に落ちる。しかし、決して悲しむ顔をしていなかった。

 

息を引き取った原田の体を強く抱き絞め、親友を奪った男に殺気を出しながら睨み付けている。常人が間に受ければ気絶。下手をすればショック死するだろう。

 

だが原田の命を奪った男―――宮川 慶吾は一切の動揺を見せない。不敵な笑みのまま、言葉を続けた。

 

 

「復讐の時だ。今からお前の全てを奪い、壊す……!」

 

 

「復讐だと……? このッ、ふざけるなッ!!」

 

 

ゴオォッ!!

 

 

大樹の叫びと共に吹き上がる暴風。砂と一緒に舞い上がり視界も同時に奪った。

 

神の力で慶吾の体を吹き飛ばそうとするが、

 

 

「フンッ」

 

 

大樹の攻撃を鼻で笑い、慶吾はつまらなそうに、手を横に払うだけで衝撃を簡単に消す。

 

辺りを漂う黒い煙が神の力を弱めているせいだ。もう一度撃った所でカウンター攻撃を受けるはめになる。

 

しかし、それを理解した上で大樹は行動したのだ。

 

 

ダンッ!!

 

 

余裕な態度を見せる慶吾の背後を天使のリィラが取る。天界魔法を即座に発動させ、魔法陣の中から光の矢が射出される。

 

 

「遅いな」

 

 

ゴオッ!!

 

 

振り返ることなく、見もせず慶吾は体を傾け、反転して避ける。しかも(かす)るか掠らないかのギリギリな避け方だ。

 

 

「避けろリィラ!!!」

 

 

危ない避け方をした理由はすぐに明らかとなる。黒いオーラを吹き出した銃を構えて、銃口をリィラに向けていたのだ。

 

リィラへのカウンター攻撃。防御する為の天界魔法が間に合わない。

 

 

『ガァッ!!!』

 

 

ガブッ!!!

 

 

構えた右腕にジャコが噛み付いた。大量の血が噴き出し、ジャコの黒い毛並みを赤く染めていた。

 

一瞬の隙が生まれた。リィラはすぐさま慶吾から大きく距離を取り、天界魔法を発動しようとする。

 

 

「……その程度か」

 

 

慶吾の表情を見たジャコは凍り付く。

 

威圧でも殺気でも無い。侮蔑(ぶべつ)と失望を含ませた狂気の目に、ジャコは噛み付いたことを後悔した。

 

 

「【生命略奪(ライフ・ヴァンデラー)】」

 

 

バシュンッ!!!

 

 

ジャコの体から黒い光が瞬いた。一瞬の出来事に大樹とリィラは何が起きたのか理解できない。

 

 

『ぐぅッ……まさかッ……!?』

 

 

———ジャコの毛並みが、白く変わり果てていた。

 

自身の力で白くなったわけではない。慶吾に力が奪われたかのように、ジャコは老いた。

 

痩せ細ったジャコの姿を見た大樹とリィラの中で感情が爆発する。

 

 

「「放せッ!!」」

 

 

ゴッ!!!

 

 

大樹は音速で慶吾と距離を詰めて正面から頭突きする。両者の額から血が流れ、大樹はジャコを奪い返した。

 

即座にリィラの天界魔法が発動する。頭突きでよろけた慶吾の真上から落雷が落ちる。

 

 

バチバチッ、ドガラシャアアアアアアンッ!!

 

 

砂塵を巻き上げ、直撃したことを最後まで確認していた大樹は跳躍して急いで距離を取る。敵がこの程度で終わるわけがない。

 

体勢を整える為に一度逃走を考える。原田を抱えながら慎重に逃げ出そうとする。

 

 

ドゴンッ!!

 

 

「あがぁッ!?」

 

 

重い銃声が聞こえると同時に右脇腹に激痛が走った。原田を落としそうになるが、何とか踏み留まる。

 

振り返って見てみれば銃を構えたまま慶吾がこちらに歩いて来ていた。無傷の体に大樹は舌打ちする。

 

確実に雷に当たったはずだ。その証拠に服の裾が少しだけ黒ずんでいる。完全に無効化する能力を持っているわけではない。

 

 

(―――なら……俺と同じなのか)

 

 

先程のリィラのカウンター攻撃を見た時から気付いていた。あの動きは今まで戦って来た保持者の中でも特殊―――俺や姫羅と言った者たちにしかできない洗練された動き。

 

バトラー、エレシスとセネス、ガルペスと言った神の力に任せた動きじゃない。

 

―――正真正銘、俺たちと同じように修羅場をくぐって来た者の動き。

 

 

「捨てたらどうだ? 逃げるのに邪魔だろ?」

 

 

「黙れよ……」

 

 

「持ち帰った所で生き返るわけじゃない。そのまま(みにく)く腐って———」

 

 

「黙れって言ってんだろうがぁ!!」

 

 

ガキュンッ!!

 

 

光の速度に達した【神銃姫(しんじゅうき)火雷(ホノイカヅチ)】の早撃ち。この距離なら絶対に目視することのできない。慶吾が避けることは不可能なはず。

 

 

「ッ……!」

 

 

しかし、銃弾は慶吾の頬を掠める程度で終わっていた。当たるには当たったが、軽傷で済んでいる。

 

その光景に酷く動揺していたのは、撃った本人だった。

 

 

(―――誘われていたことくらい普段の俺なら分かるだろ! 何やってんだ俺!)

 

 

避けられた原因は撃った大樹にあった。冷静さを欠いたせいで致命的なミスをしていた。

 

慶吾の挑発的な言葉に耳を貸したせいで銃弾に怒りを込めてしまった。本能や勘を研ぎ澄まし、僅かに感じ取って寸前で回避したのだろう。

 

 

ダンッ!!

 

 

再びカウンター攻撃を仕掛ける慶吾。大樹の銃弾を掠らせながらも攻めの姿勢を一切崩さない。

 

 

ドゴンッ!! ドゴンッ!!

 

 

黒い銃弾が大樹に襲い掛かろうとする。狙いの先は———冷たくなった原田の体。

 

大樹を激怒させるには十分だった。

 

 

グシャッ!!!

 

 

「ッ!」

 

 

原田に当たるはずだった銃弾は大樹の左腕にめり込んだ。

 

真っ赤な血が噴き出し、腕の骨が折れる音が聞こえた。だがおかげで原田の体に傷が増えることはなかった。

 

 

「【無刀の構え】」

 

 

次は大樹のカウンター。攻撃を受ける代わりに、真正面から突き進んだおかげで最短時間で慶吾まで距離を詰めることができた。

 

あらゆる感情が渦巻くの中、これだけは駄目だと大樹は心の中で叫ぶ。

 

 

(―――【憎悪の闘志】!!)

 

 

何であろうと、復讐しようとする相手に影響されて憎悪を抱き、復讐してはいけない。自分が復讐なんてすれば、今まで出会って来た保持者たちのことを否定してしまう。

 

僅かに残っていた正気で自分を取り戻す。許されない感情を一瞬だけ持つ。

 

そしてここで断ち切り捨てる。己の正義を貫く為にも、ここで絶対に断つ!

