どうやら俺はたくさんの世界に転生するらしい【完結】   作:夜紫希

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作者から一言。


―――「ヤバイです。大樹たちの物語が近々終わるのかと思うと泣きそう漏らしそう死にそうです」



最後まで絶対に動揺してはいけない24時!

―――現在の状況を報告。

 

 

原田 亮良のケツロケットの回数、一度の動揺につき12回。

 

宮川 慶吾のケツロケットの回数、一度の動揺につき6回。

 

 

 

楢原 大樹のケツロケットの回数、一度の動揺につき50回。

 

 

 

更に楢原 大樹の浮気を確認した場合、タイキックが追加される。

 

 

―――報告終了。最後のステージに移動します。

 

 

________________________

 

 

 

 

「―――というわけでこのゲームはやっと最後を迎えることができます。やりましたね! 作者も本編の最後までの流れをどうするか決めていましたが、完全に固まったそうですよ!」

 

 

「初手からメタ発言やめろ。だけど」

 

 

ジャコバスの中でリィラに聞かされた話に俺たちは同時に跳び上がった。

 

 

「「「うぅおおおっしゃあああああ!!!」」」

 

 

スパパパパパアアアアアンッ!!!

シュパドゴオオオオオオンッ!!!!

 

 

喜びのケツロケットに原田と慶吾は膝を着くが、大樹はバスの窓に突っ込んだ。威力の違いはここまで差があった。

 

だが変わったのはケツロケットの回数だけじゃない。団結力もだ。

 

 

「しっかりしろ大樹! 俺たちはもう少しで地獄から解放される!」

 

 

「もう俺は本編に戻っても黒幕として威厳(いげん)が全くないかもしれないが、ここが正念場だ!」

 

 

「俺なんか死んでいるからな! お前なら頑張れるだろ!」

 

 

「励ましているの? それとも慰めて欲しいのお前ら? とりあえず涙拭けよ」

 

 

そんなくだらない会話を続けていると、ふとバスが停車した。目的地に着いた―――

 

 

「おはよう皆! 今日も動画を見てくれてありがとう!」

 

 

―――忘れてた。俺たち(のケツ)を殺しに来る刺客が居たことを。

 

元気良く入って来たのはカメラを片手に持った士道。またお前かよ。

 

 

「知っていると思うけど一応自己紹介するよ。ユーチューバーのシドーと!」

 

 

「タッツー兄さんだ」

 

 

ここでまさかの司波 達也の登場。ズルいんだけど。

 

だが今までの修羅場をくぐり抜けて来た彼らは簡単には動揺しない。

 

 

「そして双葉ッチだよぉ!!」

 

 

だがすまん、それは俺と慶吾にむっちゃ効く。

 

 

スパパパパパアアアアアンッ!!!

シュパドゴオオオオオオンッ!!!!

 

 

幼馴染の残念な登場の仕方に俺と慶吾はケツロケット。大樹は再び窓に頭から突っ込んだ。本当に威力強い。

 

 

「さてタッツー兄さん。今日は何をするのかな?」

 

 

「超微脳派量子機器で出力した時に見られるアルゴリズムを理解し、逆算と三十六の数式の内に改竄(かいざん)された部分法定式と換算―――」

 

 

「さて双葉ッチ! 今日は何をするのかな!?」

 

 

今回も飛ばすねお兄様。演技だったの今の? 士道君の顔色普通に悪いけど?

 

 

「今日はカンガルーのペ〇スをシドー君が食べますよ!」

 

 

―――その発言に、車内の空気が一瞬で凍り付いた。

 

 

「いやちょっと待てぇ!? そんな話、聞いてないよ!? 大樹の好きな人をたくさん登場させてタイキックさせる企画じゃないの!?」

 

 

「それは俺がちょっと待てと言いたい」

 

 

というか酷い内容だなおい。話の始まり初手からチ〇コって……最近、番外編だからって下ネタオーケー感出てない? アウトだからね?

 

双葉の発言に顔を真っ青にする士道に達也が肩を叩く。

 

 

「安心しろシドー。口直しに食べたあとはヒツジ、ヤギ、牛と豪華な料理が食える」

 

 

「いやいや! それでも最初のカンガルーが凄く嫌だから! あとが良くても最初が嫌なんだよ!」

 

 

「ん? なら先にヒツジから食べるか?」

 

 

「いや先に食べても結局食うなら意味が無———」

 

 

「ヒツジのペ〇スから」

 

 

「結局用意してるの全部ペ〇スかよ!!!」

 

 

「「「ブフッ!!」」」

 

 

スパパパパパアアアアアンッ!!!

シュパドゴオオオオオオンッ!!!!

 

 

ちくしょう。今の流れは卑怯だ。

 

 

「とにかく駄目だ! 今日は普通の動画を撮ろう!」

 

 

「だから普通じゃないか。前回はコオロギとヤゴを食べたんだ。だったら次は今日やっている———」

 

 

「何でゲテモノ料理ばっか食ってんだよ! ここのユーチューバー過酷過ぎるだろ!」

 

 

「仕方ない。今日はシドー百パーセントで行くぞ!」

 

 

「服を脱がさないでぇ!!」

 

 

もう最初からカオスな空間になっていた。これから最後のゲームが始まるというのに、何だこの空気。

 

結局俺たちの目の前には服を脱がされ、銀色のトレーで股間を隠す士道の姿があった。もう可哀想だからやめろ。

 

 

「クソッ……やってやる!!」

 

 

「あーあ、士道に変なスイッチが入ったよ」

 

 

―――というか俺たち目ならどれだけ早くトレーをひっくり返しても目視できてしまうんだが?

 

 

「せいッ!!」

 

 

スパパパパパアアアアアンッ!!!

シュパドゴオオオオオオンッ!!!!

 

 

ホラね? 成功したのに俺たちは見てしまったから動揺したじゃん?

 

大体なんなのこの流れ。一つ言うけど、その裸の少年、主人公だからね? 俺の百万倍有名な主人公だからね? こんな扱いしちゃ駄目だからね?

 

 

「よし! スロー再生で投稿するぞ!」

 

 

「やめてくれぇ!!!」

 

 

泣きながら達也にしがみつく士道。トレーから手を放した瞬間、俺は高速で掴み、士道の股間を隠す。特に双葉に見えないように。

 

 

「優しいなお前」

 

 

「見てないで手伝って。士道に服を着せてやって」

 

 

________________________

 

 

 

 

とりあえず三人は逮捕された。うん、まぁ、うるさかったから窓から投げ捨てて追い出したけどね。双葉はさすがに停車して下ろしたけど、お兄様に関しては無傷だと思う。問題は士道が生きているかどうか。まぁ裸だから絶対に痛いと思う。

 

そして最後のステージに俺たちは到着した。ここが、最後……!!

 

 

『超絶ドキドキ! 死と死と死を乗り越えてラブラブ☆カップルメモリアル9!』

 

 

―――ホンマ頼むで。血と一緒にゲロ吐きそうなくらいキツイから俺たち。

 

目の前にババン!と出て来たモニター画面。いろいろとツッコミを入れたいところだが、疲れているからパス。

 

 

「ちなみに『死』が三回分繰り返しているのは三人の死を意味してます」

 

 

「リィラ。黙れ」

 

 

本気でイラっとしてしまう。じゃあ『9』は何だよって聞いてみたら、

 

 

「そんなゲームは(無いん)って意味です」

 

 

「死ね」

 

 

「聞かれたから答えたのにストレートに言い過ぎじゃないですか……?」

 

 

本当にくだらないことばかり考えるよなお前ら。というかどういう状況なんだ?

 

バスを降りた先は一軒家。普通に家の中に入り、俺たちは二階の一室に通されていた。

 

 

「最後のゲーム……そう、今から始まるのはエンドレス恋愛ゲーム! ヒロインとハッピーエンドを迎えるまで終わることができません!」

 

 

「すいませーん! タイキックされたくないのでヒロインに俺の嫁を追加してくださーい!」

 

 

「なるほど! 私の出番ですね!」

 

 

「ゴミに恋愛感情は抱けません。靴下の方がよっぽど恋できまーす」

 

 

「さすがの私も心が痛くなります!!」

 

 

うるせぇ。こっちは命懸けでゲームしてんだよ。引っ込んでろ。

 

 

「先に答えますとヒロインは多いです。もしかしたら大樹さんの嫁も居るかもしれません」

 

 

「よーし大樹! 刀を鞘に収めろぉ! 俺たちは絶対に手を出さないことを誓う! な!」

 

 

「当然だ。だから銃も下げろ馬鹿!」

 

 

「フー、フー、フー……野郎ぶっ殺してやる……!」

 

 

スパパパパパアアアアアンッ!!!

シュパドゴオオオオオオンッ!!!!

 

 

「大樹様たちが取り乱れていますがルールの説明をしますね! まず三人には学園生活を送って貰います!」

 

 

「チェストぉ!!!」

 

 

「ブフッ!?」

 

 

「貴様ぁ! 神の力を使うまでも無いだろうに……!」

 

 

スパパパパパアアアアアンッ!!!

シュパドゴオオオオオオンッ!!!!

 

 

「恋愛ゲームのように選択肢などが出て来るのでヒロインと仲良くなってくださいね!」

 

 

「ギャフッ!?」

 

 

「仕返しだおらぁ!!」

 

 

「クッ!? 巻き込むゴブッ!?」

 

 

スパパパパパアアアアアンッ!!!

シュパドゴオオオオオオンッ!!!!

 

 

「それでは最終ゲーム、スタートできゃふッ!?」

 

 

「くらえ! リィラロケットぉ!!」

 

 

「雑魚が!! 原田ミサイル!」

 

 

「うぉい!? やめぐへぇ!?」

 

 

スパパパパパアアアアアンッ!!!

シュパドゴオオオオオオンッ!!!!

 

 

________________________

 

 

 

満身創痍からはじまる学園生活。最後はリィラに泣かれたから反省してるぜ。

 

とりあえず俺たちはこの家から出て学校に行く。まずはそこから。ヒロインと遭遇しないと恋愛も何も始まらない。

 

 

「……最初は一緒に行くか。様子を見ながら」

 

 

「妥当だな」

 

 

「ああ」

 

 

制服に着替えた俺たちは扉を開けて部屋から出ようと———いや待て。

 

 

「よし。動揺せずに聞いてくれ」

 

 

「安心しろ大樹。俺も気付いた」

 

 

「……………どうしたお前ら」

 

 

慶吾は二人の姿を見て驚いていた。それも当然、制服が学ランとかそんなレベルじゃないからだ。

 

まず原田の格好。学ランなのは良いが、背中には『喧嘩上等』と赤文字で書かれ、ハチマキをしており、リーゼントのカツラを被っている。完全にヤンキー。

 

 

「原田はヤンキーポジションなのかもしれん。一応、キャラ作りしておいた方がいいかもな」

 

 

「俺がヤンキーって……普通はそっちだろ」

 

 

原田がジト目で慶吾を見ている。何故か慶吾は普通の制服に眼鏡を掛けているだけの格好だ。

 

そして一番の問題はやはり主人公。やってくれました。

 

 

「女子の制服はアウトだろ」

 

 

「自分で言っちゃったよ」

 

 

「中指を立てるな。今の時期はアレと同じしか思えん」

 

 

嫌そうな顔で慶吾は首を横に振る。その言葉に俺はニヤリと笑う。

 

 

「ポ―――」

 

 

「やめい」

 

 

速攻で止められた。早いよ。

 

とにかく着替えたいが、別の服は無い。これで行くしかないのだ。

 

 

「じゃあ、行くわよ」

 

 

「大樹。頼むから普通通りにしてくれ」

 

 

「フッ、馬鹿め。今の内に役になりきれていないと、痛い目を見るぞ眼鏡クイッ」

 

 

「……………行くぞオラァ!!」

 

 

はい、三人にエンジンが入りました。最終ゲーム、スタートです!

