どうやら俺はたくさんの世界に転生するらしい【完結】   作:夜紫希

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Hey Hey カオス! 作者のコメントもカオス!

感想も中々カオスになってきている! チェケラッ!!


……最近笑いの神様が降りて来ません。元々降りて来たことがあるのかは不明ですが。


文字数は1万9千となっております。


リアル刑事人生ゲーム

「今からお前らにはゲームをやってもらう」

 

 

「はい?」

 

 

放送で集合をかけられ、集まれば先生の口から出たのはこの言葉。全く理解できず、俺は聞き返してしまう。

 

 

「すいません、遠山の内臓がどうしたと言いましたか?」

 

 

「そんなこと言ってないだろ!?」

 

 

隣に居た遠山 キンジにツッコミを入れられる。はいはい、良いツッコミですね。

 

 

「臓器を交換しないとマジでヤバイって言ったんだ」

 

 

「アンタも言ってねぇこと言うなよ!?」

 

 

「あっそ」

 

 

「そして冷たいなお前!」

 

 

「バカキンジ。話が進まないでしょ、静かにしなさい」

 

 

「俺だけが悪いのか!?」

 

 

神崎・H・アリアに注意されたキンジは俯いて落ち込む。まぁ、頑張れ。

 

 

「先生、あたしたちは大会の片付けがあるのですがいいのですか?」

 

 

そうだ、俺たちは国際武偵競技会アドシアードの片付けをしなければ撃ち殺される。ガチで。

 

俺は火薬庫を吹っ飛ばしたし、反省しながら片付けるという重大な任務が残っている。

 

御坂 美琴の質問に先生は頷きながら答える。

 

 

「あーしなくていいよ。お前ら四人には別のことをやってもらいたいから」

 

 

それと楢原っと先生は俺だけを呼び、手招きしている。

 

俺は戸惑うも、先生に近づく。先生は一枚の紙を取り出し、笑顔で告げる。

 

 

地下倉庫(ジャンクション)の請求書」

 

 

「全力でお手伝いさせていただきます!!」

 

 

脅して来やがりました☆

 

まぁ通帳を使えば返せる額ではあるが、一気に貧乏になるのは嫌である。裕福で駄目な暮らしバンザイ。

 

 

「それじゃあこの部屋で待ってろ。もう一人来るから」

 

 

そう言って先生は退室した。

 

部屋は教室より二回りくらい広い空間だった。何も置かれておらず、正面にモニターがあるだけだ。

 

 

「よぉお前ら! 武藤 剛喜様、ただいま見参だぜ!」

 

 

「チッ」

 

 

「今舌打ちした奴誰だ!?」

 

 

俺じゃないよ? 遠山だよ。

 

 

「というか何をするんだよ。聞かされていないから怖いんだが?」

 

 

「そうね。少し不気味……かしら?」

 

 

「怖かったら俺に抱き付いても———」

 

 

「ありがとう……能力全開で電気を放出するかもしれないけど」

 

 

「———アリアにどうぞ」

 

 

「何であたしなのよ!?」

 

 

「いや、遠山と武藤に抱き付かせるくらいならアリアがいいかと」

 

 

「風穴開けられたいのかしら……!?」

 

 

いやん。

 

 

『パンパカパーーーーーン!!!!』

 

 

「「「「「!?」」」」」

 

 

突如大音量で鳴り響いたファンファーレに俺たちは驚く。正面のモニターに映像が映し出された。

 

 

『やぁ諸君! 僕はこのゲームのマスコットキャラクター、神童(しんどう)・ディアボルティアクルス・リントー・ボルンブルルクス2世だよ!』

 

 

「名前クソ長い上に、クソみたいな名前だな」

 

 

もうクソである。

 

映像に映ったのは二頭身のキャラクター。武偵制服を着ており、目が死んだ男の子が現れた。コイツ、怖いんだけど?

 

 

『気軽に〇ッキーって呼んでね!』

 

 

「「「「「アウト!」」」」」

 

 

『じゃあふ〇っしー!』

 

 

「「「「「アウト!!」」」」」

 

 

『分かったよ……神童君でいいよ……』

 

 

スリーアウト、チェンジする前にOKが出た。何拗ねてんだよコイツ。

 

 

「ねぇ神童君。これから何をするつもりなの?」

 

 

美琴の切り替えの速さに周りは驚くが、本人は気付かない。凄いな美琴。もう呼んでいるよ。

 

神童君はクルクルその場で回った後、一枚のプレートを出した。

 

 

『諸君らには今から、リアル刑事人生ゲームをやってもらうよ!』

 

 

「人生ゲーム……?」

 

 

『成績が好ましくない武藤君にも分かるように説明するね!』

 

 

「うるせぇ!!」

 

 

『ルールは簡単。今から諸君らには高校一年生になった自分を駒にして、ゲームで遊んで貰うよ!』

 

 

プレートをひっくり返し、そこにはルールが記載されていた。

 

〇 1~10の数字が書かれたルーレットを回し、その目に応じて駒を進ませてゴールを目指す。

 

〇 マスに書かれたハプニングや幸福は己の手で掴み取れ。

 

〇 最終金額、職業、経歴で順位を決める。

 

 

なるほど。人生ゲーム(武偵バージョン)というわけか。お金はもちろんだが、職業は警察関連、経歴はどれだけ活躍したのか鍵になるのか。面白そうだな。

 

周りもちょっと面白そうと思っている。まぁ気楽に楽しめそうだ。

 

 

『言い忘れていたけれど、これは学校公認のゲームだからビデオを取るよ! ハメを外し過ぎないようにね!』

 

 

神童君はそう言い残すと、モニターが切り変わった。

 

自分たちをモデルにした駒がスタートに集まり、一直線の道が伸びている。しっかり一つ一つマスがあり、ノリノリなBGMが流れる。

 

 

「クオリティ高いなぁ」

 

 

「そうね。予算の無駄じゃないかしら?」

 

 

アリアの厳しいお言葉に俺たちは何も言わない。うん、ノーコメントで。

 

 

『最初は武藤君! ルーレットを回すよ!』

 

 

「うおッ!? もう始まるのか!?」

 

 

画面に映ったルーレットがグルグル回り、やがて静止する。

 

 

『1』

 

 

「さすが武藤だな」

 

 

「どういう意味だキンジ! いいじゃねぇか! ゆっくりでもよぉ!」

 

 

初っ端から1を出すとか素晴らしい。最下位は武藤だと俺は思う。

 

画面に映った武藤のコマが1マスだけ進む。パネルがめくれ、文が見えるようになる。なるほど、そのマスに止まらないと何が書いてあるのか分からないのか。これは怖いな。

 

 

「さぁて? 何が書いてあるんだ?」

 

 

 

 

 

強襲科(アサルト)に入るも、周囲の人間と大幅に(おく)れを取ってしまい、射撃訓練で足を滑らせて、誤射の銃弾で射殺されて死亡する』

 

 

 

 

 

「「「「「死んだあああァァ!?」」」」」

 

 

嘘だろ!? 早速死人が出たんだけど!?

 

というか後れを取ったぐらいで死ぬの!? しかも訓練中に!? 本物の銃弾を使わないのに何故死んだ!? 

