ハヤテのごとく!~another combat butler~   作:バロックス(駄犬

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テルと謎の人物との対決。 またしてもバトルry そして少しだけグロ注意。


第41話~月下死神の調べ~

夜の神社に異形、現る。

 

 

「お前……何モンだ?」

 

テルはそのフードの人物と改めて対峙する。テルも相手の佇まいから何か感じ取ったか伊澄に聞いた。

 

「伊澄……こいつァ、悪霊なのか?」

 

伊澄の違和感にテルも感づいたようだ。 伊澄は分かる事を伝える。

 

 

「分かりません……ただ、これだけは分かります。 危険だと……」

 

「なるほど」

 

そう聞くとテルは一層険しい顔になる。 伊澄がここまで追い詰められた事があっただろうか?

 

「ま、何にしてもとっとと追っ払ってやらないとお前の体が心配だ」

 

少しばかり笑うと鉄パイプを構える。

 

 

「まったく、テメェもテメェでその格好は何なんですかァ?キン〇ダムハーツの13機関ですかコノヤロー」

 

「…………」

 

テルの軽い挑発にも相手は同時ない。 その不動さ、まるで山のごとし。

 

 

(チッ、気味悪いぜ……)

 

心の中で呟いた瞬間、相手が動きを見せる。 右手を翳した。

右手の掌から黒い槍が飛び出した。

 

 

「テル様! 避けてくださいッ!」

 

その伊澄の言葉が聞こえ、反射的に横に跳ぶ。

 

 

そしてテルの居た場所に黒い槍が真っ直ぐ突き抜けた。

 

「なんだ、ゴ〇ゴムの実でも食べたのか?」

 

突き抜けた槍は奥の木を貫いていた。 凄まじい破壊力である。

 

「伊澄、助かったぜ!」

 

「い、いえ……」

 

相手と対峙したまま礼を言うテルに伊澄は満足いく返事は出来なかった。 体力の消耗が激しい。

 

 

「なぁテル! もしかしたらアイツめんどくさい攻撃する分だけで、生身はそんな強くないかもしれないで!?」

 

矢継ぎ早に放たれる槍を鉄パイプで弾くテルに咲夜が叫んだ。

 

「確かに! RPGでは魔術師は物理に弱い……その考え乗ったぜ関西!!」

 

「関西やなーい!!ちゃんと名前で呼べボケェッ!!」

 

怒る咲夜を無視してテルは相手の懐に接近を試みる。

 

 

「…………」

 

フードはそれを見るや左手も翳して黒い槍をテルに向けて放つ。

 

「邪魔くせぇなホント!!」

 

枝分かれした無数の槍が迫るが、鉄パイプで体に当たる最小限を弾いて前進をしていた。

 

「アイツ…何者なんや?」

 

その光景を見て、咲夜が思わず呟く。 恐らくテルについてだろう。

 

 

「私も詳しくは分かりません……でも、これなら…」

 

伊澄の知らずの内に笑顔が戻る。

 

これなら倒せるのではないかと。

 

 

 

一方でテルは確実にフードの距離を縮めつつあった。

 

迫ってくる槍の横腹を軽く当てて軌道をズラす、それを繰り返す。

 

 

「コノヤロ……今その化けの皮剥がしてやるぜ!!」

 

 

そして槍を弾いた瞬間、本能的に彼は相手の懐へのルートを見いだした。

 

 

ここからは防御不要。 一撃の元に沈める所存だ。

強く地面を蹴り、一気に駆ける。 途中体を槍が掠めるが止まる気はない。 必殺の一撃をお見舞いする為にテルは地面を飛んだ。

 

「…………」

 

フードもすぐさま右手の槍を引き戻すが、タイミング的に間に合わない。

 

「ちょいと痛ェーぞ!! 治療費は出してやんねーけど!!」

 

飛んだ姿勢から鉄パイプを構えて、相手の側頭部目掛けて振り込む。

 

 

バキッ!

 

「き、決まった……」

 

明らかにヒットしたであろう快音を見逃す事無く咲夜が呟く。

 

 

しかし、テルは違っていた。 鉄を通して感じる違和感はなんだ? 疑問を胸にテルは次に目に映る光景を信じられなかった。

 

 

先ほど放った一撃は、手加減したのもあるが相手の意識を奪うのには充分だったとテルは認識していた。

 

 

だがその一撃が、相手の素手に止められていたなんて、信じられなかった。

 

 

「「~~~~ッッッ!?」」

 

 

その真実に気付いたかで咲夜と伊澄が唖然としている。

 

 

(オイオイ……なんだよ、俺は鉄でも殴ったのか?)

 

 

鉄パイプを通して伝わる違和感にテルの頬に冷や汗が浮かんだ。

 

「…………」

 

フードの人物は鉄パイプを掴むと、フードの中からテルを見据える。

 

 

「……ヤベ」

 

そう呟いたテルが見たのは相手の肩。

 

その肩から黒い物体が現れる。 それが鎌のような形になるとテルの首目掛けて襲ってきた。

 

「ちぃ……ッッ!!」

 

その鎌が首に掛かる瞬間、相手の腹部に蹴りを入れ、その反動で後方へ飛び退いた。

 

 

程なくしてヒュンッ! という風を斬る音がする。鎌が振り抜かれた音だ。

 

「オイオイ、クビちょんぱは勘弁だぜ……」

 

 

飛び退いたテルが自身の首が繋がっている事にふぅとため息をつく。

 

 

「オオォイ関西ッ!! 話が全然違ェーじゃねぇーか! 危うくクビ無しになる所だったぞ!!」

 

