どうやら俺はたくさんの世界に転生するらしい【完結】   作:夜紫希

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別に重大じゃないと思うけど発表します。





ヒロイン決まりました。






よし、文字数は2万4千です。(ついに文字数がヤバイ)

あ、今回の話、番外編だけでなく、全話の中で史上最強に酷い話だと自負します。運営に消された時は『ご愛読ありがとうございました』の文字を覚悟してください。……頼む、生きてくれ。


火龍誕生祭の過酷なゲーム

「参加するわけねぇだろ。パス」

 

 

「え」

 

 

白夜叉から借りた個室。そこに大樹と黒ウサギはいた。

 

激戦の傷が完治した大樹は一般人と書かれたTシャツを着ており、コミュニティに帰るための土産や荷物をまとめていた。

 

 

「街の復興作業は終わりそうだし、あとは【ペルセウス】に任せている。ここに残る理由はもうない。だからギフトゲームに参加する気もない」

 

 

「ま、待ってください!」

 

 

黒ウサギに誘われたギフトゲームを断固拒否する大樹。心に余裕はあるようで、本当はないのだ。

 

美琴。アリア。優子。大切な三人が消えてしまった惨劇。彼女たちが生きている希望があると教えられた今、ここでじっとしているわけにはいかない。

 

 

「お願いです! 一日だけです! 黒ウサギとペアを組んで―――」

 

 

「……俺は今、心から楽しんでいいのか分からない」

 

 

大樹の呟きに黒ウサギの言葉が止まった。

 

 

「苦しんでいるかもしれないんだぞ。それなのに、俺がこんなことをしていいのか……」

 

 

「いいに決まっておろう」

 

 

―――大樹のカバンの中から子どもが出て来た。

 

 

「うわぉい!? どっから出て来てんだお前!?」

 

 

子どもの正体は白夜叉だった。何故かいつもの和風ロリではなく、体操服を着ていた。胸元には『しろやしゃ』と書かれている。

 

 

「逆におんしがそうなった時、三人には笑うなと願うか?」

 

 

「ッ……そ、それは」

 

 

白夜叉の言う通り。もしあの時俺が消えていたら、彼女たちには無事でいて欲しいと願う。笑っていて欲しいとも思う。

 

 

「焦りは心を乱し、転ぶぞ。明日のギフトゲーム。強制参加とする」

 

 

「……はぁ、分かったよ」

 

 

「大樹さん!」

 

 

大樹はついに折れた。黒ウサギの表情はパァっと笑顔になった。

 

 

「楽しんでやるよ。せっかくだからな」

 

 

「良い心構え。おんしが参加しなかったらギフトゲームは中止にする予定だったからのう」

 

 

「へぇ……俺がいないと成立しないゲームか……で、どこの神をぶっ飛ばすんだ?」

 

 

「神!? 一体大樹さんはどこを見ているのですか!?」

 

 

神すら恐れる領域(ドヤ顔)

 

 

「白夜叉様、黒ウサギだけでなく、参加者も内容を聞いていません。一体どんなゲームをするつもりなのですか?」

 

 

「そうなのか?」

 

 

「YES。ゲームに参加したい者は二人組で登録。そして必ず一人、女性が参加しなければなりません」

 

 

なるほど。俺たちは普通に条件はクリアだな。別に俺じゃなくてもよかったんじゃねぇの?

 

 

「飛鳥と耀を誘っても良かったんじゃねぇか? 男女で組まなくても、女性二人でもいいんだろ?」

 

 

「……………はぁ」

 

 

溜め息つかれたんご。な~ぜ~?

 

 

「ふむ……それは明日のお楽しみ、ということにしておこう。しかし———」

 

 

その時、白夜叉の声音が低くなった。

 

 

「———過酷なギフトゲームに、なろうの……」

 

 

「……………」

 

 

この時の俺はこう思った。

 

 

この馬鹿ロリは体操服姿で何を言ってんだ?っと。

 

 

 

________________________

 

 

 

ギフトゲーム当日。まだ騒ぎ足りない者たちが闘技場に観客席に座り、参加者は舞台の上に立っていた。当然俺と黒ウサギも。

 

 

「十六夜と飛鳥も参加していたのか。もぐもぐ」

 

 

「まぁな。んっ」

 

 

「春日部さんもよ。レティシアと一緒に参加しているわ。ん~、やっぱり甘くて美味しいわ!」

 

 

俺はパスタを食べ、十六夜はたこ焼き、飛鳥はクレープを幸せそうに食べていた。

 

 

「自由過ぎるのですよ! もっとビシッとしてください!」

 

 

「ビシッ! ズルズルッ」

 

 

「ビシッ! おいこれタコ入ってねぇぞ」

 

 

「ねぇ十六夜君。あとで他の味も食べてみたいのだけれど?」

 

 

「口で言っているだけじゃないですか!? って飛鳥さんは反省する気が全くない!?」

 

 

態度の悪い三人はもちろん他の参加者から睨まれる。だが、大樹の独り言でそれは終わる。

 

 

「あー、魔王のギフト超簡単だったわー。速攻で解いたから、このゲームは歯応えあって欲しいなー」

 

 

「「「「「!?」」」」」

 

 

ちなみにこの独り言。わざとである。

 

ざわざわと周りは騒がしくなり、大樹たちを避けるように参加者たちは距離を取った。

 

 

「なぁ黒ウサギ。文句言う奴なんているの?」

 

 

「いませんよお馬鹿!!」

 

 

バシンッ!!っと黒ウサギはハリセンでお笑い芸人より良い音を出して俺を叩いた。

 

 

『お待たせしました! これより火龍誕生祭を今日まで延長し、ギフトゲームを開催します。主催は白夜叉様です』

 

 

わぁあああああァァァ!!!

 

 

【サラマンドラ】の頭首であるサンドラの宣言に観客と参加者は大いに盛り上がった。

 

 

主催者(ホスト)として大事な一言を言わせてもらおう』

 

 

舞台の前に現れたのは体操服姿の白夜叉。白夜叉はカッと目を見開き、大きな声で告げる。

 

 

『全人類が、全神が、全ての者が求める究極は……(おの)が宇宙にある!』

 

 

「「「「「……………はい?」」」」」

 

 

白夜叉の言葉に当然会場は静まり返る。意味が分からない。何を言っているのか。

 

 

「ふざけんじゃねぇぞ白夜叉!!」

 

 

「だ、大樹さん!?」

 

 

反論したのは大樹。パスタを全て食いつくし、白夜叉に向かって怒りの表情を見せた。

 

 

「まだ言うのかお前は……見えない方が、想像力が上を行くと!?」

 

 

『何度も繰り返そう! 人類が求める原動力がエロとするなら、人類はそれまでの存在だと!』

 

 

「「「「「は?」」」」」

 

 

「何も分かっちゃいねぇよお前……真のエロスは言葉になんかできねぇ。俺は知っている」

 

 

『何……!?』

 

 

グッと拳を握り絞め、白夜叉に向かって突き出す。

 

 

「俺たちが求めるエロスは、そこに()()モノなんだ! 想像で止まっているお前は、ただの腰抜け野郎だぁ!!」

 

 

(((((うわぁ帰りてぇ……)))))

 

 

ヒートアップする二人に観客たちはドン引き。乗っているのは「よく言った大樹!」と言っている十六夜ぐらいだ。

 

 

『よかろう……ならばこのゲームで決着を付けよう』

 

 

パチンッと白夜叉が指を鳴らした瞬間、参加者たちの手元に契約書類(ギアスロール)が出現した。

 

 

 

 

 

『ギフトゲーム名 【最強の騎士は姫のために】

 

 

ゲーム概要

 

1.舞台は三九九九九九九外門・四000000外門・街全体とする。

 

2.ペア参加者は『騎士(ナイト)』と『(プリンセス)』の役を決める。ただし『(プリンセス)』は女性限定。

 

3.参加者は街の中に隠された宝箱の中にある衣装を制限時間内に探す。所持していい衣装の数は無制限とし、参加者のペアとなった二人は一緒に行動しなければならない。

 

4.ゲーム中、『(プリンセス)』は他の参加者に攻撃することは一切できない。

 

5.ゲーム中、『騎士(ナイト)』は『(プリンセス)』を守らなければならない。

 

6.ゲーム中、『(プリンセス)』が他の『騎士(ナイト)』に触れられた場合、ペアで組んだ『(プリンセス)』と『騎士(ナイト)』を失格とする。

 

7.他の参加者から衣装を奪うことは反則としない。

 

8.制限時間は5時間とする。

 

 

 

制限時間後の最終ゲーム概要

 

(プリンセス)』は手に入れた衣装を着用して舞台に上がり、審判に採点してもらう。

 

 

 

参加者側の勝利条件

 

 最終ゲームで、審判に一番高い得点を出させること。

 

 

 

参加者側の敗北条件

 

1.最終ゲームで得点が一番ではない場合。

 

2.ペアのどちらかが戦闘不能になった場合。

 

3.特定された衣装を一着も持っていない場合。

 

4.決められた舞台からの退場。もしくは場外に出た場合。

 

5.ゲーム概要を破った場合。もしくはゲーム概要に書かれた失格等の項目に適応された場合。

 

 

宣誓 上記を尊重し誇りとホストマスターの名の下、

          ギフトゲームを開催します 【サウザンドアイズ】印』

 

 

 

 

 

「つまりコスプレで決着を付けようということだなああああああァァァ!?」

 

 

『その通りだああああああァァァ!!』

 

 

いやぁっふぅうううううううううううゥゥゥゥ!!!!

