どうやら俺はたくさんの世界に転生するらしい【完結】   作:夜紫希

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はい、ギャグてんこ盛りです。シリアスなんて0.3くらいある方が良いんですよきっと。


裏切りのクズ

冥府神の力で世界を転生する。まるで息をするかのように簡単に、だ。

 

目を開けると広がる光景に思わず言葉を失う。

 

『楽園』———この場所を表現するのに一番合う言葉だった。

 

神光如き空から差す薄明光線が浮遊大陸を照らす。絵の中にでも入ったことを錯覚させるような神の庭園に目を奪われていた。

 

自分の立つ場所は浮遊大陸が多くある中でも遠く低く、孤立した場所だった。木々が少しあるだけの大陸に、一人の神が立っていた。

 

 

「ようこそ、我が友よ」

 

 

ニッコリと神の微笑みに誰もが魅了される———そんな力を感じ取った慶吾はゾッと恐怖する。

 

この神はヤバいと頭の中で叫んでいた。

 

 

「私は神ヘルメス。オリュンポス十二神の一人、ゼウスの使い」

 

 

ヘルメスは白い衣を風になびかせながら、腰を曲げる。

 

 

「そして———世界を変える神になる者です」

 

 

神々しい笑みは、最底辺の悪魔が見せる狂笑へと変貌(へんぼう)する。

 

体が岩石のように酷く固まる。それほど衝撃を受けてしまった。

 

頭の中で冥府神は『おー怖い怖い』と平気な態度を取っている。同時に自分が恐怖していることも分かっているはずだ。

 

 

「さて、早速ですが話を(うかが)いましょう。長い時間は怪しまれるので」

 

 

「ッ……裏切り者ってお前のことで間違いないのは分かる」

 

 

「神に向かって『お前』とは命知らずですね。まぁ良いでしょう。確かに『私たち』は神の裏切者でしょうね、客観的に見れば」

 

 

再び最初の笑みへと戻すヘルメス。ヘルメスの単独行動ではないことは少し予想できていたが、客観的という言葉に理解できないでいた。

 

 

「私は変えたいのです。今の堕落しきった神たちを」

 

 

「堕落?」

 

 

「ええ、堕落です。人間の死んだ魂を保持者にする行為は実に素晴らしいと思います。私たち神のサポート、理不尽な運命も保持者のおかげで変えることができます」

 

 

ヘルメスは『神が都合良く理不尽な運命を消すことは難しい。何故なら世界に亀裂を入れるから』と説明してくれるも、イマイチ理解できない。

 

 

「そうですね……例えば温くなったお風呂があるとします。これを気持ちの良い温度まで温めるには世界の人々には不可能とします。そこで神が温めようとするのですが、お風呂が沸騰すれば最悪ですよね?」

 

 

「……強過ぎる力は世界を壊すって言いたいのか?」

 

 

「ご名答。ですが保持者はそのお風呂を誰でも満足できる温度まで温めてくれる。つまり世界に亀裂を入れることなく救えるのです」

 

 

「そもそも亀裂ってのは何だ? そんなに不味い物なのか?」

 

 

「神の力は本来、冥界への扉を封じる為だけに使う物です」

 

 

ヘルメスは浮遊大陸を見上げる。どの大陸よりも大きく、遠く、高くある場所を見ていた。

 

 

「冥界の扉を封じておかないと悪魔たちが世界を滅ぼしてしまうのですから、神たちは必死に封じているんですよ今も」

 

 

「……話が見えない。どこに神が堕落した部分がある」

 

 

「あるじゃないですか、そこに」

 

 

ヘルメスは淡々と告げる。

 

 

「———悪魔を全員ぶっ殺せばいいのに、何故封印ばかりにこだわる」

 

 

凄まじい怒りの含む言葉が吐かれた。

 

ヘルメスは恨めしそうに浮遊大陸を眺めながら続ける。

 

 

「堕落している。悪魔などにビビっている神が、どれだけ愚かなことなのか……」

 

 

『クックックッ、それだけの為に冥府神をこの世界に引き吊り出すなど……狂った神だ』

 

 

「黙れ。私は私の正義を貫く。例え保持者を汚役を押し付け、神を無様に蹴り転がしても、最後に笑うのは私たち神だ。堕落した神でもゴミクズの悪魔でもない、本当の神だ」

 