 

 

「【神殺(しんさつ)天衝(てんしょう)】!!」

 

 

ドゴオオオオオオオオォォォ!!!

 

 

神々が恐れる一撃が慶吾の顔に放たれた。凄まじい衝撃が一帯に響き渡る。

 

そのまま海の彼方に慶吾の体は吹き飛ぶ沈む。余波だけで、数秒海が割れていた。

 

 

「ッ……がぁあああぁ……!!」

 

 

殴った手が痛い。思わず膝を地に着いてしまうほど。

 

慶吾の体が頑丈だったわけではない。痛みの原因は、手を見て分かった。

 

―――化け物のように白く、老いたようにしわくちゃになっていた。

 

指の骨は全て粉々に砕かれ、血をダラダラと流れ出していたが、数秒で止まってしまう。

 

 

「大樹様……! 私はどうすれば……!」

 

 

駆け寄って来たリィラに俺は目を疑う。リィラの抱えたジャコは俺と同じように老いを悪化させていた。呼吸も小さく、まともに会話できる状態じゃない。

 

あらゆる天界魔法で回復を(ほどこ)した後なのだろう。無情にもジャコの体調は回復しているようには見えない。

 

苦しそうにしているジャコを見ていられず、だけどどうすればいいのか分からず、リィラはパニックに陥っていた。

 

 

(三対一の状況でこのザマか……!)

 

 

親友を失い、ジャコは重傷。さらに負けそうな状況に大樹は下唇を強く噛む。

 

悔しいという感情もあるが、一番は自分が情けない事だ。

 

また守れない。何度も猛省して乗り越えて来た壁なのに、今は山よりも高く思えた。

 

 

「【神の加護(ディバイン・プロテクション)】―――【神格化・全知全能】」

 

 

傷を瞬時に回復させ、左目と右手を回復する。続けてジャコに対して回復ではなく、力を与える行為で治療を試みる。

 

ジャコの体が神々しい光に包まれ、大樹は必死に力を送る。

 

 

「頼む……死ぬんじゃねぇ……!」

 

 

『……ゴフッ、ゴフッ』

 

 

息を吹き返すように大きく咳き込む。白くなっていた毛並みが少しだけ黒みを取り戻す。

 

 

「ジャコ!!」

 

 

『大きな声を出すな……頭に、響く……』

 

 

「心配させやがって……! もういい、あとは任せろ。リィラ、ジャコと原田を頼む!」

 

 

「まさか……一人で!? そんな無茶―――!」

 

 

「急げッ!!」

 

 

余裕のない一喝(いっかつ)にリィラは悔しそうに体を震わせるが、すぐに原田とジャコを抱えて白い翼を広げて飛び立った。

 

 

ガギンッ!!

 

 

その後ろから一発の銃弾がリィラを貫こうとするが、その前に大樹の刀が邪魔をした。

 

 

「お前の相手は俺だろ?」

 

 

「……それもそうだな」

 

 

いつの間にか黒く染まった海からゆっくりと歩いて来る慶吾。水に濡れたまま慶吾は銃を構え、銃口をリィラから大樹に向ける。

 

 

「次はしっかりと狙えよ。狙いを外した瞬間、お前の首を斬り落とす」

 

 

「……………」

 

 

力強く【神刀姫】を握り絞めながら自分の心臓を指差す。それを無言で慶吾は狙いを定めた。

 

先程の争いが嘘のように静かになる。互いに睨み合い、刹那の隙を見せない。

 

 

「―――—ハッ」

 

 

戦いの合図は、慶吾が鼻で笑った瞬間だった。

 

 

ドゴンッ!!

 

 

重い銃声が響くと同時に黒い銃弾は容赦無く大樹の心臓を貫いた。強靱(きょうじん)の肉体を持った大樹の体に風穴を開ける程の威力だ。その光景に大樹ではなく、撃った本人が驚愕した。

 

防ぐことはできたはずだった。回避することもできたはずだった。だが大樹は一切の守りを捨て、攻撃を仕掛けた。

 

 

「おおおおおおおおォォォ!!!」

 

 

「くッ」

 

 

心臓を撃ち抜いたにも関わらず大樹は全くの怯みを見せない。雄叫びを上げながら距離を詰めて見せた。刀を上から振り下ろし、銃を握り絞めた慶吾の腕を斬り落とそうとしていた。

 

大樹の突撃に判断を遅らせてしまった慶吾。それでも斬撃を回避する為に後ろに体を引こうとする。

 

 

カクンッ

 

 

だが振り下ろされる刃は軌道を変える。縦から横に、慶吾の首を狙うように。

 

宣言通り、大樹は慶吾の首を狙っていたのだ。後ろに跳んだせいで軌道を変えた刀を避けることができない。つまり、

 

 

グシャッ!!!

 

 

「ぐッ!?」

 

 

身を(てい)しての防御が要求された。

 

慶吾は己の左腕を使って刀を受け止めた。刃は深くめり込み、血を勢い良く噴き上げる。

 

ガシッとそのまま刀身を掴み、大樹の動きを止める。そして右手の銃を大樹の額に向ける。

 

大樹と同じように自分の体を犠牲にすることで反撃の隙を作る。間髪入れずに引き金を引いた。

 

 

(———見えるッ!!!)

 

 

ドゴンッ!!

 

 

超反応で大樹は頭を傾ける。銃弾は額を撃ち抜くことなく、右耳を削る程度で終わる。

 

一撃一撃が必殺となる戦い。そんな必殺の攻撃を読み合い、次に繋げる為の防御をしなければならない。

 

どちらかがそれをやめれば、もしくはできなければ負ける。だからこそ、両者は止まらない。

 

大樹は左手をグッと握り絞め、慶吾は銃を握り絞めたまま右手を後ろに引き絞る。

 

 

「「うおおおおおぉぉぉ!!!」」

 

 

ゴォッ!!!

 

 

両者の拳が両者の顔に叩きこまれる。頭蓋骨を砕き、脳ミソをグチャグチャにするかのような重い一撃だ。

 

血塗れに、ボロボロになりながら大樹と慶吾は後ろに吹き飛びながら転がる。衝撃で両者は距離を取ることになるが、展開は慶吾が有利となる。

 

 

「【残酷な雪崩(グラオザーム・ラヴィーネ)】!!」

 

 

バギバギバギバギッ!!!

 

 

銃口の先から砂浜が凍り始める。地面から無数の氷の刃が突き出ながら大樹へと襲い掛かろうとする。

 

 

「一刀流式、【風雷神・極めの構え】!!」

 

 

強引に左手で地に着いて転がっていた体を止める。そして慶吾の攻撃に刀を振るう。

 

 

「【號雷(ごうらい)静風(せいふう)】!!」

 

 

キンッ!!!