 

 

大歓声が巻き起こった。涙を流しながら喜ぶ男たち、鼻血を出しながら叫ぶ男たち、ドン引きの女たち。

 

会場はカオスとなっていた。なんかやたらと番外編はカオスという言葉が多いな。って何を言っているんだ俺?

おい作者。文字数を稼ぐな。

 

 

「うおおおおおおおおおおおおォォォ!!」

 

 

「白夜叉様万歳!! 白夜叉様万歳!!」

 

 

「【サウザンドアイズ】万歳!! 【サウザンドアイズ】万歳!!」

 

 

白夜叉コールが止まらない。調子に乗った白夜叉は両手を大きく広げ、

 

 

『宝箱にはエロい衣装も入っておる! それは水着より過激な衣装だあああああああああァァァ!!』

 

 

「ッシャオラアアアアアアアアアアァァァ!!」

 

 

「大正義白夜叉万歳!! 大正義白夜叉万歳!!」

 

 

「エロ万歳!! エロ万歳!!」

 

 

『フハハハハッ!! さぁゲームを始めよう! 我らの究極を求めるゲームを!!』

 

 

こうしてゲームが始まった。

 

 

参加者たちは知らない。このゲームが如何に過酷なモノかを。

 

 

何故なら参加者には問題児がいるのだから。

 

 

 

________________________

 

 

 

Q.黒ウサギをエロく見せるには何をすればいい?

 

A.彼女だけが持っている素晴らしいモノを引き立てる衣装を探せばいい。 

 

 

では、黒ウサギが持っている素晴らしいモノとは?

 

 

「おっぱいだろ」

 

 

「何を言っているのですか!?」

 

 

バシンッ!!と顔を真っ赤にした黒ウサギに本気でハリセンで叩かれた。

 

俺と黒ウサギは民家の屋根で街を見渡していた。無暗に探すより、上から高見の見物をしていた方が、効果的な方法だからだ。ちなみに作戦名は『泥棒は正義』である。はい参加者から盗む気満々です。

 

 

「どうして黒ウサギこんなゲームに……!」

 

 

「誘ったの黒ウサギだろ。俺は悪くねぇ」

 

 

黒ウサギはズーンっと落ち込むが、すぐにハッとなり俺の腕にガシッと掴んだ。

 

黒ウサギは穏便に済ませるために微笑んでお願いする。

 

 

「過激なモノは駄目ですよ☆」

 

 

「やだ☆」

 

 

「無慈悲!?」

 

 

慈悲はあるぞ。俺がちゃんとした最高の衣装を見つけてやるからな。

 

 

「———ッ!?」

 

 

その時、殺気を感じた俺は黒ウサギをお姫様抱っこし、その場から飛び退いた。

 

 

「きゃッ!?」

 

 

ドゴンッ!!

 

 

上空からの襲撃。屋根が盛大に吹き飛ぶ。さっそく『騎士(ナイト)』のおでましか。

 

高級そうな白いコートを羽織り、坊主頭が目立つ男は———

 

 

「って原田じゃねぇか!?」

 

 

―――原田だった。

 

こいつ俺を助けに来たんだよな? 何で攻撃しているの?

 

 

「避けられたか」

 

 

「どういうつもりだテメェ……というか黒ウサギ。何で反応できなかった?」

 

 

「く、黒ウサギのウサ耳は問題ないです。問題があるのは原田さんです……」

 

 

原田だと?

 

俺は原田の姿をよく観察する。すると原田は薄い青色のオーラを纏っていることに気付いた。

 

 

「それは私の恩恵(ギフト)だ」

 

 

俺の思考を先読みしたかのように答えられた。

 

原田の次に現れたのは……白夜叉だと!? おい、まさか!?

 

 

「私が『(プリンセス)』だ」

 

 

「正気かお前!?」

 

 

「余所見するなよ大樹!!」

 

 

ダンッ!!

 

 

原田は強く踏み込んで大樹に襲い掛かる。民家を瓦解させてしまう勢いだった。

 

 

「ぐぅ!?」

 

 

ドゴンッ!!

 

 

拳と拳がぶつかる。拳圧で暴風が吹き、一帯の民家の窓を何枚も割ってしまう。

 

なるほど。白夜叉の恩恵で原田はパワーアップしているのか。味方の補助はルール違反じゃない。白夜叉も考えたな。

 

 

ドンッ!!

 

 

俺と原田は同時に後ろに飛んで距離を取る。俺は後ろを見らず、黒ウサギを呼ぶ。

 

 

「黒ウサギ! 何でもいいから俺にも補助系の恩恵(ギフト)をくれ!」

 

 

「はい!」

 

 

黒ウサギの返事を聞きながら俺は原田たちを警戒する。クソッ、原田を倒さない限り白夜叉には近づけねぇ。

 

どうする? ここは一度、フェイントの攻撃を仕掛けて―――あれ?

 

 

「……………ねぇまだ?」

 

 

「大樹さん」

 

 

後ろを振り向くと、黒ウサギが舌をチロッと可愛く出しながら苦笑いしていた。

 

 

「そういう恩恵、黒ウサギにはありませんでしたっ」

 

 

「箱庭の貴族(無能)かよ」

 

 

「何て酷いことを言うのですか!?」

 

 

「箱庭の貴族(ww)」

 

 

「もうやめてください!?」

 

 

「箱庭の貴族(爆笑)」

 

 

「大樹さんの馬鹿ぁ!!」

 

 

「夫婦漫才している場合かよッ」

 

 

「チッ!」

 

 

ドゴッ!!

 

 

原田の蹴りと大樹の拳がぶつかる。攻撃の衝撃の余波は凄まじいモノだった。

 

 

「舐めんじゃ———!」

 

 

ガシッ!!

 

 

「なッ!?」

 

 

大樹は攻撃して来た原田の足を両手でガッシリと掴み、

 

 

「———ねぇぞこの野郎ッ!!」

 

 

ドゴオオオオオォォォ!!

 

 

そのまま街道に向かって原田を叩きつけた。地面が大きく割れ、近くの民家が瓦解する。

 

無茶苦茶な力に誰も驚かない。この程度、黒ウサギからして見ればちょっと非日常なだけ。白夜叉からしてみれば可愛い攻撃だろう。

 

 

「何故私は宝箱にエロい衣装を入れたと思う?」

 

 

「……何?」

 

 

ペアがやられているにも関わらず、白夜叉は余裕の笑みを浮かべていた。

 

 

「おんしらの議題を代わりに置いてやったのだ」

 

 

「俺らの議題、だと……!?」

 

 

「そうだ」

 

 

白夜叉は怪しげな笑みを浮かべながら告げる。

 

 

「議題は……エロい衣装は一体何か、だ!?」

 

 

「ッ!?」

 

 

その一言に俺は絶句した。

 

その議題は人類が永遠に辿りつくことができない領域だ。

 

人によって『エロい』という概念は違う。パンツが見える方がエロいっと言う者がいれば、ブラジャーが見える方がエロいという者は必ずいる。

 

つまり、誰もがこれはエロいと呼べる究極の『エロい』は存在しない―――存在するなら、それはまさに幻の概念!

 

 

「ま、待て白夜叉! そんな絶対は存在しない……いや、存在していいわけがない!」

 

 

「なるほど。それが存在してしまえば、概念が固定されてしまう。全ての『エロい』が概念が固定され、人類はただ同じモノを求める獣。いや、それしか求めない無能になっていることを恐れるのだな!」

 

 

「怖くて何がおかしい! もし全人類がニーソフェチになったらどうするつもりだテメェ!?」

 

 

「逆に考えるがいい! もし全人類がガーターベルトフェチになった時、全女性はガーターベルトを着用する世界になるのだぞ!」

 

 

「何その素晴らしい世界。招待してくださいお願いします」

 

 

「一体さっきから何をやっているのですかこのお馬鹿様方は!?」

 

 

スパーンッ!!っと強烈なハリセンの一撃が俺の側頭部に直撃する。残念なことに『(プリンセス)』は攻撃を許されていないので白夜叉にはハリセンが飛んでこなかった。

 

 

「私は見つけ出す! 想像力の先にある究極を! 己が宇宙で見つけ出した究極の! 完全無欠の! 最高のエロスをこの手に!」

 

 

「……そうかよ。テメェは神だ」

 

 

「む?」

 

 

大樹は拳をグッと握り絞め、白夜叉と対峙する。

 

 

「神だから分からねぇだろ? 凡人の考えがどれだけ優れているのか?」

 

 

「何……だと……!?」

 

 

「お前は舐めている。未知に、秘境に、エロスに到達できなかった童貞が―――」

 

 

大樹は大声で白夜叉に向かって叫ぶ。

 

 

「———本物のエロスを知っていることをなぁ!!!」

 

 

「ば、馬鹿な!? 神すら見出せない究極を、凡人が知っていると!?」

 

 

顔面蒼白の白夜叉に大樹は口端を吊り上げて笑う。

 

 

「想像力を越えた者たちのエロス。それは全人類……いや、全宇宙を凌駕する! その猛者の一人であるこの俺に、お前の究極なんざ聞かされたところで、片腹痛いわ!」

 

 

「ぐぅッ!」

 

 

「さぁゲーム再開だ! テメェの妄想幻想は、俺がこの手で打ち砕く!」

 

 

「戯け! もう小細工は無しだ! 今こそ白夜は極夜の(とばり)と化し、星の光もろともおんしの語る理想ごと、全てを呑み込んでやるわ!」

 

 

ドゴオオオオオオオオォォォ!!

