どうやら俺はたくさんの世界に転生するらしい【完結】   作:夜紫希

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続きです。





一言だけでいい

「……という訳なんです、はい」

 

 

「「「……………」」」

 

 

絶句する三人の教師。俺は事件について正直に話した。

 

 

六階の床を破壊したことも。

 

 

最初は爆弾で破壊したと嘘をついたがすぐにバレた。男の犯罪者(教師?そんな名で呼ぶわけねぇだろ)が俺のことを全部ばらしたらしい。あいつもう一回ぶん殴ろうかな?

 

あの後はいろいろな人が来て、あいつは逮捕された。あと脅されていた三人は無事だった。もちろん、あの時助けた少年も。

 

 

「お前、人間か?」

 

 

女の教師はそんなことを聞く。聞き飽きたわー、その言葉。

 

 

「当たり前です。酸素を吸って二酸化炭素を吐くところとか人間と同じです」

 

 

「……それ以外は人間と同じじゃないということか」

 

 

「そんなわけあるか」

 

 

女の教師の隣にいる男の教師は予想を斜め上いく解釈をしやがった。

 

 

「まぁこの話題は後程たっぷりと尋問しようか」

 

 

ひッ!?何この女の人、こわッ!!

 

 

「私はもうひとつ確認したいことがあるのだよ」

 

 

「な、なんでしょう?」

 

 

もう早く帰りたい。

 

 

 

 

「お前、武器を持っていないって本当か?」

 

 

 

 

 

うわー、今一番聞かれたくない質問NO.1聞かれたよ。

 

 

「はい、持っていません……」

 

 

俺は少し小さい声で言う。教師たちは目を見開き驚いていた。

 

 

「………化け物か」

 

 

「生徒を化け物扱いすんじゃねぇよ」

 

 

さっきから全く喋らなかったもう一人の男の教師がとんでもないこと言い出したぞ。

 

 

「これは面白い奴がきたなぁ……」

 

 

も、もう怖いよッ!!おかあさーん!!

 

 

「今日はとりあえずもう帰っていいぞー」

 

 

今日は?ふむ、明日は絶対危ない。休もう。

 

 

「休むなんてバカなこと考えるなよ?」

 

 

「明日、がっこー、たのしみだなー」

 

 

この学校、ろくな教師がいねぇな。

 

 

________________________

 

 

 

「なるほどねぇ……」

 

 

家に帰宅した俺は今日あった事件を美琴に話した。

 

 

「あんた本当に

 

 

「もうそのくだりやめて」

 

 

もうわかりましたよ。はいはい、俺は人間卒業しましたー。

 

 

「モニターで見ていたけど六階ではそんなことがあったんだ」

 

 

「なんだよ、見てたのか」

 

 

「まぁ大樹ならAランクなんか余裕だと思ってたから放っておいたわ」

 

 

「いや、助けにこいよ」

 

 

酷くね?この世界に来てから俺の扱いなんなの?みんないじめはダメなんだよ?

 

 

「そうね、助けに行ったら撃たれなかったもんね」

 

 

美琴は包帯で巻かれている俺の左腕を申し訳なさそうな目で見る。

 

 

「……別にお前のせいではないだろ?それに俺があの訓練に入っていないとあいつをぶっ飛ばせなかったんだから」

 

 

俺は笑顔で言う。

 

 

「それに俺のこと信じてくれたんだろ?」

 

 

「え?」

 

 

「俺が勝つって」

 

 

「ッ!」

 

 

頬を赤くした美琴は大樹を見る。

 

 

「ありがとうな」

 

「う、うん……」

 

 

美琴はさらに頬を赤く染めた。

 

 

ピンッポーンッ

 

 

その時、うちのドアのチャイムが鳴った。

 

 

「はーい、今出るよー」

 

 

俺は席を立ち、玄関に向かう。

 

 

ガチャッ

 

 

鍵を開けて扉を開く。

 

 

「ほら見なさいキンジ。大樹は5秒以内にドアを開けたわよ」

 

 

そこには腕を組んだアリアがいた。

 

 

「たまたま玄関の近くに居ただけだろ」

 

 

その後ろには死んだ魚の目をしたキンジがいる。

 

 

「………まぁこの際なんで俺の家を知っているかは聞かないでおこう。で、何のようだ?」

 

 

あとをつけられてたのか?いやん、ストーカーされた!