 

 

________________________

 

 

 

『眠たい目を擦りながら階段を下りてリビングに行くと、美味しそうな匂いがした』

 

 

「……何か出て来たぞ」

 

 

自分たちの視界には四角形の中に上の『』の文が書かれているのが見える。まるで恋愛ゲームのように。

 

原田は困惑していたが、いちいちリアクションを取っていたら体が持たないので無視することにする。

 

 

『俺の妹たちは早起きだ。こうして毎日朝食を作って貰っていることに感謝しながら扉を開ける』

 

 

【1.元気良く挨拶をする】

 

【2.ドアを蹴り破る】

 

 

「「「何か出て来た」」」

 

 

更に文の下には選択肢のような物まで出現した。というか1と2の態度の差が激しいだろ。

 

 

「自分の家のドアを蹴り破る日常って何だよ。ヤクザでもしねぇよ」

 

 

「完全に1だよな。多分だが、最初は分かりやすいように設定されていると……」

 

 

「……………そう思うか?」

 

 

いや思わない。ここで変化球を投げて来るのがウチのクソ運営。

 

だがその裏を書いて1ということもある。どうする?

 

 

「……恨みっこ無しで同時に選ぼうか」

 

 

「そう、だな」

 

 

大樹の提案に原田は頷く。続けて慶吾も頷いて覚悟を決めた。

 

 

【選択結果 大樹】

 

 

大樹「おはよう! 俺の愛する可愛い妹たちよ!」

 

 

デデーン!!! 大樹、タイキック!

 

 

大樹「いや待ってお願い今のは違うの。役になりきったから自然と―――」

 

 

蓮太郎「諦めるんだ大樹。さぁ尻を出せ。タイキックの時間だ! 隠禅(いんぜん)上下(しょうか)花迷子(はなめいし)三点撃(バースト)!!」

 

 

大樹「今度はお前かよ! ちょッ!? やめッ!? あ゛ああんんんんッ!??」

 

 

シュパドゴオオオオオオンッ!!!!

 

 

大樹「ケツロケットとのコンボはらめぇ!!」

 

 

 

【選択結果 原田と慶吾】

 

 

原田「おはよう」

 

 

慶吾「おはよう」

 

 

 

「―――おいカメラ止めろ。ハゲと中二が全然面白くないことしてる。俺の体を張ったネタの方が百万倍うけてるから」

 

 

「お前が馬鹿しただけだろ……」

 

 

「貴様は一回一回学習しようという気持ちはないのか?」

 

 

どうして俺だけこんな目に遭わなきゃいけないんだよ!!

 

 

奈月(なつき)「遅い! いつまで寝てるのお兄ちゃん!」

 

 

(ひかり)「おはようございますお兄さん」

 

 

シュパドゴオオオオオオンッ!!!!

 

 

クリティカルに動揺したのはもちろん大樹。新城(しんじょう) 奈月&陽の双子だからだ。

 

かつて保持者として戦ったセネスとエレシス。こんな再会の仕方、大樹にはそりゃ効く。

 

 

「ぐぅ……義理とはいえ一応妹だぞ……俺に取っちゃガチ妹じゃねぇか……!」

 

 

「ガチ妹って何だ……」

 

 

奈月「遅刻しても知らないからね!」

 

 

陽「今日は日直なので先に行きますね」

 

 

『優秀な妹たちは慌ただしく仕度して出て行った。テーブルの上には美味しそうな―――ゴキブリとタガメのフライが置いてある!』

 

 

「「「どこがだああああぁぁぁ!!??」」」

 

 

スパパパパパアアアアアンッ!!!

シュパドゴオオオオオオンッ!!!!

 

 

一斉にツッコミを入れる三人。ケツロケットの痛みなど気にしている場合じゃない。

 

 

大樹「全然美味しそうに見えないんだけど!? 完全に妹たちの嫌がらせじゃねぇか!」

 

 

原田「さっきの選択肢が悪いのか!? 2を選べば食パンだったりするのか!?」

 

 

慶吾「ふざけるな! こんな物、食えたものじゃないぞ!」

 

 

『タイやマレーシアでは立派な食材。タイ出身の俺からすればデザートのような物! うーん、良い匂い!』

 

 

大樹「駄目だ! まず主人公設定がイカレてやがる!」

 

 

『だけど、俺も学校に行くまでの時間が無い。朝食は抜きにするか……いや、愛情ある妹の料理を―――』

 

 

【1.それでも食べる!】

 

【2.遅刻は駄目だ。妹には悪いが、残して行こう】

 

 

このタイミングでの選択肢!? そんなの———決まっているだろ!

 

 

【選択結果 原田と慶吾】

 

 

「「遅刻は駄目だよな! 残す!」」

 

 

迷うことなく食べることを選ばない二人。急いで部屋から出て行くが、一人だけ違う奴が居た。

 

 

【選択結果 大樹】

 

 

大樹「お、お、お、おお俺はッ……アイツらの兄だから……裏切るような真似は……!」

 

 

妹のゲテモノ料理でも、重く受け取ってしまう馬鹿。青ざめた顔で椅子に座っていた。

 

勇者を部屋に残して原田たちは玄関で靴を履く。玄関のドアを開こうとした瞬間、

 

 

大樹「生はぎゃあらべらぼぼぎょッ!!」

 

 

シュパドゴオオオオオオンッ!!!!

 

 

リビングから絶叫とケツロケット音が聞こえたが、振り返ることなく学校へ向かった。

 

 

『バギッという音が聞こえた。原田と慶吾は、陽と奈月のフラグが折れた』

 

『テレテレー。大樹は、陽と奈月の好感度が上がった。しかし、今日一日体調不良で過ごすことになる。あと遅刻した』

 

 

________________________

 

 

 

「なるほど……選択肢でフラグを折るかどうか決まるみたいだな。今のは……まぁ、仕方ない」

 

 

「ああ、馬鹿に譲るとしよう」

 

 

ゲーム性を少し理解した原田と慶吾。通学路を走りながら謎を紐解いていた。

 

 

「パラメータも主人公のステータスも無し。もちろんセーブ&ロードも無し。何があるのか分からない……せめて何かのパクリだったらなぁ……」

 

 

「ハッ、それを期待したところでその話の筋通りに行くわけがないだろ」

 

 

「だよなー」

 

 

『急げ急げ! この調子で走れば間に合う……あッ!』

 

 

【1.ここを右に曲がれば近道だ!】

 

【2.いや! 通学路を守って真っ直ぐに行こう!】

 

 

再び出て来た選択肢に原田と慶吾は少しだけ息を詰まらせるが、即座に決める。

 

 

【選択結果 慶吾】

 

 

慶吾「余計な事はしない。ここは真っ直ぐだ」

 

 

『無事に学校に到着! 遅刻することはなかった!』

 

 

うんうんと結果に満足しながら慶吾は教室の席に座った。

 

 

 

【選択結果 原田】

 

 

原田「近道をしてヒロインと遭遇する! 王道だろ!」

 

 

『道を曲がった瞬間、ドンッと誰かとぶつかる』

 

 

原田「って結構痛ッ!?」

 

 

『あまりの衝撃に後方十メートル吹き飛ばされる。そのままゴミ置き場のゴミ袋の山に頭から突っ込んでしまった』

 

 

ガストレア「ギギギッ!(訳:ちょっと!? どこ見て歩いているのよ!)」

 

 

原田「えええええェェェ!? どういう展開だこれぇ!?」

 

 

スパパパパパアアアアアンッ!!!

 

 

(あり)をモデルとした三メートルはあるガストレア。背中には赤いランドセルを背負い、口には巨大な食パンんを咥えている。何だこのカオス。

 

 

『確か彼女の名前は……ガストレア。そうだ、ガストレアちゃんだ』

 

 

原田「何で主人公知ってんだよコイツのこと!?」

 

 

『他の女子生徒とは凄く違って目立つ。だから学校では有名人だ。特にその……大きい(´∀`*)ポッ』

 

 

原田「ポッじゃねぇよ! 大きいのは胸とかじゃなくて全部だろ!? 何も興奮するポイントはねぇよ!」

 

 

『学校美少女ランキングトップ10には入る!』

 

 

原田「もしかしてウチの学校はそんな風に最悪の狂気に染め上がってんのか!? 行きたくなくなったぞ一気に!?」

 

 

ガストレア「ギギッ! ギギギッギギッ!(訳:コラ! いつまで無視しているのよ! ぶつかったら謝るのが礼儀でしょ!)」

 

 

会話できないはずなのに会話できそうな雰囲気に原田は本気で焦っていた。このヒロインだけは落としてはいけない。キスシーンまで行ったら自分がガストレアになるバッドエンドしか見えない。

 

 

【1.そんなことよりホテルでレッツパーリィーしませんか?】

 

【2.そんなことよりホテルでオールナイトフィーバーしませんか?】

 

 

 

ブチッ!

スパパパパパアアアアアンッ!!!

 

 

口の中を噛み切ると同時にケツロケット。どう足掻いても絶望しか待っていない選択肢に原田は血の涙を流す。

 

最初から分かっていた。このゲームはとっくに常軌を逸脱し、狂っているということを。

 

だからと言って……こんな序盤から飛ばすか普通? いや、普通じゃないんだった。

 

 

【選択結果 原田】

 

 

原田「ぞんなごどよりホデルでレッヅバーリ゛ィーじまぜんが?」

 

 

『あまりに嬉しくて思わず血を吐き出しながらガストレアちゃんを誘う』

 

 

ガストレア「ギッ!?(訳:なッ!?)」

 

 

『突然の誘いに彼女は思わず頬を赤く染める』

 

 

原田「いや目が赤くなっただけだろ!? なんか殺されそうなんだけど!?」

 

 

スパパパパパアアアアアンッ!!!

 

 

ガストレア「ギッ、ギギギー!(訳:い、行くわけないでしょバーカバーカ!)」

 

 

『そう言って彼女は走り去ってしまう。追い駆けようと———』

 

 

ザグッ!!!

 

 

『―――何故か膝にナイフが突き刺さって動けない』

 

 

原田「ぐぅ、行かせねぇよ!?」

 

 

物語を進展させない為に体を張った。激痛に原田は顔を歪ませるが、ガストレアの好感度は下がったはずだ。

 

 

『だけど、ガストレアちゃんの好感度が少しだけ上がったようだ! 昼休みはガストレアちゃんに会いに行けるぞ!』

 

 

原田「ふざけんじゃねぇよぉ!!!!」

 

 

スパパパパパアアアアアンッ!!!

