ハヤテのごとく!~another combat butler~   作:バロックス(駄犬

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一番戦闘色が強い話になりそうです。 このシリアス長編も終盤戦に突入です!






第46話~男のロマンに口出し無用~

廃ビルの屋上に彼は現れた。

 

以前、自身の刃によって貫かれた男。 

 

致命傷の筈。 助かったとしても動ける体ではない筈だ。

 

そこまでしてここへやって来た理由は?

 

分からない。 しかし、今の彼は何故か輝いて見える。 

 

黒く塗りつぶそうにもそれ拒もうと更に輝こうとする・・・

 

 

それは例えるなら・・・銀色。

 

 

 

 

 

 

第46話~男のロマンに口出し無用~

 

 

「どうして・・・来たのですか」

 

伊澄が小さく呟く。これは最早自分だけの戦いだと思っていたのに・・・

 

「私のせいだから・・・誰も巻き込みたくなかったのに・・・」

 

テルが傷ついてしまったのは自分が弱いから。 やはり自分は甘えていたのかもしれない、その現状に・・・仲間ができるということはこんなにも辛いことだとは思わなかった。

 

「簡単な話だろバカめ」

 

ゆっくりと歩いてくるテルは伊澄の近くまで来てこう言った。

 

「仲間だからだ」

 

視線は黒羽に向けたままテルは続けた。

 

「誰かが怪我したからって一人無茶をする大馬鹿野郎、それを止めるのが俺の役目だ」

 

「でも・・・!」

 

「それ以上言うな・・・何度だって言ってやる。 お前は一人じゃない」

 

その言葉に涙を流した。 最初から一人と決め込んでいたのは自分だ。 

 

だけどここに仲間と言ってくれる人がいる。

 

「もう休んでな。 ここからは俺の一人舞台だ」

 

コクリと伊澄は頷く。 そしてテルは伊澄を見ないまま続けた。

 

「後ねぇ伊澄くん。 テルさんはこの世で一番『負ける』という言葉が大の嫌いなんだよ」

 

カチャ。

 

その手に鞘を持ち、テルは鞘から刀をゆっくりと抜き放った。

 

その刀身、光を受けて輝く姿は何物に染まることのない美しい銀色。 

 

「・・・・・」

 

何かを悟ったのか、黒羽も右手に黒い刃を展開させる。 形は長剣、テルを刺した武器だ。

 

お互いに武器を構えたということは、準備OKだということだ。 

 

ここから先、二人にはあまり言葉というものは必要ないだろう。

 

全ては剣劇の中で語られるだろう。

 

 

誰しもが図ったわけでもなく、ほぼ同時に二人が踏み込んだ。

 

二人の刃が同時に一太刀、それは体に触れられることなく互いの刃と激突した。

 

激しい火花を散らすほどの鍔迫り合い。 全力でお互い押しているがギチギチという金属の音が響くだけだ。

 

(ここ・・・!)

 

仕掛けたのはテルだ。 鍔迫り合いの状態から刃を滑らして踏み込む。

 

近くなった距離で今度は黒羽の別攻撃。 肩の部分から黒い槍を出現、顔面目がけて放つ。

 

「チィッ!」

 

即座に鍔迫り合いを一歩下がって解除し、迫ってきた黒い槍を『斬る』。

 

「・・・・」

 

黒羽は槍を戻して斬られた部分を凝視した。 バッサリと真っ黒な断面が見えるほどの切れ方。

 

この槍は弾かれることはあったが、『斬られる』ということは今までなかった。

 

そういうのを斬ることができる刀なのだろう。 そう黒羽は分析した。

 

そして繰り出す次の一手。

 

両肩から黒い槍を多数展開、一本の槍から二本の槍、どんどん数を増やしていく。

 

「数で決めようってかい・・・面白れぇ!」

 

刀を握り、不敵に笑うテルは敢えてその突っ込んだ。

 

黒羽はその場で動かないまま狙いを見定めると、弾丸のように槍を放った。

 

だが・・・

 

テルは斬る。 自分の道を阻むものを排除するように。

 

自身が進むのに必要な槍だけを斬る、もしくは受け流す。

 

「・・・・・」

 

距離を近づかせているテルを見て黒羽は長剣をテルに向けて構える。 

 

どうやらここまで計算だったようにその長剣を槍に変えてテル目がけて突き出した。

 

「ッッ!!」

 

気づいたテルはすぐさま真横にズレることにより二度目の串刺しの刑を回避。

 そしてこの間を一気に縮める。

 