 

常軌を逸脱した存在が描く、常軌を逸した空想。それがどれだけ冥府神には笑えることなのかヘルメスは知らない。

 

そして、宮川 慶吾もまた心の中で笑っていた。

 

 

———壊したい、この愚かな神の描く夢という物を。

 

 

「……結局少し話してしまいました。それで用件を」

 

 

ふぅと小さく息を吐くと、頭の中から冥府神の声が響く。

 

 

『楢原 大樹の行く先を知りたい。いや、できれば乱したいのだ』

 

 

「意図が分かりませんね」

 

 

『ゼウスの保持者が強くなることを許容するのか?』

 

 

「……あの保持者はマークする必要がないでしょう」

 

 

冥府神が理由を聞くよりもヘルメスは馬鹿にするように答えを口にする。

 

 

「正直無駄です。彼は神に対する適正が皆無なのですよ」

 

 

『馬鹿な』

 

 

「そんな馬鹿な話が実際にあるのです。今の彼の肉体は生きていた時と全く同じで、わざわざ新しい体に魂を入れるのではなく、用意した超人的肉体を現世で火葬(かそう)させたのですから」

 

 

『……ならそのままなのか?』

 

 

「ええ、そんな貧弱な体にゼウスは力を与えたのです。本来なら現状の三十倍は強い肉体が手に入ったはずですが」

 

 

冥府神とヘルメスの話に疑問は多く残るだろう。しかし、慶吾には都合の良い展開になったようにしか思えない。

 

楢原 大樹という人間を殺しやすいことには違いないのだから。

 

 

「まぁ一応監視はします。裏で暗躍する天使まがいの者もいるようなので」

 

 

『用件はまだある』

 

 

「いいでしょう」

 

 

冥府神の要件は俺たちの考えを遥かに超えていた。

 

もっとも残酷な死を大樹に与える。それが慶吾の願いなら、冥府神は更なる死の絶望を与える神なのだ。

 

 

『—————』

 

 

「それはまた……」

 

 

ヘルメスは少し思考した後、頷いて見せる。

 

 

「あなたの提案に乗るのは(しゃく)ですが、許可しましょう」

 

 

『我らもやるべきことがある。貴様もせいぜい足掻くが良い』

 

 

「……ゴミが。一番に殺すので楽しみにしてください」

 

 

ヘルメスは最後まで黒い笑みをしながら姿を消した。同時に視界が真っ白に染まり、再び転生することになる。

 

 

________________________

 

 

 

———それから俺は人を殺し続けていた。

 

 

「ひぐぅッ……やめ———!?」

 

 

「があああああああァァァ!!??」

 

 

「たすけッ……て……!」

 

 

転生した世界は大樹が来ない場所だと予測された世界だった。冥府神は自分を鍛える為に人を殺し続けろと命令して来た。

 

日本でもない国で戦いに身を投じていた。危険な場所だろうと、喜んで足を運んだ。

 

 

ガガガガガガッ!!

 

 

殺意をぶつけるように敵が一斉に射撃する。銃弾が廃墟の壁を削り壊すように何度も撃たれた。

 

それでも慶吾は前に進む。黒い拳銃を右手に持って、歩き続けた。

 

雨のように降り注ぐ弾丸。当然体に直撃するが、そこに痛みはない。

 

足が動かなければ足を撃たれたと思う。

 

視界が悪くなれば目を潰されたと思う。

 

口の中で鉄の味がすれば、吐血したんだと思う。

 

 

———ただ、それだけのこと。

 

 

ドシュッ!!

 

 

命の糸をブチブチと斬っていく感覚。それを何度も繰り返す。

 

撃つ。撃つ。撃つ。そして撃つ。

 

奪う。奪う。奪う。そして奪う。

 

死ね。死ね。死ね。永遠に死んでろ。

 

———そして何度も繰り返す。

 

振り向けば死体の山。遠くを見れば援軍。前を向けば怯える軍勢。

 

 

「……弱いな」

 

 

『敵の攻撃が貴様の回復力に追いついていないからな。我の力も更に高まっている』

 

 

「……ああ、それは分かる」

 

 

次の瞬間、慶吾の拳銃が変化する。

 

黒い渦が銃を包み込み形を大きく変え、銃身は長く、二回り大きくなった長銃へと。

 

そこから冥府神の力が溢れ出していた。

 

 

「【邪悪な暴風(シュトゥルムベーゼ)】」

 

 

ゴオオオオオォォォ!!