 

奇跡のような死亡事故に画面が真っ赤に染まり『DEAD END』の文字が現れる。酷すぎる。

 

 

パカッ

 

 

「はえ?」

 

 

その時見た、武藤の表情は忘れない。

 

突然床が開き、武藤が落ちて行く。その光景を一生忘れない。

 

最後に武藤は口パクで、言い残した。

 

 

『うそやん』っと。

 

 

ガコンッ

 

 

開いた床が閉まり、静寂が空間を支配した。

 

 

『次は御坂君の番だよ!』

 

 

「やらせれるか!?」

 

 

急いで俺は止めに入る。しかし、神童君は不思議そうな表情をしていた。

 

 

『あれ? みんなどうしたの? 神童君は画面端にずっといるよ?』

 

 

「どうでもいいわ! 武藤はどうした!? 何が起きた!?」

 

 

『何がって武藤君は強襲科(アサルト)に入れたけれど……才能が無かったんだね。一番弱くて、みんなのパシリになって、最後は悪戯っ子の誤射という名のいじめの銃弾が当たってしまったんだ……』

 

 

「可哀想っていうレベルじゃないぞ!?」

 

 

ヤバい。武藤が報われなさすぎて辛い。幸せにしてやりたいんだけど。

 

その時、ガチャッっと閉まっていたドアに鍵が掛けられた。ドアの外から先生の声が聞こえる。

 

 

「今からゴールするまで帰宅禁止だから」

 

 

「最悪だろ!?」

 

 

キンジが必死にドアを叩くも、無意味だった。開きそうにない。ここはブチ破るか?

 

 

『ここで中断したら、武藤が大変なことになっちゃうぞ☆』

 

 

「「「「もうやめてえええええェェェ!!」」」」

 

 

武藤のライフは0よ! 頼むからもう手を出すな!

 

 

「キンジ。ここはやるしかない。俺、武藤を救いたい」

 

 

「奇遇だな。何故か俺も救いたい」

 

 

「あたしもよ。やりましょ」

 

 

「絶対にゴールしてみせるわ」

 

 

俺の言葉にキンジ、美琴、アリアは頷いた。一致団結。力を合わせる時だ!

 

ルーレットが回り、美琴の進むマスが決まる。

 

 

『6』

 

 

中々良い数字だと思う。美琴の駒が6マス進み、パネルがめくれる。

 

 

装備科(アムド)で良い成績を出すことができた! たくさんの報酬金を手に入れる!』

 

 

「よ、よかった……普通のマスだわ……」

 

 

美琴の所持金が一気に増える。よかったぁ……美琴に何かあれば俺はこの学校を許さないから。

 

次はアリアの番だ。ルーレットが回り、数字が決まる。

 

 

『8』

 

 

「良いスタートダッシュじゃない♪」

 

 

大きな数字にご機嫌なアリア。しかし、俺は不安で仕方なかった。

 

アリアの駒が8マス進み、パネルがめくられる。

 

 

『成績が優秀なせいで孤立してしまった!』

 

 

「……………」

 

 

「何て酷いマスなんだ!」

 

 

やめろよ!! 何かアリアのトラウマを抉ってないかコレ!? 容赦ねぇなオイ!

 

 

ポスッ

 

 

その時、天井から黒板消しが落ちて来た。油断していたアリアは避けることができず、そのまま頭に落ちてしまった。

 

 

『―――さらに、いじめを受けて、コミュ力と知名度が低下する!』

 

 

「もうやめてやれよおおおおおおォォォ!!」

 

 

もうその光景に見ていられなかった俺はアリアを抱き寄せた。アリアは抵抗することなく、ただ俺の胸に顔をうずめた。許さない……アリアをいじめた奴ら……埋めてやる……!

 

今度はキンジのターン。どうやら俺は最後のようだ。

 

ルーレットが回り、数字が決まる。

 

 

『10』

 

 

一番大きな数字。しかし、喜ぶことはできなかった。

 

 

「……進み過ぎて死亡する可能性があるじゃないか?」

 

 

「いや、それはないかもしれない」

 

 

キンジの言葉に俺は否定した。

 

 

「いずれ俺たちも通る道だ。あまり過激なことはないと思う」

 

 

「だといいんだが……」

 

 

キンジの駒が10マス進み、パネルがめくられる。

 

 

『成績優秀! 一年生の学年主席になる! そのことは学校全体に広まり、知名度がぐーんっと上がる———』

 

 

「ふぅ、良かったわね。特に酷いマスじゃないみたい」

 

 

美琴が安堵する。俺たちも安心した。

 

 

 

 

 

『―――しかしそれを聞きつけた先輩のSランク武偵に戦いを挑まれ、狙撃される!』

 

 

 

 

 

「「「キンジいいいいいィィィ!!」」」

 

 

「嘘だろ!?」

 

 

三人は同時に叫んだ。普段遠山と呼んでいるのに、何故か今だけ名前で呼んでしまった。

 

運命の瞬間が訪れた。

 

 

パリンッ!!

 

 

窓ガラスが割れ、一発の銃弾がキンジに向かって突き進んでいる。狙いは頭部。確実に殺しに来た弾丸だった。

 

 

「させるかあああああァァァ!!」

 

 

ドンッ!!

 

 

音速でキンジに向かって体当たりをした大樹。大樹とキンジは壁に強く当たるが、銃弾を避けることに成功した。

 

 

ガチンッ

 

 

銃弾は床に当たり、その場に転がった。

 

シンッ……と俺たちは静まる。最初に声を出したのは、キンジだった。

 

 

「俺、生きているのか……」

 

 

「……間に合ったみたいだな」

 

 

「初めてお前が良い奴に見えたぞ……」

 

 

「さ、サンキュー……」

 

 

二人は脱力し、壁に背を預ける。美琴とアリアもホッと安堵の息をついた。

 

 

ピロリンッ!!

 

 

画面に出されていた文字が変わる。

 

 

『Sランク武偵の射撃を見事にかわした! 戦闘成績がぐんと上がり、先輩から金を巻き上げた!』

 

 

キンジの駒の数字が大きくなり、所持金額が増える。というか巻き上げるとか学年主席のやることじゃねぇよ。

 

 

「そ、そうか……やっと理解したぞ……!」

 

 

「どういうことなの大樹?」

 

 

「説明にあっただろ! マスに書かれたハプニングや幸福は己の手で掴み取れってよ! マスに書かれていることは絶対じゃない! 変えることができるんだ!」

 

 

「「「ッ!?」」」

 

 

おかしいと思った! 黒板消しが落ちてからアリアの能力が低下した文が出て来た。つまり、黒板消しを避けていればあの文は出て来なかったんだ!

 

 

「そうと分かれば怖くねぇ! ガンガン進んでやる!」

 

 

ルーレットが回り、俺の進むマスが決まる。

 

 

『4』

 

 

「おい」

 

 

勢いを付けたのにこの数字。微妙過ぎて辛い。

 

俺の駒が4マス進み、パネルがめくられる。

 

 

『語尾に『~ゲス』を付ける。言い忘れると罰金1万円』

 

 

「何コレ」

 

 

『やっほー、説明するよー!』

 

 

画面端でずっと待機していた神童君が現れる。

 

 

『君は今から語尾に「~ゲス」を付けなくちゃらない! 破ると罰金1万円だから気を付けてね!』

 

 

「意味が分からないんだけど!?」

 

 

ブブーッ

 

 

スピーカーから不正解の音が流れた。

 

 

『はい罰金』

 

 

「ちょっと!?」

 

 

ブブーッ

 

 

『はい罰金罰金』

 

 

「ごめんなさいでゲス!!」

 

 

最悪だ! 屈辱だ! 何だこのマス!

