ハヤテのごとく!~another combat butler~   作:バロックス(駄犬

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第6話~休日の過ごし方~

「うんがぁぁごおぉ~」

 

 

1月10日月曜日。 テルが屋敷にやって来て3日目となった。 無事テストに合格し、案の定疲れ果てて豪快な寝息をたてるテル。 しかし……

 

─彼が寝ている間にも世界の時間は普通に回り続ける。

 

「は─。それにしてもお嬢が学校に行って留守だと、屋敷の中も静かだね~」

 

 

三千院家の広大な庭。その飾られた岩の上から気の抜けた声が発せられる。

 

 

ちなみに喋っているのは人ではない。

 

 

「最初のセリフをトラが喋るなよ。 新規の読者が混乱するだろ?」

 

 

ハヤテは箒をもちながら人語を話している生物に不快な言葉を掛ける。

 

「久々の……いや、

この小説だと初登場だってのにつれないねぇ~借金執事は……」

 

悠長に人語を話すこの動物は三千院家のナギのペットのタマ。外見からして完璧虎であり、尚且つ人語を理解する。

 

 

ちなみに、このタマが人語を話すのを知っているのはハヤテだけである。

 

 

「ていうか、お前は学校はいいのかよ?

ここに来る前は一応、高校一年生だったんだろ?」

 

 

「う゛…そりゃそうだけど……」

 

 

タマに学校の事を指摘されたじろくハヤテ。ハヤテは頬を掻きながら

 

 

「借金返済のために40年ここでお嬢様の執事をする僕が……今更学校なんて……」

 

 

ハヤテがこの屋敷で働いて返す一億五千万の借金返済の期間は40年。ハヤテは学校よりも手一杯の執事の仕事が優先と考えていた。

 

 

「分かってねぇなぁ~借金執事は……」

 

 

タマは空を見上げてため息をつくとそのまま葉っぱをくわえながら続ける。

 

 

「いいか?学校ってのはな、別に勉強するためだけに行くわけじゃねーんだよ。友と語らい泣き、笑い……そうやって生涯の宝物を作り上げていくんだよ。思い出っていう宝をな……」

 

「それは分かるがトラに言われたくない」

 

 

ハヤテはまともな事を言うタマに素っ気なく返す。

 

 

「身もフタもない奴だねぇまったく……」

 

 

タマは薄く笑った。ハヤテはハヤテで何様だといった表情。

 

 

「ハヤテくーん。 ハヤテ君どこですかー。」

 

 

突如、一人と一匹の耳に聞き慣れた声が聞こえた。マリアである。 こちらに向かって来ているのが見えたタマは慌ててその場を去った。

 

「ああハヤテ君、こんな所にいましたか?」

 

 

タマが去り、今いるのはハヤテとマリアだけださっきも言ったようにタマが喋れるのを知っているのはハヤテぐらいである。

 

 

「はい。 えっと……どうかしましたかマリアさん」

 

 

ハヤテはマリアに聞くがマリアは少しとまどいながら

 

「いやその……ハヤテ君にちょっとお聞きたいのですが……」

 

 

 

「へ?ケータイ電話ですか?そーいえば持ってないですね」

 

 

 

「そうですか、やはり持ってませんか……」

 

 

「ええ、今時の変身ヒーローもケータイで変身する時代ですからね、ないと不便ですよね」

 

「まぁ別に変身しなくていいんですけど……」

 

 

マリアはそう返すとハヤテに長財布を差し出した。

 

「不便なのは確かなので……お金は出しますから、今からちょっと買ってきていただけませんか?」

 

「ええっ!? い…いいんですか?」

 

 

ハヤテは渡された財布に驚く。 高級感を漂わせる革財布だ。

 

「ですがその……」

 

マリアはニコリと笑いながら

 

 

「出会い系とかそういういかがわしいサイトを見るには使わないでほしいというか……」

 

 

「つっ!! 使いませんよ!! そんな事には!!」

 

 

マリアの言葉をハヤテは全力で否定する。

 

「でも分かりました!! さっそくケータイ買ってきます!!」

 

 

「あ、それとハヤテ君……」

 

 