 

 

銃口から放たれたのは嵐の弾丸。廃墟の街の風穴を開けるが如く渦巻いた。

 

敵を巻き込み、瓦礫を巻き込み、街を破壊し尽す光景に冥府神は興奮する。

 

 

『クハハハハハッ!! 最高だ! 貴様は最高だぁ!!』

 

 

その光景に———慶吾も笑みを見せていた。

 

血で汚れた顔は、まさに悪魔だった。

 

 

________________________

 

 

 

それから転生を何度も繰り返し自分を鍛えた。

 

殺意を燃やし続ける日々。そんな堕ちた日々に、予定外な敵も登場するわけで……

 

 

「……ぁぁああああああ、やっと来たな冒険者! 毎日毎日毎日毎日ッ! 俺の城に爆裂魔法を撃ち込んでいる頭のおかしい大馬鹿にいい加減頭に来ていたところだぁ!」

 

 

黒い鎧に頭の無い騎士。しかし、右手には頭部がある。まるでデュラハンのような化け物だった。

 

転生した先には確かにモンスターが居たりした。が、人間と同じように撃ち殺していた。だが、コイツは何だ。

 

転生して目の前にあった城に入ればこの歓迎の仕方。初手キレるってどういうことだ。

 

 

「俺が魔王の幹部と知っていて喧嘩を売っているのはよぉーーーっく分かった! だが、ネチネチネチネチと遠距離攻撃は卑怯だろ!? どうせ雑魚しかいない街だと放置していたが、ポンポンポン魔法を撃ち込みきおって……!」

 

 

「待て。それは俺じゃ———」

 

 

「問答無用! あの街に住む冒険者は全員皆殺しにしてやる!!」

 

 

大剣を片手に距離を詰めようとするデュラハンに俺は銃を右手に持ち、

 

 

バンッ! バンッ! バンッ!

 

 

「ほげぇ!!!」

 

 

———結構弱かった。

 

距離を詰める前に甲冑の関節部を狙う肉体を破壊する。肉体がない可能性を考慮して鎧を凍らせたのだが、すぐに動くことができなくなり、その場に倒れてしまう。

 

 

バンッ! バンッ! バンッ!

 

 

「し、死体蹴りとはッ……いい度胸ッ……ひああああああああ!!」

 

 

最後は動けなくなったデュラハンを炎で(あぶ)った。鎧が溶け始め、かなり大変なことになっている。

 

 

「チッ、ダメか。何故か死なない」

 

 

「アンデットにどういう攻撃をしている貴様!? 浄化というより業火する奴など貴様ああああああああ!?」

 

 

愉快に素敵な鎧へと溶かしてやろうとする。ゲラゲラと冥府神が笑っていると、提案をする。

 

 

『その大剣、貰ったらどうだ? 中々上物だぞ』

 

 

「そうだな」

 

 

「鬼か!? 俺の悲惨な状況を知ってまだ地獄を見せるつもりか!?」

 

 

「魔王の幹部だろ? なら———」

 

 

慶吾は無慈悲に告げる。

 

 

「———ちょっとは雑魚幹部らしく、『俺は幹部の中でも最弱のゴキブリ以下の存在、上にはウジ虫以上の幹部が貴様を殺す』くらいの遺言残せ」

 

 

「鬼だ貴様!!!???」

 

 

「どうせお前がいくら足掻いたところで、最後は頭をサッカーボールにされて死ぬ運命だろ」

 

 

「さ、さっかー?」

 

 

「お前の頭で蹴って遊ぶことだ」

 

 

「あ、あるわけないだろ!? 魔王の幹部だぞ!? 戦っている最中にそんな余裕があるわけないだろ!?」

 

 

うるさい敵に殺意も失せてしまう。こういう奴、本気で嫌いだ。

 

結局、大剣だけ貰い転生して場所を変えることにした。

 

 

 

________________________

 

 

 

 

転生する場所は適当だった。とりあえず転生して、そこから敵と戦う。

 

そんな武闘派な考えで転生をすれば失敗することもある。

 

 

「世の中がつまらないんじゃないの。貴方がつまらない人間になったのよッ!」

 

 

このチビはいきなり何を言っている。

 

