どうやら俺はたくさんの世界に転生するらしい【完結】   作:夜紫希

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作者から一言。


―――「カオスワロタ」


最終番外編 絶対に動揺してはいけない24時!
バスの中で絶対に動揺してはいけない24時!


「「「ホントクソ」」」

 

 

声を揃えたのは今回の被害者―――三人の男たち。

 

この物語でぶっ飛んだ行動、神すら恐れるような奇行を繰り返す主人公―――楢原(ならはら) 大樹(だいき)

 

サブ主人公的な位置で大体ツッコミ役、まぁまぁ出番がある―――原田(はらだ) 亮良(あきら)

 

この物語の黒幕だと判明したけど、これからはギャグ要員―――宮川(みやがわ) 慶吾(けいご)

 

そんな可哀想な三人―――大樹&原田&慶吾、彼らは感想をそれぞれ述べる。

 

 

「いや何、このタイミングで? 黒幕の話からの俺たちの最後の物語が始まるんだよな? 良い流れなのに何で? 俺の出番が少なかったこと以外に関しては良い流れだと思うけど?」

 

 

「確かに。最近俺の出番も少なかったことに関してはいろいろ文句は言いたいが、流れは普通そうなる」

 

 

「出番出番うるさいぞお前ら……だが流れは同意する。(しゃく)だが」

 

 

「余計な一言が多いんだよ。中二」

 

 

「まぁまぁ、そういうなよ。中二の言うことも間違ってないんだからよ」

 

 

「本編に入る前に死にたいようだなお前ら?」

 

 

ビキビキと額に青筋を浮かべる慶吾。すぐに大樹が首を横に振った。

 

 

「馬鹿お前ッ、本編で死んだ奴の前でそれは……プッ」

 

 

「クッ……それは、悪かった……!」

 

 

「死者を冒涜してんじゃねぇぞお前ら」

 

 

今度は原田がキレそうになる番だった。

 

一触即発な空気に包まれる中、三人に声を掛ける者が居る。

 

 

「はい、(みにく)い争いはそこまでにしましょうか」

 

 

振り返るとそこには執事の様な恰好をした男。金髪のショートカットに見覚えはあった。

 

そう、神デメテルの保持者であるバトラーだ。

 

 

「さて、今回の集まって貰った理由なのですが―――」

 

 

「「待て待て待て待て待て!!」」

 

 

何もかも無視して話をしていた自分たちも結構悪いが、これは無視できない。

 

大樹と原田が必死に説明をバトラーに求めていた。

 

 

「どういうこと!? 黒幕のコイツと一緒に居る時点でいろいろとアウトなのに、お前が出て来たらスリーアウトのチェンジだよ!?」

 

 

「だから世界観壊し過ぎだろ!? もっと大切にしようぜ!? 突然のこの〇ば!でも、この番外編でもよぉ!」

 

 

そんな言葉にバトラーは一言。

 

 

「今までの番外編を振り返って見てください。ほら、もう既にゲームセットでしょ?」

 

 

「「ですよね!!」」

 

 

納得の一言だった。もう終わった後ならどうでもいいか! いやならねぇよ。

 

難しい顔をする大樹と原田を無視してバトラーは話を始める。

 

 

「今回の企画は簡単。三人は『動揺して』はいけません、24時間」

 

 

「パクリかよ。というか年末じゃねぇぞ今? 何? もしかして、この話の投稿日は12月31日だったりする? というか『笑う』よりキツイだろそれ……」

 

 

「笑ってもアウトです。常に『無』を意識してください」

 

 

僧侶(そうりょ)かよ。何? 今から修行でもするの?」

 

 

バトラーはニッコリと笑みを返すだけ。怖いよ。

 

 

「全員が敵だと思ってください。我々仕掛け人はどんどん動揺するよう仕掛けますので」

 

 

「もしかしてお前だけじゃねぇの!? まさかあの双子とか大樹の師匠とかガルペスとか―――」

 

 

「何だそのカオス!? 動揺通り越して心臓止められ命まで狩られそうなんだけど!?」

 

 