樫の木でできた扉に手を掛けた時、マリアがハヤテを呼び止めた。

 

 

「はい?」

 

 

「いえ、最近ちょっとお疲れ気味のようですから、今日はお休みで良いので、街をぶらついてはいかがですか?」

 

 

「え?」

 

一瞬、間の抜けたような声を出していることにハヤテは気づかなかった。

マリアが述べた事はつまり、今日はもう執事の仕事をしなくても良いということだ。

 

 

「……僕なにか不味いことしました?」

 

 

ハヤテは恐る恐るマリアの表情を伺う。 ハヤテは自分が執事の仕事で何か不手際を起こしたと思っていた。

 

 

「いや違いますよ! ……だって最近、ロボと戦ったり、ナギの学校で色々あっただろうし……何よりハヤテ君、テル君の料理を見てからなんか疲れてそうなので」

 

 

マリアの言葉にハヤテはあまり思い出したくない思いだった。

 

「ま、まぁ少しやつれた感が……」

 

「詳しくは10.5話を読んでください♪」

 

 

「誰に言ってるんですかマリアさん?」

 

「そんな事よりハヤテ君、ケータイを買って来てください。後でテル君にも買いに行かせるので」

 

(あれ? 誤魔化された?)

 

 

マリアの言葉にハヤテは心の中で呟く。

 

 

結局、ハヤテは気持ちを切り替えて屋敷から街へと出掛けた。

 

(さてと、私も仕事に行くところですがその前に……)

 

ふと自分のメイド服の臭いを嗅ぐ。実はテルの激臭がまだ残っているのだ。

 

 

(仕方ありませんね……一度着替えてから仕事に行きますか)

 

 

 

 

月曜日とは平日の始まりである。 学校があるもの仕事があるもの、これは三千院家も例外は無い。

 

 

その一方で。

 

 

「うんがぁぁごおぉ~」

 

三千院家の一室。テルが大きい寝息を立てている。

 

「んがっ!」

 

静まり返った部屋の中でテルは大きく寝返りを打ち、床に派手に落ちた。

 

 

「ふぁ~あ、よく寝た……」

 

 

頭をボリボリ掻きながら口がいっぱいになるほど大きな欠伸する。 朝のエネルギーである朝食を取ってないせいか頭の回転が遅く感じた。

 

(ん? なんか忘れているような……)

 

頭のなかで何かが引っかかっている。 大事な事があった筈なのだ。約数分、ボーっとしているとようやく頭覚めてきたのか

 

「俺の試験はどうなったァァァ!」

 

 

ガバッと起き上がり、即座にテルは部屋を飛び出した。

 

 

廊下を駆けて行くその速さはまるで加速装置の付いた島村ジョー。 彼が向かうのはある人物の部屋だ。

 

(ゼェ…ゼェ…ここかァァァ! )

 

息を切らしながら扉の取ってに手を掛ける。 テルが疲れているのは屋敷の中で迷ったためだ。 真っ直ぐ来たつもりなのだが

 

 

「マリアさァァァん!」

 

 

力一杯扉を開く。 テルの目の中にはマリアがいた。 いたのだが……

 

 

「………」

 

 

テルの目に映ったマリアは着替えようと服に手を掛けている時だった。 若干首から肩の白い肌が露わになっていた。

 

 

マリアは先ほど、部屋に戻り、テルの作ったカオス料理の臭いが気になった為着替えをしていたのだ。

 

 

「………」

 

 

二人はまるで鉄の塊、ア○トロンをかけたのごとく硬直。 しかしやがてテルが口を開いた。

 

 

「こんにちわ、サンタクロースだよ~(裏声)」

 

 

その瞬間、マリアは近くにあったコナン像を掴みオーバースローでテルに向けて投擲。茂野吾郎も顔負けのジャイロボールと化したコナン像は放物線を描く事無く、テルの顔面にガツンと直径20センチ位の鉄塊が直撃した。

 

「ぐほっ!」

 

 

コナン像の威力に圧倒されテルは床を転がる。 マリアは顔を真っ赤にさせてどこからかリモコンを取り出し、赤いボタンを押した。

 