「・・・・」

 

すかさず黒羽が右手横に振るうと全ての槍がテルに追いかけるように迫ってきた。

 

「いいねいいね!!」

 

迫る槍を振り返ることなく、テルは黒羽に突っ込んでいく。 そしてそのまま真上へジャンプ。

しかし、槍は飛んでいるテルにも容赦なく追撃。

 

これは大きな隙。 と黒羽は思っただろう。

 

しかし信じられないことに、テルは黒羽の頭上を越えていく中で、その黒い槍を見事に捌き切っていた。

 

ストンッと低く着地するとともに振り向きざま一閃。

 

黒羽は左手に展開させた短剣でかろうじてガード。

再び金属音が鳴り響く。

 

(相変わらずの馬鹿力だぜ・・・!!)

 

テルとて加減してるわけがない。片手で刀を受け止めるというその怪力ぶり、本当に人間なのかと疑ってしまうほどだ。

 

そんな疑問が浮かんだ瞬間。 黒羽は右手に戻した長剣を真横に振るった。 

危険を感じたテルが後ろへ下がりながら刀で受ける。 刀が折れてしまうかという重い一撃に数メートルほど吹き飛んだ。

 

「へっ・・・」

 

ムクリと体を起こしたテルは刀を杖代わりにして立ち上がる。口からは血が出ていた。 黒羽はそれを見ていて無表情を通し続けていた。

 

「テル様・・・」

 

見守る伊澄も心配そうだ。 それほどまでに相手の力は圧倒的である。しかし次の瞬間。

 

バシュ! 

 

何かが噴出したような水の音に黒羽は自身の右手の違和感を覚える。右手を見ると。

 

「・・・・・」

 

手から血が出ていた。 幸いそこまで深い傷というわけではない。

 

それを見たテルが一言。

 

「どうした・・・血が出てるぜ?」

 

「・・・・・」

 

再び武器を構えて素早く踏み込んでいく。 テルは転がりながらそれを避けた。

 

「さぁて、盛り上げるために付いてきな!」

 

テルは起き上がるとすぐさま近くの下の階につながる穴の中に入ってその姿を隠した。

 

まるで誘っているのか・・・という行動。

 

「・・・・」

 

しばし考えた黒羽は一瞬だけ伊澄を見る。

 

「え?」

 

戸惑った伊澄だったが黒羽は武器をしまうと穴の中に飛び込んでいった。

 

 

 

 

(ここからが本番だ・・・) 

 

そう考えたテル。 今は近くの壁に身を隠して敵が来るのをひたすら待つ。

 

わざわざ内部を選んだのは理由がある。 まず暗さ。 外が晴れているとはいえ、中は十分暗い。それはあの黒い槍でこちらを狙うことは難しいだろう。

 

そして残るはあの空中能力。 敵に空が飛べる能力がある以上、狭いところに引き込んでソレを活かせなくするしかない。

 

(来たか・・・)

 

壁から少しだけ頭を出し、穴から黒羽が降りてきた。

 

結構な高さだが、問題ないかのようにストンッと着地。 

 

「・・・・・」

 

辺りを見渡し、テルを探しながら取り敢えずといった感じで適当なところに槍を放つ。

 

テルの方から暗くてよく見えないが、響く轟音から察するに全く見当違いの場所に放たれていると考えて間違いはないそうだ。

 

黒羽はテルの位置が分かっていない。

 

「全ての環境は使えるだけ使う・・・先生もよく言ったもんだぜ」

 

後はどう攻めるかというのを考えていたその時である。 突如黒羽に変化が起こった。

 

(なんだ?)

 

テルがよく見ると、黒羽の手から何かを作り出していた。 黒い物体が掌からどんどん溢れ出し一つの形を作り出す。

 

「・・・・・」

 

出来上がったのはなんか漫画とかに出てきそうなレーダーだった。

 

簡単なイメージで言うと、サ○ゲッチュにでてくるピ○サルレーダーに酷似している。

 

(なんじゃありゃ!?)

 

目を見開いて驚くテル。しかし驚き反面、とても極めてシュールなシーンだ。

 

テルは黙ってその光景を見続けることにする。

 

「・・・・・」

 

ウィーンウィーンとレーダーが回転しだす。 本当にあのタイプのレーダーってあったんだなと思うテルである。

 

『ウィーン・・・ピポポポポポ!!』

 

「なんでピ○サルレーダーァァァァッッ!?」

 

気づかれないように突っ込んでみるが今のでこちらの位置がバレてしまったとテルは考える。

 

キュイイイィィィインッッ!!