 

 

光輝く刀を斬り上げて氷の刃を無に還す。氷の刃を砕くことはできたが、強烈な冷風が体を凍えさせる。だが、

 

 

ドゴオオオオオォォォ!!

 

 

そのまま刀を垂直に振り下ろし、今度は慶吾に向かって攻撃が襲い掛かる。

 

雷の悲鳴ような斬撃音と共に暴風の刃が一直線に荒れ進む。

 

 

「【邪悪な暴風(シュトゥルムベーゼ)】」

 

 

ゴオオオオオォォォ!!

 

 

慶吾の銃から放たれたのは嵐の銃弾。大樹の暴風を一歩も動くことなく相殺した。

 

 

「「……………」」

 

 

両者の実力は五角―――他人から見ればそう思うだろう。

 

しかし、お互いに分かっていた。自分たちの実力差を。

 

 

「つまらんな」

 

 

「ッ……」

 

 

呆れるように溜め息を吐く慶吾に、大樹は歯を強く噛む。

 

ボタボタと出血の量は大樹が多かった。こうして向かい合って意識を保っていること自体、大樹には辛かった。

 

 

「お前のような男の為に、双葉は死ななきゃいけなかったのか」

 

 

「は……?」

 

 

どうしてこのタイミングで彼女の名前が出て来るのか意味が分からなかった。

 

慶吾と双葉の間に接点は無かったはず。なのに、どうして名前を出した。

 

明らかな動揺を見せる大樹に慶吾はニヤリとまた不敵な笑みを見せる。

 

 

「苗字の宮川という名前は古くてな。本当は、阿佐雪(あさゆき)という苗字だ」

 

 

「なッ―――!?」

 

 

驚愕と同時に頭の中でバラバラになっていたピースが組み合わさるのが分かる。

 

双葉の家で感じた違和感の正体はこのことだったのだ。

 

 

「母の再婚相手の父。その娘が双葉というわけだ。つまり、双葉の義理の弟ということになる」

 

 

明かされる衝撃の事実に大樹は何も言葉が出ない。

 

頭の中が真っ白になり、呆然と立ち尽くしてしまっていた。

 

 

「あの日、双葉が死んだ時から……俺はお前を一度たりとも、一瞬も許した覚えはない」

 

 

「ッ……」

 

 

凄味をきかせた睨み付けに思わず一歩下がってしまう。

 

だが……だがそれでも、大樹は言うのだ。

 

 

「確かに双葉が自殺した原因は俺だ。俺のせいだ。けれど……」

 

 

―――これ以上、自分を縛る鎖は無い。

 

迷いも悩みも、あの桜の木の下で終わっている。いや、俺は始まったのだ!

 

前に進む為に流した涙に、嘘をつく様な真似はしない。

 

あの笑顔を、二度と忘れない為に!!

 

 

「俺は、お前を止める!!」

 

 

「何?」

 

 

「俺も同じように、お前のやったことは絶対に許すことはできない。だけど双葉は、お前の復讐を望んでいないことぐらい分かる!」

 

 

握り絞めた拳を前に突き出し、

 

 

「お前の復讐は、俺がここで終わらせる!」

 

 

そして、宣言する。

 

 

「お前を倒して、邪神も倒す。このくだらない戦いを終わらせてやる!!」

 

 

曇りの無い瞳をした大樹の姿に慶吾は酷くイラつかせた顔になる。だが、

 

 

「———愚かだな」

 

 

「お前よりマシだ」

 

 

「クハッ、お前は二つ、誤解していることがある」

 

 

その時、全身に嫌な物が走り抜けた。

 

恐怖や憎悪なんて物じゃない。それを越えた形容しがたい気配。

 

今まで戦って来た悪魔や保持者の持つ小さい物ではない。

 

気が付けば痛みを忘れて、足が震えていた。

 

 

「———邪神は、俺の中に居る」

 

 

「……嘘だろ」

 

 

一体どういう巡り合わせなのか。これが運命なのか。

 

双葉との関係性も、伏線のように回収される。

 

容易に信じられない。頭の中に入らないのに、自然とそうなのだと脳が理解してしまう。

 

吐き気を催すような強い殺気のせいで、分かってしまうのだ。

 

 

―――これが、邪神の力なのだと。

 

 

「……何でだ」

 

 

「同じことを言わせるのか?」

 

 

双葉との決着は付けたはずなのに、終わることのできない物語。

 

慶吾の復讐は、正当だと思い始めている自分が居た。

 

構えていた刀が自然と下を向けている。大樹の表情は今までの中で酷い物だった。

 

そして、追い打ちをかけるように大樹の心を乱す。

 

 

「……もう一つの誤解は、双葉の死だ」

 

 

慶吾の顔からは不敵な笑みが消えていた。代わりに、

 

 

 

 

 

「———双葉を殺したのは、俺だ」

 

 

 

 

 

―――悪魔のような、邪悪な笑みに変わり果てていた。

 

 

ドゴッ!!

 

 

「ゴフッ……!?」

 

 

慶吾の拳は大樹の腹部を貫いていた。口から血を吐き出し、呼吸が止まってしまう。

 

避ける以前に防ぐことすらできなかった。大樹が反応することのできない速度で距離を詰められ、殴られたのだ。

 

先程戦っていた時と力とは違う。隠し持っていた邪神の力を解放しただけで、この差。

 

 

「そうか。自殺……それは知らなかった。都合の良い事になっていたのか」

 

 

ゴッ!!

 

 

話しながら大樹を蹴り飛ばす。意識を刈り取るような衝撃を受けながら砂浜を転がった。

 

立ち上がろうとするが、体に力が入らない。老人のように、大樹の体は痩せ細っていた。

 

神の力で回復しようとするが、頭を踏み付けられて集中できない。

 

 

「お前は神の力で敵の力を封じることができるんだろ? 実は俺も同じようなことができる」

 

 

地に伏せながら慶吾の言葉を聞くことしかできない。もう指にすら、力が入らない。

 

 

「邪神の力で、神の力を殺す。これが———お前の勝てない理由だ」

 

 

ギリッと食い縛る。砂の混じった血を味わいながら、敗北を舐めさせられる。

 

 

「うぐぅ……ぁあ……ぁぁぁああああッ……!」

 

 

「抗え抗え。そして最後に気付け。無理だと知り、絶望しろ」

 

 

ドゴンッ!!

 

 

右腕を撃ち抜かれ肩から千切れる。想像を絶する激痛が大樹を襲う。

 

 

ドゴンッ!! ドゴンッ!!

 

 

左腕、左足、右足と次々に容赦無く撃ち抜かれる。大樹の苦しむ姿を見るのを楽しむように。

 

 

「ああ、そうだ。最後は———お前の大切な人を殺すとしよう」

 

 

「ッッッッ!!!!!」

 

 

どんなことがあっても大樹に向かって絶対に言ってはいけない言葉。

 

死んだはずの力が、死んだはずの体から、大樹の怒りから力が放たれた。

 

 

「があああああああァァァ!!!」

 

 

ガブシャッ!!!