 

 

白夜叉の銀髪から闇が放たれる。

 

太陽の運行を司る白夜叉に、この世に闇をもたらすことは造作もない。永遠に太陽を昇らなくしてやることもできる。

 

白夜叉の神威に街全体が極寒の暴風で荒れる。ビリビリと肌に恐怖が伝わるが、俺は笑った。

 

 

「白夜叉……」

 

 

そして、大樹は右手を挙げる。

 

 

 

 

 

「先生! ここにルールを破った人がいまーすッ!」

 

 

 

 

 

 

「しまったぁああああああああああッ!!??」

 

 

 

 

 

 

闇に包まれていた街が一気に晴れになる。白夜叉は両膝を着いて嘆いた。

 

完全にルール違反。街を極寒にしたり、神威解放したり、攻撃しようとしたし、ダメダメですぅ。さぁて、宝探しに行くにゃん♪

 

 

「待て!」

 

 

「ッ!」

 

 

パシッ!!

 

 

白夜叉から投げ渡されたモノをキャッチする。そして渡されたモノを見て驚愕した。

 

 

「こ、これは!?」

 

 

「宝の一つだ。おんしに託そう」

 

 

「白夜叉……」

 

 

「おんしの見つけた究極。この目で見させてもらおう」

 

 

「……ああ! 楽しみにしていな!」

 

 

俺は走り出す―――

 

 

「お前の意志、確かに受け取った!」

 

 

 

 

 

―――白のガーターベルトを握り絞めながら。

 

 

 

 

 

「この変態問題児、手に負えませんッ!!」

 

 

 

黒ウサギの悲痛な叫びが、街に響き渡った。

 

 

 

________________________

 

 

 

「……すっげぇ手加減されなかった」

 

 

首の下まで地面に埋まり、身動きが取れない。大樹の一撃を防ぐことはできたが、変態同士の会話を聞いて戦う気力が失せた。それはもう、動きたくなくなるほど。

 

 

「すまん……失格じゃ……」

 

 

「ああ、稀にでも見ない馬鹿っぷりだったぞ」

 

 

「神に対して酷すぎんかのう……」

 

 

白夜叉に体を引っ張ってもらい、地面から脱出する。某有名な遊び、つくしごっこはお終いである。

 

 

「優勝すれば恩恵をくれるっていう約束があるのに。残念だがあの変態には勝てそうにないな」

 

 

「まぁそう落ち込むことではない。あやつの究極を楽しみしているからのう」

 

 

「いや、別に俺は楽しみにしていねぇから……」

 

 

「それに恩恵はやらないが、代わりに恩恵を手に入れるためのギフトゲームを紹介しよう」

 

 

「ッ!」

 

 

白夜叉の発言に原田の表情が驚きに変わる。白夜叉はセンスで口元を隠し、目を細める。

 

 

「おんし、ちょいとロキのところに行ってはみぬか?」

 

 

________________________

 

 

 

 

「……まさか耀と戦うことになるとはな」

 

 

「お願い大樹。そこをどいて」

 

 

街のメインストリートで対峙するのは大樹と耀。大樹の後ろには黒ウサギ。耀の後ろにはレティシアがいる。

 

耀の手元には一つの宝箱。もう宝箱を探さず、守りに徹している姿を見るに、その宝箱は相当エロ……良い衣装が入っているに違いない!

 

 

「さぁソイツを寄越せ! エロい衣装は俺が全部貰う!」

 

 

「待ってください!? ナチュラルに黒ウサギに着せようとしていませんか!?」

 

 

「時と場合による」

 

 

「時と場合を考えてそんな衣装は着せないでください!」

 

 

「だが断る!」

 

 

「誰かこの問題児を止めてくださぁい!?」

 

 

涙目で叫ぶ黒ウサギに一歩も譲る気はない大樹。耀は大樹との間合いを調整し、

 

 

ダンッ!!

 

 

大きく踏み込んだ。

 

耀の脚力は人間の並みを平然と越えている。一瞬で民家の屋根より高く跳び、大樹から逃げようとする。

 

 

「逃がすかッ!!」

 

 

ダンッ!!

 

 

だが大樹の跳躍は耀を遥かに越えていた。耀よりも速いスピードで目の前まで距離を詰め、耀の服の襟首を掴む。

 

 

「放して! これは……絶対にあげれない!」

 

 

「関係ねぇ! いいから渡せ!」

 

 

バギッ!!

 

 

大樹は下から蹴り上げて宝箱を破壊。中身の黒い衣装がヒラヒラと舞い上がる。

 

 

「そ、それは……!?」

 

 

黒い衣装の正体。それは———!?

 

 

 

 

 

「スク水……!?」

 

 

 

 

 

―――スクール水着だった。

 

 

 

 

 

「これで分かったはず。レティシアに着せるべきだと」

 

 

耀の言葉に俺は手を止めてしまう。互いに戦うことなく、そのまま地面に着地し対峙する。

 

 

「ちょっと待て!? 中身はメイド服だと聞いていたのだが!?」

 

 

「……………」

 

 

「何故黙る!?」

 

 

そりゃレティシアが着てくれそうにないからじゃないか? 俺も同じことするだろうな。

 

 

「だから大樹。そこ……どいて」

 

 

「だが断る! 二回目!」

 

 

「なッ!?」

 

 

許可できない。あぁ許可できるわけがねぇ!

 

 

「どうして……これはSサイズで黒ウサギに小さ過ぎるのに……!」

 

 

「なおさら手に入れなきゃならねぇよ。むしろそうじゃなきゃ駄目なんだよ……」

 

 

「何でしょう。全く教育に良くない会話は」

 

 

黒ウサギが何か言っているが今は無視しよう。

 

 

「想像してみろ。もしそれを黒ウサギが着たらどうなるか!?」

 

 

「ッ!? もしかして……!?」

 

 

「そうだ! ピッチピチで、パッツパツで、胸とお尻が協調されてすっげぇエロくなるんだよぉ!!」

 

 

「もうやめてくださいよぉ!!!」

 

 

わーんっと泣きながら俺の頭部を何度もハリセンで叩く黒ウサギ。鼻血や頭からドロドロと血が出ているが大したことじゃない。

 

 

「確かにレティシアが着る姿は俺も見たい。だが、耀。お前の意志はそれでいいのか?」

 

 

「意志……?」

 

 

「お前の意志は、スク水で終わっているのかと聞いているんだ!?」

 

 

俺の問いに耀の顔は真っ青になり、両膝を地面に着いた。

 

彼女は遅かった。重大な欠点に気付くことに!

 

 

「わ、わたしは……とんでもないミスを……!」

 

 

「今更気付いたか。そうだよ。スク水なんて今時、王道過ぎて、一位にはなれねぇよ」

 

 

「黒ウサギ。帰っていいのだろうか」

 

 

「黒ウサギも帰りたいですよ……」

 

 

「じゃあ……どうすれば……大樹なら、どうするの?」

 

 

「……これは拾いモノだ。お前にやる」

 

 

「ッ!?」

 

 

「遠慮しなくていい。ただそれをレティシアに着させて、俺に勝ってみろ」

 

 

「……いいの? わたしが一位になったら―――」

 

 

「舐めるなよ? 俺は、その程度では終わらない。覚えておけ」

 

 

俺はそう言い残し、歩き出した。

 

 

「ありがとう、大樹」

 

 

耀は立ち上がる―――

 

 

「絶対に、着させるから」

 

 

 

 

 

―――ネコ耳とネコの尻尾を握りながら。

 

 

 

 

 

「黒ウサギ」

 

 

「お元気で!!」

 

 

「黒ウサギ!?」

 

 

黒ウサギは振り返ることなく、その場から走って立ち去った。

 

 

 

________________________

 

 

 

「計画通り」

 

 

「ゲスな顔をしているのですよ……」

 

 

これでレティシアにスク水ネコ耳スタイルが見れる。黒ウサギのスク水は見てみたいが、それはまたの機会にしよう。クックックッ……!

 

 

「フッハッハッハッハ!!」

 

 

「「ッ!?」」

 

 

道を歩いていると、背後から大笑いが聞こえた。振り返るとそこにはライオンのような顔をした獣人が腕を組んでいた。

 

2メートルを越える巨体に、厳つい顔つき。鋭い爪は肉体を一刀両断できてしまうくらいでかい。

 

 

「噂になっているのが、こんな小僧だと? ハッ、魔王もさほど強くなかったのだろうな!」

 

 

「何だテメェは……」

 

 

「フン、貴様が俺様の名を知るのはこのゲームが終わってからだ」

 

 

気が付けば何十人もの獣人に囲まれていた。どうやら集団リンチでもするらしい。

 

 

「ゲームで優勝するのはこの俺……その時に、よく名前を聞くがいい!」

 

 

「あー、どうでもいいけどよぉ」

 

 

獣人の言葉を全く聞かない大樹はガリガリと頭を掻きながら答える。

 

 

「負け犬がよく言うセリフだぞ、それ」

 

 

ブチィッっと獣人のこめかみから聞こえた。

 

 

フッ……

 

 

獣人は一瞬で姿を消し、大樹の背後を取る。

 

 

「死んでろ」

 

 

たった一言。獣人は告げた瞬間、

 

 

ドゴンッ!!

 

 

獣人の腹部に大樹の回し蹴りがめり込んだ。

 

 

「「「「「は?」」」」」

 

 

周りにいた配下の獣人たちがポカンッとなる。

 

 

ドゴオオオオオオオオォォォン!!

