ハヤテのごとく!~another combat butler~   作:バロックス(駄犬

50 / 148
前書き
芸術は爆発だって忍者の人が言ってたよね


第50話~トラウマの対処法ってのはなかなか見つからない~

テルのちょっとした事からハヤテとテルはそれぞれ女装してしまう、人間爆弾になってしまうという恐ろしい呪いにかかってしまった!

 

その呪いは! 3月3日のヒナ祭りが終わるまでに、ヒナ段の一番上の主を倒さなければならない!

 

だがヒナ段の上、つまりその主とは、あの生徒会長、桂 ヒナギクだった! 

 

ハヤテは思っていた! ヒナギクなら事情を説明すれば分かってくれる! 分かってくれるハズだと・・・・だが!!

 

 

「わかったわ」

 

 

「わかったかね」

 

 

「ええ、どうして……今までこんな簡単な想いに気付かなかったのかしら……」

 

 

神父、リィンに言われた通り心のままに瞑想を終えたヒナギク。

 

 

「人は……自分の素直な気持ちを認めるのがなかなか難しい」

 

 

悟るリィンの神父としての本領を見事に発揮している。

 

「しかし、それが恋心という……」

 

 

「決着がついてないからよ」

 

 

このままリィンの納得する形で解決かと思ったが。

 

 

「……決着?」

 

二文字なのは合っていたが、聞こえた単語はリィンの思っていた単語とは程遠い単語。

 

 

「そう! あのマラソン大会での1対1での勝負……あのうやむやに終わった勝負の決着……」

 

 

まるで喉のつまりがなくなったようにヒナギクはスッキリした表情だ。

 

「斬新な結論だな」

 

 

リィンも最早何も言うまいとその一言だった。

 

 

「そっかそっか。おかしいと思ったのよね。勝ち逃げされたみたいになってるから、悶々としてたのね。 うんうん♪」

 

 

「あ…あの……」

 

意気揚々と納得しているヒナギクに声をかける人物がいた。

 

 

「ん? あなた……鷺ノ宮さん?」

 

振り返るとそこには白い封筒を持った伊澄がいた。

 

伊澄は少しオロオロしながらその封筒を差し出す。

 

 

「なに? 手紙?」

 

 

「はい。 上手く説明できないので要点を文章にしました」

 

 

「へえ、どれどれ……」

 

 

その封から白い紙を取り出すとヒナギクはその文を読み上げた。

 

 

 

~実は頼みがあります。 勝負してほしいんです。

 

 

できれば2人の方がいいと思います。場所は時計塔最上階です。

 

ま、勝つのは僕ですけどね。

 

 

武器は持参でお願いします。その方が平等ですからね……ま、勝つのは僕ですけどね。

 

 

胸の大きさが戦力の決定的差ではないという言葉がありますけど……ま、勝つのは僕ですけどね。

 

 

夜九時、楽しみにしてますよ。

 

 

最後に一応言っておきますけど、勝つのは僕ですけどね~

 

 

 

 

 

「………」

 

「あの…えっと……詳しくは現地で……」

 

暫くしてヒナギクは黙ったままその手紙の内容を見つめていた。

 

そして手紙をふわりと投げ出すと……

 

 

「ダッシャアアアア!!!」

 

 

その手に正宗を出現させ、手紙を細切れにした。

 

 

「果たし状かァァァァァ!!!」

 

 

「え? あれ?」

 

 

伊澄は慌てふためくがソレ以前にヒナギクの表情。

 

 

額には怒りマークが浮かび、正宗を振り回しながら荒々しい息を吐いている。

 

 

「ふ、ふふ……さすが三千院家の執事。 既にこちらの心はお見通しだったとは……やはりできるわね」

 

 

「え? それはどういうことですか?」

 

 

伊澄は原因を探るが唯一の手掛かりの手紙もヒナギクが細切れにしてしまったため真実を知る術はない。

 

 

「でも勝つのはこの私ィ! お互い正々堂々と戦おうじゃないの!」

 

 

そして正宗を高く突き上げて叫んだ。

 

 

「あは、あはは・・・首洗って待ってなさいよォォォォ!!!」

 

 

笑いながらそう叫ぶ姿に、伊澄は悪霊よりも恐怖したという。

 

 

「全く……本心に気付くのも伝えるのもなかなか難しいな。 それよりもアニメイト行こう、初音 ミクのねんどろいどを買わなくては!!」

 

 

リィンは目を輝かせてその場を去る。 神父としての職務を見事に放棄した。

 

 

 

―そして次の日。

 

 

時は3月3日、ヒナ祭り祭り……当日ッ!