 

 

「えっと、頑張りなさい」

 

 

目を逸らした美琴の励ましは、辛かった。

 

 

________________________

 

 

 

順番が5周した。美琴とアリアは順調に進み、優秀な生徒になっている。

 

しかし、男性陣は酷かった。

 

 

 

【遠山 キンジ】

 

所持金 2000円

 

戦闘力 S+

 

知名度 A

 

状況 野宿生活をしている

 

 

 

【楢原 大樹】

 

所持金 — 20万円

 

戦闘力 E

 

知名度 — B

 

状況 変態

 

 

 

ナニコレ。5回マスを進んだだけでこの仕打ちはあんまりだろ。変態って何だよ。

 

 

『チーム結成! 連携は学校内で最高! 成績と戦闘力が上がる』

 

 

美琴の止まったマスの内容は素晴らしかった。一番優遇されている。

 

 

『たった一人で組織を壊滅! 成績と戦闘力がぐんと上がり、多額の報酬金を貰う!』

 

 

未だにソロを続けている学校内最強のアリアの目は死んでいた。何故彼女はあんなに良い立場なのに、俺たちと同じような状況に立たされているのだろうか。

 

 

『裏ランキング1位を倒す! しかし、報酬金は全ての証拠を消すために使ったため、知名度しか上がらない!』

 

 

相変わらずアイツは貧乏だし。あんなに強いのに苦労している。世の中は金なのか?

 

 

『廊下を歩いていると変質者に見間違えられた! 称号が変態大王に変わる!』

 

 

「どういうことでゲス!?」

 

 

俺は徐々に変態度が上がっていた。何故か借金しているし、弱いし。一番駄目じゃん。

 

次は美琴の番。はぁ、また優遇されるのかな?

 

 

『バトルゲーム!』

 

 

今まで無かった展開に俺たちは警戒する。どこだ!? どこから奇襲を仕掛けて来る!?

 

 

『安心してくれ諸君! これは全員で参加するゲームだよ!』

 

 

「全員……?」

 

 

出番じゃない俺たちもってことか?

 

 

『ルールは簡単! 今から1~4の番号とA~Dのアルファベットを選んで武器と対戦相手を決めるんだ!』

 

 

大体察した。つまり良い武器を当てて、弱い敵に勝てと言いたいんだな?

 

 

『敵に負けると今より酷い環境になっちゃうから、ね!』

 

 

「ね!っじゃねぇよでゲス!? これ以上は嫌でゲス!」

 

 

「何か違和感が無くなってきているぞお前」

 

 

あらやだ? そんなにゲスが似合うのかしら?

 

俺たちは番号とアルファベットを決める。俺は『4』と『D』だ。

 

 

『それじゃあ発表するよー!』

 

 

 

《御坂 美琴》

 

武器 レイピア

 

対戦相手 Bランク武偵

 

 

 

《神崎・H・アリア》

 

武器 護身用拳銃 弾は2発

 

対戦相手 Aランク武偵

 

 

 

《遠山 キンジ》

 

武器 アサルトライフル

 

対戦相手 Sランク武偵

 

 

 

「何か凄いでゲスな……」

 

 

まぁ今回はキンジが一番ハズレを引いたようだな。武器は良いけど、相手がねぇ?

 

おっと、最後は俺か。どんな結果だ?

 

 

 

 

 

《楢原 大樹》

 

 

武器 モップ

 

対戦相手 武偵100人(B~Aランクの生徒。Sランク一人含む)

 

 

 

 

 

「嘘だろおおおおおおおおおおおォォォォ!!??」

 

 

モップ!? それ武器じゃないよ!? お掃除道具だから!

 

それに『対戦相手』じゃない! 『対戦相手たち』だから! モップで銃を持った100人とか無理ゲーだろ!? 地味にSランク混ざっているし!

 

 

『はい罰金』

 

 

「ちくしょうでゲスうううううゥゥゥ!!」

 

 

俺の叫び声が合図となり、床がパカッと開いた。

 

 

________________________

 

 

 

「ッ……!」

 

 

頭を(さす)りながらキンジは部屋に戻って来た。既に美琴とアリアは帰って来ている。

 

 

「何あんた? 負けたの?」

 

 

「……そう言うアリアはどうなんだよ?」

 

 

「勝ったわよ。美琴もね」

 

 

「ええ、能力でレイピアを飛ばして勝ったわ」

 

 

やはり負けることはなかったかっとキンジの予想は当たった。

 

 

「相手はレキだったんだよ。勝ちたかったけど……武器がなぁ」

 

 

「へぇ……珍しくやる気を出したのねキンジ」

 

 

「……俺を狙撃したのは、レキだった」

 

 

「「あッ……」」

 

 

美琴とアリアは思う。恐らくキンジと自分の状況が同じだったら、負けたくなかったはずだと。

 

 

「大樹は……まだ勝ってないようね?」

 

 

「さすがに無理じゃないかしら? 武器しか使っちゃいけないのよ?」

 

 

美琴の言葉にアリアは苦笑い。アリアの言う通り、拳や蹴りと言った格闘術は禁止。制限された武器のみで戦わないといけないのだ。そもそも彼の場合は武器ではない。モップである。

 

 

「まぁ頑張って耐えていそうだな」

 

 

キンジの言葉でみんなが笑う。その時、モニターが切り変わった。

 

 

『オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラッ!!』

 

 

画面には運動場で大樹がモップを振り回している映像だった。

 

 

『『『『『ぐはッやられたぁ!?』』』』』

 

 

そして次々と倒れていく武偵たちの姿も映っていた。

 

 

 

 

 

———大樹が、押していた。

 

 

 

 

 

「「「嘘……!?」」」

 

 

ドドドドドッ!!

 

 

一秒で何百と越える銃弾の雨が大樹に向かって放たれる。しかし、大樹は全てを見切り、音速で敵に近づく。

 

 

『モップアタック!』

 

 

『ぐはッ!?』

 

 

『モップブレイド!』

 

 

『ほげぇ!?』

 

 

『モップバスター!!』

 

 

『『『ぎゃあああああァァァ!!』』』

 

 

目を疑う光景に三人は絶句。大樹の異常過ぎる強さに、言葉を失った。

 

本当にモップだけで戦っている。器用に回し、敵の顎や腹部を突いている。

 

 

『モップ……ギャラクシィィィイイイイ!!』

 

 

『『『『『やられたあああああァァァ!!』』』』』

 

 

モップを地面に付けて音速で円を描いて敵を薙ぎ払う。シュール過ぎるが、破壊力は最強だった。

 

 

「……見なかったことにしましょ」

 

 

「ええ」

 

 

「おう」

 

 

________________________

 

 

 

「勝ったぜ」

 

 

「ええ、見たくなかったわ」

 

 

この世界はおかしい。頑張ったのに美琴からお祝いの言葉が貰えなかった。

 

 

『ゲームに勝った諸君はおめでとう! 負けた人はざまぁ!』

 

 

「遠山、あの野郎ぶっ飛ばしていいぞ」

 

 

「奇遇だな。ぶっ飛ばしてやりてぇよ俺も」

 

 

『勝者はこれからのマスは良い方に優遇されやすくなるよ!』

 

 

それは嬉しいことだが、遠山が心配なんだけど?

 

 

『敗者は裏の世界にご案内! いっぱい苦しんでね!』

 

 

「あとは……任せた……」

 

 

「諦めるなぁ!! 武藤の仇を取るんだろうがぁ!!」

 

 

「ッ……そうだった。俺はまだ、負けていねぇ……!」

 

 

何か熱い展開になっているが、本人もノリノリだし別にいいか。

 

そしてゲームが再開。アリアのルーレットが回って数字が決まり、マスを進む。そしてパネルがめくられた。

 

 

『ついに一人だけで大悪企業の陰謀を打ち砕く! 全てのパラメーターが上昇、所持金が2倍に跳ね上がる!』

 

 

優遇され過ぎだろ!? というかアリア、ついに最強ぼっちじゃねぇか! もういい加減にしろよ!