 

 

ワンテンポ遅れて遠くから衝撃音が轟く。配下の獣人たちがそちらの方を向くと、民家を何件も破壊し、遠くで白目を剥いてダウンしている獣人が見えた。

 

ポキポキと手を鳴らす大樹に配下の獣人たちは状況をやっと理解した。

 

 

「よし、持ってる衣装全部出せ。死にたくなければ、な?」

 

 

「「「「「———ははぁ!!」」」」」

 

 

獣人たちは片膝を地に着き、持っていた衣装を大樹に献上する。高速手のひら返しである。

 

 

「何だ……これは……?」

 

 

だが、献上した衣装に大樹の機嫌が斜めになった。

 

 

ドゴンッ!!

 

 

「黒ウサギにとら〇ラ!の〇河のコスプレができるわけねぇだろうがあああああァァァ!!」

 

 

「「「「「ギャアアアアァァ!?」」」」」

 

 

大樹の怒りの拳が炸裂。配下の獣人たちは一撃でやられてしまった。

 

 

「よ、よく分かりませんが理由は怒った何でしょうか? いえ、やっぱり―――」

 

 

「巨乳じゃダメなんだ」

 

 

「———聞かなくて……そんな理由だと思いましたよ……」

 

 

呆れられた。俺、悪くないよね?

 

 

「衣装は結構集まったけど、これじゃ俺の究極のエロスには辿り着けないな」

 

 

「お願いです。慈悲を」

 

 

「ノー」

 

 

「大樹さんの鬼畜!!」

 

 

ひどい。

 

 

「何だ? マニアックなプレイでも強要しているのか?」

 

 

「ッ!?」

 

 

ドゴオオオオオオオオォォォ!!

 

 

強烈な一撃が大樹の背中にぶつけられた。大樹は道を盛大に破壊しながら転がってしまう。

 

 

「い、十六夜さん!?」

 

 

大樹を蹴り飛ばしたのは十六夜。ニヤリと笑いながら黒ウサギと向き合うが、

 

 

「今だぜお嬢様!」

 

 

「しまっ———!?」

 

 

十六夜の呼びかけに黒ウサギは失態を犯したことに気付く。十六夜の狙いは———飛鳥の【威光】だ。

 

飛鳥の独り言は攻撃に含まれない。聞いた声が攻撃になることはないゲームの穴を知った十六夜たちは、次々と敵を撃破してきた。

 

このままだと飛鳥の命令を聞けば確実に攻撃を受けることにだろう。耳を塞ぐも、飛鳥が大声を出せば、少しでも聞こえてしまえば、黒ウサギたちの敗北は決定する。

 

屋根の上に登った飛鳥は大声を出す。

 

 

「『おっぱぁあああああああああああああああああいッ!!』———ちょっと!?」

 

 

黒ウサギの耳に飛鳥の声が届くことはなかった。

 

街全体に響き渡るくらいの大声。当然大樹の声だ。

 

黒ウサギは急いで大樹の所へ逃げて向かう。滅茶苦茶行くのは嫌だったが、仕方ない。

 

 

「チッ、やっぱりアレじゃダメか」

 

 

「『ちっぱぁああああああああああああああああいッ!!』———うるさいわよ!?」

 

 

「お嬢様! まずは大樹を潰すのが先だ!」

 

 

「『ロックバ〇タァァァアアアアアアアアアアア!!』———黙らせるわ」

 

 

流石にうるさすぎた。飛鳥はギフトカードを取り出し、キレる。

 

 

「ディーン」

 

 

ドゴンッ!!

 

 

ワインレッドの輝きと共に姿を見せた赤き巨兵。鋼の巨人が地を揺らしながら街に降り立つ。

 

 

「でけぇええええええええ!?」

 

「何だアレ!? 反則だろ!?」

 

「潰されるぞぉおおお!?」

 

 

近くにいた他の参加者たちが一斉に逃げ出す。ディーンの肩に乗った飛鳥はそんなことは気にせず、満面の笑みで命令を下す。

 

 

「あの変態を潰しなさい」

 

 

「おぉう……完全にキレてるぞお嬢様が」

 

 

振り下ろされる拳。黒ウサギが悲鳴を上げるが、大樹は雄叫びを上げた。

 

 

「うおおおおおおォォォ!!!」

 

 

ドゴンッ!!

 

 

ディーンの巨大な拳と何百倍も小さい大樹の拳がぶつかる。結果は目に見えているような光景だが、大樹は簡単に覆す。

 

 

「———おおおおッ、しゃあッ!!」

 

 

ガゴンッ!!

 

 

大樹はディーンの拳を弾き返した。

 

弾き返されたディーンの体はよろけ、バランスを崩した。

 

 

「嘘でしょ!?」

 

 

ありえない光景に飛鳥は目を見開いて驚愕する。振り落されないように必死にディーンにしがみついた。

 

しかし、仲間がピンチでも十六夜は笑っていた。

 

 

「やっぱ面白れぇよ、大樹!」

 

 

「そりゃありがとうッ!!」

 

 

ドゴオオオオオオオオォォォ!!

 

 

規格外な力のぶつかり合い。二人の拳圧は暴風を生み出し、衝撃波が一帯を襲う。

 

 

ドゴンッ!! ドゴンッ!!

ドゴオオオオオオオオォォォ!!

 

 

街を破壊しながら常識じゃ考えられない戦いを繰り広げる二人。巻き込まれた他の参加者たちが次々と失格になっていく。

 

 

「刀は使わねぇのかッ?」

 

 

「正々堂々、真正面から叩き潰してやるッ!」

 

 

「後悔するなよッ!!」

 

 

さらに戦いがヒートアップ。飛鳥のディーンが介入する隙など、どこにもなかった。

 

 

「さぁて、発声練習もやったし……本番行きますか。黒ウサギ! 耳をちゃんと塞いでいろよ!」

 

 

「え?」

 

 

何がやりたいのか理解できない黒ウサギ。構わず大樹は十六夜から距離を取り、スゥっと息を大きく吸い上げた。その行動に十六夜は顔をしかめ、すぐに飛鳥の所に戻る。

 

 

「耳を塞げッ!!」

 

 

「きゃッ!?」

 

 

十六夜は飛鳥を抱き上げて大樹から逃げるように走る。

 

大樹は目をカッと見開き、吐き出した。

 

 

「喝ッッ!!!!」

 

 

ドゥンッ!!!!

 

 

ビリビリと鼓膜が破けてしまうかのような大音量。黒ウサギはギリギリ耳を塞ぐことができ、鼓膜を破ることはなかった。

 

大樹の声だけで参加者が大幅に減少。ごくわずかにまで削られてしまった。

 

 

「こ、声だけで……!?」

 

 

「少しの攻撃だけでいいからって、アレ反則だろッ」

 

 

驚きを隠せない飛鳥に十六夜は冷や汗を流した。大樹は満足げな表情でニッと笑い、

 

 

「かはッ!!」

 

 

吐血した。

 

 

「大樹さんッ!?」

 

 

「ご、ごふッ……しまった……大き過ぎて……喉が……死んだ……!」

 

 

「もうフォローできない!? お馬鹿!」

 

 

もう声の攻撃が来ないことが分かった十六夜は、自分の声が届く所まで近づく。

 

 

「やるじゃねぇか。今の攻撃は焦ったぜ」

 

 

十六夜の答えを返そうとするが、大樹は喉の異変に気付き、黒ウサギにボソボソと耳打ちする。

 

 

「えぇ……」

 

 

聞いた位黒ウサギの表情は相当嫌そうな顔をしていた。

 

 

「『ここからが本気』だそうです」

 

 

「……喋れねぇのか?」

 

 

「極力喋りたいくないそうです」

 

 

「……お嬢様」

 

 

「『おっぱごばはあああああああああああああッ!?』———大惨事になったわね」

 

 

「きゃあああああァァァ!? 大樹さん!?」

 

 

飛鳥が喋りだそうとした時、大樹は大声を出して盛大に血を吐き出した。喉は本当に駄目になっているらしい。

 

 

「そろそろ終わらせるぜ黒ウサギ」

 

 

「くッ」

 

 

「絶対に見せないそのスカートの中、頭を突っ込んで見てやる!」

 

 

「こっちもお馬鹿!?」

 

 

「スカートに顔を突っ込むだと? ハッ、ぬるい!」

 

 

口から血を流しながら大樹は堂々と告げる。

 

 

「俺ならそのままスカートに突っ込んだあと―――」

 

 

ブシャッ

 

 

「———ぐぅ」

 

 

興奮のあまりに鼻血まで出す始末。結局最後まで聞くことができなかった。

 

 

「何をする気ですか!? 一体黒ウサギに何をするつもりなのですか!?」

 

 

「さ、さすが大樹……それはさすがに俺でも無理だ……!」

 

 

「あの十六夜さんが恐れている!? というか聞こえたのですか!?」

 

 

もちろん十六夜は聞こえていない。黒ウサギを冗談を言ってからかっているだけだ。

 

だから十六夜は気付かなかった。大樹が走り出そうとする行動に。

 

 

「ッ!?」

 

 

「気付くのが遅い!」

 

 

ダンッ!!

 

 

光の速度で十六夜と飛鳥の背後を取る。十六夜は急いで振り返るも、

 

 

「必殺!!」

 

 

大樹は叫ぶ!

 

 

 

 

 

「飛鳥のファーストキスは十六夜が奪いましたああああああァァァ!!」

 

 

 

 

 

「やりやがったな外道があああああァァァ!!」

 

 

 

 

 

十六夜が大樹の首に絞めかかろうとするが、大樹の手が邪魔をする。

 

 

「どっちが外道だよ!? 催眠術に掛かっているからってキスする鬼畜野郎はお前ぐらいだ!」

 

 

「汚ねぇぞ大樹! これがお前のやり方かぁ!!」

 

 

「勝てばいいんだよ勝てば! これが俺様のやり方だぁッ!!」

 

 

「だったら俺も使わせてもらうッ!!」

 

 

十六夜は叫ぶ!