 

 

頭を踏みつけていた慶吾の足に噛み付いた。ジャコの噛み付きより、何百倍も強く。

 

この命が散ったとしても、させないという意志が、大樹の体を動かした。

 

 

「チッ!」

 

 

ドゴンッ!! ドゴンッ!! ドゴンッ!!

 

 

何度も銃弾が頭を撃ち抜いても、決して離さない。どれだけ殴られても、逃がさない。

 

 

キンッ!!

 

 

大樹の衣服からギフトカードが落ちる。同時に周囲に大量の【神刀姫】が展開される。

 

どんな絶望を前にしても、大樹は走り続けた。

 

どれだけ傷ついても、大樹は負けなかった。

 

そのたびに希望を掲げ、転べば立ち上がり続けた男だ。

 

 

「雑魚が」

 

 

ドゴンッ!!

 

 

―――慶吾は、噛み付いていた足を撃ち抜いて切り離した。

 

何の迷いも無く切り捨てた自分の足。大樹が急いで反対の足に噛み付こうとするが、その頃には腹部に衝撃が走った。

 

 

ドゴッ!!

 

 

黒い光の柱が地面から飛び出て大樹の体を宙に舞い上げさせた。

 

朦朧(もうろう)とする意識の中、慶吾を睨み付ける。展開した【神刀姫】が全て撃ち落され、無慈悲に自分へと銃口を向けていた。

 

動くことのできない瀕死の体に、大樹は助かることができない。

 

 

「クソッ……タレがぁ……!」

 

 

―――もう叫ぶことしか、できない。

 

 

 

 

 

クソッタレがあああああああァァァ!!!!

 

 

 

 

 

「———終わりだ英雄まがい」

 

 

ドゴンッッ!!!

 

 

邪神の力を解放させた慶吾。銃口からは凄まじい威力の銃弾が放たれた。

 

視界の全てを埋め尽くす闇に大樹の体は呑まれていく。

 

体の感覚も、激痛も、意識も、気が付けば消え去っていた。

 

 

________________________

 

 

 

―――完全に殺した。

 

 

瀕死の状態になった楢原 大樹を確実に、死ぬ瞬間をこの目が捉えていた。

 

肉片どころか髪の毛一本も残さない。近くに落ちた大樹の右腕を銃弾で粉砕する。

 

復讐を成し遂げた。その事に狂ったように笑えばいいのに―――何故かできなかった。

 

残ったのは喜びでも哀しみでも怒りでも無い。『無』だ。

 

心に穴が開いたかのような激しい『虚無感』だけが残っていた。

 

 

『———見事。しかし、呆気なかったな』

 

 

世界を揺るがすはずだった戦いがこうも簡単に終わるとは予想できなかったのだろう。

 

慶吾が力を付け過ぎたがゆえの結果。第一の目的を達成したので冥府神はそれ以上言うことは無い。

 

 

『やっとだ……やっと天界に殴り込みに行ける。あとは冥府に続く扉を開ければ全ての世界は崩壊する!』

 

 

全ての保持者は消え、神を守る盾も結界も消えた。あとは自分が残った神を血祭りにするだけ。

 

 

『いや、その前に残党が残っていたな。殺すのだろう?』

 

 

もちろん冥府神が言う残党は大樹の大切な人たちのことだ。噛み付いた時の抵抗は、戦っていて一番恐怖を感じた。

 

とっくに切り離した足は再生し、片足だけ素足になっている状態だ。少し情けないが、気にすることはない。

 

 

「……どの道、全部の世界を壊すなら無駄な時間だ。天界に行こう」

 

 

『いいのか?』

 

 

「興が冷めた」

 

 

『……分かった。では行くとしよう』

 

 

目の前の空間が縦に裂けて闇が広がる。天界に行くまで少しだけ時間が掛かりそうだ。

 

 

『天界に着けばすぐに戦争が始まる。準備を怠るな』

 

 

「分かってる———【究極悪神器(レメゲトン)】」

 

 

慶吾の体は冥府神の力に包まれ、悪魔の力を増幅させる。

 

黒い煙がより一層強まり、一帯の地を腐敗させた。海は更に黒く染まり、空は夜のように暗く、植物は枯れ果てた。

 

死の風を纏い、不幸と絶望を呼び寄せる魔王の姿に変わり果てた。

 

闇のような髪色に、傷だらけの上半身には赤黒い紋章が刻み込まれ、背中には悪魔と冥府神の契約を象徴する羊の骨が刻まれている。

 

黒色のローブを羽織り、斜めに装着した二つのベルトには72の悪魔を使役する証として黒い宝石が埋め込まれている。左右には黒色の銃が装着されている。

 

 

「世界を終わらせる時だ」

 

 

―――全ての世界に、二度と明日は来ない。

 

 

________________________

 

 

 

 

(………………そうか)

 

 

―――静寂の闇に包まれた世界に、大樹の意識は漂っていた。

 

 

(———負けたのか……ダッセぇな)

 

 

絶望的な敗北。命の灯を完全に消され、世界から去ることになった。

 

このまま『あの世』に行くのを待つのだろうか。

 

……不思議と涙も出ない。ここに来るまでに泣き過ぎたからだろうか。

 

死に物狂いで慶吾を止めようとしたのに、今は美琴たちのことを考えても涙は出なかった。

 

 

(……俺のせいだよな)

 

 

正面からぶつけられた憎悪に大樹は立ち向かうことができなかった。慶吾が復讐に染まった原因が自分にあるというたった一つの理由で。

 

自業自得なのだろう。自分が逃げたせいで、この結果が生まれてしまったのだ。

 

 

『お前のような男の為に、双葉は死ななきゃいけなかったのか』

 

 

―――ああ、悔しい。

 

 

『あの日、双葉が死んだ時から……俺はお前を一度たりとも、一瞬も許した覚えはない』

 

 

―――めちゃくちゃ悔しい。

 

 

『———双葉を殺したのは、俺だ』

 

 

―――ただ、ただ、悔しいッ。

 

 

(違う……違うだろ!!)

 

 

負けたから、双葉を殺されたから、美琴たちに手を出そうとしているから、そんなことじゃない。

 

 

(———お前は、間違っている……!!)

 

 

 

 

 

―――双葉の思いに気付いてないことが、何よりも悔しかった。

 

 

 

 

 

(馬鹿野郎がッ……どうして分からなかった……! 俺とお前の話の食い違いが、()()()()()()()が明らかにしていただろッ……!!)

 

 

自分と同じ馬鹿野郎な男だ。復讐するほど双葉の事が大切だったなら、気付いてやれと激しく後悔した。

 

 

(双葉はッ……双葉はお前をッ……!)

 

 

言ってやりたかった。邪魔な神の力を抜きで、拳と拳で殴り合って、仲直りの一つでもしたかった。

 

 

(クソッ……クソがッ……クソッタレがッ……!)