 

今度は遠山の番。一体どんなことが起きるのか……不安過ぎる。

 

キンジの駒が進み、パネルがめくられる。

 

 

 

 

 

『犯罪に置いて魔王と謳われた極悪を撃ち破り、その座を奪う。職業が【裏世界の王】に変わる!』

 

 

 

 

 

犯罪者になりやがったよアイツ!? 完全に闇落ちじゃねぇか! ついに金に目が眩んだよ!?

 

家族や兄弟に謝罪の言葉を並べ続けるキンジは無視し、俺のルーレットが回る。怖い、極限に怖い。

 

駒が進み、パネルがめくられる。いいマスに優遇されるはずと思うが……?

 

 

『ミニスカート着用』

 

 

「だから意味が分からねぇよ!!」

 

 

『はい罰金』

 

 

「もういやでゲスッ!!!!」

 

 

________________________

 

 

 

人生ゲームはかなり進んだ。現在高校を卒業し、それぞれの道を歩んでいた。

 

 

 

【御坂 美琴】

 

所持金 8000万円

 

戦闘力 S

 

知名度 A+

 

装備科(アムド)を学年トップで卒業。現在、犯罪組織に対抗する武器や特殊武装を開発し、世界的に幅広く利用している者が多くなっている。有名な武偵たちが喉から手が出るほど欲しい一品も作り上げている。

 

 

 

【神崎・H・アリア】

 

所持金 一億4000万円

 

戦闘力 SS

 

知名度 S

 

『ソロ』で世界記録を塗り替え、たった一人で全てのミッションを終えるなど数多くの伝説を残し卒業。以後。伝説の武偵として名を残し、世界で大悪組織と激しい抗争をしている。

 

 

 

オーケー、オーケー。オッケー牧場。みんなが言いたいことは分かる。異常だこれは。

 

美琴は順風満帆で素晴らしい人生を過ごしている。文句の一つ無い結果になっている。

 

だがアリアは救われていない。いい加減、誰か一緒に居てやれよ! 友達でもいいからよぉ! もう泣きそうじゃん!

 

 

 

……そして、俺たちは———

 

 

 

【遠山 キンジ】

 

所持金 15億

 

戦闘力 SSS+ (MAX)

 

知名度 ? (危険人物として警察に隠蔽されている)

 

突如姿を消し、裏世界の王になった男。犯罪だけにとどまらず、ついに戦争を起こそうと企んでいる。全世界の警察が恐れる魔王である。

 

 

 

【楢原 大樹】

 

所持金 ― 10億万円

 

戦闘力 E

 

知名度 B

 

学校内の全生徒が恐れる変態。繰り返して来た奇行は数多、反省室に送られた数は百を超えた問題児。卒業後はコンビニでアルバイトを始め、生活している。

 

 

 

———もう訳ワカメ。

 

 

何で武偵だった奴が悪の組織にいるの。何で俺はバイトしているの。そして俺の所持金はキングボ〇ビーにでもやられたのかよ。次の駅どこだよ。

 

 

『バイトをしている途中、致命傷になるような槍が無数に降って来る』

 

 

「おいこのゲーム、学校が公認しているんだよな? 死人が出ていいのか? 嘘だろ?」

 

 

サササササッ

 

 

腕を組みながら降り注ぐ無数の槍を避ける。ちなみにこのような出来事は何十回もすれば慣れます。

 

 

『はい罰金』

 

 

今更借金が11億1000万円になろうがどうでもいいわ。

 

 

「フフッ、簡単に避けてしまうなんて、カッコイイな大樹は」

 

 

「ああ、だけどお前はキモいぜ」

 

 

『はい罰金』

 

 

ヒステリアモードになったキンジに俺はうわぁ……と引いた表情になる。原因は突如マス目で参加してきた白雪とイチャイチャしたからである。まさかの乱入にびっくりしたが、どうやら白雪だけじゃないらしい。

 

 

『ついに借金取り(神)が襲いに来る』

 

 

神!? キングボン〇ーなの!? どんな借金取りだよ!?

 

 

バタンッ!!

 

 

部屋の扉が蹴り破られ、入って来たのは金髪の美少女。

 

 

「りこりん、参上!!」

 

 

「理子かよ!!」

 

 

『はい罰金』

 

 

「借金まみれの女たらしにはキツイお仕置きだね!」

 

 

「はッ、やってみろよ。俺に勝てるならな!」

 

 

『はい罰金』

 

 

「お前はさっきから罰金罰金うるせぇぞ!!」

 

 

『はい罰金』

 

 

「……………」

 

 

「だいちゃんだいちゃん!」

 

 

「その名前はマジでやめろッ!!」

 

 

『はい罰金』

 

 

「そんなに借金しててホントにいいの?」

 

 

「はぁ? 何かいけねぇのか? 徳政令カードは持ってねぇぞ」

 

 

『はい罰金』

 

 

「次の駅に行っても借金は減らないよ?」

 

 

「ゲーム違うだろそれ」

 

 

『はい罰金』

 

 

「んー、じゃあはい!」

 

 

理子が渡したのは一枚のパネル。そこにはこう書かれていた。

 

 

『借金が20億に到達するとゲームオーバー』

 

 

そして、続きには———

 

 

 

 

『ゲームオーバーすると、この学校を退学してもらいます』

 

 

 

 

 

「何だとおおおおおォォォ!?」

 

 

 

 

『はい罰金』

 

 

「ッ!?」

 

 

俺は急いで現在の所持金を見る。

 

 

所持金額 — 19億9000万円

 

 

あ、危ねぇ!! あと一回破ったら終わりじゃねぇか!

 

 

「お前、一体なんてモノを渡しやがるゲスにゃんふにゅーらんらんザマス!」

 

 

「えー、りこりんわかんない☆」

 

 

コイツも舐めてやがるな。

 

 

「そう言えばあんたは、そういう縛りがあったわね」

 

 

「そうだぜ美琴ゲスにゃんふにゅーらんらんザマス」

 

 

「うざいからあまり喋らないで」

 

 

あんまりだ。

 

 

「じゃあねみんな!」

 

 

理子は俺の制服一式を持って退出した。はぁ!?

 

 

「俺の服うううううゥゥゥでゲスにゃんふにゅーらんらんザマスうううううゥゥゥ!!」

 

 

「ホントうるさいわね……」

 

 

アリアにジト目で見られて落ち込む。仕方ない、こんな状況でも褒めて見せよう!

 

 

「俺は控えめな胸はいいと思うぜでゲスにゃんふにゅーらんらんザマス!」

 

 

「風穴あああああァァァ!!」

 

 

おふぁああああああああァァァ!?

 

無理でした。

 

というか今の俺の恰好はミニスカートを穿いた野球選手。手にはスイカが装備されている。ちなみにこのスイカは落とすと所持金が倍の額になる。つまり借金も倍になる。最悪だなオイ。優遇されるポイントとタイミングを間違えていやがる。

 

 

「絶対に……退学にはならねぇでゲスにゃんふにゅーらんらんザマス!!」

 

 

「「「うざい」」」

 

 

はい。

 

 

________________________

 

 

美琴のターン

 

『会社を新たに設立! 株は成功し、所持金が四倍に!』

 

 

アリアのターン

 

『【キミの手】で歌手ソロデビュー! 爆発的ヒット曲になり、所持金と知名度がぐーんっと上がる!』

 

 

キンジのターン

 

『ロシア戦争に勝利! ロシアの領土を支配する!』

 

 

大樹のターン

 

『バイトの同僚の女の子にビンタされる』

 

 

パチンッ

 

 

はい、されました。誰ですかあなた?