 

 

 

 

「う~ん・・・確かにこれはかなりの規模ですね~」

 

見晴らしのいい丘の上で、ハヤテが白皇学院の現在の様子を見ていた。

 

祭りの熱気もあってか、普段はあまり動かない生徒も感化されて走り回っている。 ぼんぼりが光り、屋台が並んで祭りの雰囲気が出ている。

 

「この人込みの中を誰にも見られないで潜入するのは至難の業ですよね・・・」

 

「せやけどなんやねん、その恰好は・・・」

 

険しい表情になっているハヤテをよそに咲夜が注目したのはハヤテの服装。 何故か白いコートを羽織るという姿。 一般に見つかったら異質の目で見られること限りなし。

 

「アレ? ところで伊澄は? 俺はあいつが来るからって祭りに来たんだけど・・・」

 

どうやら伊澄でつられてきたワタルはこの場で伊澄がいないことにご立腹の様子だ。

不意に、ワタルの肩を咲夜が叩く。

 

「残念やったなワタル・・・伊澄さんは1コマも一緒に出ることなく迷子や・・」

 

「記録更新だなオイ」

 

「しかしこのヒナ祭り祭りってなんなんですか? 前のマラソン大会に比べて随分と楽しそうですが・・・」

 

「そりゃあ五大行事が全部命をかけるようなヤバい行事なわけないだろ」

 

ハヤテの疑問にワタルが答える。

 

「バレンタイン逆さ、男が女を誘って一緒に踊って思い出を作る祭りなんだとさ」

 

「なるほど。 やっぱ夏は盆踊りっちゅうわけやな」

 

「いや、今は3月ですけど・・・」

 

「ブツブツブツブツブツブツ・・・」

 

まぁ季節ネタはさておき、ハヤテ達の後ろで膝を抱え込んで負のオーラを醸し出している男が一人。

 

「どうしたんですかねテルさん・・・朝からずっとあんな感じなんですけど・・・」

 

テルには聞こえないようにハヤテは咲夜に聞く。

 

「ウチもようわからん。 昨日のテンションとは全く逆やないか」

 

「ギャアアアアアアア!!!」

 

いきなり立ち上がったテルはものすごい形相でハヤテに掴みかかってきた。

 

「ハヤテェ・・・お前、絶対に作戦は成功させろよォォォ!!」

 

「え? ま、まぁもちろん善処はしますけど・・」

 

「善処どころじゃねぇ! 命を持って全うしろぉぉぉぉ!!」

 

その表情はまるで死刑を待つだけの罪人が浮かべる絶望の表情のようだ。

 

ハヤテ達はまるで訳が分からない。 昨日まで人間爆弾になることさえ夢に見ていたと豪語していたテルがいったいどうしたことか。 いまさら自身が人間爆弾になることを恐れている理由はなんなのか。

 

「チクショウ・・・俺は見ちまったんだよ・・・」

 

「見たって・・何を?」

 

その理由は、昨日の夜に遡る・・・・

 

 

ヒナ祭り祭りを前日に控えたテルは鼻歌なんて歌いながらナギの部屋に紅茶を届けに行っていた。

 

本来ならハヤテがその役を担うのだが、そのハヤテは今はメイド姿、テルたちがナギの部屋に行けと言ってもハヤテはナギのようにテコでも動かんと言った感じだったのだ。

 

「という訳でお邪魔しまーす」

 

「ようやく来たか、遅かったじゃないかバカテル」

 

「バカは余計なんだよバカは・・・それと夜中に紅茶なんて飲むもんじゃねーぞ」

 

カチャッ。 と紅茶を置き、キャスターの上にあるポットからカップに紅茶を注いでいく。

 

「珍しく執事の仕事をしているな」

 

「一応執事なもんでな・・・ん?」

 

紅茶を注ぎ終えたテルが気づいたのはナギの机の上。 これも金持ち使用の豪華な作りなのだがその机の上にはデスクトップ型のパソコンが置かれていた。

 

「なんだよ。 お前パソコン持ってたのかよ」

 

「当たり前だとも、この世は常に情報との戦いだ。 私の暇を見事潰してくれる・・・じゃなかった。 その情報社会を制するために必要なものだパソコンは」

 