 

 

自分ことも、これからの世界のことを、大事な人の事を考えても、泣くことは無かったのに———今はボロボロに流れ出していた。

 

馬鹿野郎な男ばかりだ。俺も、原田も、慶吾も。

 

三人とも、女の子の気持ちを理解してあげられない鈍感さだ。

 

 

(……ホント何をやっているんだ大樹(お前)は)

 

 

こんな意味も分からない場所でふわふわ浮いている場合じゃないだろ。

 

死んだから? 体が無いから? 勝てないから諦めるのか?

 

 

―――大樹(お前)の人生を、大樹(おまえ)自身が否定してどうする!

 

 

らしくね。ああ、こんなの、らしくねぇよ! こんなの、俺らしくねぇぜ!

 

 

(救うって決めたんだろ! どん底に落とされたぐらいで諦めるような奴だったか!? 違うだろ!)

 

 

どん底でも絶望でも、どんな時でも俺は絶対に這い上がって来たはずだ!

 

どれだけ醜い姿をしても!

 

どれだけ涙を流しても!

 

どれだけの後悔をしても、諦めの悪い俺だ!

 

だったら後は、分かっているはずだ!

 

 

(アイツは今、それを求めていることぐらい分かっているはずだ!)

 

 

本当に死んだなら、今この意識は何だ!? 俺には()()()()()()()()()()

 

この意識は、ガルペスで感じた時と同じだ。そうだ、

 

 

―――()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

意識をしっかりと保った頃には、視界は真っ白の光に包まれていた。

 

 

________________________

 

 

 

「「「「「―――大樹!!」」」」」

 

 

朦朧(もうろう)とした意識を覚醒させる大声に目をバッチリと開ける。そこには泣き顔で俺を見る女の子たちの姿があった。

 

 

「……生きてるのか?」

 

 

「馬鹿ッ! もうホント馬鹿ッ! どれだけ心配させるのよアンタは!」

 

 

泣きながら美琴にバチンッと頬を叩かれる。それでも俺の手を強く握り絞めていた。

 

 

「どこにも行かないでよッ……首輪するわよッ……!」

 

 

「アリア……でも待って。何かもう着けられてない? めっちゃ堅い首輪、着けてない?」

 

 

胸の中で泣き出すアリアに頬を撫でようとしたが、首に違和感があった。うん、着いてるね首輪。嘘だろおい。

 

 

「ぐすッ……もっと早く気付けば助けに行けたのに……ごめんなさい、大樹君……!」

 

 

「優子が謝ることじゃないだろ。俺が……俺が悪か―――今首輪にリード繋げる意味あるの?」

 

 

ボロボロと俺の顔に涙を落とす優子。手つきは何故か首輪にリードを繋げている。俺に触れてお願い。

 

 

「死ぬくらいならッ……いつでも黒ウサギが【インドラの槍】でしますからッ……勝手に死なないでください!」

 

 

「流れ完全に変わったわ。違うこれ。感動のシーンじゃねぇな。俺たちの『いつものシーン』になったわ」

 

 

目を腫らしていると思いきや、黒ウサギはギフトカードを俺にチラチラとわざと見せている。何だこれ。真面目に泣いてくれてるの美琴だけ?

 

 

「馬鹿ねッ……本当に泣いているわよ。分かるでしょ? 私たちが無理をしていることくらい」

 

 

「ッ……ごめん。本当に」

 

 

「いいのよ……いつものことだもの。私たちを心配させることに関しては天才―――あッ、優子それ以上絞めると大樹君の息の根がまた止まるわ」

 

 

「でも強めに絞めるべきでしょ?」

 

 

「それもそうね」

 

 

「返せ。俺の反省と俺の自由を、そして感動の涙を」

 

 

確かに無理しているのは分かるけど誤魔化し方があまりにも酷い。というか俺、裸なんだけど。

 

 

「どうして身ぐるみ剥がされているんだ」

 

 

「ぐすッ……最初から裸でしたよ?」

 

 

ティナの言葉に疑いそうになるが、うるうると涙を溜めた目を見て首を横に振る。

 

どうして最愛の人の言う事を信じない俺。信じてやれよ。

 

 

「そうか……じゃあ服を用意してくれないか?」

 

 

「え? 嫌です」

 

 

「え?」

 

 

「え?」

 

 

「……何で?」

 

 

「……は、裸の方が魅力的ですよ」

 

 

「こっち見て話せティナ。おい、いつから俺は裸族になった。服を寄越せオイコラ馬鹿嫁共」

 

 

「アンタは嫁馬鹿でしょ」

 

 

「アリアの言うことは否定しないが、最初の涙はどこに行った!? 決して嘘じゃないことくらいは俺でも分かるから! え、何!? 本当にどういう状況!? 何を無理して何を勘違いしてこうなった!?」

 

 

美琴たちの顔を見て説明を求めるが逸らされる。視線を合わせようとしない。しかし、顔が、頬が、赤いのを見逃さなかった。

 

そして、最後に折紙を見て心臓が止まりそうになる。

 

 

「―――どうしてお前も裸族なんだ」

 

 

「大樹に見られても問題無い」

 

 

目元を赤くしている折紙は、俺と同じように服を着ていない。答えになってないんだよなぁ。

 

 

「……生まれた時の姿になっているだけ」

 

 

「うんそうだな。で、俺は『何で』生まれた時の姿になっているのか聞きたいの」

 

 

全く状況が飲み込めない。

 

嫁たちの間から部屋の様子を見ると、そこは俺の部屋だとすぐに分かった。

 

自分のベッドの上で顔を赤くした女の子たちに縛られ、裸になった俺と折紙。

 

 

―――いやぁアカン。それはアカンぞ。

 

 

助けてぇ! 犯されるぅ!

 

 

「ホラ気付いたわよ! 縛って正解だったわね!」

 

 

必死に抵抗するが抑えられる。真由美の言葉で推測から確信に変わる。

 

 

「マジで!? マジでやる気!? 行動力の化身過ぎない!? どういう結論で辿り着いたの真由美さぁん!?」

 

 

「簡単な話よ。私たちを置いて死ぬくらいなら———」

 

 

「ごめんやっぱいい! 本気なのは理解した!」

 

 

「―――これからまた死に行くつもりでしょ! だったらいいでしょ!というわけよ!」

 

 

「あぁ!! 積極的で男らし過ぎる! どうして俺の嫁はこんなに歪んでしまった!」

 

 

「「「「「誰のせいよ!!」」」」」

 

 

「俺でしたすいません!! でもちょっと待って!? ティナとかアウトだろ! 無理だろ!?」

 

 

「今更何を言ってるんですか。大樹さんは……不可能を可能にして来たじゃないですか」

 

 

「超絶大馬鹿!? カッコイイ定番ゼリフを低ゼリフにするんじゃねぇ! キンジでもしねぇよ!! っておわぁ!? 脱ぐな脱ぐな!?」

 

 

本気で服を脱ぎ始め出す女の子たちに頭がクラクラし始める。さっきまで死んでいた奴になんてことをしようとするのチミら!?