原田と大樹がガクブルと震えだす中、慶吾だけは冷静。まるで興味が無いように見えた。

 

 

「くだらん。こんな企画、俺は帰らせて―――」

 

 

「ここで帰ると最悪なことが本編で起きますよ」

 

 

「……………例えば?」

 

 

黙っていた慶吾が小さな声で聞くのだが、恐ろしい答えが返って来た。

 

 

「最後の戦い、途中でウ〇コを漏らします」

 

 

慶吾の表情がゾッとするくらい凍り付いていた。それはあんまりだろ……。

 

これは帰れない。というか帰らないで。最後の戦いで漏らされてもこっちが困るから。どういう反応をすればいいのか分からないから。何て声をかければいいのか混乱するから。

 

俺の顔を一度チラリと見た後、慶吾は帰るのを諦めてくれた。表情は暗いが、気にしないでおこう。俺も触れない。

 

 

「それと動揺するたび、ペナルティが()せられるので注意を」

 

 

「やっぱケツバット?」

 

 

「いえ、ケツロケットです」

 

 

「「「ロケット!?」」」

 

 

不穏な言葉にビックリする三人。どういうことなのかと聞くと、やれやれとバトラーは呆れるように説明した。

 

 

「三人は常人ではありません。ケツバット如きでは罰にはならないでしょ? なのでケツロケットです」

 

 

「ふざけるなよ!? じゃあ神の力を使わないからケツバットにしてくれ! 原田と慶吾も力を抑えるから!」

 

 

「それは困ります。力は存分に発揮してください。ケツロケットを生身だなんて……下半身、無くなりますよ?」

 

 

「どんだけ強いんだよケツロケット!?」

 

 

「もう説明はこれくらいでいいでしょう。さて、観光バスが来ましたよ。ここからは彼女に任せます」

 

 

バトラーは最後にそう告げて帰って行った。どこにかは分からないが。

 

そもそも公園に居るのにバスが入って来れるのか? どこから来るのかキョロキョロと見渡していると、

 

 

シュピンッ!!

 

 

眩い光が一帯を包み込む。目を開けるとそこにはバスが出現していた。

 

そして、そのバスは黒い毛皮で覆われている。まるで―――!?

 

 

「「「猫バス!?」」」

 

 

『猫ではない。鬼だ』

 

 

その聞き覚えのある声に大樹たちは驚愕する。

 

 

「「「ジャコバス!?」」」

 

 

なんと黒犬のバスの正体はジャコだった。お前も刺客なのかよ!

 

 

「大樹様!」

 

 

バスの中からはリィラが手を振っている。バスガイドの衣装を身に纏っていることから敵だと判明した。本当に見方がいなくて悲しい。

 

……待て待て、今の数十秒で三回くらい動揺してしまっている。この調子だと、ケツが死ぬどころか本当に下半身吹き飛ぶのではないか?

 

 

「皆様の案内は私、リィラが。よろしくお願いします」

 

 

『バスの中に入った瞬間、始まる。気を引き締めろ』

 

 

お前の中に入るの超絶嫌なんだけど。めっちゃ抵抗あるんだけど。

 

それでも慶吾はフンッと鼻で笑うとバスへと乗車する。

 

勇気があるなぁ。もうケツロケットが来るかもしれないのに。

 

 

『早くしろ』

 

 

乗車を(しぶ)っているとジャコに睨まれてしまう。原田と一緒に嫌な顔でバスに乗車する。

 

中は普通のバスと同じ。真ん中にある横並びの席に並んで座る。慶吾、原田、大樹、リィラの順だ。

 

客は誰もいないと思っていたが、後方に二人の先客が居るようだ。だが姿が良く見えない。

 

しかし、声は聞こえた。

 

 

「クックックッ、我の選んだ保持者は最高ではないか?」

 

 

「じゃが、お前さんよりこちらが強いようだぞ?」

 

 

―――冥府神とゼウスの声だと、慶吾と大樹は気付いてしまった。

 

 

刹那———尻に強烈な一撃が走る。

 

 

スパアアアアアァァァン!!!

