どうやら俺はたくさんの世界に転生するらしい【完結】   作:夜紫希

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この世界での物語はこれで最後です。





終幕。そして開幕

「………ここは?」

 

 

俺はベッドで寝ていたはずだが。

 

 

「久しぶりじゃの」

 

 

「!?」

 

 

お、お前は!?

 

 

「えっと、どちら様?」

 

 

「神じゃ」

 

 

「ああ、そうだった」

 

 

わざとだけど。

 

 

「喧嘩を売っているのか?」

 

 

「滅相もございません」

 

 

勝てるわけねーだろ。

 

 

「今はそうじゃの」

 

 

「………今?」

 

 

俺はその言葉が気になった。だが心当たりがあった。

 

 

「転生特典の身体強化か」

 

 

「やはり気づいておったか」

 

 

そう、俺は一方通行と戦った時を思い出す。

 

一方通行と戦った時、反射ではないダメージを一度くらった。あの時は鈍器で殴られたような痛みだった。なのに

 

鉄骨を何本も落とされたあげく、30メートル近い場所から落とされて痛くなかったのだ。

 

矛盾している。

 

 

「その身体強化は特別なやつでな」

 

 

特別なのは大体予想できていた。

 

 

「進化していく身体強化なのじゃ」

 

 

「進化?」

 

 

「戦えば戦うほど強くなるのじゃ」

 

 

「チートにチート足して大丈夫かよ」

 

 

もう化け物じゃねーか。

 

 

「強くなればいつか神を越えられる、そういうことか」

 

 

「その通りじゃ」

 

 

……………まぁいい。

 

 

「用件はそれだけじゃないんだろ?」

 

 

「おお、忘れるところじゃった」

 

 

大丈夫かよこの神。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「明日、違う世界に転生じゃ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと待てや駄神」

 

 

「ひどいのう」

 

 

「ひどいのはお前の頭だ!」

 

 

はえーよ!明日!?誰一人行ってくれそうな人いねーよ!

 

 

「まだ連れていく人決めてねーよ!」

 

 

「それじゃ、また会おう」

 

 

「話をきけええええェェェ!!!」

 

 

 

________________________

 

 

「お前の人生、俺にくれ!」

 

 

「ちょっ、何言ってるのあんた!?」

 

 

ざわざわ……

 

 

ファミレスの中が一気に騒がしくなる。

 

 

「すまん、順を追ってはなそうか」

 

 

俺はファミレスにいる。

 

 

「あんたはホントに何言ってるのよ」

 

 

美琴と一緒に。

 

美琴は注文した紅茶を飲む。

 

 

「あー、どこから話そうか…」

 

 

そうだなぁ……まずは、

 

 

 

 

 

「俺はこの世界の人間じゃない」

 

 

 

 

 

「………うん、ごめん。何言ってるのか分かんない」

 

 

ですよねー。

 

 

「ようするに俺は異世界から来たんだ」

 

 

「えっ」

 

 

美琴は驚く。

 

 

「俺のいた世界には学園都市とか無かったんだよ」

 

 

「ほ、ホントに異世界から……!?」

 

 

俺はうなずいて肯定する。

 

 

「大樹みたいな奴がたくさんいる世界……!?」

 

 

「いや違うから。俺は特別だから」

 

 

俺みたいに強い奴がたくさんいる世界。やべぇな。キモイの一言に尽きる。……自虐乙。

 

 

「………もしかして、その世界に帰るの?」

 

 

「いや、違うだなそれが」

 

 

「え?じゃあどうするの?」

 

 

何て説明するかな……。

 

 

「俺は新しい違う異世界に行かなきゃならないんだ」

 

 

「ど、どうして?」

 

 

「ならないんだ」

 

 

「……………」

 

 

俺は一度死んだんだよ。それで神から転生していくことを言い渡された。

 

うん、ちょっと言えない。

 

 

「そういう………運命?なんだよ」

 

 

「今思い付いたよね?」

 

 

バレたか……。

 

 

「とにかく行かなきゃならないんだ!」

 

 

「随分強引ね……」

 

 

すいません、必死なんです。

 

 

「なるほどね、話が見えてきたわ」

 

 

分かったんだ。すげぇ。

 

「ようは一緒に行く人を捜してるのね」

 

 

「おお、その通りだ」

 

 

「いくつか質問があるわ」

 

 