ゴゥン…ゴゥン

 

 

「あ?」

 

 

突如、真上から聞こえる機械音にテルは上を見上げる。 そこにはテルよりも遥かに大きい鉄の塊が吊されていた。

 

「三千院家はいつからカラクリ屋敷に?」

 

 

そんな事お構いなしに吊されていた塊がテルを目掛け落下した。

「ギャアアアア!!」

 

その時三千院家を揺るがす轟音が叫び声と共に響いた。

 

 

 

 

 

 

─そして少し落ち着いた後。

 

「いや、あのホント…スンマセンでした」

 

 

 

頭に巨大なタンコブを作り、鼻から血を出しているテルはマリアの前で正座をしながらひたすら謝罪。

 

「俺もその…久しぶりの登場だったんでちょっと調子乗ってましたスンマセンでした」

 

マリアはニコニコ笑いながら一本の脇差しを取り出し

 

「テル君、ゴメンで済むならこの世に警察と切腹なんて存在しませんわ」

 

 

白刃をテルに見せ付けた。 笑顔の下で激しい怒りが感じられる。

 

 

「あの…合格とか全く知らなかったんで、取り敢えずジャンクにするのは止めてくれませんか?」

 

 

「いや、ジャンクってなんですか?」

 

マリアはテルに突っ込みながらも白刃を鞘に納め、フゥと溜め息をつく。

 

「まぁそれはそうとして、テル君はケータイ持ってないですよね?」

 

 

「まあ、多分……」 (あれ、あんま怒ってない?)

 

テルは曖昧ながら返した。ケータイは記憶を無くした後には所持してはおらず、むしろ今まで持っていたのかさえ怪しい。

 

 

「俺が発見されたのが九十九里浜だったんで持っていたとしても海の中ですかね~」

 

 

「ああ、ありましたねそんな設定が」

 

マリアはそのまま続ける。

 

「やっぱり不便ですから今から買って来てくれませんか? ハヤテ君も行きましたし…… 」

 

 

マリアはそう言うと封筒んら取り出しテルに渡した。

 

「いいんですか?」

 

「はい。 後今日はもう午後からお休みで宜しいので」

 

 

テルの言葉にマリアは笑顔で返す。 それはテルにとって逆に怖かった。

 

「いや、あの……マリアさ─」

 

「何ですかテル君? 別に怒ってませんよ~?」

 

 

「いや、その─」

 

「大丈夫ですよ、ホントに怒 って ま せ ん か ら♪」

 

 

「………」

 

 

怒りのオーラが全身から発せられているのを感じたテルはもう駄目だといった感じで顔をひきつらせて

 

「スンマセンでしたァァァァァ!!!」

 

「あ、ちょっと……」

 

逃げるかのように部屋を飛び出したテルを呼び止めようとしたがテルは風のように消えた。

 

「少しやりすぎましか……」

 

一人残された部屋の中でコホンと咳をしてマリアは一人呟いた。

 

 

(全く、ハヤテ君といいテル君も……何故私はこんな扱いが……)

 

 

最近のマリアは扱いについて悩んでいた。 ハヤテに入浴を見られたり今度はテルとロクなことがない。 必死に謝っているテルに対してあの仕打ちには少し大人気なさを感じた。 まだ17歳だが

 

 

 

 

─そんなこと知らずにテルは

 

 

「やっちまったよ、俺死にたいんだけどいいかな?」

 

私服一人街を歩くテルはあらんことを呟いていた。

(だが、やってしまったものは仕方無い、目の奉養になってしまった事も事実!)

 

目をキリッとさせてとんでも無い事を言うテル。

 

歩くの止め、見上げるは電化製品店。 ケータイを買う場所だ。

 

 

(失った信頼は後々取り戻す!なんか買って帰ろう!)