 

 

________________________

 

 

 

『―――ここは性魔法師聖矢(セインホー・セイヤー)学園!』

 

 

大樹「お前本ッッッ当に怒られてるぞ?」

 

 

『この学校の始まりは女神―――「マジでモロパクリはやめてね!?」———天空に輝く88―――「本気でやめろよ!?」———どこの国にも無い唯一無二の学園。そんな素敵な魔法学園さ!』

 

 

大樹「というか魔法学園なのかよ。普通に日常の学園じゃ駄目だったのか?」

 

 

『時は平成から何千億年先……暗黒から聖白に移り変わる。毛野彩度(ゲノ・サイド)無空間(いくうかん)を造り出した世界は平和を取り戻すが、戦争のぶつかり合いで残った魔力の粒子が世界中に蔓延(まんえん)していた。それを解決する方法として超ギガ日本の上から二番目の札幌政府は魔法学園を設立―――』

 

 

大樹「おーおーおーおー!? やめろやめろ!? 今更盛大な設定を作るのはやめろよ!? あと八割くらい意味が分からねぇよ!」

 

 

『つまり———世界の人々は恋愛をすることに命を捧げた!』

 

 

大樹「飛ばしたら飛ばしたらで意味が分からねぇ!!」

 

 

________________________

 

 

 

「……コラッ」

 

 

「あでッ」

 

 

『頭を叩かれて目を覚ます。周囲からクスクスと笑い声が聞こえる。どうやら授業中の居眠りがバレてしまったようだ』

 

 

「……あれ? 俺は確か……意識を失うくらいの酷い味付けがされたゴキブリを食って……」

 

 

「本当に食ったのか大樹」

 

 

「うッ」

 

 

隣ではドン引きしている原田と顔色を悪くした慶吾が居る。どうやら次の場面に進むことができたようだ。

 

(よだれ)と口の横に付いた何か茶色の足を取りながら先生を見る。

 

 

「……大事な授業の途中」

 

 

「……先生?」

 

 

目の前に立っていたのはムッツリーニでお馴染み、土屋(つちや) 康太(こうや)が立っていた。

 

黒板には保健体育で最も大事なことが書かれており、所々に血が付着している。

 

 

「……授業の続きを始める。第二次成長ブハッ!!」

 

 

「む、ムッツリーニ!!!」

 

 

シュパドゴオオオオオオンッ!!!!

 

 

ケツロケットの威力を利用して黒板に向かって飛んで行く大樹。急いで血を流す先生に駆け寄る。

 

 

「しっかりしろ先生!」

 

 

「……ぱ、パンツ……ギブ、ミー……」

 

 

「せ、先生? せんせええええええええ!!!」

 

 

「茶番見せられているこっちの気持ちを少し考えてくれないか?」

 

 

________________________

 

 

 

―――昼休み。

 

 

スパパパパパアアアアアンッ!!!

シュパドゴオオオオオオンッ!!!!

 

 

ここに来るまで何が起きたのか情報交換すると、案の定全員がケツロケットを食らった。特に原田のガストレアがヒロインだったことと、大樹の妹の料理の味の感想は。

 

そして、ここでも選択肢が要求されるのだ。

 

 

【1.学校を探索する】

 

【2.教室で勉強をする】

 

【3.妹に会いに行く】大樹限定イベント

 

【4.ガストレアちゃんに会いに行く】原田限定イベント

 

 

「最後だけ全く嬉しくないイベントだな」

 

 

「絶対に行かねぇよ」

 

 

「そろそろ行動するべきだな……」

 

 

大樹は原田に同情し、嫌な限定イベントに頭を抱えている原田。慶吾も少し行動を起こしてヒロインと遭遇するべきだと考える。

 

 

【選択結果 大樹】

 

 

大樹「妹に会いに行く! こういう場合、ヒロインと多く遭遇してハーレムしようとすれば痛い目を見るのは鉄板だからな!」

 

 

原田「だから本編を否定するような発言はやめろお前」

 

 

『朝食お礼ついでに妹に会いに行こう。あと明日はゲモノンティーニ・ノメロンプペラペララププにして欲しいとお願いしよう』

 

 

大樹「待って。全知全能の俺でも知らない単語が出て来たんだけど。明日またそういうの食うの嫌なんだけど」

 

 

『妹の居る階まで降りると、すぐに二人の姿を発見した』

 

 

奈月「あ、お兄さん」

 

 

大樹「今はスルーすべきか……おう! 朝ご飯、美味しかったぜ」

 

 

奈月「それは良かったです。獲れたての食材を使ったかいがあります」

 

 

やっべ、吐きそう。トイレ行っていい?

 

 

陽「そうだ。お兄ちゃんに会いたい人が居るんだけど」

 

 

大樹「何ッ、妹だけに絞る予定が狂うな……いや、ここは妹の前で新たなヒロインを振ることでフラグ強化を……」

 

 

陽「折紙って言うんだけど」

 

 

大樹「今すぐに会わせろ。妹なんてクソ喰らえだ!!!」

 

 

陽「急に馬鹿にされた!? どうして!?」

 

 

大樹「じょ、冗談だ。それよりも早く、プリーズ、ギブミー、マイ花嫁」

 

 

奈月「お兄さん、ちょっと変で怖いです……」

 

 

よっしゃぁ!! ここに来て最高のヒロイン登場だぜ!!

 

ルンルンと腕を振りながら待っていると、教室から学園の制服を着た鳶一(とびいち) 折紙(おりがみ)が本当に登場した。

 

パァッと笑顔になる大樹。折紙はビシッと親指を下に向けた。

 

 

折紙「―――お前を殺す」

 

 

大樹「」

 

 

シュパドゴオオオオオオンッ!!!!

 

 

何故か大好きな人から殺人予告されました。

 

ふぁ!? いつからこの物語はガ〇ダムWになったの!? 俺リ〇ーナになったつもりは無いんですけどぉ!?

 

 

【1.唾を吐き捨てて「かかって来い」と言う】

 

【2.命乞いをしながら財布を差し出す】

 

 

追い打ちをかけるように選択肢も来たよ! どうしよう!? 全く展開が読めないから何を選べばいいのか分からねぇ!

 

―――いや待て! 俺の後ろには妹たちが居る! 無様な兄の姿を見せることはマイナスに繋がるに違いない! ここは選びたくないが、強気で行くしかない!

 

 

大樹「ペッ! かかって来い」

 

 

『そう言って俺は()()()()()()()唾を吐き捨て挑発した』

 

 

大樹「馬鹿野郎おおおおおおぉぉぉ!? そこは廊下に吐き捨てろよぉ!? どうして折紙に吐き捨てたこのクズ主人公! クズ竜王でもそんなことしねぇよ!」

 

 

シュパドゴオオオオオオンッ!!!!

 

 

女の子に向かって一番してはいけない行為をしてしまった大樹。ケツロケットと罪悪感が同時に襲い掛かる。

 

折紙は顔に付いた唾を拭きながら笑い飛ばす。

 

 

折紙「フッ、威勢(いせい)のいい女は嫌いじゃないぜ」

 

 

大樹「口調で完全にキャラ崩壊してやがる……! だけど好感度はまだ大丈夫そう———ん?」

 

 

一瞬、大樹の脳内がフリーズした。

 

折紙の言葉をもう一度、頭の中で(よみがえ)らせる。

 

―――フッ、威勢のいい『女』は嫌いじゃないぜ。

 

 

大樹「って本当に女の子キャラなのかよ俺ぇ!!!」

 

 

シュパドゴオオオオオオンッ!!!!

 

 

よく見たら折紙も男子制服を着ているし! この服装、ちゃんと意味あったのかよ!

 

じゃあ妹とハッピーエンドしたら百合じゃねぇか! 完全にひっくり返ったぞ俺の計画!

 

 

折紙「じゃあな」

 

 

『何を満足したのか。折紙は清々しそうに去って行った。今後、折紙とのイベントが増える』

 

 

 

________________________

 

 

 

【選択結果 慶吾】

 

 

『見慣れた場所とは言え、散歩ついでに改めて学校を探索していた』

 

 

「……また窓が割れた音がしたな。どうせまた馬鹿が突っ込んでいるのだろう」

 

 

窓が割れる音を聞きながら歩き出す慶吾。積極的に行動し始めていた。

 

廊下から売店。売店から中庭。中庭から―――体育館裏まで歩いて来た。

 

 

「は?」

 

 

強制的なイベントだからと言って、体育館裏まで普通来るのか? そう怪しんでいた時、

 

 

チンピラA「よぉガリ勉。また金貸してくれよ」

 

 

チンピラB「俺の彼女が欲しい欲しいってうるせぇんだわ。いいだろ?」

 

 

慶吾「……なるほど。俺はいじめられている主人公系キャラか……」

 

 

顎に手を当てながらチンピラを観察する。こうして余裕が持てている理由は簡単。負けると一切思わないからだ。指一本動かすことなく殺すこともできる黒幕を舐めるな。

 

 

【1.財布を差し出す】

 

【2.ズボンを脱いで貞操を差し出す】

 

 

慶吾「……………………………………………………………………………………は?」

 

 

スパパパパパアアアアアンッ!!!

 

 

衝撃が強過ぎて意識が飛んでいた。あまりにもおかしい選択肢に思考が追いつかない。

 

 

『こんなチンピラでも学園内では上位の魔法師。教師並みに強い先輩とセフィ〇ス並みに髪の長い先輩だ。勝てるわけがない。せめてモモ・モモモのモ・モモモモモンぐらいの魔法が使えれば……!』

 

 

慶吾「は? は? は? は? はぁ?」

 

 

頭の上に数え切れない程の『?』が浮かんでいる。思考を追い抜く怒涛(どとう)の謎に混乱していた。

 

とりあえず選択肢を選ぶ。もちろんズボンは脱がない。

 

 

慶吾「すいません! これだけしかありません!!」

 

 

『謝罪と同時に服を全て脱いだ。財布と一緒に制服を先輩に献上(けんじょう)して土下座する』

 

 

慶吾「ふざけるな!! 結局脱ぐのか!?」

 

 

スパパパパパアアアアアンッ!!!

 

 

こんな情けない姿をあの二人が見たらどう思うだろうか。多分笑わないだろう。引くか同情されるかの二択。

 

 

『チンピラは財布と制服を持って立ち去った。このままでは教室に戻れない。今後行ける場所は服を着るまで無くなる』

 

 

慶吾「……まさか、詰み?」

 

 

________________________

 

 

 

【選択結果 原田】

 

 

『教室で勉強しました。あまりにも悪目立ちし、誰も話しかけて来なかった。学園での評判が下がった』

 

 

原田「……ヤンキーらしいことをしろってか。いや、それでも下がりそうな気が……」

 

 

原田の役は意外と難しいポジションだった。

 

 

________________________

 

 

 

―――放課後。

 

 

また昼休みと同様に選択肢を選ぶことになるのだが、その前に原田と大樹は話すことがあった。

 

 

「アイツはどうした」

 

 

「昼休みで何か起きたんだろ……ガストレアに食われたかも」

 

 

「本当にありえる話だから怖い。俺はこのまま一回も会いたくねぇよ」

 

 

「俺だって二度と会いたくねぇよ」

 

 

【1.一人で帰宅】

 

【2.妹と帰宅】

 

【3.折紙に喧嘩を売りに行く】大樹限定イベント

 

【4.ガストレアちゃんと一緒に帰る】原田限定イベント

 

【5.学校を探索する】

 

 

出て来た選択肢に二人は嫌な顔をする。

 

 

「いや大樹。お前もどうした」

 

 

「俺が聞きてぇよ」

 

 

手短に昼休みに起きたことを話した。原田は汗を流しながら「何でヒ〇ロになってんだよ……」とツッコミを入れていた。それな。

 

 

「とにかく折紙に喧嘩は売りたくない。妹との百合展開は絶対に難しいと思うし、というか俺が疲れそう」

 

 

「俺もガストレアに会いに行きたくない。妹とのフラグは折れたし……探しに行くか」

 

 

【選択結果 大樹と原田】

 

 

『学校の中を探索していると、裸の男を発見した』

 

 

大樹「何でだよ!?」

 

原田「何でだよ!?」

 

 

スパパパパパアアアアアンッ!!!