小学生の様な容姿をする生徒会長。わざわざタスキに『私が生徒会長!』と書いてあるのがウザい。

 

隣に座る男は真剣な表情で告げる。

 

 

「つまり突如現れた謎の男がつまらないと?」

 

 

「それはない。登場の仕方に関しては杉崎の告白より百倍は印象に残った」

 

 

「馬鹿な!?」

 

 

杉崎と呼ばれた男が絶望する。涙を流しながら俺の顔を睨み付けていた。撃っていいのだろうか。

 

 

「会長の言う通りだ。アタシも謎の男の登場の仕方には少し惚れる」

 

 

深夏(みなつ)まで!? ギギギギギギッ……!」

 

 

深夏と呼ばれた女がグッと拳を握っていた。何だコイツ。というか呪い殺してやる!と言わんばかりの目で俺を睨むコイツ、本当に撃っていいか?

 

 

真冬(まふゆ)もです! これはもう杉崎先輩とねっとりじっくり絡む運命的な出会いとしか———!」

 

 

「「ねぇよ!!」」

 

 

「息ピッタリです! ということは体も!?」

 

 

「「ねぇよ!!」」

 

 

ゴッ!!

 

 

何度も俺の言葉を重ねる杉崎をぶん殴る。それにしてもこの女、腐っているのか!?

 

 

「い、いきなり殴られた……被っただけなのに」

 

 

「キー君が被っているのは皆知っているわよ」

 

 

知弦(ちづる)さんの言う意味は理解しないでおきます」

 

 

「ヒント、下」

 

 

「やりやがったなチクショウ! いや被ってないですから! ホント被ってないですから! ……ねぇよ!!」

 

 

俺を見て言うな杉崎(ゴミ)

 

 

「まぁいいわ! 会議を続けるわよ!」

 

 

「すげぇ! ウチの会長、怪奇現象が起きても平常運転してるぞ!」

 

 

「今日の議題は……………ゴミを捨てる学生にどう注意するか」

 

 

「「「「地味ッ!」」」」

 

 

「会長さんよぉ!? 謎の男が現れたのにこの議題はねぇだろ!? もっとこう……地球について考えようぜ!?」

 

 

「規模が大き過ぎるよ! 今度は私たちが手に負えないよ!」

 

 

「と、とりあえず聞くだけ聞きましょ? ね?」

 

 

杉崎が気まずい表情をしながら俺に意見するように促す。そんな問題、簡単に解決するだろ。

 

 

「全員殺せ」

 

 

「「「「「殺意高過ぎぃ!!」」」」」

 

 

「やばいですよこの人! この学校どころか世界が違う気がします!」

 

 

真冬の意見に全員が頷く。的を得ていて少しビックリしてしまう。まさにその通り、転生者なのだから。

 

 

「……た、確かにブラック・ラ〇ーン辺りに居そうなキャラに見えるわね」

 

 

「失礼な質問ですが……何人ほどやりましたかねぇ……?」

 

 

知弦の発言に杉崎が腰を低くしながら尋ねる。殺している前提で聞くのか。その通りだから困る。

 

全員から汗がダラダラと流れているが、ハッキリと嘘をつくことなく答える。

 

 

「もう数えてない」

 

 

「「「「「これガチだ!?」」」」」

 

 

ギャーギャーと騒ぎ出す生徒会。慶吾は溜め息を吐きながら生徒会室を出て行く。

 

いや、転生して世界から出て行くことにした。

 

 

________________________

 

 

 

しかし、外ればかりではない。

 

アレは例外。例外中の例外。ゴミ箱に入れてくれて構わない。

 

 

ガギンッ!!

 

 

「チッ……!」

 

 

「ッ!」

 

 

銃身と剣がぶつかり合う。同じくらいの歳の女の子とは思えない力を発揮していた。

 

そして金髪が風になびく。その光景に危険を感じると後ろに跳ぶ。

 

 

ドゴンッ!!!

 

 

暴風。その瞬間、強い衝撃が体を襲い、岩壁へと背中からぶつかる。

 

ダメージを与えられたことに驚きと興奮が止まらない。敵は、強かった。

 

少女は蒼色の軽装に包まれ、細身の体からどこから力を出しているのか見当もつかない。

 

しかし、強いのは事実。

 

金眼金髪の女剣士は風を纏いながら追撃を仕掛ける。今度は、さっきより大きい!