 

 

「「ぐはぁ!!??」」

 

 

「うおぉ!?」

 

 

椅子に座っていた大樹と慶吾が突如吹っ飛んだ。バスから飛び出す程の勢いに原田は驚愕する。つまり―――

 

 

スパアアアアアァァァン!!!

 

 

「いだぁ!!??」

 

 

原田も同じように吹っ飛んだ。

 

三人の尻からは煙が立ち昇っている。それだけ威力があったのだ。

 

苦悶の声を漏らしながら大樹はふかふかの毛皮の床に倒れながら叫ぶ。

 

 

「ぅ……最初から凄いの出してくるなボケぇ!!」

 

 

「ぐぅ……奴め、許さないからな……!」

 

 

「はい、危ないので座ってくださいね。発車しますよ」

 

 

リィラの言葉と同時にバスは動き―――走り出す。うわぁ、結構酔うぞこれ。映画の理想とは全然違う。

 

尻を抑えながら椅子に座ると、原田が小さな声で尋ねる。

 

 

「おい……どうして動揺したんだよお前ら」

 

 

「「……………」」

 

 

小声で尋ねる原田に俺と慶吾は目を合わせる。うん、そうだよな。そんなゲームだもんな。

 

そして———潰し合いも始まる。

 

 

「「ああ、実は―――」」

 

 

スパアアアアアァァァン!!!

 

 

―――理由を聞いた原田はもう一度、ケツロケットを味わった。

 

 

________________________

 

 

 

バスはしばらく走っていると、停車した。思わず嫌な顔になる三人。

 

 

「はぁ……不幸だ」

 

 

「それを言うなら俺だって不幸だぞ」

 

 

乗車して来たのは二人の男子学生。一人はツンツン頭の上条(かみじょう) 当麻(とうま)。もう一人は遠山(とおやま) 金治(キンジ)

 

今度は動揺しない。これから何でも登場するに決まっている。というか神というインパクトが強過ぎたから何でも来るだろ。

 

 

「いーや、俺の方が不幸だ。インデックスの世話がどれほど大変なのか……」

 

 

「馬鹿を言え。俺なんて銃を振り回す奴らに追いかけられているんだぞ毎日」

 

 

はいはい、不幸不幸。というか何を言われても動揺しないぞ。どうせロクでもないことしか言わないつもりだろ。

 

この展開から察するに、とんでもない不幸でも言うのか?

 

 

「だけど、一番の不幸って言ったら―――」

 

 

「ああ、一番の不幸は―――」

 

 

上条とキンジは声を揃えて告げる。

 

 

「「―――俺たちのヒロインを取られたことだよな」」

 

 

スパアアアアアァァァン!!!

 

 

「やり方が汚ねぇ!!!!」

 

 

床に倒れながら悔しそうに叫ぶ大樹。その光景に原田と慶吾はニヤリと笑っていた。

 

 

「俺の『幻想殺し(イマジンブレイカー)』とかもう全然凄くないよな。大樹の必殺技に似たようなのあるし」

 

 

「俺の超人的な動きも大樹には余裕だし、目立てることがないよ……」

 

 

「「はぁ……不幸だ」」

 

 

溜め息を吐く二人に大樹は黙ってプルプルと震えながら椅子に座る。おのれぇ。

 

 

「上条さんも、超能力があればなぁ」

 

 

「超能力者でも不幸な奴が居たよな」

 

 

「ああ、アイツか」

 

 

今度の話は三人がピンと来ていない。誰か居たのかと。

 

 

「作品内ではオリジナル能力―――」

 

 

「番外編まであって強いのに出番が少ない―――」

 

 

「「―――【永遠反射(エターナルリフレクト)】!」」

 

 

スパアアアアアァァァン!!!