シュパドゴオオオオオオンッ!!!!

 

 

慶吾「……今回ばかりは恩に切る」

 

 

大樹「お前かよ!?」

 

原田「お前かよ!?」

 

 

スパパパパパアアアアアンッ!!!

シュパドゴオオオオオオンッ!!!!

 

 

連続ケツロケットはヤバイ。尻が本当に消し飛ぶ。特に俺、今ので百回受けたことになるからね?

 

眼鏡以外全て剥ぎ取られた惨めな姿で発見される黒幕。昼休みに起きた話を聞いて二人は同情した。

 

 

大樹「そ、そうか……大変だったな」

 

 

原田「体操服を持って来る。いや、ちょっと絞めて来る」

 

 

慶吾「気持ちは有り難いが、体操服が先だともっと有り難い」

 

 

教室から持って来た体操服を慶吾に着せると、作戦会議を開く。今回ばかりは仲間同士で傷つけあうわけにはいかない。今のように、詰みが入った瞬間、助けて貰えないからだ。

 

とりあえずイベントも終わり、家に帰宅するまで選択肢は出て来ない。今日の出来事を会話で広げる。特に役に成り切ることを重視するべきだと三人は考えた。

 

 

「二人は多分だが折紙とのフラグは無理な気がする……というかホモになるぞ。というか殺す」

 

 

「もう分かったから。もういいから。俺もヤンキーな行動しないと違和感半端ないからな。教室で浮いたし」

 

 

「選択肢が理不尽な分、慎重に選ぶ必要がある。簡単な選択肢でも」

 

 

妙に重みのある慶吾の言葉。気軽に探索したせいで裸にされたのだ。より一層慎重になるのは賛成だ。

 

そうして充実した作戦会議を終えた頃には家の前に着く。日はとっくに沈み、電灯が点き始める。

 

 

『あれ?』

 

 

その時、更なるイベントが待っていた。

 

 

『―――ドアの鍵が開いている。妹が鍵の閉め忘れをするなんて珍しい』

 

 

「……いやまさか」

 

 

大樹の額から汗が流れる。ドアを開けると、目を見開く光景が待っていた。

 

 

『泥棒が入った後じゃない。殺人鬼に襲撃されたかのような光景が待っていた』

 

 

「ッ……嘘だろ」

 

 

原田が驚くのも当然。玄関は酷く荒らされ、壁には大きな亀裂が走り、天井には穴が開いている。

 

 

『妹たちの名前を思わず叫びそうになるが、ここは我慢する。今叫んでしまったら、まだ居るかもしれない犯人に襲われたら最悪だ』

 

 

「意外と冷静か」

 

 

慶吾も散乱した靴を蹴りながら辺りを見渡す。

 

 

『嫌な汗が止まらない。とにかく、妹たちを探さないと……!』

 

 

【特別選択 全員】

 

 

『主人公のステータスや体調を全て同期します』

 

 

大樹「うぅ……お腹が凄く痛い……!」

 

 

原田「朝のか……」

 

 

慶吾「早速戦力が減ったな」

 

 

【特別選択2 全員】

 

 

『制限時間を設け、自由行動を解放します。目標は妹の安全確保』

 

 

大樹「くぅ……この程度の痛み、なんてことねぇ……!」

 

 

慶吾「気合だけで立ち上がるか団長」

 

 

原田「それが大樹の良い所。そのまま止まるんじゃねぇぞ。それで、どこから調べ―――」

 

 

大樹「二階だ」

 

慶吾「上だろうな」

 

 

原田「即答……り、理由を聞いていいか?」

 

 

大樹「壁の切り傷が玄関から階段のある廊下に続いているからだ」

 

 

慶吾「靴跡もな。土足で家に上がったせいで階段まで行った証拠を残してる」

 

 

観察力なら原田も負けないが、大樹と慶吾に関してはズバ抜けている。大樹に関してはお腹の痛みで全く集中できないはずだろうに。

 

 

大樹「二階に突撃ぃ!!」

 

 

原田「いやトイレに行くなよ!!」

 

 

________________________

 

 

 

『足音を殺しながら二階へと向かう』

 

 

グギュルゥルルルル……

 

 

「大樹。お腹の音も殺してくれないか」

 

 

「なるほど、ここで出せと?」

 

 

「ごめん、嘘」

 

 

『二階は自分の部屋と妹たちが共同で使っている部屋がある。どっちに行くべきだ?』

 

 

【1.自分の部屋のドアを開ける】

 

【2.妹たちの部屋を開ける】

 

 

【選択結果 全員】

 

 

大樹「下の穴を解放―――」

 

 

原田「馬鹿な事を言ってないで早く行くぞ」

 

 

慶吾「明らかにドアを蹴られた形跡がある自分たちの部屋だ。妹の部屋ではないだろう」

 

 

大樹「はぁ……どうせ中には悪党が居るんだろ? 勝てるのか?」

 

 

原田「いや……このゲームの流れから予想すると俺たちのケツに悪い展開が待っているはずだ」

 

 

慶吾「同意見だ。予想外な事を考えた方が良い」

 

 

大樹「パンツしか穿()いていない変態とか、パンツを被った変態とか、パンツを握り絞めた変態とか、その程度のレベルぐらいじゃ驚かないが……もっと上でも驚くか?」

 

 

原田「パンツばっかだな。まぁ確かに、どんな変態が出て来ても動揺しない自信がある」

 

 

大樹「だよな。むしろそんな変態が出て来たら笑うわ」

 

 

慶吾「ああ、だったらここは方向性を少し変えて来るのが普通———おい、ドアを開けるみたいだぞ」

 

 

『自分の部屋のドアを、勢い良く開けた!』

 

 

大樹「……………」

 

 

『そこには縄で縛られた二人の妹の姿があった!』

 

 

原田「……………」

 

 

『涙をポロポロと流し、兄の登場に声を上げるが、白い布で口を塞がれているせいで聞き取れない』

 

 

慶吾「……………」

 

 

『妹を襲った凶悪な犯人の姿も、そこにあった!』

 

 

犯人「……………」

 

 

『―――パンツだけ穿いた全裸の変態。パンツを覆面代わりにしている最悪の犯人が!!』

 

 

三人&犯人「「「「……………」」」」

 

 

信じられないくらい静かだった。盛り上がっているのは『』の文章だけ。

 

誰も目を合わそうとせず、妹たちだけが演技を必死にこなしていた。

 

 

(((やっべぇ……今の会話、絶対に聞かれていたわ)))

 

 

―――気まずい。とにかく犯人と気まずい空気になった。

 

この部屋に入る前に散々なこと言ったぞ俺たち。ヤバイ。本当に気まずくて逃げたい。

 

めっちゃこっち見てるよ犯人。すっごい見てる。マジ空気最悪。

 

 

大樹「あー、いや、あー……うん。ね?」

 

 

原田「あーはいはいはい。そうね。そう来るよね、うん。ね?」

 

 

慶吾「お前ら誤魔化し方下手くそか」

 

 

大樹「馬鹿お前、言うなよ」

 

 

原田「向うの気持ちを考えてやれよ」

 

 

慶吾「考えていたらこんな空気にはならなかったんじゃないか?」

 

 

大樹「いやそうだけどさー。言い方ってあるじゃん。ね?」

 

 

原田「そうそう。これだから強キャラの黒幕は駄目なんだよ……」

 

 

慶吾「チッ……なら行け。話しかけて来い」

 

 

大樹「いやそれはちょっと……めっちゃ見てるよこっち? 目、血走ってない?」

 

 

原田「アレは殺る。変に手を出したら殺されるって。もうやめとこ? ここはスルーして『』の文章に任せよう?」

 

 

犯人「……貴様はコイツらの兄か何かか?」

 

 

おっと? 俺たちの会話は聞かなかったことにしてくれるのか!?

 

 

大樹「無かった事にしてくれてる! よし乗ろう! この流れに乗ろう!」

 

 

原田「ああそうだ! 俺の……俺たちのって言った方がいいのかな?」

 

 

慶吾「今気にする所ではないだろ! とにかく貴様は何者だ!!」

 

 

ビシッと犯人に指を向けながら慶吾は問いかける。フッと犯人は小さく笑った。

 

 

犯人「私? ああ、私のこときゃ………………………」

 

 

大樹「えぇ……ここで噛むか普通……

 

 

原田「いや、マジかぁ……

 

 

慶吾「さすがにフォローできんぞ……

 

 

再び気まずい空気が漂う。ここからの切り返し方が誰も分からない。

 

 

犯人「……きゃ、キャーキャキャキャキャ! 俺の名前が知りたいキャ!?」

 

 

スパパパパパアアアアアンッ!!!

シュパドゴオオオオオオンッ!!!!

 

 

大樹「いでぇ!? クッソ何かキャラ変えて来やがった!?」

 

 

原田「冷静キャラ捨てたぞコイツ!?」

 

 

慶吾「だが話は進みそうだ! 何者だ貴様!」

 

 

『不敵に笑う犯人。パンツを被っているせいで素顔が分からない。男なのは確かだ……』

 

 

犯人「キャハッ! とぼけるなよ。俺たちのこと、実は知っているだろ? 毛野彩度(ゲノ・サイド)無空間(いくうかん)……それをぶち壊す組織―――亜阿唖亞(ヨンケツのア)の事をよぉ!!」

 

 

原田「え?」

 

 

慶吾「は?」

 

 

全く意味が理解出来ない。ポカーンと口を開ける原田と慶吾。

 

 

大樹「……あー、そーゆーことね。完全に理解したわ」

 

 

原田「嘘を言うなお前」

 

 

犯人「……………タイム」

 

 

おおっと!? ここで犯人、カメラを止めろと合図を出す。パンツの覆面を脱ぎ、そのまま床に叩きつけた。

 

 

「どうして僕はこんなに損する役ばかりやらされるんだぁ!!」

 

 

あちゃー! 犯人の正体は明久! 吉井 明久君だ! 馬鹿なお前だが、今回は頑張ったと俺は褒めたい!

 

 

「馬鹿な僕が、あんなにごちゃごちゃしたクソみたいな内容でも、頑張って覚えて演技していたんだよ! なのにどうして三人は知らないのさ!」

 

 

そんなこと言われても……困るわ。元々このゲーム自体がまともじゃない時点でアウトだろ。

 

 

「せっかくこの物語の主人公のライバルで、最後の黒幕なのに……物語の土台がぁッ、内容が酷過ぎるわぁ!!」

 

 

「「「激しく同意」」」

 

 

「どうして僕はパンツだけしか穿いたり着たりしかできない呪いにかかっているの!? しかも部下は物語中は全員インフルで休み!? 秘密基地は主人公が何度も訪れる花屋の隣にある散髪屋の地下ってどこ!?」

 

 

敵さん超カオス。秘密基地関しては何ミダラーだよ。

 

明久はどこから取り出したのか、台本をペラペラとめくりながらツッコミを入れている。そして最後のページになると、

 

 

「―――『最後はヒロインとしての役も可』ってふざけるなぁ!!!」

 

 

「「「ふざけるなぁ!!!」」」

 

 

スパパパパパアアアアアンッ!!!

シュパドゴオオオオオオンッ!!!!