「本音が少し聞こえたぞ」

 

「ふん、息抜きにニコニコ動画やヒマワリ動画や東方をやっていて何が悪い」

 

「遊んでしかねーじゃねーか」

 

「むぅ」

 

とテルに突っ込まれたナギは眉を吊り上げてデスクトップパソコンに電源を入れる。

 

「ふん。 ならば貴様に目に物を見せてやろう」

 

「お? なんだ? その手のものなら大歓迎だが、あいにくその手のものをお前が毎晩に見ているとなれば、それをハヤテに報告しないといけねェな」

 

「その手のものってなんだその手のものって!!」

 

怒鳴るナギは手早く自身のウィンドウを起動させ、ニコニコ動画サイトに入っていった。

 

「貴様に昨日見ていた鬱動画をみせてやろう」

 

「ほぅ、この超ポジティブ形態の俺にそんな生クリームのように甘い鬱動画が通じるかな?」

 

「まずは見てから言え」

 

ナギはマイリストからその動画を取り出し、カチッとクリック。

 

「アレ? これって昔のロボットアニメ?」

 

テルがよく見ると、画面に映し出されたのは昔の、ロボットアニメだった。

なぜこんなものが鬱なのか、と疑問に思ってしまう。

 

 

「ああ。 昔にしてはかなりの鬱使用になっている・・・この作品の見どころは人々が敵に捕らえられて体を爆弾に改造させられてしまうのだ」

 

「・・・・」

 

爆弾。 その単語を聞いた瞬間、テルの体が固まる。 

 

「その爆弾に改造させられてしまった人々はいつどの時間帯で爆発するかも分からない。 そう思った人々の中には主人公たちの仲間もいるのだ。 んで、その仲間は主人公たちの為に爆弾になってしまった人たちと一緒に主人公たちから離れていくんだよ」

 

これがその時のシーンだ。 と言わんばかりにまたしてもナギはクリック。 わざわざ大画面で見せてきた。

 

 

人間爆弾に改造させらてしまった人たちと、主人公の仲間が離れていくシーン。

 

「どうせ・・・父ちゃんも母ちゃんもいなくなっちまったんだ・・・俺だってもうすぐ、母ちゃんの所へ・・・」

 

と下を向きながら歩いていた主人公の仲間は急に立ち止まった。

 

「お、俺・・・いやだ」

 

「父ちゃんも母ちゃんもいない所で死ぬなんて・・・一人で死ぬなんて・・・い、嫌だ!」

 

死を目の前にした少年はその恐怖に耐えきれなくなったか、ほかの人々の方とは別の方向に走り出した。

 

「な、人間爆弾の子を人様のところにやるでない! 誰か止めないか!!」

 

一人の男の声に応じて、四人の男が走り出した少年を捕まえる。 動けない少年はその場で叫んだ。

 

「い、いやだぁぁぁぁ!! 母ちゃん死にたくないよ!! 父ちゃん! 助けてくれよ!」

 

何度も大人たちの拘束から逃れようとするが、大人の力には敵わず、ただただ泣き叫ぶ。

 

「父ちゃん、母ちゃん!! 何でも言うこと聞くからよぉ・・・助けてくれよーーーー!!」

 

その時だった。 彼の、人間爆弾となった少年とそのほかの人たちの体が輝きだした。 そして次の瞬間・・・

 

 

ドゴォォォオ!!

 

彼らはまばゆい光と共に爆発した。

 

「・・・・」

 

それを見ていたテルは目を見開いて体中から滝のような汗を流していた。

 

「フフフ・・・これが朝の時間帯から流れていたんだぞ? 子供たちが普通に見れる時間帯からだ」

 

腕を組んでいたナギは勝ち誇った表情を浮かべる。

 

「だがまだこんなのは序の口だ。 黒冨野の歴史を貴様に脳髄に刻ませてやる。 次は伝説巨神の方をだな・・・ってアレ?」

 

ナギがテルの方を向いた時には、既にテルはナギの部屋から居なくなっていた。 

 

「ほぅ、逃げ出したか・・・ま、いっか」

 

とカチッとパソコンをいじり始める。

 

「うるさいのが居なくなって良かった。 流石に私も鬱気分を払しょくするためにポジティブな動画を見てから寝るか・・」

 

と言いつつ、彼女は夜更かしなんてしてしまい寝不足になってしまうのは目に見えた結末である。

 

 

「そんなことがあったとはな・・・」

 