 

 

「そ、そんなこと言うなよぉ!!」

 

 

原田が吹っ飛ぶ番だった。やり方がホント酷いよな。

 

俯いて床に倒れている原田。毛皮の床が濡れているような気がした。

 

 

「俺たちより不幸な人間は結構居るんだな」

 

 

「だな。元気出して行くか」

 

 

そう言って元気を出す上条&キンジ。バスが停車すると降りて行った。

 

しかし、代わりに入って来た者が居る。そう、新たな刺客だ。

 

タッタッタッとバスの中に入って来たのは桜色の髪の少女だ。

 

 

「RPGゲームで大事なのはレベルなんかじゃない! 装備! アイテム! つまり金なのよ!」

 

 

―――碧陽(へきよう)学園生徒会長、桜野(さくらの)くりむだった。

 

 

スパアアアアアァァァン!!!

 

 

この登場に慶吾がケツロケット。いやマジかお前。これは耐えろよ。

 

まさか黒幕の話でチョロリと出て来た奴まで来るとは思わなかった。

 

しかも『金』とか夢も希望もない発言に大樹と原田は苦笑いだ。

 

 

「ドラ〇エも、F〇も、装備が駄目ならすぐにHPが減って死ぬの。レベルの暴力が許されるのはポ〇モンだけよ!」

 

 

「あー分かる。テイ〇ズとかテクニックが一番大事だけど武器が弱かったら長期戦になるからなぁ。ポケ〇ンもとりあえずレベル上げればジムも四天王も行けるし」

 

 

会長の有り難い?言葉に大樹はうんうんと頷く。

 

すると桜野はビシッと慶吾に指を差す。おっとまさか!?

 

 

「そう! あなたに足りない装備は眼帯と包帯なのよ!」

 

 

「あぁッ!?」

 

 

「「ブホォwww!!」」

 

 

スパアアアアアァァァン!!!

 

 

桜野が取り出した道具に慶吾は怒り、大樹と原田は同時に噴き出すように笑った。そして三人の尻から強烈な一撃も噴き出していた。

 

何度も食らう衝撃に三人の表情はここで激変する。

 

 

「というか尻! 本気で痛いぞ!? ヤバいこれ無理ぃ!」

 

 

「こんな状況で24時間!? 絶対に尻が消えるぞ!」

 

 

「おのれ……冥府神の力が使えれば……!」

 

 

大樹は涙目、原田は蒼白、慶吾は怒気に染まっていた。

 

それでも桜野は行動を続ける。先程取り出した眼帯と包帯を慶吾に付け始めたのだ。

 

今度はグッと堪える。慶吾は無心なのか凄い顔になっている。いや本当に無心なのアレ?

 

しかし、ちびっ子会長の猛攻は止まらない。標的は原田へと移る。

 

 

「そして、あなたに足りない装備は髪よ! ロンゲのカツラをあげるわ!」

 

 

スパアアアアアァァァン!!!

 

 

「「「クソォッ!!」」」

 

 

動揺するに決まっているだろ! 原田なんか涙ボロボロじゃねぇか!

 

坊主頭にスッと違和感バリバリ全開のロンゲのカツラを被せられる。この流れだと俺も来るか……!?

 

 

「最後にあなた!」

 

 

「そ、それは!?」

 

 

「金よ!」

 

 

直球だな! しかし動揺までには至らない。セーフだ。

 

 

「これで整形すればバッチリよ!」

 

 

スパアアアアアァァァン!!!

 

 

これには原田と慶吾がケツロケット。その後は毛皮の床を叩いて爆笑していた。

 

装備云々(うんぬん)の話どころじゃなかった。装備する人を変える金を渡されてしまった。どんだけブサイクだと俺に言いたいんだ。

 

だが動揺―――落ち込みはしたがセーフ判定。だけどすっごい悲しい。

 

 

「さて! 装備は整ったわね! 今から私の生徒会を集合させて会議をするわよ!」

 

 

まだ来るの? もうお腹一杯なんだけど!

 

すると四人の桜野と同じ学校の制服を着た学生がバスへと乗車する。

 

 

「ハァイ、副会長のルイオスだ。今回だけ特別だぜ」

 

 

「同じく副会長の蛭子(ひるこ) 影胤(かげたね)

 

 

「書記は私、ヒルダよ。(ひざまず)きなさい愚民共」

 

 

「……会計、ガルペス=ソォディアだ」

 

 

スパアアアアアァァァン!!!