 

 

意外と執事は前向きだった。 それでマリアの機嫌が治るのはまた別だが。 しかもそれはマリアの金である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─数時間後。電化製品店のスライドドアからテルが肩を落とした状態で出てきた。

 

 

「最近のケータイはちょっと色々プランありすぎだろ……」

 

 

彼の疲れの原因はケータイのプランにあった。 人よりもこういうのには少し疎いらしく数時間掛けてようやく買ったのだ。

 

 

「要は機械系がダメだったってことだよな……まぁそれより」

 

 

テルはポケットから先ほど買ったケータイを取り出し画面を開いた。

 

「カメラ付きってのは分かった。 だが画素ってなんだっけ?」

 

たしか多ければ多いほど画像がキレイになる。 もっと詳しく言うと半導体とCCDをアレする機械。

 

「いやよく分かんねぇよ!ってか作者もうろ覚えかよ!」

 

一人文章に突っ込みを入れるテルだが明らかにも一人言のため、周りから少しキツい視線を当てられた。

 

 

「ん?」

 

テルが見たのは画面のアドレスの登録件数だ。

 

「え? なに? 今アドレス1000人も登録できんの?」

 

1000という数に惹かれたテルは自分のクリアレッドのケータイをいじくる。 しかし改めて考えてみると

 

 

(アレ? 俺登録できんの一人もいねぇじゃん……)

 

テルはガクッと肩を落とした。 あの不幸なハヤテでさえも学校に通っていた時代があり、友達も少なからず居ただろう

しかし、テルは友達はおろか学校に行っていた記憶もなく、ハッキリ言って友達の顔や遊んだことを知らないテルにとってかなりキツい状況である。

 

 

(いや待て、ポジティブに考えてみよう……ケータイはメールしたり遊んだりして楽しむ為のじゃなくて電話をするための物だ! ってアレ? アドレスや番号なきゃ連絡もできねぇじゃねぇか……)

とぼとぼと重い足取りで家電製品店を後にした。

 

(そういえば朝と昼のメシを食ってないな)

 

 

数分歩いてテルはかなりの空腹感を感じていた。 考えてみれば昨日の朝と夜、そして今日の朝と昼は見事にご飯を抜かしていた。

 

育ち盛りの16歳には胃袋が限界だった。

 

 

(どこかで食うか? ジジィのラーメンに行ってもいいが……)

 

 

テルは追い出されたラーメン屋を思い出し、その方角を見つめる。 今は昼時だから結構混んでいることだろう。

 

「……めんどいからいいや」

 

色々考えた結果、そう呟くとラーメン屋の方角とは逆に歩き出し、更にラーメン屋から離れていった。

 

 

 

 

何分歩いただろうか、もう昼は過ぎただろうテルの胃袋は限界だった。

 

「ヤバい、もうムリ……死にたいんだけど」

 

もういっそのこと楽にしてくれという感じで目を泳がせ、足取りをフラフラとさせている。

 

「大体、ハヤテと全く会わなかったじゃねぇか、アイツどこほっつき歩いてんだよ? なぁ、オジサン」

 

「いや、知らねーよ」

 

テルに突然と話し掛けられたサラリーマンはナンダこいつはといった感じで返すがテルは続ける。

 

「いや、別にアイツが心配じゃねーんだけどさ、アイツはどっちかというとツッコミじゃん? ボケもいけるけどさ。ツッコミがいなきゃこの小説成立しねーんだけど……」

 

「だから知らねーつってんだろーが! 見ず知らずのサラリーマンにそういう事聞いてる時点で成立してねーんだよ!」

 

「今度アイツにメシ奢らせるか……」

 

「って聞いてねーし……」

 

サラリーマンの話をスルーしてテルただひたすらに歩きつづけた。 その後サラリーマンが会社に遅れてしまったのはまた別の話。

 

 

「ん?」

 

 

ふと立ち止まる。

空腹感とハヤテに何を奢らせるか考えていたからかテルはそれが自分の目に映るまで気付かなかった。

 

 白い壁でできた巨大な施設にその施設の前に広がるグランド。そして侵入を許さないという金網が張られている。

 

 

「ここは……学…校か…」

 

 

 その校門や風景を見てテルはボーっとしながら呟いた。

 

 

─都立潮見高校。

 

綾崎 ハヤテが執事になる前に過去に通っていた高校である。

 

(学校……か。俺もちゃんと学校に行っていたのだろうか?)