 

 

「ちょ、ちょっと……ムードもクソもない上に俺の告白する宣言のガン無視いやいやそれは俺がいつまで経ってもしないのが悪いけど―――やっべ鼻血が出て来たらか中止にって時に鼻血が出ねぇ! いやおかしいだろ! ブッシャーって出てお願い! クッソ縛られているせいで鼻に指突っ込めねぇ! おいリィラぁ!! ジャゴォ! だ、助けて! 童貞卒業した大樹とか嫌でしょ!? キャラ的に無理でしょ!? 主人公にあるまじき展開ですよ! こんな時こそ邪魔が入るでしょ! このタイミングで両親が入って来るとかオチが……来ないねぇ!? ホントお願いだから、ちょっと待ってぇえええええええええええええきゃあああああああああぁぁぁ!!!!!!」

 

 

________________________

 

 

 

 

―――結論、死守した。やったぜお前ら。俺はまだ童貞だ。

 

 

残念ながら唇は数え切れない程奪われたが、下は大丈夫。

 

……大丈夫。マジで。ホント信じて(ボロンッ

 

……ちょっと本音を言うとね、冷静になったらね、どうして逃げたのかな俺。別にこの小説、冷静に考えたらR-15だからシーン書かないよね。朝チュンなるだけだよね。ホント童貞(こじ)らせ過ぎた男ってめんどくせぇな!! 俺のことだけどぉ!

 

あれだけいつも大口叩いて置いて何でチャンスを棒に振るのかな? 今すっごい後悔してる。

 

 

「……何か言うことは?」

 

 

涙目で自分の体を布団で隠す美琴。皆が不満そうに俺を見ている。そっちも卒業で———純潔を守るって言い方の方が良いのか。もうどっちでも良いよ。

 

 

「……おっぱいは小さくても良いなって改めて感心して———」

 

 

メキョッと拳が顔に刺さった。

 

 

「あと意外と俺はキスが上手いという気持ち悪い事に気付い―――」

 

 

メキョッと拳が顔に刺さった。

 

 

「やっぱティナはまだ早い」

 

 

ボゴッと割と本気の拳が顔に刺さった。

 

 

「―――皆の好意はちゃんと理解している。理解しているからこそ、俺の我が儘も理解して欲しい」

 

 

「―――だから行かせたくないのよ」

 

 

アリアの言葉に俺は黙ってしまう。何も言えない俺に、アリアは強く胸を叩いた。

 

 

 

 

 

「死んだのよッ!! 私たちが何もできなかったら、本当に終わりだったのよ!」

 

 

 

 

 

敵と戦い傷を負うより痛い言葉が耳に残る。ああ、痛い程分かっている。

 

俺が分かっているなら、アリアたちも分かっているのだろう。そう———全部分かっているんだ。

 

何も言わなくても、目を合わせるだけで意思疎通ができるくらい互いの事が好きな俺たちだ。

 

 

「好きだよアリア」

 

 

「ッ……誤魔化さないで……………あたしもよ

 

 

(マジで可愛いと思いませんか皆さん)

 

 

ツンデレじゃなく素直に言ってしまうアリアに俺は嬉しくて笑みをこぼす。

 

 

「何回キスをするよりも、言葉の方がずっと気持ちを伝えれるよな」

 

 

キスでも伝わることは否定しないけどっと大樹は付け足すと、アリアの手を取る。

 

ああそうか―――抑えることのできない気持ちを、言う時なのか。

 

 

「美琴、アリア、優子、黒ウサギ、真由美、ティナ……そして折紙」

 

 

胸に手を当てながら一人一人大切に名前を呼ぶ。

 

俺は頭を少し下げて、人生最大の告白をする。

 

 

 

 

 

「―――愛してます。俺と結婚してください」

 

 

 

 

 

握っていたアリアの手が強く握り絞め返すのが分かる。顔を下げたまま、言葉を続けた。

 

 

「世界中の誰よりもあなた方を愛しています。

 

幸せにすると約束しますから結婚してください。

 

ずっと一緒に居たいから結婚してください。

 

こんな情けない俺ですが、我慢して結婚してください。

 

頼れるお父さんになれるか自信は無いですが結婚してください。頑張ります。

 

死ぬ気で全力で守るから結婚してください。

 

だけど絶対に死なないと誓うので結婚してください。

 

よく他の女の子とトラブルを起こしますが、それでも一番は絶対にあなた方です。だから結婚してください。

 

最後に念を押して言います。超好きです超愛してます。結婚してください。

 

 

……今から危険な場所に行こうとしています。それでもついて来て欲しいと思っている最低な自分が居ます。

 

どうしても助けが必要です。一人で行けば死ぬことが、震えるくらい分かっています。

 

絶対に死ぬわけにはいけません。

 

だって―――あなた方と最高の結婚式を挙げる為に、死ねないのです。

 

結婚式はどんな世界よりも盛大に挙げたいです。呼びたい人も大勢にいます。

 

俺の花嫁だぁ!と自慢したいです。めちゃくちゃしてやりたいです。

 

 

……愛する人の為に、この世界は壊させない。

 

俺は愛する人の為に戦います。愛する人の為に俺は動いていることを分かってください。

 

確かにこのまま愛する人と逃げても良いと考えました。でも、それはできない。

 

 

このまま逃げれば―――あなた方の愛する男は消えます。

 

 

それは俺じゃない。負けた俺です。負け犬の俺です。

 

優しいあなた方ならそんな俺でも好きで居てくれることくらい分かっています。

 

ですが、それは『俺』じゃない。本当の『俺』は、そこにいない。

 

 

…………今、凄く怖いです。

 

戦うことも、失うことも、フラれることも、全部怖いです。

 

ですが、その恐怖を吹き飛ばすことができるかもしれない。

 

もし、この手を握り絞めてくれるなら―――俺の震えは止まります。

 

もし、この唇にキスをしてくれるなら―――俺の覚悟は決まります。

 

もし、このプロポーズをOKしてくれるなら―――俺は、絶対に死なない。

 

 

だから、最後にもう一度言わせてください。

 

 

―――俺と、結婚してくれ」

 

 

人生最大の告白を終えた。頭を下げたまま、俺は涙をこぼしているのが分かる。

 

なんて告白をしているのだろう。思ったことを口に出しただけで、こんな最高の最低で、酷い告白をしてしまうのか。

 

 

「ッ……」

 

 

―――告白で女の子をまた泣かせるなんて、罪な男だ。

 

 

「分かってるッ……分かってるわよ馬鹿ぁッ……!」

 

 

ああ、だよな。

 

 

「そんなことを言うって、最初から分かっていたわよ……どれだけの付き合いだと思っているのよッ……!」

 

 

美琴。君が最初に俺の手を取ってくれたよな。

 

短い時間の中、俺を選んでくれて、信じてくれて、凄く嬉しかった。

 