だろうな。これは断られそうだな。

 

 

「この世界には帰ってこれるの?」

 

 

「……………」

 

 

やっぱり聞くか。それを。

 

 

「無理だな」

 

 

「………そう」

 

 

美琴は目を伏せて言う。

 

 

「二つ目、次はどんな世界に行くの?」

 

 

「行ってみないとわからない」

 

 

厳しい質問ばかりだな。

 

でも普通だ。異世界に一緒に行こうだなんて聞かれても普通は行かない。ましてやもう戻れないなんて言われたら行く人なんていない。この世界が嫌にならない限り。

 

 

「………三つ目の質問よ」

 

 

まだあるのか。

 

 

 

 

 

「なんで私なの?」

 

 

 

 

 

「……………」

 

 

思ったことをそのまま口にする。

 

 

「……………から……」

 

 

「え?」

 

 

 

 

 

「可愛い…から…」

 

 

 

 

 

ボンッと美琴の顔が赤くなる。

 

 

「あ、いや!それだけじゃない!一緒にいたら楽しくなりそうとか!話しやすいとか!」

 

 

俺は慌てて言う。

 

 

「もしかして……これ告白…!?」

 

 

「え、何て?」

 

 

「な、なんでもないわよ、馬鹿!」

 

 

お、怒られたよ。ぐすん。

 

 

「と、とにかく事情は分かったわ」

 

 

「そ、そうか」

 

 

「でもすぐには決めれないわ。一週間待っ

 

 

「ごめん、明日には異世界行くんだ」

 

 

あーあ、一週間あったら来てもらえたかもしれないのに。

 

「………あんた馬鹿なの?」

 

 

俺に言うなよ……神に言えよ……

 

 

「一日で別れとか済ましきれないわよ!」

 

 

「あー、それは必要無いんだよ……」

 

 

「え?」

 

 

どう説明すればいいんだ?

 

 

「……もしかして、最初から居なくなったことに?」

 

 

美琴は恐る恐る聞く。

 

 

「それは俺だけだな」

 

 

「……ちょっと良く分からないわ」

 

「簡単に言うと俺がこの世界に来なくなった状態になるんだよ」

 

 

美琴は黙ってそれを聞く。

 

 

「この世界の本来あるべき姿に戻るんだ」

 

 

「じゃあ、実験がまだ行われている世界に……」

 

 

「……………」

 

 

俺はその事については何も言えない。

 

 

「「……………」」

 

 

沈黙が続く。が

 

 

「今日の夜、ここの近くの公園で待ってる」

 

 

そう言って立ち上がる。

 

 

「来たくなかったら来なくていい」

 

 

俺はテーブルに置いてある伝票を掴む。

 

 

「ごめん、こんな言い方して」

 

 

美琴はこちらに顔を向ける。しかし俺は顔をそらす。

 

 

「でも俺は来てほしくないと思っている自分がいるんだ」

 

 

「……………」

 

 

美琴は静かに聞く。

 

 

「俺について来るなんて、人生を俺にくれるようなものじゃないか」

 

「ッ!?」

 

 

美琴は息を飲む。

 

 

「よく考えて欲しい。じゃあな」

 

 

俺は店を早足で出た。

 

 

________________________

 

 

「うおおおおおおォォォォ!!!」

 

 

ゴンッ!ゴンッ!ゴンッ!ゴンッ!ゴンッ!

 

 

俺は公園のベンチに頭をぶつけていた。人の目?ああ、何か頭いってると思われているが気にしない。

 

 

「何言ってんだよ俺はああああァァァ!!」

 

 

ゴンッ!ゴンッ!ゴンッ!ゴンッ!ゴンッ!

 

 

何が「人生を俺にくれるようなものじゃないか」だよ!別に異世界で勝手に何かしててもいいじゃねぇか!

 

 

ゴンッ!ゴンッ!ゴン

俺は頭をぶつけるのをやめた。

 

 

「……あーあ、馬鹿だな俺は」

 

 

「そォだなァ」

 

 

「美琴と一緒に行きたいなぁ……」

 

 

「誘えばいいじゃねェかァ」

 

 

「誘ったよ!でもいい返事が………っていつからいた!?」

 

 

一方通行(アクセラレータ)が隣に立っていた。

 

 

「お前が頭をぶつけ始めるところからだァ」

 

 

「全部かよ!」

 

 

見てたら止めろよ!