「なんだってそんな状況下でザ○ボット見るんですか!?」

 

「知るかよそんなもん! 誰だって生きたいんだよ! 爆裂四散なんて嫌なんだよ! もうあの動画見てから人生黒色だよ! どうにかしろコンチクショーー!!」

 

咲夜とハヤテの一言一言にテルは地震の恐怖を叫ぶ。 この感覚はアレだ。 寝る前に怖い動画を見てしまうと怖いシーンが脳裏に焼き付いて夜眠れなくなるというあの現象だ。

 

「ヤベェよオイ・・・爆発ってどんな感じなの? もう凄いグロイの? なんかこう・・・もう色々と吹き飛んじゃう系?」

 

「あかんな・・・ハヤテ、もうコイツダメだわ。 色んな意味で・・・」

 

「そうですね・・・まだ時間じゃないのに地面に大の字に寝転がっているのを見る限り・・・かなりの精神状態かと・・・」

 

「芸術は爆発だ! 畜生が! リア充なんて爆発しちまえよ!!」

 

もはやテルは自身の人生に限りを付けたかのように、てかヤケクソ状態で地面に寝転がって空に向かって訳の分からんことを叫んでいる。 ほんとにヤヴぁいようだ。

 

「とにかく、善は急げです! 早く僕はヒナギクさんに会いに・・・」

 

「あれれ? 何をしてるのかなハヤ太くん?」

 

ハヤテは声の主のいる方向に振り向く。 するとそこには委員長レッドこと、瀬川 泉の姿があった。

 

「せ、瀬川さん!?」

 

突然の泉の出現に慌てるハヤテ。 それもそのはず。 ハヤテの女装の事情はごく一部の人間しかわかっていない。 そのため、瀬川などの一般の人間からこの姿を晒してしまうのはただならぬ誤解を招くのである。

 

「あれ? そのコートどうしたの? なんかのコスプレ?」

 

基本好奇心旺盛な泉はすぐさま普段のハヤテと違う服装に気づいて聞いてくる。 なんとか隠そうとしていたハヤテだったが・・・

 

「な!! なんでもないですよ!! 別に隠し事とかあるわけじゃないんで!!」

 

「はへ? 隠し事・・・?」

 

うっかり、ハヤテは喋ってしまった。 そんなことを言われたら人間気になって気になってしまいしょうがない。

 

 

「ダメだよハヤ太くん・・こんな真夏にコートなんか着ちゃ・・・」

 

「いやぁ・・・だから作中では三月ですって・・」

 

じりじりとその距離を縮めてくる泉。 なぜだろうか、彼女の耳からは某アニメのような動物の耳が生えているように見える。

 

「その下どうなってるの見せてーーーー!!」

 

「わーーー!! ダメですーーー!!」

 

時を待つことが出来なくなったか、泉はハヤテに跳びかかってくる。 ハヤテは即座にその場をダッシュで去ろうとするが泉はそれを追いかけていった。

 

「行ってもうたな・・・」

 

「んで、あの下ってどうなってるんだ?」

 

事情を知らないワタルは何も分からないままである。 

 

「そういやテルの姿が見当たらんで?」

 

「なんかスゲェへこんでたからな・・・帰ったんじゃねーか?」

 

辺りを見渡す咲夜だがテルの姿が無いことに気付く。 ワタルは帰ったかというが、人けのないところでひっそりとしているのではないかと咲夜は感じた。

 

(うーん・・・これは気にかけてやったほうがええんやろか・・・)

 

一応バカな執事だがこれまでの事もある、心配はしていた咲夜だったが。 基本彼女は楽観的な性格である。

 

「ま、えっか。 それよりワタル、ウチらも祭りに行こ♪」

 

「は? お前、俺は伊澄と・・・」

 

「多分伊澄さんは迷子で出てこんとちゃうか? 大丈夫やって、祭りの中で伊澄さんとバッタリ会った時にはウチは手を引かせてもらうからな」

 

「ば、お前! 別に・・・」

 

「ほらほら、さっさと行くで行くで♪」

 

グイグイとワタルの手を引っ張っていく咲夜と、それに渋々従いながら連れて行かれるワタル。

 

色んな所でそれぞれのお祭りが始まるのだった。






後書き
今だから言えること、咲夜さん。 あんたァ、後悔することになるぜぇ・・・。
そしてサンライズよ、なぜザンボットを朝に流してた。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。