アリアを助ける時も、君が居なければ無理だった。今の俺は、君から始まったのだろう。

 

かつて最大の敵だったガルペスを倒せたのは、君を助ける為だ。それだけ俺は君を本気で思っていた。

 

 

「ホント美琴の言う通りよ……どれだけアンタのパートナーをやっていると思っているのよッ……」

 

 

アリア。その次に来てくれたのは君だったな。

 

大切な友として、俺と美琴と一緒に来てくれた時は本当に嬉しかった。

 

俺たちはきっと世界が認める最高のパートナーだ。背中合わせ(バック・ツー・バック)をした時は自分たちは無敵だと実感する程息が合っていた。

 

緋緋神での事件も、ガストレア戦争も、全部君の事を思うから頑張れたんだ。

 

 

「神様も酷いわッ……全部、アタシたちの大樹君に押し付けてばかりッ……!」

 

 

「ああ、ホント……一発殴ってやらないとな」

 

 

優子。君は、決して弱くない。

 

美琴たちのように能力は無い。アリアのように身体能力も無い。それでも、君の心は誰よりも強かった。

 

火龍誕生祭の時、君の告白は今でも胸の中に残っている。一度折れてしまったけど、それでも立ちあがれたのはあの言葉があったから。

 

魔法科高校の時、君が俺のことを忘れても俺が諦めなかったのはあの言葉のおかげだ。

 

そして、誰よりも努力をして俺たち助けてくれた。そんな君が大好きだ。

 

 

「ちゃんとッ……黒ウサギたちを、幸せにしてくださいッ」

 

 

「当たり前だ」

 

 

「約束ですよッ……コミュニティのことだってッ、あるんですから」

 

 

「この俺が本気を出せば一桁どころか頂点だって余裕だ」

 

 

黒ウサギ。君は、俺に希望をくれた。

 

大切な人たちを失い、戦うことも生きることも投げ出してしまった俺を君は見捨てなかった。

 

どんなに情けない姿でも……君の前なら見せることができた。本音を出して、助けを求めることができた。

 

優子を助け、アリアを助け、美琴を助けることができたのは君が最初に俺を好きだと言ってくれたからだ。

 

人生最大の博打―――【神影姫】の件も、信頼していたから君に託した。ウサ耳が無くても、君は必ず俺を助けてくれると分かっていた。

 

 

「もうッ……やっと言ってくれたわね。内容は、大樹君らしいから許すわ」

 

 

真由美。君は、俺たちをよく見てくれている。

 

いつも俺たちを(もてあそ)ぶ小悪魔だが、本当は俺だけじゃなく、『俺たちの繋がり』を一番に考えてくれているよな。

 

強い意志を持って家族と向き合い、俺と一緒に居ることを選んだこと。君に影響され、俺は皆を幸せにすることを強く思い直すことができた。

 

いつだって俺たちを支えてくれた。今度は俺も支える。お互いを支えるような関係を作ろう。

 

 

「ぐすッ……でも、凄く嬉しいですッ……」

 

 

ティナ。君も頑張ってくれたね。

 

ガストレアウイルスなんかに負けず、俺と一緒にアリアを救う手段を探してくれた。

 

鬼に体を乗っ取られ、最低な俺になっても追いかけてくれた。君が居なければ姫羅に勝つことは絶対になかった。

 

最初に出会った時、君は俺の事を『正義のヒーロー』と言ってくれた。そのことは、決して忘れない。

 

俺はいつまでも、君の帰る場所を守り続け、『正義のヒーロー』でいることを誓うよ。

 

 

「……折紙が、一番泣いちゃったな」

 

 

「ひぐッ……だっでッ……」

 

 

「うん、分かってる。小さい頃から、一番分かってるから」

 

 

折紙。君の嘘も偽り無い言葉の数々は本当に素敵だ。

 

小さい頃から知っていた。感情をあまり表に出さなくても、大きくなっても、折紙の芯は変わらない。

 

いつも言葉や行動で俺に迫ってくれて、本当に俺の事を思っていることが分かる。

 

だけど、俺の方から迫るのは少なかったよな。だから、今度は俺が我が儘を言おう。君を、誰にも奪わせないくらい強引に。

 

 

「―――返事を、聞かせてくれますか?」

 

 

全員の顔を見ながら、俺は返事を待つ。

 

涙を流していても、彼女たちは最高の笑顔を見せてくれた。

 

 

 

 

 

 

「「「「「―――はい、喜んで」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

________________________

 

 

 

 

「―――ちょっと考えたら裸のまま、俺たちは何をやってんだ」

 

 

「告白した後にそういうこと言わないで……」

 

 

美琴が恥ずかしそうに顔を背ける。よく頑張ったよホント。

 

とりあえず服を着た俺たち。ちなみに、全員Tシャツは同じである。

 

 

「ハッハッハッ! 久々の『一般人』Tシャツ! あんどぅ、『嫁LOVE』! しかも皆の名前入りだぁ!」

 

 

「流れで着たけど……あたしたちは『大樹LOVE』って堂々と書いてあるのよね」

 

 

「きょ、今日だけよ……今日だけ」

 

 

アリアと優子がすっごく脱ぎたそうにしている。

 

 

「恥ずかしがるなよ! もう俺たち……夫婦じゃないか」

 

 

「もうッ、大樹さんったら! 調子に乗らないでくださいよ~!」

 

 

「黒ウサギの言う通りよ! 大樹君……いいえ、パパとしての自覚を持ってよね!」

 

 

「分かってるってもー! パパ頑張っちゃうもんねー!」

 

 

意外にも黒ウサギがノリノリで、真由美は全く恥ずかしがっていないのだ。

 

……いや、ティナと折紙も嬉しそうに着て大樹にくっ付いている。どうやら恥ずかしいのは美琴たちだけとなる。

 

 

 

 

 

「―――いや世界の危機なのに何をやっているんですかぁ!!??」

 

 

 

 

 

ここでリィラの登場。血相を変えてツッコミを入れて来た。

 

 

「「「「「えー」」」」」

 

 

「まさかの嫌な顔された!? まさか私が常識人側になってツッコミする日が来ると思いませんでしたよ! しかも全員大樹様側に行った!」

 

 

「空気読めよ。まだイチャイチャしていたいんだよ」

 

 

「いやいやいや! そんな場合じゃないですよね!? 大樹様が死んだことで天界が———!」

 

 

「あとであとで。まだちゅっちゅっし足りないから。ねー!」

 

 

「「「「「ねー!」」」」」

 

 

「最悪だー!!! ただでさえ厄介な大樹様に女の子たちが仲間になったせいで世界史上性格が悪いですよ!? あと普通に気持ち悪いんですけどこの集団!」

 

 

部屋中に大量のハートが浮かんでいるように見える。

 

リィラは頭を抱えながら―――言ってはいけない事を口にする。

 

 

「―――原田様が死んでいるのですよ!!!」

 

 

「「「「「……………」」」」」

 

 

ズゥゥゥゥゥゥゥゥゥウウウン…………!!!