 

 

 

 

 

「大樹は寝ている黒ウサギの胸を揉んでいたことがあるッ!!」

 

 

 

 

 

「大嘘ついてんじゃねぇぞ外道があああああァァァ!!」

 

 

 

 

 

一撃必殺の威力を誇る大樹の蹴りが十六夜に向かって連打で放たれる。十六夜は全て見切り、華麗に次々と避ける。

 

 

「さらに罰ゲームでお嬢様のパンツを頭に被ったことだってある!」

 

 

「ね――――――――――――――――よッ!!」

 

 

「本当は巨乳が好きだとあの三人には言えないだろ!」

 

 

「違う。俺はおっぱいそのものが大好きなわけであってだな」

 

 

「変態の言うことは違うな! さすが風呂を覗いたことだってある奴だぜ!!」

 

 

「それは未遂だろうがッ!!」

 

 

「かかったな!!」

 

 

「やりやがったなクソッタレがあああああァァァ!!」

 

 

その時、空気が凍った。

 

 

「座れ」

 

 

冷徹な一声に、俺と十六夜の言葉が止まった。

 

飛鳥の瞳に光は無い。まるで俺たちを醜い姿をした芋虫でも見るかのような目だった。

 

【威光】が使われていないのに、俺たちの身体はゆっくりと地面に正座をして震えた。

 

 

 

 

※ここから先は箱庭の都合により、書くことが許されません。

 

 

 

 

~ 説教後 ~

 

 

 

 

「「はい、絶対にしません」」

 

 

完全にテンションが沈んだ大樹と十六夜。二人の目は死んでおり、飛鳥という魔王に怯えていた。

 

説教なんて言葉じゃ生ぬるい。拷問より酷いモノを見た。

 

さすがの黒ウサギもやり過ぎだと同情する。頬が引きつっていた。

 

 

「それじゃあ大樹君。『そのまま正座していなさい』」

 

 

「しまったぁああああああああああ!?」

 

 

大樹の体はガッチリと地面に固定されてしまう。どんなに力を入れても動きそうになかった。

 

 

「逃げろ黒ウサギ!!」

 

 

「おいおいそれは違うだろ! もうルールは忘れたのか!?」

 

 

十六夜の言葉に俺と黒ウサギは嫌な顔をした。ペアでの行動は絶対。黒ウサギは俺から距離を取り過ぎることはできない。

 

 

「ッ———!!」

 

 

「『黙りなさいッ!!』」

 

 

ガチンッと歯を鳴らしながら俺の口は閉じてしまう。これで叫ぶことも封じられた。

 

十六夜が黒ウサギに攻撃を仕掛けるが、黒ウサギも負けていない。自慢の脚力で十六夜から逃げる。

 

しかし、長くは続かない。飛鳥はディーンを操り、黒ウサギの進路を塞ごうとしている。飛鳥の命令を聞けば、俺たちは終わる。

 

 

(どうする!? このままじゃ……!)

 

 

体は動かない。どんなに力を入れてもビクともしない。

 

焦る気持ちが抑え切れず、冷静な考えができない。

 

 

(こうなれば―――ッ!!)

 

 

大樹はもっとも効率の悪い手段を取った。

 

 

「お嬢様! 挟み撃ちだ!」

 

 

「ええ!」

 

 

ディーンの大きな巨体が黒ウサギの進行方向を塞ぐ。すぐ後ろからは十六夜が追いかけて来ている。

 

黒ウサギはどこかに逃げようとするが、ディーンの驚異的リーチの長さ、十六夜の身体能力の前では不可能に近い。

 

 

「ッ……!」

 

 

黒ウサギも【ノーネーム】の最強問題児である二人の前では勝てない。負ける覚悟をしたその時、

 

 

「させるかよッ!!」

 

 

「なッ!?」

 

 

十六夜の背後を大樹が取った。

 

大樹は勢い良く体を回転させ、回し蹴りを十六夜にぶつける。

 

 

ドゴンッ!!

 

 

通常では考えられない衝撃波。耳を(つんざ)くような鋭い衝撃音が轟いた。

 

十六夜の体は吹っ飛ばされ、ディーンにぶつかり、ディーンの巨体も後ろに倒れた。

 

あまりの無茶苦茶に飛鳥は驚くしかない。十六夜は笑っているが、不可解なことに黒ウサギも驚愕していた。

 

ずっと疑問になったことを飛鳥は叫ぶ。

 

 

「どうして動けるのよ!?」

 

 

「解いた!」

 

 

「どうやってよ!?」

 

 

________________________

 

 

 

動けなくなった大樹はまず息を止めた。

 

苦しくなっても止め続け、止め続け、止め続け……止め……つ、づ……け……。

 

 

ガクッ

 

 

首がガクンっと落ち、動かなくなった。

 

 

 

 

 

―――この時、大樹は気を失っていた。

 

 

 

 

 

正座していた体は前から崩れて地面に倒れる。頭を勢い良いよくぶつけるが、起きる気配は全くない。

 

数十秒後、大樹の体に変化はあった。

 

 

「———ハッ!?」

 

 

気が付いたのだ。

 

時間は早かった。意識を取り戻した後は、必死に失った空気を取り戻すために深呼吸を繰り返す。

 

そして飛鳥の【威光】が効力を無くしていることを確認。体は自由に動けるようになっていた。

 

飛鳥のギフトは謎が多い。それでも俺の意識に干渉しているのではないかと考えた。ならその意識を一度落とせば消えるのでは? そういう結論に辿り着いた。

 

 

「俺の究極のエロスの邪魔をすんじゃねぇよ……!」

 

 

そして次の瞬間、大樹は十六夜の背後を取ったのであった。

 

 

________________________

 

 

一連の出来事を聞いた三人は言葉を失った。

 

人の意識を奪うには両頸動脈の圧迫や精神から来るショックなどなど、様々な方法や事例がある。

 

だが、息を止めただけで意識を奪うことはできるのか?

 

確か医学的にできると言えばできる。しかし短時間で己の意識を奪い、すぐに意識を覚醒させるなど、普通じゃない。ショックで死ぬ可能性だってある。

 

そもそも、自分の意識を刈り取る時点で常識を踏み外している。

 

 

「ば、化け物よ……大樹君、お願いだから止めて欲しいわ……」

 

 

「新しい止め方をされてしまった!?」

 

 

嫌いなワード『化け物』からの『心配される』は新しい境地だった。心が痛い。

 

 

「だが安心しろ。これは俺の技のようなモノだからな。まだまだ未完成だけど」

 

 

大樹は拳を握り絞め、十六夜たちに立ち向かおうとする。

 

その時、

 

 

『残り時間、30分となりました!』

 

 

サンドラの声が街に響き渡った。大樹と十六夜は同時に焦る。

 

 

「やべぇ!? こっちはガーターベルトとメイド服しかねぇぞ!」

 

 

「しまった!? こっちはナース服しかねぇぞ!」

 

 

((まともな服が無い……))

 

 

予想できていた範囲だが、これは酷過ぎないだろうかと『(被害者)』の黒ウサギと飛鳥は思う。

 

 

「ナース服……だと……!?」

 

 

「メイド服……だと……!?」

 

 

「あ、大樹さんと十六夜さんの目がやばいです」

 

 

大樹と十六夜は互いに問う。

 

 

「ナース服に注射器はセットされているのか!?」

 

 

「メイド服のスカートの丈は短いのか!?」

 

 

そして、両者は頷いた。

 

 

「「交換だ」」

 

 

「もうこの問題児たちは嫌なのですよおおおおおォォォ!!」

 

 

「絶対にやめなさい!?」

 

 

大樹は想像する。黒ウサギが年上の女性の雰囲気を纏ったナース服で注射してくれる姿を。

 

十六夜は想像する。短いスカートを穿いて顔を真っ赤にしながら接客する姿を。

 

 

ガシッ!!

 

 

男の友情は、固く結ばれた!

 

 

 

________________________

 

 

 

「ナース服♪ ナース服♪ あなたもわたしもナース服♪」

 

 

「おぞましい歌を歌わないでくださいよ……」

 

 

完全にやる気がない黒ウサギ。あんなに楽しみにしていたのに、何が起きたのだろうか?(すっとぼけ)

 

あとはこのまま会場に帰り、黒ウサギにナース服を着せれば―――

 

 

バシッ

 

 

「え?」

 

 

俺の手元からナース服が消えた。

 

一瞬、黒ウサギが取ったかと思ったが違う。黒ウサギも無くなったことに驚愕している。

 

 

「ヤホホ! これは私たちが頂いて行きます!」

 

 

「さすがに油断しすぎだっての!」

 

 

カボチャのお化けのような姿をしたジャック。パンプキンの頭にはアーシャが乗っている。

 

二人の姿はだんだんと小さくなる。はやく追いかけなければ見失ってしまう。

 

 

「だ、大樹さん!? 追いかけ―――」

 

 

「キレそう^^」

 

 

「絶対にキレていますよそれ!?」

 

 

大樹は鬼の形相で呟いた。

 

 

「アイツら埋める」

 

 

黒ウサギは今日一番、ゾッとした。

 

大樹はギフトカードから刀を取り出し抜刀。一切手加減は無く、容赦はしない。

 

 

ダンッ!!