 

一応テルもハヤテと同じく16歳で、普通に考えればお互い学校に通っている。

 

「そして満喫するんだよなスクールライフを……体育祭、学園祭、修学旅行、気になるあの子は隣の席、放課後スーパー告白タイム……ん?」

 

テルは言葉を止める。それは校門の所に男女が数人いたからだ。

 

「あれは……ハヤテか?」

 

中の一人に見知った顔がいること確認したテルは即近くの木に登って観察を続けた。

よく見るとハヤテは少女に腕を掴んでいた。 少女は恐らく、この学校の生徒だろう。

 

「なんでハヤテはこんな所に……」

 

テルはポケットから飴玉を取り出し、口の中に放る。空腹でも我慢していたが最早そんな事はどうでもいい。

何故ハヤテがこんな所にいるかは原作をご覧下さい。

そして次の瞬間、少女は衝撃の一言を口にした。

 

「綾崎君が好きです!!」

 

「あ?」

 

ガリッとテルは口にしていた飴玉を噛み砕いた。

 

(あ、あの野郎ォォォ! 何か知らんが告白されてやがるゥゥゥ!)

 

目を瞳孔を開き気味にしてなぜかそこでラブコメが展開されているのを眺めるテル。

 

キャンデーを取り出し、口に加える。 一体いくつ持っているのかそれは分からない

 

「……だから……付き合ってくれませんか?」

 

バキンッ

 

(あ゛あ゛あ゛あ゛!!ストレートすぎる! だがァ! そこに痺れる憧れるゥゥゥ!!)

 

テルは歯でキャンデーを噛み砕くきながら、視線を向けた。憧れと殺意の視線を

 

(…… 今何か殺気が……)

 

 

突如、ハヤテの体に悪寒が走った。 しかしその殺気は吹き飛んだ。目の前の女の子に声を掛けられて

 

「綾崎君……」

 

「え……あ……その……」

 

ハヤテは顔を真っ赤にさせて口ごもる。 もちろん、告白した女子高生も顔が真っ赤だ。

そして木に居る悪魔はそんなことを

 

(さぁ言えハヤテ! オゥケェでもイエスでも言ってみろォォォ! 言ったら死刑だァァァ!!)

 

真っ赤とは程遠いブラックな感情を抱いていた。

しかし、テルの予想とは裏腹に

 

「その……ご……ごめん」

 

(断っただとォォォ!? 人生最後かもしれないその可能性を捨てたというのかァァァ!)

 

もはやテルは驚かざるを得ない。 更にハヤテは続ける。

 

「実は僕……二次元にしか興味ないんだ」

 

その瞬間、周囲の空気が冷たくなった。 もちろんテルの周囲も

 

「と言うのは冗談で、今は放っていけない人が─」

 

 

「あ……あ……綾崎君のバカ─!!」

 

ハヤテが言うよりも早く、女子高生の平手打ちがハヤテの顔面を捉えた。

 

「げふっ!」

 

強烈な一撃によりハヤテは地面に倒れ付す。

 

「やっちまったな……」

 

テルは地面に倒れているハヤテを見ながら呟いた。

 

「ああいう断り方をした方がカッコイイと思ったんだろーが、お笑い漫画のキャラはカッコ良く振られたりしないのだ」

 

怒りながらハヤテの所を去っていく女子高生を見ながら呟くがテルには腑に落ちない点があった。

 

(アレは簡単に言えばただはぐらかしたって感じだ。 アイツ……他に誰か好きな奴いんのか?)

 

ボキッ

 

「ん? なに今の効果音」

 

テルはアレっといった感じに襲われる。 何故か体が重力に従い落下していた。

大変迷惑な話だが要はテルが登っていた木の枝がへし折れたのだ。

 

「え、ちょっ、ま─」

 

ドスン! とテルはそのまま垂直に頭から落下した。

 

「アレ?宗谷君、今何か音が聞こえなかった?」

 

「いや、別に? 空耳じゃね?」

 

実際彼らの後ろにテルがいるのだが気づかれなかった。

 

(おい待て、なんで俺に不幸のスキルが……)

 

 

テルは二人の会話を聞きながら自分の意識が遠のいていくのを感じた。


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