 

 

明久と同時に声を荒げる。ケツロケットも荒ぶる荒ぶる。可じゃねぇよ。こっちは不可だよ。

 

 

「あと裏の裏の裏のボスに最後は殺されちゃうのかよ!!」

 

 

泣きながら物語をネタバレする明久。パンツで涙を拭いている姿はもう可哀想。

 

大樹は明久の肩を叩きながら励まし、原田は妹たちを救出。慶吾はこっそりと台本を奪い取った。

 

 

「今日はもう帰ろ? な?」

 

 

「うん……おうち帰る」

 

 

「ああ、それが良い。帰ったらモ〇ハンやろうな?」

 

 

「ぐすッ……歴戦手伝って」

 

 

「俺の超火力無属性鈍器ハンマーを舐めるな。任せろ」

 

 

「俺も、超会心火力特化の双剣で行くから」

 

 

「古龍など竜の一矢特化弓装備で余裕だ」

 

 

モン〇ンする約束したあと、明久は帰ろうとする。床に叩きつけたパンツを返し、玄関まで見送った。トボトボと裸で帰る明久の姿に、俺たちは涙が出そうになる。

 

 

「辛いのは……俺たちだけじゃない」

 

 

「大樹……」

 

 

「原田。俺、絶対にヒロインとハッピーエンドを迎えて見せる。何があろうとも」

 

 

「……ああ、そうだな」

 

 

フッとお互いに笑いある。そして、

 

 

 

 

 

「おい。明久(アイツ)倒したらヒロインの好感度を爆上げできるアイテム落とすらしいぞ」

 

 

 

 

 

―――原田は必死に大樹の体を抑えつけた。

 

折紙折紙と何度も最愛の女の名前を呼び続ける猛獣を、原田は必死に抑えつけた。

 

全ては、明久の命を守る為に。

 

 

________________________

 

 

 

結論から言うと台本を奪った意味は無かった。

 

何故なら次の日の朝にはヨンケツの組織が俺たちの家を異空間転移魔法で未来に吹き飛ばすという超展開が待っていた。ちなみに台本通りなら朝ご飯は魚の目玉ご飯というSAN値チェック待った無しの展開が起きる。

 

運営も必死だなと三人は溜め息を吐きながら外に出る。

 

 

「……未来に飛ばすって言ったよな?」

 

 

「……あの世界の未来がってことだろ」

 

 

「あの世界の未来は退化……いや、そういう次元じゃないなこれは……」

 

 

外に出ると、エンカウントするのだ。

 

 

『ピギィ!!』

 

 

『スライムが現れた! 戦闘開始!』

 

 

スライムA レベル1

スライムB レベル2

 

 

大樹 レベル1 体調不良

原田 レベル1

慶吾 レベル1

 

 

【1.たたかう】

 

【2.にげる】

 

 

「「「ゲーム性一気に変わったなオイ!?」」」」

 

 

スパパパパパアアアアアンッ!!!

シュパドゴオオオオオオンッ!!!!

 

 

恋愛どこに行った!? 突然のRPGはやめろ! 完全にクソゲーになってるぞ!

 

というか地味にスライムにレベル負けてる! あと体調不良まだ続いてるの俺? 妹の料理えぐくない?

 

選択肢を選ぶ前に、俺たちの前に妹たちが前に出て来る。

 

 

奈月「何ボサっとしているのよ!」

 

 

陽「危ないので下がっていてください」

 

 

奈月 職業 戦士 レベル65

 

陽  職業 僧侶 レベル67

 

 

「「「何でだよ!?」」」

 

 

スパパパパパアアアアアンッ!!!

シュパドゴオオオオオオンッ!!!!

 

 

何故か妹がもっと強い! もうこの環境に適応しているじゃん!

 

ワンパンでスライムを溶かす二人。更なるカオスな展開に俺たちは頭を抱える。

 

 

奈月「よし、じゃあ先に行くからね」

 

 

大樹「ど、どこに?」

 

 

陽「決まってるじゃないですか。学校です」

 

 

大樹「いや結局この世界にも学校あるのかよ!?」

 

 

頭痛い! もう何がどうなっているのか分からなくて頭痛いよ!

 

 

奈月「そうそう。聞いたわよ」

 

 

何か思い出したかのように奈月は原田のお腹を指で突っつく。ニヤニヤと笑いながら奈月は、

 

 

奈月「お兄ちゃん、ガストレアちゃんと仲が良いって」

 

 

原田「あああああああああああああああああ!!!!」

 

 

スパパパパパアアアアアンッ!!!

 

 

これは発狂案件。泣いて良いよお前。

 

次は陽が慶吾の前に立つ。無表情だった陽は、少し無理な笑みを見せる。

 

 

陽「何かあった時は、ちゃんと相談してください」

 

 

慶吾「……………」

 

 

スパパパパパアアアアアンッ!!!

 

 

お前も泣いて良いよ。完全にいじめられていることバレている上に、妹達に心配されているわ。これが一番何気にキツイ。

 

 

大樹「あれ? 俺は? 俺には何もないの?」

 

 

奈月&陽「人に唾を吐く人はちょっと……」

 

 

大樹「折紙じゃなくて妹のフラグがブチ折れてたぁ!?」

 

 

シュパドゴオオオオオオンッ!!!!

 

 

________________________

 

 

 

―――学校に向かう途中、何度かスライムとエンカウントした。

 

 

『大樹は体調不良で動けない!』

『原田の木刀での攻撃! スライムAを倒した!』

『慶吾の本の角で叩く攻撃! スライムBを倒した!』

 

『大樹は体調不良で動けない!』

『原田の木刀での攻撃! スライムAを倒した!』

『慶吾の本の角で叩く攻撃! スライムBを倒した!』

『大樹は体調不良で動けない!』

『原田の木刀での攻撃! スライムCを倒した!』

 

『大樹は体調不良で動けない!』

『原田の木刀での攻撃! スライムAを倒した!』

『慶吾の本の角で叩く攻撃! スライムBを倒した!』

『大樹は体調不良で動けない!』

『原田の木刀での攻撃! スライムCを倒した!』

『慶吾の本の角で叩く攻撃! スライムDを倒した!』

 

 

そうして三人はレベルが上がり、強くなった。

 

 

大樹 レベル4 体調不良

原田 レベル3

慶吾 レベル3

 

 

ガスッ! ドガッ! バギッ! ゴオッ!

 

 

そして、校門の前で俺は原田と慶吾にリンチされていた。

 

 

「ふざけるなよ! 何もしていない奴の方がレベル高いっておかしいだろ!」

 

 

「返せ無能! もしくは棺桶(かんおけ)の中に入っていろ!」

 

 

「やめてぇ! 教会もザオ〇ルも無い状況で殺さないでぇ! フェニックスの尾を手に入れてからにしてぇ!」

 

 

HPが赤色に変わった時、必死の命乞いのおかげで攻撃をやめてくれた。マジでゲームオーバーだけは怖い。

 

草原を抜けた先にあった建物は最初の世界で見たあの学校。これが変わっていないのならば、折紙やガストレアちゃんも変わっていないのだろう。

 

 

「……合法的にガストレアを殺したら経験値大量に入るかな」

 

 

「原田。やめろ」

 

 

洒落にならない領域まで来ている原田。多分デートすることになったら自殺する勢い。

 

学園に入っても選択肢は特に出て来なかった。出て来たのはやはり昼休み。

 

 

【1.学校を探索する】

 

【2.教室で勉強をする】

 

【3.折紙に殺されない為に対策を練る】大樹限定イベント

 

【4.ガストレアちゃんに会いに行く】原田()()イベント

 

【5.レベルを上げる】

 

 

スパパパパパアアアアアンッ!!!

シュパドゴオオオオオオンッ!!!!

 

 

ケツロケットの勢いを利用して、原田が教室の窓からフライアウェイしようとしていた。俺の技をいつ習得した。

 

 

ガシッ!!

 

 

「早まるな! まだ……まだ分からないだろ!」

 

 

「落ち着け! まだ序盤だ! 巻き返せる!」

 

 

それを大樹と慶吾が必死に止める。命を大事にして!

 

 

「俺がここで重傷をすれば……イベントは消えて……!」

 

 

「はい今すぐ武器を直して。首筋に刃を当てると危ないからね」

 

 

大樹たちは原田を何とか落ち着かせる。ブツブツ怖い事を呟いているが、今はスルーしよう。

 

 

「原田は大問題のイベントを抱えているが、お前もだよな」

 

 

「ああ……また裸にされるわけにはいかない」

 

 

慶吾がまた一人で行動すればまた追い()ぎに遭う可能性は高い。放課後、また慶吾を探すハメになる。

 

 

「折紙に殺されないように対策を練りたいが……ここは俺と一緒にレベ上げをしないか?」

 

 

「ふざけろ。体調不良のお荷物はいらん」

 

 

「チッ」

 

 

「お前……どさくさに紛れて寄生するな」

 

 

察しの良い奴め。この流れなら寄生できると思っていたのに。

 

 

【選択結果 大樹】

 

 

『折紙に殺されない為に何か対策を立てないと……』

 

 

「ああ、全く洒落にならない冗談だぜ」

 

 

『よし―――決戦に備えてガ〇ダムを買いに行こう!』

 

 

「それこそ冗談だよな? ……冗談だよな?」

 

 

斜め上とか明後日の方向とか、そんなちゃちなレベルじゃない。ゾンビが襲い掛かって来るからミサイルを買いに行こう!とか言い出してるレベルだから。

 

 

『そして、購買の横にあるガ〇ダム店に来た!』

 

 

「ガ〇ダム売ってる学校って何!? 一体どうなってんだよ!? 魔法要素はよ来いや!」

 

 

シュパドゴオオオオオオンッ!!!!

 

 

尻に良くない流れだ。ここは何が来ても動揺しないように一度落ち着いて、

 

 

店員(五河 琴里)「いらっしゃい。ガンダムより精霊の方が強いけどね」

 

 

大樹「マジで用意できそうな奴が店員だった!」

 

 

シュパドゴオオオオオオンッ!!!!

 

 

(だる)そうに接客するのは琴里。【ラタトスク】をイジってガ〇ダムを作ろうとした俺だ。金を出したら本当に用意しそう。

 

 

【量産型ザ〇 千円】

 

【ウイングガ〇ダムゼロカスタム 十億円】

 

【ユニコーンガ〇ダム2号機 バ〇シィ・ノルン 七百億円】

 

【ストライクフリーダムガ〇ダム 六兆円】

 

 

シュパドゴオオオオオオンッ!!!!

 

 

大樹「いや〇ク安ッ!? あと高過ぎるわボケェ!」

 

 

琴里「ウイングは安い方と思うわよ?」

 

 

大樹「ザ〇との間が開き過ぎだろ! 扱いの雑さに泣けるわ! スライム倒して所持金が余裕で足りてるからザ〇買うけど!」

 

 

琴里「いいの?」

 

 

大樹「フッ、今日から俺のことはシャ〇と呼べ。〇クとは違うのだよザ〇とは!」

 

 

琴里「折紙はユニコーン買ったけど?」

 

 

大樹「ちょっと待て!? ガチで殺しに来てない!? 愛する人、本気で殺そうとしてない!?」

 

 

シュパドゴオオオオオオンッ!!!!

 

 

ザ〇を買った所で瞬殺されそう! これが金の暴力か!

 

 

大樹「もういいや……とりあえずザ〇を買う」

 

 

琴里「毎度。じゃあ、細かいことは新入りに任せるわ」

 

 

新入り? また新キャラが来るのか?

 

 

ティナ「店長。彼はガ〇ダムに対する愛は合っても、ザ〇への愛は薄いです」

 

 

大樹「ブフッ!?」

 

 

シュパドゴオオオオオオンッ!!!!