 

 

三人は同じことを思う―――メンバー選出が卑怯過ぎると思いませんか?と。

 

まさに悪のオンパレード。ここに一つの悪の組織が誕生していた。特に最後アウト。

 

右から桜野、ルイオス、影胤、ヒルダ、ガルペスの順で並ぶ。パない。迫力がパないです先輩。

 

 

「いやぁーまさか僕がお呼ばれするなんてね」

 

 

「同感だ。まさか私がこの場に来ることになろうとは」

 

 

「ほほほほほっ、どうせなら夜に呼んで欲しかったけれど特別に許す」

 

 

三人は足を組んで悪い笑みを見せている。ペルセウスの坊ちゃん、仮面が不気味な男、吸血鬼と来て、トドメはマッドサイエンティスト。悪役バッチリOKです。

 

するとガルペスが静かなことが目立つ。よく観察すると何かを呟いていた。

 

 

「あ…………た…………」

 

 

上手く聞き取れない。こちらは顔を合わせて確認するが原田と慶吾も首を横に振っている。

 

ガルペスの異変に気付いた会長は声を掛ける。

 

 

「はい静かに! ガルペス、発言は大きな声で!」

 

 

バッとガルペスは顔を上げて大きな声で叫んだ。

 

 

「―――あんパン、食べたぁい!!!!」

 

 

スパアアアアアァァァン!!!

 

 

―――もう嫌だこれ。

 

キャラ崩壊ってレベルじゃない。人格破綻(はたん)。こういう方向で攻められるとキツい。いろいろと。

 

動揺しまくりで辛い。逆にどうやって動揺しないでいられるんだこの状況。

 

 

「う、うん……そうだね」

 

 

引いてる。会長さん引いてるから。

 

白衣の懐からゴソゴソとパンを取り出す。あんパン持っているのかよガルペス。

 

 

「おい……アレって―――」

 

 

その時、何かに気付いた慶吾は俺たちに小声で教える。

 

 

「―――カレーパンだぞ」

 

 

「「あんパンじゃねぇのかよ!?」」

 

 

スパアアアアアァァァン!!!

 

 

大樹と原田の尻に衝撃が走る。ああちくしょう! しょうもないことでケツロケット食らったじゃねぇか!

 

慶吾は満足気な笑みを見せている。こんな小さな事でも本格的な潰し合いが始まっているようだな。

 

仕掛けたい気持ちは山々だが、ここで泥沼になるのは不味い。今回はスルーしよう。

 

 

「今日の議題はこれよ!」

 

 

ババーン!と会長の桜野の手には『生徒にポイ捨てをさせず、ゴミの分別を意識させるには?』と書かれていた。

 

……普通の議題だ。ぶっ飛んだ事でも書いてあるかと思っていたが―――生徒会のメンバーがぶっ飛んでいるから同じか。うん。

 

 

「最近僕のコミュニティもゴミの分別はしっかりとできるように工夫していてね」

 

 

ルイオスの意見に嫌な予感は感じるので警戒は怠らない。

 

 

「ゴミの分別を間違った瞬間、電撃が全身に走るようなギフトがあってね。箱庭では人気だよ」

 

 

「怖いよ!? うちの高校には絶対に付けれないから!」

 

 

まだ序の口と言った所だろう。ケツロケットは誰も炸裂していない。

 

 

「駄目だね。それじゃ分別より死体が増えてしまうよ」

 

 

次は影胤。そこが問題じゃない。というかお前の意見の方が死体を増やしそうだけどな。

 

 

「罰を与えるんじゃない。絶対にさせないようにするんだよ」

 

 

「へぇ? 同じ副会長として聞きたいね」

 

 

「ルイオス君の意見は捨てた後に罰が起きる。ならば逆の意見を提案する」

 

 

あ、ダメな気がする。

 

 

「分別を間違えた者がどうなるか……一人を吊るし上げて全校生徒の前で悲惨な目に遭わせ―――」

 

 