 

 

「美琴にも話があるわ」

 

 

「そうか、んじゃあ中で話すか」

 

 

俺はドアを全開に開けて二人を招き入れた。

 

 

________________________

 

 

 

「大樹、あんた私のパートナーになりなさい!」

 

 

「おい、何で俺は奴隷で、大樹はパートナーなんだよ」

 

 

「いやいや、話が見えないのだが?」

 

 

何がどうなってるの?美琴さん、睨まないで。我、何も悪いことしてないぞよ?

 

 

「あたしのパーティーに入ってほしいの」

 

 

「何で俺?」

 

 

「今日、大樹の戦いを見せてもらったわ」

 

 

モニターですね!アリアも見てたのかよ……。

 

 

「遠山じゃダメなのか?」

 

 

「キンジは奴隷よ?」

 

 

その返しは予想外だわ。

 

 

「美琴もあたしのパーティーに入ってもらうわ」

 

 

「えぇッ!?」

 

 

「え、もう決定してるの!?」

 

 

アリアさん強引すぎ。美琴も俺も驚くしかないよ。でも、何かカッコいいな。

 

 

「おい!俺は入らないぞ!」

 

 

キンジは反論する。どうしても入りたくないようだな。

 

 

「あたしもパスだわ」

 

 

え?美琴も?

 

 

「何でだ?」

 

 

大樹は美琴に尋ねる。

 

 

「そのパーティーに入ってもメリットが無いからよ」

 

 

そういえばシャンプー切れてたな(嘘)。明日買いに行こ。そのメリットじゃねぇよ。

 

 

「そうね、武偵は金で動くものだったわね」

 

 

アリアは右手を胸に当て、部屋全体に響く声で言う。

 

 

 

 

 

「あたしのパーティーに入ったら一千万前後の報酬をあげるわ!」

 

 

 

 

 

「い、一千万!?」

 

 

キンジはアリアの言葉に驚く。だが、

 

 

 

 

 

「「何だ、一千万か」」

 

 

 

 

 

俺達は少しがっかりした声で言った。

 

 

「こ、この金額で不満なの!?」

 

 

逆にアリアが驚き、俺達に向かって怒鳴りつける。

 

 

「いや…………だって………ね?」

 

 

俺は歯切れの悪い答え方をする。

 

口で話すより見せる方が話が早いと判断した美琴は通帳をアリアに見せた。

 

 

 

 

 

残額299,995,000を。

 

 

 

 

 

アリアとキンジは絶句する。

 

 

「ど、どうやったらこんなに金を貯めれるんだ……」

 

 

「ま、まぁ俺達は金に困ってないから金以外でのメリットを美琴に提示してあげてくれ」

 

 

俺は未だに通帳を見続けるアリアに言う。

 

 

「てか大樹はどんなメリットがいいんだ?」

 

 

キンジは大樹に質問する。は?

 

 

 

 

 

「いや、俺は別にいらないぞ?」

 

 

 

 

 

「「「え」」」

 

 

三人の声が重なる。

 

 

「だーかーら、別にメリットとか関係無しに組んでやるって言ってるんだよ」

 

 

「ま、まじで言ってるのか大樹!?」

 

 

キンジの言葉に何度も頷く。まじまじ。超本気。

 

 

「い、いいの?」

 

 

「いや、誘った本人が何でそんなこと聞くんだよ」

 

 

アリアの言葉に呆れたような声で返す。

 

 

「ほ、本気なの!?」

 

 

美琴が俺に大声で聞く。

 

 

「な、何でそんなにみんなして大声出すんだ?」

 

 

「だって何も良いことが無いじゃない!」

 

 

美琴はメリットのことを気にしているのか。

 

 

 

 

 

「人を救うのにメリットやデメリットなんかいらねぇよ」

 

 

 

 

 

「「え?」」

 

 

「ッ!?」

 

 

美琴とキンジは俺の言っていることが理解できていない。だがアリアは分かったようだ。

 

 

「大樹……知ってるの?」

 

 

アリアは小さな声で尋ねる。

 

 

 

 

 

「あぁ、アリアの母さんを助けるためだろ?」

 

 

 

 

 

「「!?」」

 

 

美琴とキンジはその言葉に驚いた。

 

 

「……そうよ、あたしには時間が無いの。ママの冤罪の無実を証明しないといけないの」

 

 