 

 

ケツロケットと同時に吹き出してしまう。俺のヒロインがガ〇ダム店の新入りやってんだけどぉ!?

 

 

琴里「別に乗るのに関係ないでしょ。乗れないのはジオ〇軍くらいよ」

 

 

大樹「いや何でだよ!? 〇クなのに乗れないのかよジ〇ン軍!?」

 

 

シュパドゴオオオオオオンッ!!!!

 

 

ティナ「まず金髪でない時点で駄目です!」

 

 

大樹「シャ〇になれと!? というか〇ャアも〇オン軍だからな!? 乗れないだろ!?」

 

 

ティナ「『抱きしめたいな! ガンダム!!』くらいは言って欲しいです」

 

 

大樹「それグ〇ハムじゃねぇか! 今度はザ〇が迷子になってんぞ!」

 

 

ティナ「というわけで〇クを愛するグラ〇ムになってくださいね」

 

 

大樹「キャラ崩壊させてんじゃねぇよ!!」

 

 

シュパドゴオオオオオオンッ!!!!

 

 

怒涛のボケにツッコミを入れる大樹。ティナのキャラも崩壊しかけている。

 

 

ティナ「それと、今回私はヒロインとして無理ですよ。ギャルゲーでいう『落としたいけど落とせない購買の可愛い店員』の役なので。恋しようとするとバッドエンドになる先生くらい無理ゲーです」

 

 

大樹「ぎゃあああああァァァ!!!」

 

 

シュパドゴオオオオオオンッ!!!!

 

 

その前に、ヒロインとして崩壊していた。最後の言葉は大樹の精神に突き刺さった。

 

 

________________________

 

 

 

【選択結果(強制) 原田】

 

 

『あれは……もしかしてガストレアちゃん?』

 

 

スパパパパパアアアアアンッ!!!

 

 

原田の心臓と尻は限界に近づいていた。とっくに尻の感覚など無いが、ガストレアへの恐怖が半端じゃない。

 

 

『ん? 誰かと一緒に居る?』

 

 

「頼むからまともな人で頼むからまともな人で頼むからまともな人で!」

 

 

ガストレアと一緒に居る時点で望みは凄く薄いのだが、狂った世界ならまとな人が来てもおかしくない! うん、何を言いたいのか全く分からない! 狂っているのは自分かな!

 

 

ガストレア「ギッ……(訳:げッ)」

 

 

『目が合うだけで嫌な顔をされてしまう。少しショックだ』

 

 

原田「嫌な顔をしたいのはこっちだクソッタレ」

 

 

そして、肝心なもう一人に視線を移す。頼む!

 

 

魔神バアル「カララッ……誰ダ?」

 

 

原田「何でッ! 俺はッ! 人外ばっかりッ! 遭遇するんだよぉ!!」

 

 

スパパパパパアアアアアンッ!!!

 

 

頭を抱えて『ビィヤァァァアア!!』と狂気な叫び声を上げる原田。精神が壊れる一歩手前だった。

 

もはや解説不要。ソロモン72柱の序列一番の悪魔だ。というか女子制服を着た骨とだけ言っておけばいい。いちいち観察して言うことは無い。

 

 

『ばばばばバアル先輩だぁ!? 学校美少女ランキングトップ5には入る人がどうしてここに!?』

 

 

原田「もう嫌だぁ!! 美少女ランキングの二割が人外だなんて知りたくなかったぁ!!」

 

 

スパパパパパアアアアアンッ!!!

 

 

そのまま後方ブリッジして『アビョォォォオオ!!』と変質者待った無しの叫び声を上げる原田。もし近くに大樹たちが居たら絶対にケツロケットを受けていただろう。

 

 

魔神バアル「……何カ用? カララッ」

 

 

【1.ズボンを脱いで求愛アピールする】

 

【2.上半身裸になって彼氏無しアピールする】

 

 

原田「選択肢頭おかしいだろ! 何か脳〇メじゃねぇ!? 甘草じゃねぇぞ俺は!」

 

 

【3.何か巨乳になる】

 

 

原田「選択肢を増やすなよ!? あと意味が分からん!」スパパパパパアアアアアンッ!!!

 

 

【4.何か伸びる】

 

 

原田「いや何が!?」スパパパパパアアアアアンッ!!!

 

 

―――ええい! 俺は化け物にアピールなんてしないぞ!

 

 

『その時、胸に違和感を感じた。段々重くなるような……膨れるような……少し痛い』

 

 

原田「……4の方がよかったのかな」

 

 

ガストレア「えッ(訳:えッ)」

 

 

魔神バアル「エッ」

 

 

『二人の美少女の視線は自分の胸。手を当てて見れば、柔らかい感触が邪魔をした』

 

 

原田「……………フヒッ」

 

 

『そして、二人の美少女が目の前から姿を消した』

 

『巨乳―――凶乳になった。学園の評判が最低ランクまで下がった。ガストレアちゃんと魔神バアルのフラグが折れた。行動選択肢が大幅に減った。バッドステータス(うつ)病が追加された。称号《凶乳の変態ヤンキー》を手に入れた』

 

 

________________________

 

 

 

【選択結果 慶吾】

 

 

スパパパパパアアアアアンッ!!!

 

 

―――慶吾は泣きそうになった。教室で勉強していると周囲がざわざわと不穏な空気を漂わせていた。耳を澄ませてみると、原田の酷い事を聞いてしまった。

 

 

慶吾「何故そんなことになったアイツ……」

 

 

同情せざる負えない。ヒロインと遭遇しない自分より明らかに酷い結果だ。一体どこで間違え―――登校の近道か。いや、普通アレだけでヒロインが人外に決定するはずがない。それはもはや―――あッ。

 

 

慶吾「……そもそもクソゲーだった」

 

 

何故か納得してしまった。思わず握っていたペンを潰してしまう。

 

クソゲーだから主人公のヒロインを人外にして良い訳が無い。このゲームが終わったらまず運営から復讐しよう。次に大樹だ。原田は見逃す。

 

 

『勉強に集中……集中……集中……! ―――螺旋丸(らせんがん)を取得した!』

 

 

慶吾「何故だ」

 

 

________________________

 

 

 

―――放課後。再び集まり各自今日起きたことを報告する。

 

 

スパパパパパアアアアアンッ!!!

シュパドゴオオオオオオンッ!!!!

 

 

はい、全員がケツロケットを受けるいつもの展開でした。特に原田。

 

 

「「何で胸がある!?」」

 

 

「痛い痛い痛いッ!? 千切ろうとするんじゃねぇよ!?」

 

 

「クソッ!! 黒ウサギには劣るが、中々の大きさだ!」

 

 

「お前は何がしたいの!?」

 

 

持つべきじゃない者が持ったのだ。持ってない者に分け与えるべきだと大樹は悔しがる。

 

そして放課後の選択肢が俺たちを待っていた。

 

 

【1.一人で帰宅】

 

【2.折紙とガ〇ダムファイトする】大樹限定イベント

 

【3.学校を探索する】

 

【4.レベルを上げる】

 

 

「なぁ大樹。お前だけガ〇ダムのゲームしてないか?」

 

 

「否定できないから辛い」

 

 

ガ〇ダムファイト国際条約とか覚えさせられそうな勢いだよ。一瞬で覚えれるけど。

 

 

「だけど……そろそろ折紙と決着を付けないとな……このままだと進展しない」

 

 

「遂に殺すのか」

 

 

「外道主人公め」

 

 

「外道なのはお前らだろ。折紙を殺す時は永遠に来ねぇよ」

 

 

「ハハハッ、でもベッドの上で半殺しするんだろ?」

 

 

「原田さん!? 俺より酷い下ネタはやめて!!」

 

 

シュパドゴオオオオオオンッ!!!!

 

 

ガストレアにやられたせいか気色悪い顔を浮かべている。怖いよ親友。頼むからこっち側の世界に帰って来て。

 

慶吾も原田のやられ具合に引いてしまい、それ以上は何も言わなかった。

 

 

「フヒヒヒッ……今日は帰宅する」

 

 

「そ、そうか……お前は?」

 

 

「せっかく螺旋丸を覚えたからな。必要になるか分からないが、レベルを上げるとしよう。探索は危ないからな」

 

 

「レベ上げの方が命は危険だけどな。よし、じゃあ———また生きて会おう」

 

 

「実際お前のガ〇ダムが一番危険だろ」

 

 

慶吾の言うことに俺は耳を塞いだ。あー聞こえない! 俺は戦いに行くんじゃない。折紙の好感度を上げに行くんだ!

 

 

【選択結果 原田】

 

 

『帰宅した。妹の料理を手伝い、料理がグレードアップした』

 

 

原田「やっべ、余計なことしたからまたあの朝食みたいになった」

 

 

この家に生きて帰って来ても、夕食という名の地獄が待っていることを二人は知らない。

 

 

________________________

 

 

 

【選択結果 大樹】

 

 

『悲報―――ザ〇、三秒で負ける』

 

 

大樹「でしょうね」

 

 

武器を構える前に高速移動されて背後からズドン。はい終了と操作技術もクソもない。

 

目の前には全身モザイクした方が良いくらいの完全パクリしたユニコーンガ〇ダムが俺を見下していた。どうしてこういう所で本気を出すの運営。

 

 

折紙「……正しい戦争なんて、あるもんか」

 

 

大樹「確かに。お前は卑怯だ」

 

 

あーあ、番外編最終回はガ〇ダム一色だよ。俺だけだけど。

 

活躍できなかったザ〇から降りて俺は両手を挙げる。

 

 

『降参……そうするしかないのか……』

 

 

そりゃそうだ。生身で勝てるわけ———いや、勝てないことはないけどレベルがアレだから無理だと思う、うん。

 

 

【1.降参する】

 

【2.それでも戦う理由がある】

 

 

大樹「……ああ、そうだよな」

 

 

勝つことはできないことくらい、選択肢を選ぶ前から分かっていた。

 

だったら、俺がここから何をするのか。それを考えることが大事だろ?

 

 

大樹「ただの女子高生じゃねぇぞ。俺は、最強だ」

 

 

そして、大樹はガ〇ダムに向かって走り出した。

 

 

シュパドゴオオオオオオンッ!!!!

 

 

『次の瞬間、HPがゼロになった。所持金を全て失い、レベルが初期値に戻った』

 

 

―――やっぱり勝てないかぁ。流れで勝ち確だと思ったけど全然違ったわ。

 

 

大樹(死亡)「レベルってホントに大事だわー……」

 

 

予想通り、最初に棺桶の中に入ることになるのは大樹だった。

 

 

折紙「……………」

 

 

その棺桶を、折紙が持ち帰ったことは二人は知らない。

 

良い方向か悪い方向か、どちらかは分からない。だが、物語は着実に進んでいた。

 

 

 

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【選択結果 慶吾】

 

 

『慶吾の本の角で叩く攻撃! スライムを倒した!』

『慶吾の螺旋丸! 子鬼を倒した!』

 

『慶吾は敵から銅の剣を手に入れた!』

 

『慶吾の剣での攻撃! スライムを倒した!』

『慶吾の螺旋丸! スライム乗り鬼を倒した!』

 

『慶吾は敵から鉄の盾を手に入れた!』

 

『慶吾の剣での攻撃! コールドマンAを倒した!』

『コールドマンBの攻撃! 慶吾は盾で受け流した!』

『慶吾の螺旋丸! コールドマンBを倒した!』

 

『メタルスライムが現れた!』

『慶吾の螺旋丸! メタルスライムには効かない!』

『メタルスライムの攻撃! 慶吾の急所に当たった!』

 

 

慶吾「ぐはぁ!!??」

 

 

スパパパパパアアアアアンッ!!!