 

 

________________________

 

 

美琴のターン

 

『超音速移動旅客機の開発に成功! 報酬金が入る!』

 

 

アリアのターン

 

『可愛い声で人気声優に! あまりの人気の高さに周りからハブられるも、今までの経験を活かしてさらに差をつけることに成功する! 所持金が増え、知名度が上がる!』

 

 

キンジのターン

 

『南アフリカ大陸に自分を崇める宗教を広めて支配する!』

 

 

大樹のターン

 

『電車内でおばさんに痴漢の容疑で疑われる』

 

 

バチンッ!!

 

 

結構痛い。アンタも誰だよ。

 

 

________________________

 

 

大樹のターン

 

『おばあちゃんに拳法を教えてもらう』

 

 

「ほわちゃッ!!!」

 

 

ボギッ!!

 

 

何か折れたような気がする。

 

 

________________________

 

 

 

大樹のターン

 

『おばあちゃんに剣法を教えてもらう』

 

 

「ほぅわぁッ!!!」

 

 

シャキンッ!!

 

 

衣類をズタボロにされました。

 

 

________________________

 

 

 

大樹のターン

 

『おばあちゃんに告白される』

 

 

「あ゛だしはあ゛んさん゛のことがね゛ぇ……す―――」

 

 

「無理ですでゲスにゃんふにゅーらんらんザマス」

 

 

ボゴッ

 

 

グーで殴られた。

 

 

________________________

 

 

 

「もう諦めなさいよ……」

 

 

「それはできないでゲスにゃんふにゅーらんらんザマス」

 

 

「学校やめてもあたしと一緒に外国に戻ってもいいのよ?」

 

 

「ありがたいが諦めないよ俺はなゲスにゃんふにゅーらんらんザマス」

 

 

「……それ、やめてくれないかしら」

 

 

「何度も言うが、俺はこれを言い続けなければ死ぬというわけでゲスにゃんふにゅーらんらんザマス」

 

 

アリアに呆れた目で見られるが、美琴を置いて退学とかできねぇよ!! 美琴がついてくるなら退学するのか俺。

 

 

「お前はまだ一人なのかでゲスにゃんふにゅーらんらんザマス?」

 

 

「死んでも風穴あああああァァァ!!」

 

 

ぎゃあッ!? 相当ストレス溜まっているぞこれ!?

 

アリアの腕の中で死ぬのも悪くないが、豪華な服を着た美琴が小さな言葉を呟いた。

 

 

「……ごめんなさい」

 

 

「美琴は悪くないわよ!?」

「美琴は悪くねぇよでゲスにゃんふにゅーらんらんザマス!?」

 

 

「あんた真面目に返しなさいよ!?」

 

 

「無理でゲスにゃんふにゅーらんらんザマス!」

 

 

俺とアリアは美琴の頭を撫でながら慰める。

 

 

「おいキンジ! お前も何か言えよでゲスにゃんふにゅーらんらんザマス!」

 

 

「……あぁ?」

 

 

あれ? 遠山さん? 勝手に名前で呼んだのは不味かったかにゃ?

 

 

「俺が誰だか知っていて、そんな口を利いているのか?」

 

 

おいまさか……いやいや、よくそんな人がいるけどよぉ!?

 

 

「俺が裏世界の王だと分かってんだろうな!?」

 

 

「救急車ああああああァァァでゲスにゃんふにゅーらんらんザマス!!」

 

 

出たよ! 異常に役に飲めり込む奴! お前、この状況に耐えれないからってそれはねぇよ!

 

そんな争いをしていると、次は俺の番になった。

 

 

『好きな人のパンツを買える。金額は自分で定める』

 

 

頭おかしいじゃないの?

 

 

「美琴!!」

 

 

「ちょっと!?」

 

 

はい、おかしいのは俺でした。

 

いや、もう考えるまでもなく即答できたな。

 

 

『金額を指定してください』

 

 

(あッ、やっべ)

 

 

俺の借金は10億9900万円。次のターンでカバに餌を与えないといけないから51万は残さないと死んじゃう。残りの額を計算して……あれ?

 

 

 

 

 

金額は自由にできるなら、安くてもいいのか。

 

 

 

 

 

『100円』

 

 

 

 

 

「あたしのパンツはそんなに安くないわよ!!」

 

 

「ごめんなさいでゲスにゃんふにゅーらんらんザマス!」

 

 

バチバチッ!!

 

 

電気ショックをくらい、その場に倒れる。ちなみにパネルはひっくり返り―――

 

 

『☆ ★ 嘘 ★ ☆』

 

 

―――ふざけた文字がでてきた。製作者、マジで殺すわ。

 

 

 

________________________

 

 

 

『同人作家と契約する』

 

 

また訳の分からないパネルが出て来たよ……。

 

 

「そういうわけだから私と契約して魔法少女になってよ」

 

 

「お前はどこのキュ〇べえでゲスにゃんふにゅーらんらんザマス」

 

 

現れたのは白い奴では無く、夾竹桃だった。手にはキャンバスが握られている。

 

 

「とりあえず、あなたのそのうざい口癖、やめていいわよ」

 

 

「え? ホントでゲスにゃんふにゅーらんらんザマス?」

 

 

「やめなさい」

 

 

「あ、はい」

 

 

俺が悪いわけじゃないんだけどな……お? ホントに大丈夫みたいだ。罰金って言われない。

 

 

「私の言うことを聞けば、いいことがあるわよ」

 

 

「へぇ……例えば?」

 

 

「徳政令カード」

 

 

「何なりとお申し付けくださいお嬢様!!」

 

 

「変わり身はやッ!?」

 

 

美琴に驚かれるが、ここで借金を全額返すチャンスを棒に振るわけにはいかない!

 

 

「じゃあこの毒……新薬を試しに飲んでくれないかしら?」

 

 

「毒だよな? 今毒って言ったよな? 死ぬじゃねぇのそれ?」

 

 

「大丈夫よ。死んだりしないわ」

 

 

「毒だということは認めるのかよおい」

 

 

「さぁ、グイっと逝きなさい」

 

 

「ヤダぁ! 死にたくないぃ! 完全に字が誤字ってるもん!」

 

 

「てい」

 

 

「おぶッ!?」

 

 

俺は夾竹桃に無理矢理飲まされてしまう。ウォッカを飲んだ時のような、喉が焼けるような感覚に襲われる。

 

 

「jkさふjさうふぉあhfksだkkwt!?」

 

 

「大丈夫なのアレ……」

 

 

「分からない……でも、ヤバイわねアレ……」

 

 

美琴とアリアが顔を青くしながら引いている。大樹は顔を真っ青にして、白目をむいていた。

 

 

「おあhsふぃあhfが……がぁ……………ッ!」

 

 

「あら? 成功かしら?」

 

 

「一体あんたは何を飲ませたのよ……」

 

 

「聞いて驚きなさい、私が飲ませたのは―――」

 

 

美琴の質問に夾竹桃は親指を立てながら答えた。

 

 

「———本気剤よ」

 

 

「どんなモノか分からないのだけど!?」

 

 

「うおりゃあああああァァァ!!」

 

 

突如大樹の大声が響き渡る。大樹は立ち上がり、覚醒した。

 