 

 

「頭ン中壊れたかと思ったぞ」

 

 

「正常だ!」

 

 

「………さっきやってたこと思い出してみろよォ」

 

 

「……………」

 

 

うん、頭のネジが数本取れてる。病院行かなきゃ!

 

 

「そういえば打ち止め(ラストオーダー)は?」

 

 

「………今探してンだよ」

 

 

「うん、どんまい」

 

 

また迷子か。一方通行さんお疲れ様です。

 

 

「はやく見つけてあげな、母ちゃん」

 

 

ダンッ!

 

 

「あぶねっ!?」

 

 

一方通行は足下にあった石を弾丸のように飛ばす。

 

 

「誰が母ちゃンだ三下ァ」

 

 

「おま…………いえ、何でもありません」

 

 

今あいつ、ベンチを飛ばそうとしたぞ!公共のモノは大切にしてください。

 

 

「ってあれ打ち止めじゃね?」

 

 

遠くの方にいる打ち止めを見つける。

 

しかも何か怖い奴らに囲まれてる!!

 

 

「お、おい一方通行!」

 

 

一方通行に声をかけるがいない。あれ?

 

 

 

ぐあああああァァァァ!!!

 

 

「………oh」

 

 

もう打ち止めのところにいる。そして怖い奴らは5メートルくらいの高さまで宙を舞った。仕事はえー。

 

 

「わーん!怖かったよお母さん!ってミサカはミサカは母性溢れるあなたに抱きついてみたり」

 

 

「やっぱ母ちゃんじゃん、一方通行」

 

 

ギロッ!

 

 

やべぇ!聞かれた!てかここから聞こえるのかよ!?

 

俺は音速のスピードで逃げ出した。

 

________________________

 

 

「………やっぱ来ねぇか」

 

 

もうすぐで深夜1時を過ぎる。

 

夜7時から待っているが美琴は来なかった。

 

 

「でもそれが現実か………」

 

 

RPGのように簡単に仲間になったりはしない。現実とはそういうものだ。この世界にはセーブポイントもない。死んだらそこで永遠のゲームオーバー。何一ついいことない。

 

そんな世の中だ。命くらい大事にしたい。危険を犯して異世界に行くなんて

 

 

馬鹿げてる。

 

 

「一時になっても来る気配は無いか…」

 

 

タッタッタッタッ

 

 

「?」

 

 

足音が聞こえる。走ってくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめん!遅くなった!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「美琴ッ!?」

 

 

美琴がこちらに走ってきた。

 

 

「何で来たんだ!」

 

 

「何でって一緒に行くからよ。自分から誘っておいてその態度なの?」

 

 

「でも一緒に行くってことは

 

 

「知ってる。だから来たの」

 

 

俺の言葉に美琴はかぶせる。

 

 

「別れは言ってないわ。どうせ意味無いんでしょ」

 

 

「それでも!何で俺なんかに……」

 

 

美琴は俺の言葉にため息をつく。

 

 

「な、なんだよ」

 

 

「あんた、馬鹿ね」

 

 

昼間にも同じようなこと言われたな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あんたとの思い出なんかを大切にしたい、そう思ったからよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!?」

 

 

俺は目を見開き、美琴を見る。

 

 

「だから行ってあげるわ、異世界へ」

 

 

真っ直ぐな瞳で俺を見て

 

 

 

 

 

「ちゃんと楽しませてよね」

 

 

 

 

 

美琴は右手をこちらにだす。

 

俺は驚いて動けなかったが、

 

 

「エスコートさせてもらうよ、お嬢様」

 

 

笑顔でその右手を優しく握った。

 

 

________________________

 

 

「準備はいいか?」

 

 

「ええ、いつでもいいわよ」

 

 

俺は美琴の手を握ったまま空を見る。

 

 

(ほら、さっさと転生させろよ駄神)

 

 

『あいかわらず酷いのう』

 

 

(うっせぇ、こっちは大変だったんだ。転生するなら一週間前に言えよ)

 

 

『努力する』

 

 

(おい)

 

 

『次はお前さんが転生する世界は【緋弾のアリア】じゃ』

 

 

(次の世界も楽しめそうだな。いや

 

 

 

 

楽しんできてやるよ!!)

 

 

 

 

 

 

そして二人はこの世界から消えた。

 

 

 




次は緋弾のアリア編です。


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