 

 

順調なレベ上げかと思われていたが、経験値を大量に落とすメタルスライムに最悪の攻撃を受ける。

 

股間を抑えながら地面を転がる。みっともない黒幕の姿がそこにあった。

 

 

『メタルスライムは逃げ出した!』

 

 

慶吾「ぐぅ……! 最悪だ……!」

 

 

最後は踏んだり蹴ったりの結果で終わる。レベルは16まで上がり、武器と防具も手に入れた。お金も登校の時より比べものにならないくらい多い。

 

魔法や剣技もいくつか習得することもできた。内容はパクリばかりで酷いが、強いから文句を言えない。

 

 

慶吾「……俺だけ真面目にRPGゲームしていないか?」

 

 

注意、このゲームの終わりはヒロインとハッピーエンドを迎えることです。決して魔王を倒して終わるわけではありません。

 

 

________________________

 

 

 

―――異変に気付いたのは夜だった。

 

夕飯が変なのはスルーして、原田と慶吾は部屋で休憩していると大樹が帰って来ないことに気付く。

 

 

「死んだかな?」

 

 

「多分な」

 

 

しかし、慌てることも焦ることも無く、二人は冷静だった。合掌して大樹の冥福をお祈りする。どうせアイツも愛する人に殺されて本望だろうと探しに行くことは無かった。

 

というわけで、異変に気付いたのは大樹の方だ。

 

 

「……うん?」

 

 

棺桶の中で眠っていると、棺桶の(ふた)が開かれた。教会か呪文で生き返ることができたのかと考えるが、周囲の様子がおかしい。

 

 

「ここは……」

 

 

真っ白な空間。壁も天井もない世界。あるのは道を示すように真っ直ぐに続く赤い絨毯(じゅうたん)が続いていた。

 

 

「いや……花?」

 

 

赤い絨毯の正体は赤い花。白い花で埋め尽くされていた所に赤い液体が吹きかけられていたのだ。

 

異様と異常な光景に大樹はゆっくりと赤い花に触れようとする。

 

 

『まだそれを手にする時は早い』

 

 

「ッ! 誰だ!?」

 

 

頭の中に響く若い男の声。普通じゃない声の聞こえ方で分かっているが、一応辺りを見渡す。

 

誰も居ないはずなのに、男の声はまだ聞こえる。

 

 

『幸せな夢は見れた? 満足はしないだろうけど、それが良いと君は嘘をつけない』

 

 

「……………」

 

 

『大丈夫。君の意識は生きている。何度も何度も、死を乗り越えて来た君なら分かっているはずだ』

 

 

ふと後ろから眩い光が溢れ出した。次第に背を向けているのに目を潰すかのような強い光に襲われる。

 

 

『分かっているからこそ、戻らなきゃいけないと理解している。可能性も奇跡も、全てを超越して』

 

 

「お前は……誰なんだ」

 

 

『知る機会は必ずある。その時は分からないが、これだけは言える。君の味方だと』

 

 

その時、白で覆われた世界が晴れ上がった。

 

言葉で表現できないような美しい光景に、大樹は目を奪われる。

 

空想、理想、あらゆる不可能な奇跡を全てを具現化したかのような景色―――異世界が広がっていた。

 

 

『―――君が望んだ世界と、君の居る本物の世界。その決別と決着を!!』

 

 

________________________

 

 

 

ドゴンッ!!!

 

 

棺桶の蓋が天井高く舞い上がる。棺桶の中から白い花びらが数枚、舞い上がっていた。

 

蓋を蹴り飛ばして出て来たのは女子制服を着た大樹。スカートでもお構い無しに足を上げていた。

 

 

「ったく……全然意味分からねぇ」

 

 

頭を掻きながら愚痴をこぼす。それでも、大樹の足は動いていた。

 

 

「だけど、いちいち言われなくても分かってる」

 

 

棺桶の置かれている部屋は物置のような場所だった。扉は頑丈に鎖や南京錠でロックされているが、

 

 

「こんなクソみたいな世界、とっとと終わらせてやるよ!!」

 

 

拳を強く握り絞め、後ろに引く。同時に音速の壁を越えた速度で扉に向かって突き進む。

 

 

「【双撃(そうげき)神殺(しんさつ)天衝(てんしょう)】!!」

 

 

ドゴオオオオオオオオォォォ!!!

 

 

強固な扉は糸も簡単に吹き飛び、壁ごと穴を開けた。その威力は常人が絶対に出すことのできない力である。

 

物置の先にある部屋は巨大なカジノような空間だった。スロットやルーレット、トランプやチップが散乱したテーブルから見て分かる。

 

大音量の騒音の中、二人の声が聞こえた。

 

 

原田「だ、大樹!?」

 

 

慶吾「そんなところに居たのか!?」

 

 

横を見れば魔法の杖を握り絞め、巨乳バニーガールになった原田。隣にはちょんまげと和服を着た七罪の姿もある。

 

逆を見れば初音〇クの格好で銃を握り絞めた慶吾が居た。そして背番号114514の野球服を着た双葉がお姫様抱っこされている。

 

そして、人型サイズの量産型ザ〇がう〇い棒を構えて二人を囲んでいた。

 

 

 

 

 

大樹「どういう状況なんだよ!!

 

 

シュパドゴオオオオオオンッ!!!!

 

 

 

 

 

何一つ頭の中に入らねぇ!! どうなってんだよホント!

 

 

原田「一年間どこに行ってたお前!」

 

 

大樹「ファッ!? 一年だと!?」シュパドゴオオオオオオンッ!!!!

 

 

慶吾「状況を簡単に説明すると、ムビョブリ王国の反逆だ! 性魔法師聖矢(セインホー・セイヤー)学園は第二の毛野彩度(ゲノ・サイド)無空間(いくうかん)を防ぐための機関なのは知っているだろ! あとは俺たち選ばれし者(ジャ・ジャスティス)の出番というわけだ!」

 

 

大樹「分からねぇ!? むしろもっと分からねぇよ!」シュパドゴオオオオオオンッ!!!!

 

 

原田「そういうわけだ! 俺の巨乳も、朝食のゴキブリも全部、俺たちの運命だったのさ!」

 

 

大樹「どう考えてもコイツらがおかしいのに俺の異端者感パないな!?」

 

 

慶吾「話は後だ! 来るぞ!」

 

 

そう言って俺の方に集まる原田たち。どうやら戦闘開始らしい。はぁ、もう帰りたい。

 

 

原田 職業 宇宙魔法師(ギャラクシーキャスター) レベル245

 

七罪 職業 侍 レベル200

 

慶吾 職業 地獄狙撃手(ヘルスナイパー) レベル289

 

双葉 職業 野球選手 レベル250

 

 

大樹「強過ぎだろお前ら!?」

 

 

シュパドゴオオオオオオンッ!!!!

 

 

ケツロケットが止まらねぇ! というか職業凄いな!? 一人だけ職業おかしいけど!

 

 

量産型ザ〇 レベル440 200体

《装備 うま〇棒 毎ターン終わりに最大HPの半分を回復》

《加護 ガ〇ダムへの復讐 毎ターン始めに攻撃力をアップ》

 

 

大樹「でも敵の方が強かったぁ!!」シュパドゴオオオオオオンッ!!!!

 

 

というか圧倒的に数も多いし! どうしてこんな強敵の塊に勝てると思ったのコイツら!?

 

 

七罪「ボス……」

 

 

原田「安心しろ! 世界を三度救った男だぞ? 負けるわけねぇ!」

 

 

双葉「ユーチューバーさん……」

 

 

慶吾「心配するな。俺は世界を三度潰した男だ。この程度、片手で十分だ」

 

 

どうして世界を三回救った男と世界を三度潰した男が〇クに負けようとしているんだ。呼び方から察するに双葉と慶吾の関係とか絶対酷いと思う。

 

 

大樹「はぁ……また棺桶行きかこれ?」

 

 

衝撃的なことが多過ぎて疲れた。やる気も起きないまま、戦闘が始まろうとしていた。

 

 

大樹 職業 救世主 レベル999

《加護 花の奇跡 物理ダメージ無効》

《加護 花の神秘 魔法ダメージ無効》

《加護 嫁への愛 毎ターン始めに攻撃力を倍化》

《加護 神の恩恵 異常状態完全無効》

《特性 威圧と威嚇 毎ターン相手は90%の確率で行動不能》

《特性 不屈の闘志 戦闘不能後、次のターンに復活》

 

 

大樹「チートみたいなステータスになってたぁ!?」

 

 

「「「「!?」」」」

 

「「「「「!?」」」」」

 

 

スパパパパパアアアアアンッ!!!

シュパドゴオオオオオオンッ!!!!

 

 

これには味方も敵も驚きを隠せない。目玉が飛び出る程、驚愕していた。

 

 

『大樹の特性《威圧と威嚇》が発動! このターン、全ての敵は動けない!』

 

 

早速チートスキルが発動する大樹。何気に90%の確率しっかりと全員に発動してるし。

 

ターンは自動的に原田たちに回って来る。

 

 

『原田の宇宙魔法! 敵全体に200ダメージ!』

『七罪の抜刀術! 敵全体に60ダメージと出血状態を付与!』

『慶吾は銃を乱射した! 敵全体に平均250ダメージ!』

『双葉の魔球は外れた! 慶吾に70ダメージ!』

 

『大樹の拳攻撃! 一体のザ〇に79億8999万7851ダメージ!!』

 

 

大樹「むっちゃ強いな俺!?」

 

 

「「「「!?」」」」

 

「「「「「!?」」」」」

 

 

スパパパパパアアアアアンッ!!!

シュパドゴオオオオオオンッ!!!!

 

 

規模が全然違うんですけど!? ディスガ〇アみたいな数字出てるんだけど!

 

―――そこからは大樹の無双だった。どれだけ原田たちが全体攻撃しても倒すことのできない〇クを大樹は一撃で()ぎ払った。

 

 

「大樹!! 進め!!」

 

 

原田の声で振り返る。そこには誰も居ない。

 

それでも、声は聞こえた。

 

 

「その先に時の逆転者(リバース・オブ・リミット)と呼ばれ続けた折紙が毛野彩度(ゲノ・サイド)無空間(いくうかん)に居る……お前を最終挑戦(ラストチャレンジ)を待っているはず———」

 

 

「うるせぇうるせぇ。折紙が居ることだけ言えばいいからもう」

 

 

結局このゲームの内容を一ミリも理解できなかったな。理解しようとすら思わなかったけど。

 

 

「原田! 慶吾!」

 

 

カジノの奥に新たな扉が現れる。その先に向かって俺は走り出した!

 

 

「待っていろよ!!!」

 

 

「……おう」

 

 

「フンッ」

 

 

________________________

 

 

 

「ウオオオオオオオォォォ!!!」

 

 

シュパドゴオオオオオオンッ!!!!

 

 

ケツロケットの威力を利用しながら疾走する。はいそこー。音速に勢い付ける意味あるの?とか言わない。

 

カジノの部屋を抜けると長い廊下が続いていた。カジノに居た敵と同じようにザ〇が配置されていたが、そのまま横を走り抜けて一掃した。

 

音速で走り続けているにも関わらず、廊下は終わりを見せない。それだけ長いのだ。

 

 

「……すぅ」

 

 

ふと、足を止めて息を大きく吸いこんだ。

 

人差し指を立てて、こう叫ぶのだ。

 

 

 

俺と結婚したい人、この指とーまれッ!!