 

「最強バイト戦士、楢原 大樹、ここに見参!!」

 

 

((うわぁ……面倒なことになりそう……))

 

 

明らかにテンションがハイになった大樹が拳を掲げる。

 

 

「さぁそのまま次の夏コミのネタになりなさい。次は『二人の男が性転換して百合が咲き乱れる恋物語』なの……!」

 

 

「ここまで酷い内容、聞いたことがないわ……」

 

 

興奮しながらキャンバスに鉛筆で絵を描いていく夾竹桃に美琴はドン引き。

 

 

「なるほど。じゃあ遠山とイチャつけということか」

 

 

「……………来るな。待て。お願いだからやめて」

 

 

衝撃な一言に冷静どころか顔を真っ青にした。自分が如何に愚かなことをしていたか自覚するが遅い。

 

 

「安心しなさい。百合と同じよ」

 

 

「できるか!? 頼む俺が悪かった! 許してくれ」

 

 

「百合は素晴らしいの。どうして書かなきゃいけないのか分かるでしょ?」

 

 

「分かるか!!」

 

 

ならっと夾竹桃は怒鳴るキンジを冷静になだめる。

 

 

「逆に考えるのよ。ホモは素晴らしいと」

 

 

「生々しいだけだろ!?」

 

 

「キンジ。俺の借金、肩代わりしてくれ」

 

 

「やめろおおおおおおォォォ!!」

 

 

________________________

 

 

 

「これで契約完了よ。借金は全額返済。変な語尾はいらないわ」

 

 

「サンキュー。助かったぜ」

 

 

鼻血を拭き取りながら夾竹桃は徳政令カードを渡す。大樹はそれを笑顔で受け取った。

 

ちなみに部屋の隅では美琴とアリアが怯え、床にはキンジが倒れている。

 

 

「ここからはあなた自身が運命を変えるコマしか出ないわ。今までよく耐えたわね」

 

 

夾竹桃は言いながら俺に向かって理子に取られた制服を投げ返してくれた。

 

 

「それじゃあ私は続きを書くから。頑張りなさい」

 

 

「お、おう」

 

 

俺のブレザーは返してくれないの? 着ないでこっちに渡せよ夾竹桃。

 

まぁ今の格好より武偵制服が何倍もマシか。超スピードで着替えを済まし、第二ボタンまで開けたカッターシャツを着崩して着用。

 

よし、反撃するとしますか!

 

 

________________________

 

 

大樹のターン

 

『コンビニ強盗に遭遇!』

 

 

「おいッ! 金を出せ!!」

 

 

「テメェの袋に金の球が二つもあるぜ」

 

 

チーンッ!!

 

 

「ごばはッ!?」

 

 

強盗らしき恰好をした武偵生徒の股の間に蹴り上げて撃退。白目をむいていたような気がするが、こんな企画に参加したことを後悔するんだな。

 

 

『見事撃退! 報酬金と知名度が上がる!』

 

 

________________________

 

 

大樹のターン

 

『異世界からの刺客(しかく)が現れた!』

 

 

「覚悟しろ人間共よ!」

 

 

「……何やってんのジャンヌ?」

 

 

「私の名前はジャンフィーヌだ。騎士の誇りにかけて貴様を討つ!」

 

 

銀色の甲冑に身を包んだ美少女、ジャンヌが剣を振り下ろして来る。俺はそれを見切り、音速でジャンヌの背後を取った。

 

 

カチャッ

 

 

「終わりだ」

 

 

銃口をジャンヌの後頭部に突きつけて停止させる。勝負はすぐに決まってしまった。

 

 

「くッ、殺せ!」

 

 

「どこの女騎士だお前は。俺はオークじゃねぇぞ」

 

 

________________________

 

 

 

大樹のターン

 

『紛争に巻き込まれる!』

 

 

ドドドドドッ!!

 

ガガガガガッ!!

 

ガキュンッ! ガキュンッ!

 

 

「余裕だな」

 

 

次々と壁の中から飛んで来る銃弾を簡単に避ける。部屋の床に落ちる弾が増えるだけ。掠ることすらない。

 

 

(なるほど、『ここからはあなた自身が運命を変えるコマしか出ないわ』か。意味通りで助かるぜ)

 

 

つまり、俺のアクションが成功すればするほどいいことは起きる。そんなマスしかでないってことか。

 

こんなハプニング、簡単簡単。人生イージーモードだぜ。

 

 

『紛争地帯を駆け抜けて、ついに脱出! 報酬金をゲットし、知名度が上がる!』

 

 

________________________

 

 

 

順調に課題をクリアしていき、所持金などを増やしていく。気が付けば世界を渡り歩く最強のバイト戦士となっていた。バイト戦士、恐るべし。

 

ジリジリと3位までの距離を縮めていた。そんな時、事件が起きたのだ。

 

それはキンジのターンであった。

 

 

『結婚イベント! ランダムで婚約者を決定する!』

 

 

「「……は?」」

 

 

俺とキンジの声が重なる。しかし、モニターに映ったルーレットは止まらない。

 

ルーレットには俺、美琴、アリアの三人の駒が入っている。おいまさか……待て、やめろ!!

 

 

パンパカパーーーーーンッ!!

 

 

 

 

 

『御坂 美琴』

 

 

 

 

 

「おんぎゃああああああァァァ!!!」

 

 

大樹の大絶叫が響き渡った。両手を頭に抱えて涙を流しながら床をゴロゴロと転がった。

 

 

『はい! 遠山君は婚約者である御坂君の番に結婚式を挙げるよ!』

 

 

「ふざけんじゃねぇぞゴラああああああァァァ!!」

 

 

完全にキレている大樹。これがゲームだということを完璧に忘却している。

 

 

『結婚すれば所持金は合計になるからね! 出番は二人一緒になるから!』

 

 

「遠山ぶっ殺す」

 

 

「理不尽だろ!?」

 

 

『それじゃあ次は楢原君、君の番だ!』

 

 

神童君はケタケタと笑いながら画面の端へ移動して小さくなる。

 

大樹は俯き、呟いた。

 

 

「……このゲームは大体理解できた」

 

 

ルーレットが回る。

 

 

「野蛮だし、滅茶苦茶だし、基本何でもアリなゲームだ」

 

 

『10』

 

 

大樹の駒が10マス進む。

 

その時、キンジが驚愕した。

 

 

「大体予想できるんだよ……この後の展開にな」

 

 

美琴とアリアも気付いた。

 

 

「それにこういうのは、武偵に必要な要素だと思ってたぜ」

 

 

大樹の駒の先に、キンジの駒があることに。

 

 

 

 

 

「美琴は渡さねぇぞ……絶対に!!」

 

 

 

 

 

そして、大樹の駒はキンジの駒があるマスに止まった。

 

 

 

 

 

『決闘チャンス!』

 

 

 

 

 

その時、キンジは超絶嫌な顔をしたそうだ。

 

 

________________________

 

 

 

ルールは不平等なモノだった。

 

決闘する場合、戦闘力の違いでハンデが与えられるのだ。もちろん、強い方にだ。

 

ハンデカードが10枚あり、ハンデの差だけ強者が引くことができる。しかし、その数が異常だった。

 

大樹は最低ランクの『E』。

 

キンジは最高ランクの『SSS+』。

 

開き過ぎた差は、10以上。つまり、キンジは全てのカードを無条件で引くことになった。

 

 

1.Aランク武偵を5人雇う。

 

2.Bランク武偵を10人雇う。

 

3.制限時間を5分にする。タイムアップは引いた者を勝者とする。

 