 

 

大樹は音速で走り出しジャックを追いかける。その速度はジャックにすぐに追いつけてしまうほど。

 

次に大樹は跳躍し、ジャックの真上を取る。

 

 

「今日だけ限定式、【一撃必殺の構え】」

 

 

「「ッ!?」」

 

 

突如現れた大樹にジャックとアーシャは驚愕。反応できない。

 

 

「【埋埋埋殺殺殺斬(3回埋めて3回斬り殺す)】」

 

 

「読めないうえに意味が分からない!?」

 

 

ドゴンッドゴンッドゴンッ!!

 

ドゴオオオオオオオオォォォ!!

 

 

連続でジャックの体に斬撃が叩きこまれた。ジャックの体は音速で地面に叩きつけられる。

 

その衝撃は凄まじく、街の中に巨大な穴が開くほどの威力だった。

 

 

「あぁ……復興した街が滅茶苦茶なのですよぉ……」

 

 

【ペルセウス】が泣きながら作業する光景。黒ウサギは安易に想像できた。

 

ボロボロになった民家や地面から盗まれたナース服を取り返す。

 

 

「よし、あったぜ!」

 

 

ただし、ボロボロに無残な姿になった衣装を。

 

 

「( ゚Д゚)……ハハッ」

 

 

手加減を間違えた。

 

修復? できるわけがない。

 

 

「アァ……(゚Д゚ )」

 

 

ナース服は、死んだ。

 

 

「あああああああああああああああああああああァァァァァ!!!」

 

 

「大樹さんが壊れたッ!?」

 

 

ああああ! あああああ! あああああああ!

 

 

「ナース服ぅ……! ナース服がぁ……!」

 

 

「こんなに落ち込んでいるにも関わらず、ここまで慰める気が起きないのは初めてですよ」

 

 

制限時間は残り10分。もう時間が無い。

 

その時、背後にあった瓦礫が動いた。

 

 

「ヤホホ……これは参りましたね……まさかここまで強くなっているとは」

 

 

「じゃ、ジャックさんがいなかったら死んでたわアタシ……」

 

 

ジャックが瓦礫を退かしながらアーシャと一緒に脱出して来た。

 

刹那、ジャックの体が消えた。

 

 

ドゴオオオオオオオオォォォ!!

 

 

境界壁の岩壁から爆音が轟く。砂煙が盛大に舞い上がり、巨大な亀裂が走った。

 

大樹は音速を超える速度でジャックの頭を掴み、そのまま壁にぶつけるという容赦の無い一撃が炸裂した。

 

 

「ナース服出せ」

 

 

「や、ヤホホ……少しばかり執着心が高過ぎるのでは?」

 

 

それでもジャックは無傷だった。聖人ペテロに烙印を押されし不死の怪物。その強さは伊達じゃない。

 

 

「ナース服を手に入れるためなら……俺は死んでも生き返る!」

 

 

「不死の私でもビックリな答えですね……」

 

 

ジャックは「これは難しそうですね……」と小さな声で呟いた後、両手に二つの宝箱を取り出した。

 

 

「私たちの目的はナース服を消滅させること。優勝候補だったあなたは、狙われていたのですよ」

 

 

「チッ、やっぱり気付かれていたか」

 

 

「ヤホホ、あの問題児から情報提供されましてね。ナース服はどうも見逃せませんでした」

 

 

ご機嫌に笑うジャックに対し、大樹は鬼の形相で睨んだ。というか俺たちは十六夜たちに売られたのかよ。

 

 

「ヤバい。ジャックさんが何言っているのか分からねぇ」

 

 

「アーシャさん。黒ウサギもずっと分かりません。だから安心してください」

 

 

「ヤバい。全てを悟って目が死んでいるウサギもいる……」

 

 

地上にいる唯一のツッコミ担当もおかしくなっていた。

 

 

「あなたを脱落させるのに失敗した今、白旗を上げるしかありませんね」

 

 

「白旗だと?」

 

 

「ここに2つの衣装があります」

 

 

ジャックはカボチャの目の瞳を光らせる。

 

 

「どちらかを差し上げるので見逃してはくれないでしょうか?」

 

 

「ナース服によるな」

 

 

「ナース服はもうありません」

 

 

「交渉決裂。死んでくれ」

 

 

「片方は普通の衣装ですが、もう片方には———」

 

 

ジャックは大樹が殴る前に告げる。

 

 

「———裸エプロンが入っています」

 

 

ピタッ

 

 

大樹の拳が止まった。

 

驚愕の表情に染めた大樹は震える唇を動かす。

 

 

「裸エプロン……だと……!?」

 

 

「なッ!?」

 

 

ウサ耳で聞こえた不穏な言葉に黒ウサギは顔を真っ赤にした。

 

 

「絶対にダメですよ!? それだけは絶対にダメですからね!?」

 

 

「……馬鹿かお前? 俺は究極なエロスを求めているんだ。そんな単純なエロなんて、興味ねぇよ」

 

 

「そう言いながら宝箱を握るのはやめてください!?」

 

 

「黒ウサギ。俺はオススメしないが、エプロン無しでもいいぞ?」

 

 

「それもう裸じゃないですか!?」

 

 

「制服エプロンでもいいんだが、制服がないからな……仕方ない、裸エプロンにしよう」

 

 

「何も妥協されていませんよ!?」

 

 

「裸エプロンの方が防御力が高いかもよ?」

 

 

「薄いですよ!?」

 

 

「ハゲてねぇよ!」

 

 

「何の話ですか!?」

 

 

「さぁどちらかを選んでください」

 

 

ジャックの問いに俺はゴクリッと唾を呑み込んだ。

 

究極の選択を目の前にした大樹は全く選べずにいる。それをジャックは楽しむように見ていた。

 

大樹は拳をグッと握り絞め、ついに答えを出す。

 

 

「お前倒して両方貰うわ☆」

 

 

「ちょっ―――!?」

 

 

この後、ジャックとアーシャは失格になった。

 

 

 

________________________

 

 

 

「絶対に着ません!」

 

 

「はぁ!? じゃあ裸で出場するって言うのかよ!?」

 

 

「違いますよ!?」

 

 

断固拒否し続ける黒ウサギ。既に生き残った者たちは裏方で着替えを済まし、準備している。

 

更衣室でずっと裸エプロンの良さを熱弁しているのに効果が全くない。

 

 

「お前はだんだん裸エプロンを着たくな~る」

 

 

「洗脳しないでください!?」

 

 

時間が無い。このまま究極のエロスを披露できない。

 

その時、大樹の頭に熱が一瞬だけ走った。

 

 

「ッ———!」

 

 

待て。俺は何をしている?

 

俺の手に入れた究極のエロスは裸エプロンじゃ伝えれないことに今更気付いてしまった。

 

 

ドサッ

 

 

己の愚かさに、絶望した。

 

 

「裸エプロンじゃ……駄目なんだ……!」

 

 

「ついには脱げと言っているのですか!?」

 

 

「違う……違う! 究極のエロスは肌を露出すればいいってものじゃないんだ!」

 

 

「また不毛な会話が始まりましたよ……」

 

 

「水着だって布の面積を小さくすればエロいってわけじゃない! 考えてみろ! その着ている女性がムキムキのゴブリンのような奴だった時、俺たちはエロく思えるのか!?」

 

 

大樹の言葉通り想像して危うく戻しそうになった黒ウサギ。大樹は少しだけ吐きそうになっていたが、堪えている。

 

 

「否! だったら裸エプロンも同じことだ! 裸エプロンは決して究極のエロスというわけではないんだよぉ! ちくしょうがッ!!」

 

 

そう言って大樹は裸エプロンをゴミ箱の中にダンクシュートを決めた後、ゴミ箱を蹴り飛ばして空の彼方へと飛んで行った。というかその説を逆に捉えるとムキムキのゴブリンが着てもエロく見える衣装―――これ以上はやめよう。

 

 

「ちょっと大樹さん!? もう衣装は無いのですよ!? どうするつもりですか!?」

 

 

「だったら裸エプロン着るのかよ!?」

 

 

「着ません!」

 

 

「クソッタレがぁ!!」

 

 

「キレないでください! 情緒不安定ですか!? 少しは落ち着いてください!」

 

 

「 ( ・_・ ) 」

 

 

「急に落ち着かれるとこっちが困ります!」

 

 

「そうだガーターベルトがあった! 切り札を忘れていたぜ! もうこれだけでいいよ!」

 

 

「結局裸じゃないですか!? 永遠に忘れてください!」

 

 

大樹と口論していると、ハッと黒ウサギは何かに気付く。

 

 

「ジャックさんからもう一つ貰いましたよね!?」

 

 

「あぁ? 裸Yシャツのことか?」

 

 

「どんだけエロにこだわるんですか!? 普通の衣装が入っていると聞いていました!」

 

 

「ハッ、なおさら渡せねぇなそれは」

 

 

「何で!?」

 

 

「普通の衣装だからだよ!」

 

 

「普通がいいんですよ!」

 

 

もういいです!っと黒ウサギは大声を出して会話を止めた。プルプルと体を震わせ怒る黒ウサギ。

 

 

「……ついに黒ウサギは使いますよ。優子さんから教えてもらったこの技を……」

 

 

(一体何を教えたんだよ優子……)

 

 

黒ウサギはカッと目を開き、腕を組んだ。

 

 

 

 

 

()()さんのこと、()()()いになりますよ!」

 

 

 

 

 

「……………」

 

 

「……………」

 

 

「……………」

 

 

「……………」

 

 

「……………」

 

 

「……………」

 

 

「……………寒いな」

 

 

「そんなつもりじゃなかったのですよおおおおおォォォ!!」

 

 

普通に言えよ。もっとストレートによ。ってあれ?

 

ストレートに言うと、嫌われているのか俺?