 

出来るだけ遠くへ離れようとした時である。テルの耳に奇妙な音が聞こえた。

 

恐る恐るテルが再び壁から黒羽を見て彼は口をあんぐり、目が点状態になっていた。

 

「へ、へぇ・・・そういうのもアリなんだ」

 

テルが見据えるその先には右手の武器を構える黒羽の姿。先ほどの奇妙な音、それはその武器から発せられていた。

 

黒く、尖っていてどんな壁をも削りとおす、そして同時に男のロマン。

 

それはドリルッッ!!

 

右手には大きな、彼女の身の丈のほどの巨大なドリルが装着されていた。

 

モーターが回転する音とともに巨大なドリルが回転しだす。 それを構えて黒羽は壁に突進。

 

その瞬間、厚い壁が簡単にドリルにより破壊された。 しかもテルは目と鼻の先。

 

「やべっ!!」

 

ドリルを回転させてこちらに向けていることから瞬間的に背を向けてダッシュ。

勿論黒羽は追ってくる、壁ごとドリルで貫いてだ。

 

「おおおおおおおお!! ホントにアイツなんでもありだよ! 調子乗って一対一なんて申し込むんじゃなかった!!」

 

全速力で走るテルだが予想以上に黒羽の移動速度が速い。 もはや背中にジェットでもつけてるんじゃないかと疑っているが、あの巨大な物体を持ってダッシュしている。 

 

ほんと何でもアリだ。

 

 

 

「黒羽のヤツ・・・派手にやってるな」

 

上からの振動音で黒羽が暴れているのだということを感じ取る木原。 しかしコチラの戦況は芳しくない、目の前にはチートキャラが二人。 ここは猫の手でも借りたい気分である。

 

(と言っても、アイツは今まで助けに来てくれた事なかったからな・・・トホホ・・・)

 

「ハヤテくん! 私の動きに付いて来れるかしら!?」

 

「任せてください! いかなる時でも即座に対応するのが執事ですッッ!!」

 

まるでス○ロボで言う合体攻撃前のキャラの掛け合いに木原は身構える。 

 

ハヤテとヒナギクが同時に駆け出す。 最初に仕掛けたのはハヤテで、木原に向けてとび蹴りを放つ。

 

「甘いぜェ!」

 

その蹴りを真横にずれて躱すと少し離れた場所でヒナギクが走りながら正宗を振りかぶった。

 

「せいやーーーーーっ!!」

 

力を込めた叫びとともにヒナギクは正宗を投擲。 まるでブーメランのように回転して向かっていく。

それも木原はしゃがんで対応。 正宗は木原の真上を通り過ぎていく。

 

「武器を手放したッッ これは勝機ッッ!!」

 

「まだだァァァ!!」

 

その声にすぐさま木原は振り返る。 真後ろに居たのはハヤテだ。ハヤテの方向には先ほどヒナギクが投擲した正宗がある。 ハヤテはそれをサッカーボールのように右足で蹴り返す。

 

「な、んだとッッ!?」

 

驚愕する木原、再び木刀は回転しながら向かってくる。まさか二段構えとは思わず一瞬判断が遅れてしまうが間一髪、体をマトリックスのごとく回避。

 

 

(残念だったな・・・ん?)

 

 

木原が完全に安心しきっていた時である。 木原の目の前に迫る一人の人影。

 

「残念だったわね!」

 

回避した正宗を掴みとったヒナギクだった。 ヒナギクは気合一閃、木原を思いっきり真上に上げる。

 

「ふごっ!!」

 

避ける間もなく完璧に食らった木原は更に思い知ることになる、この二人の恐怖を・・・

 

 

気づくのはさほど時間は掛からなかった。 暫くして木原の更に上をいくハヤテの姿が見えたからだ。

 

「・・・・・」

 

その目を見てさほど恐怖を感じただろう木原君、その時のハヤテの目はまさしくザク。 ザクのモノアイのような妖しい輝きを放っていた。

 

「せいやーーーーーーッッ!!」

 

ドズン! と空中に居る木原のどてっばらにハヤテの断罪のギロチンともいえる踵落としが炸裂。 木原は叫ぶ暇もない、このまま地面に叩きつけられるかと思いきや・・・

 

 

「まだまだ終わらせないわよ・・・」

 

下には地獄が待っていた。

 

 

木原の着地地点であろうその場所にブンブンと殺る気満々のヒナギクが正宗を振るっている。

そして正宗を構えるとニヤリと笑うのだ。

 