4.自動迎撃機関銃『フェンリル』をランダムに二機設置。

 

5.監視カメラを全ての範囲に設置。引いた者は閲覧可能。

 

6.フィールドの選択が自由にできる。

 

7.防弾チョッキ、防弾ヘルメットの使用を着用許可する。

 

8.敵の武器を没収する。

 

9.機関銃ガトリングガン等の使用を可能にする。

 

10.Sランク武偵を一人雇う。

 

 

フィールドは学校の廊下の一本道。外に出ることや教室に入ることは許されない。

 

さらにSランク武偵はレキに決定。外からの狙撃は絶望としか言いようがない。

 

機関銃も別棟。校舎の反対側に設置されて、大樹が壊しに行くことは不可能。

 

さらに一本道の廊下には武偵たちがバリケードを築き、大樹を待ち構えている。

 

そしてこれらの障害を乗り越えた後はヒステリアモードのキンジが待っている。

 

最後に、キンジを倒すまで5分で終わらなければならない。

 

 

『以上がルールだよ!』

 

 

「ああ、分かっている。俺は、大樹を殺すしかないんだ」

 

 

実際は殺してはいけないが、気持ちは本気で行かないとやられる。そのことをキンジは一番理解している。

 

 

『彼も強いけど、結果が目に見えているね!』

 

 

「それはどうかな?」

 

 

『え?』

 

 

キンジの言葉にキョトンとなる神童君。モニターには監視カメラの映像、大樹が映っていた。

 

夕日が見える校舎の窓。300メートル先には大樹がいる。

 

キンジは分かっていた。アイツが必ず来るということを。

 

 

 

________________________

 

 

 

 

「まさか素手で戦うとはな……まぁ銃は下手くそだしいいか」

 

 

右手の拳を何度もグッと握り絞める。顔を上げて前を見ればバリケードや武偵が待っているのが見える。

 

窓の外を見ればキラリっと光る機関銃の銃口が見える。レキもいるらしいが、姿を隠しているな。

 

 

「五分か……」

 

 

制限時間があるからには、手加減はできねぇぞ?

 

 

ピピーッ!!

 

 

ホイッスルが響き渡った瞬間、俺は強く踏み込んで走り出した。

 

 

「来たぞッ!! 撃てぇ!!」

 

 

ガガガガガッ!!

 

 

容赦無くアサルトライフルの引き金が引かれる。銃弾の弾幕が俺の目の前で作られるが、

 

 

「今更当たるわけねぇだろ」

 

 

ゴオッ!!

 

 

スピードをさらに加速。銃弾を避けながらバリケードの目の前まで一瞬で移動する。

 

 

「嘘だろッ!?」

 

 

「嘘じゃねぇ……現実だッ!!」

 

 

ドゴンッ!!

 

 

右手の拳一つでバリケードを粉々に吹き飛ばし、武偵ごと薙ぎ払う。

 

たった一撃。無茶苦茶な一撃でAランクとBランクは全て片付けてしまった。

 

 

『ふぁ!?』

 

 

「やっぱりか……」

 

 

神童君は変な声を出しながら驚愕。キンジは予想通りの展開に苦笑いだった。

 

 

『ターゲットを捕捉しました』

 

 

モニターから機械質な音声が流れる。自動迎撃機関銃『フェンリル』が大樹を捉えたのだ。

 

 

「次は狙い撃つ機関銃だッ!!」

 

 

大樹は武偵たちが持っていたアサルトライフルを両手に二丁持ち、窓に向かって構える。

 

 

『凄い! 射撃技術もあるんだね!』

 

 

「いや、アイツにそんなスキルないぞ」

 

 

『えッ……?』

 

 

大樹は二丁アサルトライフルを機関銃に向けて―――

 

 

「いっけえええええェェェ!!」

 

 

 

 

 

―――()()投げた。

 

 

 

 

 

『ええええええェェェ!?』

 

 

バリンッ!!

 

 

投槍のように銃は窓を突き破りながら機関銃に向かって超スピードで突き進む。

 

 

バギンッ!!

 

バギンッ!!

 

 

一瞬で二機の機関銃を破壊。粉々に粉砕された機関銃は使いモノにならなくなってしまった。

 

 

「よし」

 

 

大樹は壊した瞬間を見届け、再び走り出す。

 

 

『な、なな、ななな!? 何なんだ!? 無茶苦茶な!?』

 

 

「それが大樹だ。覚えておけ」

 

 

頭を抱えながら走り回る神童君。キンジは拳銃を取り出し、構える。

 

 

『あ、あなたも何をするつもり!?』

 

 

「アイツと正面から戦っても勝ち目がないからだ。()()()撃ったガトリングガンは絶対に効かないだろうし、最大の策はレキしかいないんだよ」

 

 

ガトリングガンが効かないことに神童君はついに言葉を失ってしまう。そんな人間、もう人間じゃない。Sランク武偵を越えた化け物だ。

 

キンジは通信機を取り出し、狙撃の準備をしているレキに繋げる。

 

 

「聞こえるかレキ」

 

 

『はい、聞こえています』

 

 

「俺が囮になるから隙を見て狙撃してくれ」

 

 

『分かりました』

 

 

キンジとレキは分かっていた。普通の方法じゃ、勝てないことを。

 

だから二人は考えた。大樹に勝てる方法を。

 

 

ダッ!!

 

 

超スピードで迫って来る大樹に向かってキンジも走り出す。

 

 

「勝負だ大樹ッ!!」

 

 

「望むところだぁ!!」

 

 

同時に大樹が音速でキンジに迫る。ヒステリアモードのキンジは大樹の動きをすぐに予測する。

 

右手の拳がキンジの腹部を殴ろうとしていた。必殺一撃。掠りだけでも危ない一撃。

 

キンジは体を捻らせ、大樹の拳を避ける。

 

 

ゴッ!!

 

 

「「ぐぅッ!!」」

 

 

鈍い音が響く。

 

キンジがカウンターとして放った拳は大樹の顎を貫こうとした。しかし、大樹も負けずと反撃を仕掛けた。そのまま向かって来るキンジの拳を頭突きで抵抗した。

 

大樹は額に痛みが、キンジは拳に痛みが襲い掛かって来た。

 

 

「ッ!」

 

 

ガシッ!!

 

 

しかし、戦闘経験が豊富なキンジがこの勝負では上手(うわて)だった。殴ってる拳を広げて大樹の頭を掴む。

 

 

ドンッ!!

 

 

「うおッ!?」

 

 

掴んだ手は下に向かって引き、大樹のバランスを崩した。そのまま追撃の銃弾を―――!?

 

 

ガシャンッ!!

 

 

「なッ!?」

 

 

大樹は左手でキンジの握っていた()()()()()()()()

 

鉄が簡単に粉々にされてしまったことに驚きを隠せないキンジ。同時に大樹はこの銃を狙っていたことが分かる。

 

銃弾が特殊なモノ。睡眠弾ということがバレていた。

 

大樹を無力化する手段を一つ失ったキンジは急いでバックステップで距離を取る。

 

 

「逃がすかッ!!」

 

 

大樹は獣のような動きですぐに体の体勢を元に戻し、キンジに襲い掛かる。

 

 

(かかった!)

 

 

ガゴンッ!!