 

 

「【リル・ラファーガ】」

 

 

「【残酷な雪崩(グラオザーム・ラヴィーネ)】!」

 

 

刹那———女剣士の速度が音を突き破る。

 

閃光の剣が慶吾に向けられた。

 

対して慶吾は氷の弾丸。冥府神の力を発揮している弾丸は女剣士の剣先に直撃する。

 

 

ドゴオオオオオオオオォォォ!!!

 

 

しかし、弾丸は砕かれる。

 

暴風が地面に亀裂を生み出させ、閃光の剣が慶吾の右腕を斬り飛ばす。

 

慶吾に取って致命的な怪我だった。初めての致命傷。

 

 

ドゴッ!!

 

 

「くぅッ!?」

 

 

女剣士の腹部に拳が叩きこまれる。それは自分の力の何倍も越えた威力だ。

 

軽装の鎧にヒビを入れるほど。いや、違う!?

 

 

(攻撃が鎧をすり抜けて!?)

 

 

ドゴンッ!!

 

 

凄まじい衝撃が女剣士の体を吹き飛ばす。今度は女剣士が岩壁に叩きつけられた。

 

痛みに苦しんでいる暇はない。カチャリと耳に聞こえると即座に回避行動を取る。

 

 

ゴオオオオオォォォ!!

 

 

自分が元居た場所が真っ赤に燃え上がる。業火が肌をピリピリと感じさせていた。

 

判断が遅れていれば消し炭にされていた。そんな安堵と恐怖を同時に噛み締めていると、

 

 

「—————」

 

 

———目の前から迫り来る悪魔に気付く判断が遅れる。

 

 

右腕を無くした悪魔は笑っていた。強者と戦える喜びを、死を感じている恐怖を、殺意と殺意がぶつかる瞬間を、慶吾の心は燃え上がっていた。

 

 

ドゴオオオオオオオオオォォォォン!!!

 

 

殺意を乗せた一撃は先程の一撃を遥かに超えていた。倍以上の破壊力に女剣士は岩壁に叩きつけられると吐血する。

 

しかし、同時に慶吾も血を吐き出していた。

 

 

『限界だ。相手が悪かったな』

 

 

右腕の損傷は大きかった。意識を保つだけでも苦しい。

 

 

「まだだ……俺は殺すまで……!」

 

 

『敵の仲間がここに来る。そうなれば死ぬぞ』

 

 

冥府神の忠告に歯を食い縛りながら戦いを放棄する。しかし、女剣士はこちらを睨んだままだ。

 

 

「逃げるの……?」

 

 

「次は殺す」

 

 

その言葉を残して、逃げるように転生する。

 

最後に女剣士の仲間の声が少しだけ聞こえた。

 

 

アイズ……と。

 

 

________________________

 

 

 

幾多の戦いを乗り越えて、死の恐怖を何度も味わった。

 

強者なんて生温い。最強で満足するわけがない。

 

凶暴な怪物をなぎ倒し、猛者を圧倒する日々。

 

数え切れない程の命を奪っていた。

 

 

『随分と平和ボケした世界に行ってるじゃねぇか』

 

 

「ゼウスの意志ゆえに」

 

 

苛立った声でヘルメスに問う冥府神。ヘルメスは笑みを崩さないまま答えていた。

 

楢原 大樹が転生した世界は平和の一言で片付けれるような世界だった。

 

学園生活を楽しむ姿に慶吾もまた苛立っている。

 

 

「壊しに行きますか? 無駄な時間を過ごすことになりますが……」

 

 

『どうする? 貴様が決めろ』

 

 

ヘルメスと冥府神の質問に俺は笑みを浮かべて答える。

 

 

「当然、壊す」

 

 

『くはッ、やはり我の器は最高だな…』

 

 

冥府神もまた、実に面白そうに笑っていた。

 

 

 

 




※察している方が多いと思いますが、一応。


『この素晴らしい世界に祝福を!』

魔王幹部 ベルディア

『生徒会の一存』

生徒会長 桜野 くりむ
副生徒会長 杉崎 鍵
      椎名 深夏
書記 紅葉 知弦
会計 椎名 真冬

『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』

剣姫 アイズ・ヴァレンシュタイン


ギャグの為に微登場、お疲れ様でしたぁ!!

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