アリアは悲しそうな声で言う。さっきまで元気だったのが嘘だと思うくらい声が小さかった。

 

 

「あたしはママに会いたい時には会えない。会えたとしてもアクリルの壁越しでほんの少しの時間しか話せない……」

 

 

自分の母親の現状について改めて話す。それだけでアリアの声は震えていてとても小さくなる。

 

 

「あたしはママを早く助けたい!」

 

 

小さな手を強く握る。

 

 

「お金なら後でいくらでも出すわ!だからお願いあたしを助けて!」

 

 

アリアは三人に助けを求める。だが、

 

 

 

 

 

「ふざけるな」

 

 

 

 

 

「ッ!」

 

 

無慈悲に放たれる言葉に泣きそうな顔になるアリア。

 

言ったのは大樹。助けると言った本人だった。

 

 

「ふざけてんか、お前?」

 

 

「お、おい大樹」

 

 

「金ならいくらでも出すから協力しろ?ハッ、いい加減にしろよ」

 

 

キンジが呼び掛けても大樹は言葉を続ける。

 

 

「な、何で?さっき組んでくれるって」

 

 

アリアは消えそうな声で尋ねる。

 

 

「言ったよ。確かにそう言った。でもなぁ……」

 

 

大樹は真剣な顔で告げる。

 

 

 

 

 

「金を払わないと協力しないような奴とか思ったのか、俺の事を?」

 

 

 

 

 

「ッ!?」

 

 

アリアはその言葉に驚愕した。

 

 

「いいかアリア。俺はそこまで腐った人間じゃないぞ」

 

 

大樹は口元に笑みを浮かべて優しい声で言う。

 

 

「そんな強引なやり方はもうしなくていい」

 

 

そして、大樹はアリアに右手を差し出した。

 

 

 

 

 

「一言。それだけでいい。アリアがしてほしいこと言ってみろよ。俺はその言葉に答えて見せる。絶対に」

 

 

 

 

 

「だ、大樹ぃ………」

 

 

アリアの綺麗な赤紫(カメリア)色の瞳から水が流れる。

 

アリアは大樹の右手を握る。

 

強く。

 

強く握った。

 

 

「あたしを………ママを………………!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「助けて……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「任せろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大樹はアリアの頭を優しく撫でた。

 

 

「アリアの母さんにきせられた罪は指で数えられるほど少なくは無い」

 

 

大樹は美琴とキンジに大事なことを告げる。

 

 

 

 

 

「アリアの母さんは今懲役864年を言い渡されている」

 

 

 

 

 

「「なッ!?」」

 

 

美琴とキンジはその数字に驚愕する。

 

 

「お前らはどうする?」

 

 

二人はしばらく沈黙する。

 

最初に沈黙を破ったのは、

 

 

 

 

 

「やるわ。あたしもパーティーに入れて」

 

 

 

 

 

美琴。美琴は協力してくれるそうだ。

 

残るはキンジ。

 

 

「………俺は無理だ」

 

 

キンジは大樹たちから目をそらした。

 

 

「今の俺にはお前らの力になれない。でも……」

 

 

キンジは真剣な目で再び大樹たちを見る。

 

 

 

 

 

「こんな俺でいいなら、入れてほしい」

 

 

 

 

 

「なんだよ、てっきり断るかと思ったぜ」

 

 

「俺もそこまで腐ってねぇよ」

 

 

これで全員がパーティーに参加した。

 

 

「どうだアリア?お前の本心の一言で皆集まったぞ」

 

 

大樹は笑みをうかべて言う。

 

 

「ありがとぅ………みんなぁ……!」

 

 

あーあ、せっかくの可愛い顔がぐしゃぐしゃになっちゃって。

 

 

「ちょっと泣かさないでよ、大樹」

 

 

「大樹が泣かしたな」

 

 

「俺ッ!?俺なのッ!?俺が悪いのッ!?」

 

 

二人に責められ、大樹は慌ててアリアを慰める。

 

 

「んっ、もう大丈夫よ……」

 

 

アリアの目は赤くなっているが、涙は出ていない。何かを決意した瞳だった。

 

 

 

 

 

「みんな、あたしを助けて」

 

 

 

 

 

改めてアリアは真剣な顔でみんなに尋ねる。だけど、三人の答えは決まっていた。

 

 

 

 

 

「「「まかせろ」」」

 

 

 




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