「物騒だよ!? そんな殺戮的な学園じゃないよ!」

 

 

会長は即座にバツを手で作り意見を却下する。ようこそ実力主義……いや、ようこそ天下一武道会へ。

 

 

「どうして物騒なことばっかり提案するの!? もう次の意見!」

 

 

「即座に首チョンパ」

 

 

「次ッ!!!」

 

 

ヒルダの意見も蹴られる。知ってた。

 

最後に残ったのはガルペス。あーあ、制服の上から着ていた白衣にパンくずやらカレーが付いてる。ホント何してるのお前。

 

 

「……とある大学生がこんな話をしていた」

 

 

急にどうしたお前。

 

 

「女の子からパンツをもらうにはどうすればいいか、と」

 

 

いやホントどうしたお前。

 

 

「彼らが出した答えはこうだ―――女の子からもらったものをパンツに加工する」

 

 

「天才かよ」

 

 

「天才じゃないよ!? ただの変態だよ!?」

 

 

キリッと真面目に答えるガルペスにこの俺も真顔になってしまう。会長がツッコミを入れているが、ガルペスは結論を出す。

 

 

「つまり根元から考え方を変える。そう……ゴミを分別するのではなく、ゴミをパンツに変えることだ」

 

 

「意味が全然分からないんだけど!?」

 

 

「会長。まずは話を聞いてからだ。私はゴミを分別させることを生徒に意識させるという点を変える。私が二つのゴミ箱を用意するとする」

 

 

「えっと、うん……」

 

 

「一つはゴミをパンツに変える。もう一つは学校に設置された分別ごみ箱」

 

 

ガルペスの目はキラリと輝いた。

 

 

「これで男子生徒たちは女子生徒のゴミを貰うことでその子のパンツが作れる! 女子のゴミを分別せず捨てるという愚行に出る男など存在しないだろう! むしろ喜々としてポイ捨てされた女子のゴミを拾うはずだ! 何故ならそこに落ちているのはゴミではない、パンツなのだから!」

 

 

「「天才かよ!」」

 

 

スパアアアアアァァァン!!!

 

 

叫ぶと同時に大樹と原田のケツに衝撃が走る。しかし、ガルペスのターンは続く!

 

 

「これにより女子学生は無暗にゴミのポイ捨て、分別しないで捨てることはないだろう! 何故なら分別しなければ男たちにパンツを手に入れられるのだから!」

 

 

「「天才かよ!!」」

 

 

スパアアアアアァァァン!!!

 

 

再度炸裂。慶吾がゴミでも見るかのような目で俺たちを見ているが、ガルペスの勢いは止まらない。

 

 

「ここで思うことがあるだろう。男子だけ得をしていると……その心配はない。女子生徒は復讐することが可能なのだ。何故なら男のゴミは全て白ブリーフに変わり、掲示板に貼りつけて全校生徒に見せることができる! 好きなシミをつけてな!」

 

 

「ま、まさか!?」

 

 

「フンッ、これで校内のゴミ問題は解決したということだ」

 

 

「「天才かよおおおおおォォォ!!」」

 

 

スパアアアアアァァァン!!!

 

 

三度目。凄まじい意見に俺たちの尻は崩壊寸前。

 

周りの生徒会メンバーは―――いや引いてる。ドン引きだった。ヒルダとか慶吾と同じ目をしている。

 

会長も馬鹿馬鹿しくアホアホしている意見に大反対なのだが、否定しにくい。困っている。

 

こんなクソみたいな意見が通るのか。学園終わったなとか考えていると、ガルペスはフッと得意げな笑みを見せながら呟く。

 

 

 

 

 

「―――そんな素敵な装置ができればの話だがな!」

 

 

 

 

 

スパアアアアアァァァン!!!

 

 

―――まだバスの移動中だというのに、三人はこの先の展開に耐えれる気がしなかった。

 




現在のケツロケット回数

楢原 大樹 11回

原田 亮良 13回

宮川 慶吾  8回


原田「大樹より多いとか……大丈夫かこの先」

大樹「目指せ三桁」

慶吾「やめろ」

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