 

 

「……………」

 

 

「だ、大樹さん? 急に後ろを向いたりして、どうしたのですか?」

 

 

「ど、どうもしてねぇよ!」

 

 

大樹はキリッと黒ウサギに顔を向ける。

 

 

「嫌いになられても、俺はアレだかんな!!」

 

 

「涙流しながら言われましても!? というか本当に効いた!?」

 

 

「うっせ! うっせよバーカバーカ!」

 

 

「ちょッ!? あぁ鼻水が凄い事に!? ごめんなさい! 黒ウサギが悪かったですから!」

 

 

「と、とにかくだ! 衣装を開けてやるよ!」

 

 

「その鼻水まみれの手で触らないでください!」

 

 

代わりに黒ウサギが宝箱を開ける。大樹はティッシュでいろんな液体を拭いた後、中を覗く。

 

 

「こ、これは……また凄い衣装ですね……」

 

 

中に入った衣装は今まで見た中でインパクトがあった。

 

しかし、それは決してエロいモノではない。それは確かだ。

 

だが、大樹は呟いた。

 

 

「……これだ、究極のエロス!!」

 

 

「何てことを言うのですか!? この衣装に失礼ですよ!」

 

 

「頼む着てくれ黒ウサギ! 俺のために!」

 

 

黒ウサギの頭の中で何度も繰り返される。『俺のために!』という言葉が。

 

 

「黒ウサギは……黒ウサギは……!」

 

 

本当に着て良いのか迷ってしまう。着たいという気持ちは強いが———

 

 

「着て欲しいんだ」

 

 

黒ウサギは思った―――

 

 

(あ、この目は……)

 

 

―――大樹の目は黒ウサギではなく、エロスを見ている。最低野郎の目だった。

 

このままだと駄目だ。着ても虚しくなるだけだ。

 

 

「じょ、条件があります……」

 

 

「へ?」

 

 

黒ウサギは、ある条件を出した。

 

 

 

________________________

 

 

 

会場は最高潮の盛り上がりを見せていた。

 

特にレティシアのネコ耳と尻尾を付けたスク水衣装や、飛鳥の顔を真っ赤にしながら罵るメイドがヒートアップしていた。

 

 

「どうだ白夜叉? あえて台本にレベルが高いセリフを書くことでお嬢様の羞恥心を高め、会場に向かって罵倒させる作戦は」

 

 

「神」

 

 

グッと親指を立て鼻血を流す白夜叉。最後は握手をかわした。

 

 

「じゃがもう少し声にドスがあったほうが良いかもしれんのう」

 

 

「なるほど。清楚な令状に口汚く罵られる。いいなそれ」

 

 

「甘いな。俺なら王道のツンデレを目指す。散々言わせた後は小さい声でお礼を言わせようじゃないか。なんなら告白に近い言葉でも」

 

 

「「お前が神か」」

 

 

突如乱入して来た大樹。白夜叉、十六夜、大樹の順で客席に座る。

 

 

「決まったのか? ナース服はよ」

 

 

「何じゃと? おんし、ナース服という低レベルなモノに―――」

 

 

「いや、それから裸エプロンとか手に入れたんだけどな」

 

 

「「「「「え?」」」」」

 

 

観客が全員こちらを向いた。

 

 

「あ、黒ウサギ」

 

 

バッ!!

 

 

コンマ一秒もかからなかった。全員が大樹の指さす方向を見た。

 

 

 

 

 

―――そこにはムキムキのゴブリンのような女性がマイクロビキニを着ているだけだった。

 

 

 

 

 

「「「「「オロロロロ!!」」」」

 

 

もうそれは集団テロ。いや、集団ゲロだった。

 

 

「馬鹿が! お前らなんかに黒ウサギの裸を見せるかよ! うぇっぷ」

 

 

「お前もダメージくらってるじゃねぇか……うッ」

 

 

「オロロロロッ」

 

 

この後、清掃委員がギフトを使って速攻で片付けてくれた。汚してごめんなさい。

 

 

「残念だが、究極のエロスは裸エプロンじゃない。俺は裸エプロンを越えたモノを見つけた」

 

 

「は、裸エプロンを越えた!? 馬鹿な!?」

 

 

「おい大樹。まさか全裸とか言うんじゃないだろうな?」

 

 

「ハッ、十六夜。エロス舐めてんのか?」

 

 

「分かっておらぬ! 全裸じゃ意味がないのだ!」

 

 

「それぐらい俺だって分かっている。だが裸エプロンだろ? 究極に近い代物だというのは分かっているだろ? それをやすやすと越えたのが信じられないんだよ」

 

 

「ムムッ……それはそうじゃが……」

 

 

「この愚か者!!」

 

 

バシンッと十六夜と白夜叉の頬を叩く。黒の女教師を越えた迫力だった。

 

 

「結構痛ぇな……」

 

 

「ぶ、ぶたれた……神なのに……」

 

 

「見せてやるよ白夜叉、十六夜。想像力の先に存在する宇宙を凌駕した本物のエロスを!」

 

 

その時、会場が静まり返った。

 

観客の目は一点に釘付けされ、言葉を失った。

 

舞台に立つのは黒ウサギ。いや、白ウサギだった。

 

 

 

 

 

純白のウェディングドレスを纏った黒ウサギがそこにいた。

 

 

 

 

 

それはあまりの美しさに全男たちが酔った。

 

それはあまりの可愛さに全女たちが頬を赤くした。

 

それはあまりの輝きに、全ての者が見惚れた。

 

顔を朱色に染めた黒ウサギは、とても綺麗だった。

 

 

「……………ハッ」

 

 

一番正気に戻るのが早かったのは白夜叉だった。

 

 

「おんし……これがエロいだと? わたしを失望させるな小僧!」

 

 

「大樹! 綺麗な体のラインが強調され、胸がいつも以上にエロく見える確かだ! でも、エロスは全く足りてねぇぞ!」

 

 

白夜叉と十六夜に怒鳴られる大樹。彼はただ、目を瞑り呟く。

 

 

「レベルの低いエロスだな、お前ら」

 

 

「「何……だと……?」」

 

 

「ここからが、究極のエロスだ」

 

 

その時、黒ウサギが大きなスカートを掴んだ。

 

そしてあろうことか、スカートを上にあげているのだ!

 

 

「「「「「なッ!?」」」」」

 

 

男たちは全員立ち上がり、女は手で顔を隠した。

 

ゆっくりとスカートが上がるにつれて、スラッと綺麗な足が見え始める。

 

 

「こ、これは……!?」

 

 

「まさかッ!?」

 

 

もう鼻から血を噴射させた白夜叉と十六夜が驚愕する。

 

黒ウサギのスカートを上げる手が止まる。そして太股が露わになり、最強のエロスがそこにあった!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガーターベルトだとおおおおおおおおォォォ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白夜叉の驚愕の声と同時に、全観客席から赤い液体が舞った。

 

顔を真っ赤にしながら白のガーターベルトを見せる黒ウサギに、誰もがエロいと感じたのだ。

 

 

「ど、どういうことだ大樹!? 何故俺はガーターベルトがあそこまでエロく見えてしまうんだ!?」

 

 

「黒ウサギのガーターベルトは見慣れたはずなのに……何故じゃあああああァァァ!!」

 

 

鼻から大量の血を出した大樹はニッと笑い、大声で話す。

 

 

「聞け! 究極のエロスを求める愚か者よ!」

 

 

挑発した言葉に全員が顔を向ける。

 

 

「これで分かっただろう! 俺のエロスが本物だと言うことが!」

 

 

だが!!っと大樹は首を横に振った。

 

 

「これは、究極のエロスではないことを覚えておいてもらいたい!」

 

 

「ど、どういうことだ!? 究極じゃないだと!?」

 

 

「白夜叉。俺はここに本物のエロスを見つけて来た。でもな、これは究極にしては駄目なんだ」

 

 

大樹は跳躍して黒ウサギのいる舞台まで来た後、両手を広げた。

 

 

 

 

 

「俺たちのエロスは、終わっていけないからだ!」

 

 

 

 

 

その言葉に、男たちは震えた。

 

 

「エロには星の数以上のエロスがある! 俺たちはその全てを見る目的がある! 究極だけを見て、満足するなんて、何がエロ大王だ! 何がエロ魔神だ! 何がエロ大樹だ!」

 

 

大樹は叫ぶ。

 

 

「究極のエロスを永遠に追い求めることに、意味があるのだろうがッ!!」

 

 

「「「「「ッ!」」」」」

 

 

「肌の露出が少ないウェディングドレスがガーターベルトを着用しただけで、こんなにエロく見えるのだぞ!? 予想できたかお前らは!? この可能性を見抜けたか!?」

 

 

否っと大樹は続ける。

 

 

「できるわけがない! 余裕で分かるんだよ! 何故なら今お前らの顔は血で染まっている! それがエロいモノを見た立派な証拠だ!」

 

 

熱弁する大樹はまだ続ける。

 

 

「そして、今のお前らは醜い! 肌が見えればいい。胸や尻が、パンツがブラが見えればエロいと考えるただのエロ猿でしかない!」

 

 

だが俺は違うっと大樹は宣言する。

 

 

「究極のエロスは存在しない! だが本物はあることを証明した! なら俺がやることは決まっている! 究極のエロスへの秘境、夢は永久不滅の理! 道しるべの無い険しい道を行くこと! いや、宇宙を目指すことだ! そして究極を求め続けることを宣言する! 何故なら―――」

 

 

叫ぶ。腹の底から声を出して伝える。

 

 

 

 

 

「———そこに本物のエロが必ずあると知っているからだッ!!」

 

 

 

 

 

大樹の声が轟く。

 

しばらく観客は黙っていたが、大樹が全エロスを握り絞めた拳を空に向かって突き上げた瞬間、

 

 

「「「「「わあああああァァァ!!」」」」」

 

 

大歓声が巻き起こった。

 

それはエロに対する最高の心構えを見せた大樹を称えた拍手だった。

 

大切なことを教えてくれた者に感謝し、喜びを見せた。

 

 

「黒ウサギ……ここまで酷いギフトゲームを見たのは初めてですよ……」

 

 

大樹コールが鳴りやまない。大樹に拍手喝采が送られる。

 

 

「ふぅ……認める、しかないかのう」

 

 

「ヤハハ、今回は負けだな」

 

 

白夜叉と十六夜は自分の鼻血をティッシュで拭く。

 

 

「満場一致! 審議の必要は無いな! このゲームの勝者は———いや、究極エロスを見つけた最強は———」

 

 

勝利した者の名前を白夜叉は答える。

 

 

「———楢原 大樹!!」

 

 

「おっしゃぁ!!」

 

 

わぁあああああァァァ!!!!