 

 

 

―――なんということでしょう。七人どころかいっぱい出て来たぞ。

 

 

シュパドゴオオオオオオンッ!!!!

 

 

大樹「いや違うだろ!? ちゃんと上の流れを見てくれた!? 嫁だけが出て来る合図でしょ!?」

 

 

理子「だいちゃん! やっと理子と結婚してくれる気になった!?」

 

 

大樹「違ぇよ!」

 

 

夾竹桃「そうね。私も選んでくれないとおかしいもの」

 

 

大樹「違ぇよ!!」

 

 

美琴「私も?」

 

 

大樹「違ぇッ……くない!! 大好き!!」

 

 

美琴「今勢いに任せて否定しようしたわね」

 

 

すまない。流れの勢いで美琴たちは居ないと思ったんだ。

 

美琴のジト目を誤魔化しながら腕を引っ張りこちらに抱き寄せる。他の女の子にはしないから! 浮気なんてしないから! お願い信じて!

 

 

深雪「大樹さんなら必ず全員と結婚すると思っていました!」

 

 

大樹「その笑顔やめろ!! しねぇよ!!」

 

 

ほのか「……大樹さんッ……私は……私はッ……!」

 

 

大樹「ち、ちが……んくぅは……その……否定し辛ぇ!!」

 

 

メヌエット「これはダイキの妻になっても将来を推理できないわ。ダイキって何百人と結婚するの?」

 

 

大樹「勝手に三桁まで伸びてんじゃねぇよ!? 七人だ!」

 

 

アリア「……妹まで手を出して良いご身分ね?」

 

 

大樹「トンデモナイ、アナタタチダケ、アイシテル」

 

 

アリア「片言になるほど動揺すると説得力がないわよ」

 

 

今度はアリアを発見。しっかりと手を握り絞めてこちらに引き寄せる。銃口が俺の頬に突き付けられるが、気にせず嫁を探す。

 

 

リサ「リサはご主人の傍に居ればそれだけで十分。ただ、少しばかりお情けを頂ければ……」

 

 

大樹「アウトぉ!! 完全にアウトォ!!」

 

 

美九「私もだーりんとあんなことやこんなことを……!」

 

 

大樹「はいチェンジ! スリーアウトしたからチェンジしてぇ! 嫁にチェンジしてぇ!」

 

 

優子「そうよね。大樹君はいつも大きい子ばかり浮気するわね」

 

 

大樹「オッケー、心にデッドボールしたから許して」

 

 

不機嫌になっている優子を抱き寄せる。どこにも行かないように何度も謝った。美琴とアリアにも睨まれているのは気のせいだと信じたい。

 

 

狂三「でも最後は迎えに来てくれると私は思っていますわよ」

 

 

大樹「絶対に無理。浮気、ダメ、絶対」

 

 

万由里「これだけ愛人を揃えているのによく言えたわね?」

 

 

大樹「そういう風に言うの一番良くない」

 

 

黒ウサギ「……もしかして黒ウサギたちって」

 

 

大樹「やめろぉ!! 大丈夫だから! 嫁だから妻だから最愛だから心配しないでぇ!」

 

 

今度は黒ウサギに暴投された! 泣かないで黒ウサギ! ちゃんと愛してるから!

 

泣き出しそうな黒ウサギを抱き寄せて———間違って胸に触れてしまい何人からかビンタされる―――今度は俺が泣きそうになる。

 

 

大樹「嘘だろ……俺のモテ期、パない」

 

 

真由美「そうなの……実は私もモテ期だった頃は学校中の男子生徒から―――」

 

 

大樹「よし、一人残らず『真由美は大樹の嫁』だと分からせてやる。特に拳で」

 

 

真由美「今言ったこと、私たちも思っているからね大樹君? 特に大樹君に」

 

 

やだなぁ、ちゃんと分かっていますよ。そんな目で見ないで皆。

 

真由美の手を引こうとすると、向うから抱き付いて来た。張り合うように美琴たちも抱き付くので動きにくい。嬉しいので全然引き離そうとか思わないですけどね。

 

 

リィラ「ふふん、そして最後は私も選ばれることくらい———」

 

 

大樹「論外」

 

 

リィラ「即答するほどですか!?」

 

 

大樹「バーカバーカ! 調子に乗るなよ堕天使! 恋愛経験ナシのおこちゃまに俺が惚れる―――」

 

 

ティナ「……………」

 

 

大樹「ほ、惚れる……惚れる……俺はロリコンだぁ! ひゃっほい!」

 

 

ティナ「番外編史上、返しが一番下手ですよ。あと『おこちゃま』というワードに反応したわけではないので。な・い・の・で」

 

 

頬を膨らませて可愛く怒るティナ。俺の腕をつねりながら体を寄せて来た。

 

残るは折紙だけ。ここには居ないようなので再び廊下を美琴たちと一緒に走り出す。

 

手を繋ぎ、横に並んで、笑顔を見せ合って、最高の幸せに囲まれて、大樹の胸は焼ける程熱くなった。

 

抑えることのできないこの高揚感を、今すぐにでもさらけ出したい。

 

 

「さぁて、ハッピーエンドはすぐそこだッ!!」

 

 

終わりなき廊下の果ての先に、金色の扉が姿を見せる。大樹は躊躇(ためら)うことなく、扉を蹴り飛ばした。

 

 

「迎えに来たぜ折『待ってた』———抱き付くの早いな!?」

 

 

部屋の中に入ると同時に正面から抱き締められた。まだ決めゼリフの途中でしたけど。

 

 

「ど、どうして俺がすぐ来ることを分かっていた?」

 

 

「結婚したい人、この指とーまれって大樹の声が」

 

 

「ここに来るまで凄い距離あったけど!? どんだけ耳が良いんだ!?」

 

 

「あとは、私の大樹センサーで感知した」

 

 

「これまでの言動のせいで容易に否定できねぇ! あと恥ずかしいから他人には言わないでね! それ折紙だけだから!」

 

 

「え? あるわよ?」

 

 

「よぉし、常識人の美琴まで言い出したらキリが無いからやめろよ?」

 

 

「ここに居る皆、大樹センサーを持ってると思うわよ」

 

 

「アリア! 本当に、恥ずかしいからやめて!」

 

 

「じゃあ大樹君。私たちと同じように嫁センサーとか無いの?」

 

 

「何を言っているんだ優子。あるに決まっているだろ?」

 

 

「ま、真顔で言い切りましたね……大樹さん、そういうことです」

 

 

「駄目よ黒ウサギ。大樹君がおかしいんじゃないの。私たちが、大樹君サイドに染まり切ってしまったのよ」

 

 

「真由美さん? まるで俺が悪いように聞こえるけど? 気のせいですか?」

 

 

「私たちが居るにも関わらず、アレだけ浮気していたら悪い人だと———」

 

 

「よーしティナ!! 今日から俺はお前のパパになっちゃうぞ! ちなみに俺は悪いからママを作る気はないぞ!」

 

 

「―――良い人だと思うので私をママにしてください」

 

 

「俺から仕掛けて置いて言うのもアレだけごめん。その言い方だけはマジでやめて。完全に犯罪者だから俺。余裕で逮捕されるから」

 

 

「そんなことより、最後の選択肢」

 

 

「夫が最低な犯罪者になるかもしれない状況を『そんなこと』で済まさないでくれ折紙。というか最後の選択肢って」

 

 

【1.夢から覚める】

 

【2.このまま夢に囚われる】

 

 

―――最後の選択肢に、大樹は嫌な顔をした。

 

 

「……今までやりたい放題して来たことを全て夢オチにするの―——」

 

 

「大樹。それ以上はいけない」

 

 

折紙に釘刺されちゃったよ。爆発オチの百倍くらい最低だぞ。

 

 

「いつの間にか動揺してもケツロケットが発動しなかったからな。やっと終わりか」

 

 

「あッ」

 

 

その時、どこからか声が聞こえた。美琴たちの声じゃない。

 

何かに気付いたような反応だった。辺りを見渡すが誰もいない。

 

 

デデーン!!! 大樹、タイキック!

 

 

―――どう考えても遅すぎるだろうが。

 

 

「オーケー、運営殺す。詫び石どころか現金を渡しても絶対に許さない」

 

 

デデーン!!! 大樹、タイキック!

 

デデーン!!! 大樹、タイキック!

 

デデーン!!! 大樹、タイキック!

 

 

「ごめんなさい調子乗りました! 俺が悪かったから許してください!」

 

 

その場に土下座して命乞いする大樹。手の平扇風機(せんぷうき)とは呼んで良いので。

 

今の数を十六夜級の蹴りが連続で来たら死ねる自信がある。蓮太郎でも尻の骨が粉砕される自信がある。

 

 

「えっと……大樹。その……」

 

 

ふと後ろから美琴が何かを遠慮するような声が聞こえた。

 

 

「悪くないわよあたしたち。浮気された本人だもの」

 

 

「アタシならまだ良いけど……黒ウサギたちは洒落にならないんじゃ……」

 

 

アリアと優子の言葉を聞いた俺は察する。馬鹿な俺でも、何が起きているか理解した。

 

 

「シュッ、シュシュシュ」

 

 

「見て大樹君! 黒ウサギの蹴り、全然見えないわよ!」

 

 

―――タイキックするのは、どうやら嫁たちのようだ。

 

ウォーミングアップし始めた黒ウサギとお腹を抑えて笑う真由美。二人の手には意味の無いグローブが装着されている。

 

 

「うん……まぁ……えー」

 

 

「不満そうですね」

 

 

「いやだって……ティナは尻を蹴られて物語を終える主人公ってどう思う」

 

 

「結婚したいですね」

 

 

「嘘つけ」

 

 

ティナの目は赤くなっており、準備はできていることを語っていた。

 

 

「大丈夫。痛いのは最初だけ。あとは気持ち良くなる」

 

 

「折紙はどういうタイキックをしようとしてる? 普通に頼むぞ?」

 

 

大人しく『orz』の体勢を取り、尻を左右に振った。

 

 

「へい! ひと思いに頼むぜ! へいへい!」

 

 

「気持ち悪いからジッとしていなさい!」

 

 

美琴に怒られてジッとする。最後がこんなオチでいいのかと深刻に思う。

 

最後の選択肢は当然【1.夢から覚める】だ。

 

 

 

 

 

「―――俺にはまだ、やらなきゃいけないことがあるからな!!」

 

 

 

 

 

「その体勢で言ってもカッコ良くないわよ」

 

 

最後の決めゼリフはアリアに台無しにされた。そして、

 

 

シュパドゴオオオオオオンッ!!!!

 

 

―――壮絶な尻の痛みに長い夢から、覚めるのだった。

 

 




最終結果 ケツロケット回数



原田 亮良 661回




宮川 慶吾 740回





楢原 大樹 2692回





大樹「尻死んでない?」

原田「死んだ尻を嫁に向けていたと思うと……酷い」

慶吾「主人公やめろ」

大樹「……ファッキュー」





―――さて、私の持つ全てのギャグを解放し切りました。

大樹たちの物語は、いよいよゴールしようとしています。

最後の最後まで、大樹の挑戦は終わりません。いや、これが最後の挑戦なのかもしれません。

短く長い人生で手に入れた全てを賭けて、戦います。


原点世界終章・最終編


―――どうやら俺はたくさんの世界に転生するらしい、完結編。


―――開幕。




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