(・・・ヤベェ、こいつら容赦ねぇ・・・)

 

木原は確信する、悪魔は本当にいたんだと。 これは今年のベスト3に入るくらいのネタだと感じたほどだ。

 

「ハアアアアアッッ!!」

 

ハヤテも木原の腹に食い込ませている踵に込める力を強める。 

 

「これが私達の・・・」

 

「「力だァァァーーーー!!」」

 

ヒナギクの正宗の一撃が木原の背中に炸裂。 もちろん叫ぶ暇もありません。

 

締めとばかりにハヤテがトドメの空中人間オーバーヘッドキック。 まるで人がサッカーボールのように吹っ飛んで行った。

 

(アレ? これ本当にハヤテのごとく?)

 

最早どこぞの戦闘漫画になっていないかと心の中で思ったナギである。

 

吹っ飛ばされた木原は飛ばされた先にあるドラム缶の山に突っ込んだ。

しかしそのまま動かないというか動けないのか、ドラム缶から出てくる気配はない。それを見て二人は勝利を確信し、お互いにハイタッチ。

 

「流石ねハヤテくん、一瞬であの動きに付いて来れるとわね・・・」

 

「ヒナギクさんも、僕の正宗のパスに対応できるのも流石です・・・今の技はランページ・ゴーストと名づけましょう!」

 

「え・・・ちょ、ちょっとハヤテくん!?」

 

「あ・・・・」

 

咄嗟に目を輝かせてヒナギクの手を握るハヤテ。 ヒナギクはそれが恥ずかしかったのか慌ててハヤテは手を離す。

 

「なんか凄い自然とやってくるとこを見ると・・・ワザとやってるのかしら?」

 

「ま、まさか! 僕がヒナギクさんなんかにそんな命知らずなことをするわけ無いじゃないですか!」

 

プチン。

 

「バカモノォォォォォッッ!!!」

 

「え?」

 

ドゴッ!

 

本日何回目となるこのプッツンタイム。 だが今回はハヤテの軽はずみな行動から激怒したナギも参加し、ダブルプッツン。ハヤテは怒りのヒナギクとナギの鉄槌により再び沈んだ。

 

「まったくもう・・・」

 

「まったく、ハヤテときたらまったく・・・!!!」

 

床に轟沈しているハヤテをよそにため息をつくヒナギク。ナギは怒りを露わにしながらボソボソと呟いている。 だがその時である。

 

突如天井から轟音と共に落ちてくる二人の人影。

 

「テル君!?」

 

刀を持ったテルが落ちてくるのを見てヒナギクが正宗を構える。 テルと黒羽はお互いに地面に着地した。 

 

黒羽はともかく、テルは息が荒い。

 

「よぅ・・会長、みんな無事か」

 

「ええ、なんとか・・・それよりその人は?」

 

ヒナギクは黒羽の方を見てテルに聞くがテルは刀を振ってニヤリと笑いながら言うのだ。

 

「野生のマウンテンゴリラもとい、グ○ンラガン・・・」

 

「どういうこと?」

 

不思議そうなヒナギクは訳が分からない状態だ。

 

「おーいどうしたテル、爆撃されたのか?」

 

「コレね、イメチェンだよイメチェン。 最近流行ってんだよ」

 

「どんなイメチェンだ!?」

 

ナギがテルのボロボロの姿を見てどうしたのかと聞いているがテルは悪魔でボケる。 すかさずナギが突っ込んだ。

 

「手伝いましょうか?」

 

覚醒したハヤテがテルの援護に向かおうとしたがテルが「いや」と答える。

 

「こいつは・・・俺が決着つけるさ・・・」

 

手に持つ刀を握る力を強めてその先の黒羽の姿を見据える。 相手は先ほどのドリルをしまい、元の腕から黒い長剣へと変化させた。

 

どうやら相手も一撃で決めるらしい。 その準備か、初めて相手が構える。

 

「・・・・・」

 

静まり返る中、テルも刀を構えてその決戦のタイミングを図る。

 

そして黒羽が長剣を構えたまま、テルに向かって走り出した。

 

テルは居合の構えのまま全く動かない。 

 

一瞬の隙が命取り、それは十分承知しているため、全身全霊をこの一太刀に賭ける。

 

---やがて。

 

 

---一瞬とも取れるその瞬間、二人は交錯した。

 

 

 

 

---たった一つの金属音を響かせて。








後書き
グレンラガンは俺の心に残る名作。

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