 

 

大樹たちから一気に負のオーラが放たれた。先程のラブラブが嘘のように。

 

特に大樹。主人公どころか人が絶対にしてはいけない目で絶望していた。

 

 

「アイツは俺たちが前に進んでいることを望んでいるから笑顔でアイツに見送りたいと思っていたのにお前はどうしてそういうことを言うんだよ大体アイツが死んじゃったのは俺たちのせいだろ反応できなかった俺とジャコとお前だろうがそうだな俺たちが悪い―――死のう」

 

 

「「「「「うん……」」」」」

 

 

「―――めんどくせえええええええええええェェェ!!!!」

 

 

ついに、天使から敬語が消えた珍しい瞬間だった。

 

 

 

________________________

 

 

 

「いや、ちゃんと分かっている。リィラ、そう怒るな。アイツの為にも、暗いままじゃ駄目だろ?」

 

 

「真剣そうな顔をしている所悪いですが、女の子の体を抱き締めながら言うと説得力が全くないです」

 

 

「真面目な話をしよう―――そうだ……どうやって俺を生き返した?」

 

 

「おっぱいに顔を埋めながら聞くことですか!?」

 

 

「ぴぎぃ!?」

 

 

リィラに殴られてやっと反省する。その場に正座をしてリィラに話を聞く。

 

 

「まず大樹様は完全に一度死んでいます。蘇生もできないよう、遺体は残さず消されました」

 

 

急いで戻ったリィラが見た光景は大樹と慶吾が戦った跡。おびただしい血の量と一帯が死の地へと腐敗し切っていた。

 

次に優子が来た時にはリィラはどう言葉をかければいいのか苦悩した。察しの良い優子はすぐに泣き出して大変だったと語る。

 

 

「肉体からの蘇生は可能性はありますが、残った血からの蘇生は不可能。もしかしたらと思って試しましたが、できませんでした」

 

 

「ちょっと待て。不可能って分かっているのに何で試した。やっぱ言わないで良い」

 

 

ですがとリィラは真剣な表情で、俺の復活を説明した。

 

 

「———肉体の蘇生を可能とする希望が、この世界にありました」

 

 

「……この体は、まさか」

 

 

「いえ、正真正銘大樹様の物です。()()ですが」

 

 

そこまで言えば大樹も分かった。この体は———この世界にしかない唯一無二の体なのだから。

 

 

「……できたのか」

 

 

「はい―――()()()()()()()()()()()()()()

 

 

―――仏壇に置かれていた俺の遺骨。この体は、元の俺のモノになった。

 

アレだけ徹底した殺し方をしたのに、こんな蘇生の仕方は敵たちも考えはしないだろう。

 

しかしとリィラの話は続く。

 

 

「肉体の蘇生はできても、私には大樹様の魂を込めることはできませんでした」

 

 

「確か人には肉体とは別に魂があるんだよな。俺が何度も立ち上がれたのも魂が死んでいなかったから……そうだな?」

 

 

「はい。普通は絶対に肉体が死を迎えれば魂は黄泉の国に行きます」

 

 

「何で念を押して『普通は絶対に』とか言うの? ねぇ?」

 

 

「マジで常人には無理です」

 

 

「リィラがいじめるよぉ!!」

 

 

「私をダシにして女の子に抱き付かないでください! ブチ殺しますよ!」

 

 

「この数分ですっげぇ強くなったなお前」

 

 

「……大樹様と別れてからずっと涙が止まりませんでした」

 

 

「やっべぇ重い一言貰った。本気で反省しなきゃいけないじゃん」

 

 

「本気で反省するのでしたら私のことを嫁に貰うくらいの覚悟はしておいてください」

 

 

「それは無理。ホラ、めっちゃ睨まれてる」

 

 

「愛人でも、可」

 

 

「それでも諦めないの、か」

 

 

「話を戻しますと———大樹様の魂は……大樹様のお母様に戻して貰いました」

 

 

「ブフッ!?」

 

 

爆弾発言。突然の不意打ちに大樹は噴き出した。

 

ここで『陰陽師』の家系が出て来てしまうのかよ! やっぱ凄いなウチの家族!

 

 

「いぇい!」

 

 

扉を勢い良く開けてポーズを決めるオカン。歳を考えろ歳を。

 

 

「オカン……いや、そうだな。最初にお礼を言うべ―――」

 

 

「だいちゃんだいちゃん」

 

 

ありがとうと言おうとするが、オカンは俺の傍に寄り、俺にしか聞こえない声で尋ねる。

 

 

「孫の顔はいつかしら?」

 

 

「オカンのそういうところ嫌い」

 

 

「その……こういうことは口にしちゃいけないと分かっているけれど……喘ぎ声が聞こえなかったけど、どんなプレイを強要させ―――」

 

 

「ホント嫌いッ!!!」

 

 

うるさいので部屋から追い出す。どっか行け!!

 

 

「……えっと、話を戻しますと無事に大樹様の魂を戻して今の状態になります」

 

 

「ッ……原田は!? 原田も俺と同じように蘇生できたのか!?」

 

 

大樹の提案にリィラの表情は暗いままだった。ああそうかと納得してしまう。

 

 

「原田様の肉体は蘇生できました。ですが、魂が見つからないのです」

 

 

「……黄泉とやらに行ったのか」

 

 

「いえ、それが違うみたいなのです」

 

 

リィラに否定され、大樹は首を傾げる。

 

 

「お母様の話を聞けば魂はしばらく現世を当ても無く浮遊するはずなのです。時間が経てば黄泉に行くのですが……ちなみに大樹様の魂は黒ウサギ様の胸の間に挟まっていました」

 

 

「それいらない情報だな多分」

 

 

もじもじと黒ウサギが恥じる中、美琴たちからジト目で見られている。「小さくても良いんじゃなかったの?」とかボソボソと言われている。やめてくだちぃ。

 

 

「しかし、原田様の魂はどこにも浮遊しておらず、黄泉に行ったようにも思えないと。現状何が起きているのか分からないと言っています……最悪の可能性を上げると……」

 

 

「もういい。分かったから」

 

 

最悪の可能性―――魂ごと慶吾に殺された。もしくは未練もなく成仏したか。

 

いずれにしろ、原田に再び会うことは難しいと分かった。

 

涙が出そうになるが、上を向いてグッと堪えた。

 

 

「今は———世界を救いに行くだけだ」

 

 

このまま奴の好きにすれば、全ての世界に二度と明日は来ない。

 

双葉の死の真相も、双葉の思いも知ることなく奴は壊す。

 

だったら、俺はそれを止めよう。

 

保持者としてでなく、楢原 大樹として動くのだ。

 

 

 

 

 

―――全ての世界に、希望ある明日をもたらせる為に。

 

 

 

 

 

「アイツの好きな人の居る世界も、守ってやる」

 

 

だから、あとは俺に任せろ。ゆっくり休んでくれ……最高の親友よ。

 

 


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