 

 

今宵の宴は、火龍誕生祭で一番の盛り上がりを見せたのであった。

 

 

________________________

 

 

 

「よぉ黒ウサギ。まだエロい恰好していたのか?」

 

 

「ウェディングドレスです! エロくありません!」

 

 

「じゃあ黒ウサギがエロいのか」

 

 

「え、エロくないです!」

 

 

「どうしたエロウサギ?」

 

 

「怒りますよ!?」

 

 

もう怒っているよね?

 

以前十六夜が言っていた。黒ウサギはいじってナンボだと。ちょっと否定できないな。

 

綺麗な街の夜景が見渡せる境界門の城壁の上に俺たちはいた。黒ウサギはあのウェディングドレスを身に纏い、今は見えないがガーターベルトを着用しているはず。おい風。仕事しろよ?

 

そんなことを考えていると、くすりッと黒ウサギは笑った。

 

 

「……何だよ」

 

 

「似合っていますよ? タキシード姿の大樹さん」

 

 

そう、今の俺は黒のタキシードを着ている。これは黒ウサギがウェディングドレスとガーターベルトを着用する条件だった。

 

黒ウサギの微笑みは破壊力抜群。恥ずかしさを隠すために顔を逸らしてしまう。

 

 

「そ、そうかよ。キッチリした服はあんまり好きじゃないんだけどな」

 

 

「大樹さんの性格上、分かります。普段はダメダメですから」

 

 

「ひでぇ」

 

 

「えぇ全くです。酷い人です」

 

 

ですがっと黒ウサギは続ける。

 

 

「優しい人だと、黒ウサギは知っていますよ」

 

 

やべぇ。あまりの可愛さに直視できねぇ。

 

 

「さ、寒いし早く済ませようぜ! 十六夜たちが来たら厄介だからな!」

 

 

「そ、そうですね!」

 

 

と二人で笑うが、会話が止まってしまう。

 

黒ウサギが出した条件、それは———予行練習の『結婚式』だった。

 

 

「先に言っておくが———」

 

 

「はい、予行練習です」

 

 

「———分かってるならいい」

 

 

黒ウサギは嬉しそうに、しかしどこか寂しそうな表情で答えた。

 

ここまでされたらさすがに分かる。というか黒ウサギ、俺のこと好きだと言ったしな。

 

っと思い出しただけでにやけてしまうので考えるのはやめる。今は集中……集中……螺旋丸! 何やってんだ俺?

 

 

(もし黒ウサギの将来の新郎が俺じゃなかったら———)

 

 

あれ? 何だこのモヤモヤは?

 

 

「大樹さん?」

 

 

「ひゃい!?」

 

 

「だ、大丈夫ですか?」

 

 

「す、すまん。緊張してな……」

 

 

な、情けねぇな俺! ひゃいってコミュ障でもここまで酷くねぇぞおい!?

 

 

「安心してください。黒ウサギも緊張しています」

 

 

「お、おう……」

 

 

あらやだ。手を握ってられて安心しちゃったわ。俺、男の子なのに。

 

黒ウサギの手は少し冷たく、小さい。俺は黒ウサギの両手を自分の両手で包み込んだ。

 

 

「なぁ黒ウサギ。予行練習って言うのは……俺の勘違いでいいのか?」

 

 

何故だろうか。俺の勘違いじゃないと、とても嫌だ。

 

まさか俺は黒ウサギを独占したいのか?

 

 

「ッ……えっと、その………!」

 

 

黒ウサギは言葉を何度か濁した後、コクリッと頷いた。

 

あれ? もうゴールしていいの? 凄いな俺。美少女ゲームの主人公並みに凄いよ。

 

さて、今更気付いたんだけど―――結婚式の流れ、全然分からない。

 

神父さん呼んで! もうステイル辺りでもいいから!

 

 

(何を誓う!? 愛すること!? レベル高いな!?)

 

 

頭の中がグルグルと回り、混乱したまま俺は言葉を出す。

 

 

「しょ、生涯を懸けて守り続けることを誓うッ!」

 

 

「ッ!?」

 

 

すごい踏み込んだ俺ええええええェェェ!?

 

もうそれ『結婚して愛し続ける』の同義語じゃねぇ!? 生涯懸けちゃったよ!

 

 

「あ、ありがとう……ございます……!」

 

 

守りたい。この表情。

 

顔を真っ赤にしながらお礼を言われた。前言撤回できねぇ!!!

 

どうしよう。凄く抱きしめたい。この感覚は美琴のツンデレを見た時や、アリアが雷で怖がっている時や、優子の上目遣いを見た時と同じ。だが俺の理性は強固。舌を噛み自制する。口の中、血で溢れかえりそうになったが、大丈夫だ、問題ない。

 

 

「……大樹さん」

 

 

「ッ……!?」

 

 

黒ウサギは一歩前に踏み出し、俺に近づいた。そして俺の顔をしばらく見つめた後、そっと目を閉じた。

 

 

(俺のファーストキスがここで使われる!?)

 

 

ヤバいどうしようめっちゃ可愛い。というか視線が強調された大きなおっぱいに―――じゃねぇ!!

 

駄目だ駄目だ! これは予行練習! 本当にキスしてしまえば———!?

 

 

「黒ウサギ」

 

 

気が付けば、俺は黒ウサギの両肩を掴んでいた。

 

ふぁ!? ちょっと、うぇ!? 俺の体が勝手に動くんだけど!? 抑えろ俺の両腕! 

 

俺の顔と黒ウサギの顔が近づく。唇と唇の距離はダンダンと短くなりってほぉあああああ!?

 

 

ピタッ

 

 

ギリギリ止まった。やばい、あと3センチあるかどうかだわ。

 

……………よし、冷静になった。

 

 

「え?」

 

 

俺は覚悟を決めた。

 

 

「だ、大樹さん!?」

 

 

俺は黒ウサギを抱き締め、顔の頬同士がくっつく。

 

 

「これは予行練習だ」

 

 

 

 

 

そして、大樹は首筋に唇を付けた。

 

 

 

 

 

「ぁッ……!」

 

 

黒ウサギが小さく声を漏らす。

 

数秒の出来事。首筋にキスし終えた後はすぐに顔を離した。

 

 

「悪い。何か……すまねぇ」

 

 

黒ウサギと同じように顔を赤くし、目を逸らしながら大樹は答える。

 

よくおでこにキスをするシーンはある。守ってあげたいという気持ちが強かったりする表れだ。

 

大樹が行った首筋にキスをする。この場合、大樹は独占欲が強いことを表している。誰にも渡したくない。そんな意味が込められている。

 

当然、黒ウサギだけでなく、大樹も知っている。

 

 

「「……………ッ!?」」

 

 

二人は心の中で叫ぶ。

 

 

大樹(何やってんだ俺ええええええェェェ!? 選択肢間違ってるよ!? 前の話までロードロードロードしてぇ! 唇はアウトだと思っていたけど、首はツーアウトだろ!? いやチェンジか!? 俺の馬鹿アホスケベアンポンタン大樹! もう何か―――)

 

 

黒ウサギ(ど、どどどどうしましょう!? 大樹さんなら絶対にしないと思っていたら首筋にされたのですよ!? 意外な行動で胸のドキドキが止まらないのですよ! もう黒ウサギ嬉し過ぎてって違います違います! 今はとにかく―――!?)

 

 

((———死にたい!!))

 

 

二人の顔は超が付くほどの真っ赤に染まっていた。

 

こうして、二人だけの秘密の結婚式(仮)が終わった。

 

その後、二人は全く喋れなかったが、手だけは宿に着くまで放さなかった。

 

 




嘘です。ヒロイン決定は重大ですごめんなさい。

可愛いヒロインたちが多いことはいいことだと思いますが、まさかこんなに自分が苦しんでしまう日が来るとは思いもしませんでした。

とりあえず決定しました。絶対に変えません。もしヒロインが変わるようなことがあれば、それは日本という国が変わる瞬間でしょう。

さて、次回予告です。(今回の話には触れない)


―――史上最強の生物現る。


「いやああああああァァァ!!」

「無理よ。アイツらを倒すには全人類の力を合わせる必要があるわ」

「どけぇ! 殺されるだろうがぁ!!」

「やりましょう。東京エリアは、もう渡しません」


―――それは、最強を越えた最恐。


「何だよ……これ……!?」

「考えたくねぇよ……だって考えただけで俺……!」

「大樹さんッ!?」

「間違いねぇ。これが本当ならアイツのステージは―――!」


次回、『Gの超逆襲 前編』


おい待て。後編も書かなきゃいけないの? ちょっと? おい待———!?

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