 

 

 

 

 

大樹がキンジに飛びかかった瞬間、大樹の背後にレキが現れた。

 

 

 

 

 

「なッ!? レキ!?」

 

 

レキが隠れていたのは天井裏。そこから姿を現したのだ。

 

常に大樹は狙撃手がいつも遠くにいると勘違いしている。それを逆手に利用したのだ。

 

 

「私は一発の銃弾―――」

 

 

ギュルルルルルッ

 

 

 

 

レキの手には多銃身機関銃(ガトリングガン)の一種、ミニガンが握られていた。

 

 

 

 

 

「一発どころか百発くらい何だけど!?」

 

 

無 痛(Painless)(gun)———被弾すれば痛みを感じる前に死んでいるという意味が込められた別名を持っている凶銃。そんな銃が大樹に向けられていた。

 

普通なら大樹には当たらない。だが奇襲を仕掛けた攻撃なら———!

 

大樹は急いで振り返るも、ミニガンは既に回転してすぐに銃弾が放たれようとしていた。

 

 

(これなら勝てる―――!)

 

 

キンジは確信した。銃弾はこちらにも飛んで来るが、大樹が先に気を失えばこちらの勝ちになる。

 

 

「残念だったなお前ら。俺の力を甘く見過ぎだぜ」

 

 

大樹は両手を合わせて一つの拳を作る。そして、そのまま地面に向かって振り下ろした。

 

 

「ぶっ壊れろおおおおおおォォォ!!!」

 

 

ドゴオオオオオオオオォォォ!!!

 

 

 

 

 

大樹の拳は、廊下の床を崩壊させた。

 

 

 

 

 

『む、無茶苦茶だあああああァァァ!?』

 

 

「はぁッ!?」

 

 

「ッ!?」

 

 

神童君の絶叫が轟く。崩れる床を見たキンジとレキは目を見開いて驚いていた。

 

以前大樹が床を崩壊させたことは知っている。しかし、ここでまたやるとはさすがに思わなかった。

 

 

ガガガガガギンッ!!!

 

 

足場が不安定になったせいでレキはバランスを崩した。そのせいで狙いを大きく外し、ミニガンの弾丸は壁や天井を削りながらバラバラと当たる。弾丸は大樹やキンジには一発も当たらない。

 

 

「悪いな。反則で俺の勝ちだ」

 

 

普通なら反則負けのはずだが、残念ながらルールは守られている。何故なら『床を破壊してはいけない』とルールには載っていないからだ。

 

大樹は不安定で崩れる足場にも関わらず軽やかなジャンプでキンジに近づく。抵抗できないと思ったキンジは苦笑いで頼みごとを口にする。

 

 

「軽めで……頼む……!」

 

 

「無理ぽ」

 

 

ドゴッ!!

 

 

結構割と本気で腹パンされた。防弾チョッキを着ても、めっちゃ痛い思いをしたキンジだった。

 

 

 

________________________

 

 

 

「はいお湯~」

 

 

『余裕』を『お湯』と言うくらいの余裕を持って勝った大樹。キンジは腹を(さす)りながら大樹と一緒に帰って来た。

 

 

「これで美琴は俺の嫁というわけだな!」

 

 

「ッ……ホントあんたって……!」

 

 

色々と文句を言いたい美琴だが、嬉しい気持ちが混合して文句がハッキリと言えない。顔を赤くしている美琴を大樹はニヤニヤと満足しながら見ていた。

 

 

『え? それはならないよ?』

 

 

「……………あ?」

 

 

低い声で神童君を威圧する。その鋭い眼光は神童君が悲鳴を上げてしまう程。

 

 

『だ、だだだだって、結婚イベントを阻止しただけだよ!? 別に御坂君は楢原君のことが好きではないんだよ!?』

 

 

「ごふッ」

 

 

神童君の言葉に吐血した。最後の一言は大樹の心臓を貫いた。

 

 

「鋭い一撃ね……!」

 

 

「あぁ……あの一言は鋭い……!」

 

 

アリアとキンジは感心していた。こういう攻撃が大樹に有効だと学んだ。

 

 

『気を取り直して……ゲームはラストスパート! 誰が優勝するのか分からなくなって来たよ!』

 

 

こうして、ゲームが再び再開した。

 

 

 

________________________

 

 

 

パンパカパーーーーーンッ!!

 

 

 

《結果発表》

 

 

四位 遠山 キンジ

 

 

三位 楢原 大樹

 

 

二位 御坂 美琴

 

 

 

 

 

一位 神崎・H・アリア 

 

 

 

 

 

え? 何? 一位は俺じゃないのかって? 別に俺は一位じゃないよ?

 

 

「……………」

 

 

パチパチパチパチッ

 

 

一位になったアリアに対して俺たちは拍手していた。アリアの目が死んでいるが、見なかったことにしよう。

 

何故アリアが一位なのかって? 説明する前に、このゲームの勝利条件を覚えているか?そうそう、どれだけ女の子からパンツを貰えるか、だな。違うわ。

 

最終金額、職業、経歴で順位を決める。これだよこれ。

 

金額ならキンジが一位だったが、俺に負けたせいでペナルティを受けてしまい、ほとんど無くなってしまったんだ。最終的に所持金額はアリアが一番だった。

 

職業は速攻で順位付けできたよ。俺はバイトだし、キンジは悪の組織だし。美琴とアリアは良い勝負だったが、アリアの方がほんの少しだけ上だったからアリアが一番だった。

 

そして、経歴が決定打となった。俺はバイトだし、キンジはマイナスの悪の組織。美琴も名を残していたけれどアリアとはレベルが違った。

 

 

 

 

 

だってアイツ、世界記録やらアイドルやらなんでも一人で伝説作ってんだぞ? 勝てるわけがねぇよ。歴史に名を残すレベルだったわ。

 

 

 

 

 

『たった一人で勝ち続けた彼女に、盛大な拍手を!』

 

 

パチパチパチパチッ

 

 

三人しかいないけどね。

 

ちょっと泣きそうなアリアに俺は近づき、微笑んだ。

 

 

「コンテニュー、する?」

 

 

「しないわよ馬鹿ああああああァァァ!!」

 

 

ガキュンッ!! ガキュンッ!!

 

 

『わぁああ!? 室内での発砲は———!?』

 

 

ブツンッ!!

 

 

アリアの銃弾がモニターに直撃。画面が点くことはそれから無かった。

 

 

「大丈夫だぜアリア! 次は俺と結婚すればいいじゃないか!」

 

 

「あんたも何言ってんのよ!!」

 

 

バチバチッ!!

 

 

そして、電撃や銃弾が飛び交い、部屋は使いモノにならなくなった。

 

 

________________________

 

 

 

学校公認だったこのクソみたいなゲーム。

 

 

 

アリアのモチベーション低下や大樹の本気っぷりを恐れた学校は———

 

 

 

「ゲーム、もうやらないんだってさ」

 

 

「だろうな」

 

 

 

 

 

―――廃止した。

 

 

 

 

 

大樹とキンジは格闘ゲームをしながら、普通のゲームが一番だと確信した。

 

 




待たせたな!(特に待たれていない)

次回予告です。


―――人間が求める究極とは?


「おっぱいだろ」

「議題は……エロい衣装は一体何か、だ!?」

「計画通り」

「スカートに顔を突っ込むだと? ハッ、ぬるい!」

「違う。俺はおっぱいそのものが大好きなわけであってだな」


―――究極のエロス。


「ナース服を手に入れるためなら……俺は死んでも生き返る!」

「裸エプロン……だと……!?」

「分かっておらぬ! 全裸じゃ意味がないのだ!」

「黒ウサギは……黒ウサギは……!」


次回、『火龍誕生祭の過酷なゲーム 』



もうダメだろ? アウトだろこれ? 大丈夫なの?

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