テルが咲夜に向けて猛然と叫ぶ。 その言葉に咲夜は怒鳴り返した。

 

「うっさいわボケェッ! 悪魔で予想の話やアホンダラァァァ!!」

 

その突っ込みよう、まるでこのシリアスな雰囲気をも感じさせない。 テルは改めて向き直る。

 

 

「ったく……鉄パイプ殴られてピンピンしてんだけど…どこの夜兎族ですかコンチクショウ」

 

 

テルが再び鉄パイプを構えたその時である。

 

「…………」

 

もう片方の槍を引き戻した相手は、自身のフードに手をかけた。

 

 

そしてゆっくりと、フードを脱ぎ始める。

 

月明かりがまたしてもいい仕事をして、フードを脱ぐ動作に演出がかかる。

 

 

「冗談じゃねぇ……」

 

テルはその現実を直視できずにした。

 

フードの中で隠れていた黒い長髪がその手により姿を表す。

 

 

その髪は腰辺りまで伸びる。 癖っ毛もないストレート。

 

 

黒衣に身を包んだ人物の正体は……空色の瞳をした少女だった。

 

 

「な、なんやと……?」

 

咲夜も相手が少女だった事に同じく驚きを隠せないでいた。

 

 

一方で伊澄も。

 

(謎の術、有り得ない防御……どれに関しても情報がない。 でもここはテル様に任せるしかない……)

 

まだ分からない未知の力。 今の自分では抵抗も虚しい。 目の前のテルに頼るほかなかった。

 

 

「ったくよ……そういう事になると、ますますヘコんじまうぜ……」

 

勿論、テルとしても黙っている訳がない。 仮にも鉄パイプの一撃を片手で止めるという屈辱を味合わされたのだ。

 

 

しかし、意外な事に今度は相手が仕掛ける。

それはゆっくりと倒れるようで、次の瞬間、タンっと跳ねるように踏み込んできた。

 

 

そして着目すべきは相手の右手、今度の右手には槍はない。 しかし代わりに黒い刃物らしき物が生えている。 素早くその刃を振るう。

 

それを素早く反応し、テルもまた鉄パイプでその一撃を防ぐ。 互いの獲物が鉄をぶつけたような鈍い音が響いた。

 

少女の攻撃は止むことない。 その一振りを防がれたのを確認して体の姿勢を低くした突き、下段斬り、武器を弾いて首を狙うという流れるような舞の動作でテルを追い詰める。

 

「調子乗るんじゃ・・・ねぇッッ!!」

 

一方的に攻められるのは好きではないテルは、首を狙った突きを体を捻って躱す。 少女の真横に対面し、横薙ぎに鉄パイプを一閃。

 

今度はしっかりと捉えた筈だった。 しかし、その攻撃は空振りに終わる。

少女は超人的な反応を見せて、真上へとジャンプしていたのだ。

 

「なんじゃそりゃああああッッ!!?」

 

咲夜が驚くのは無理もない。 その少女は地面から7、8メートルの高さまでジャンプしていたのだ。

とても人間が助走なしで跳躍できる高さではない。あり得ない。

 

しかし、その『あり得ない』ことは続くのだ。 

 

それは見上げていたテルが最初に気付いたことで、流石に夢でも見てるんじゃないかと一度目を袖で擦った位だった。

 

 

 

少女の背中から翼が生えていた。

 

 

「なるほどね・・・・」

 

この時テルは辰屋から聞いていたあの言葉を思い出す。

 

----口を揃えて鳥人だ天使だの言うんだよ

 

 

「冗談じゃねェ・・・鳥でも、むしろ天使ですらねぇ」

 

目の前のこの光景に、自分が思い浮かべた一番のイメージはこうだ。

 

「悪魔だろうが・・・」

 

その呟きを入れた瞬間、少女はその翼を広げて一気に急降下。 

 

「くそ・・・・」

 

滑るかのように降下した少女は黒い刃物をスピードを生かして切り込んでくる。 それに対してテルは鉄パイプで弾いて応戦した。

 しかし、今度はスピードという力が働いている。 下手したら押し切られる可能性があるため、弾くと同時に真横に跳んで回避する。

 

「・・・・・」

 

だが少女はすぐさま身を翻し、テルに向かって刃を振るう。 先ほどとは違って、またスピードを上げている。 回避などさせない気だ。

 

地面と空、縦横無尽に対応した戦い、相手は戦いを知っている。テルはそう思っていた。

 

「チートっていうレベルじゃねぇぞ・・・」

 

弾き際、いったん距離を置いたテル。 しかしその足場には自身の血が少しばかり流れていた。

 

「だ、大丈夫なんか・・・」

 

その姿を見てか、遠くの咲夜が心配そうに伊澄に聞く。 だが伊澄は動じることなく答えた。

 

「大丈夫よ咲夜・・・テル様はやる時はやる人です」

 

それはお互いを信頼しているから発せられる言葉だった。

 

 

「・・・・」

 

どうやらテルが何か閃いたか先ほどとは違い、冷静な顔で相手を見据える。

 

相手はまたしても空からの滑空攻撃を仕掛けてきた。 ここまではテルの予定通り。

 

体を静め、頃合いを見計らったのを見てテルは片腕でゴルフボールを打つ要領で地面を穿った。

 

「オラァァァ!!」

 

鉄パイプにより生み出された砂埃が少女を包む。 少女は砂埃でテルを見失ったか、滑空をやめてその場に降りた。

 

「喧嘩は真正面だけじゃねぇーんだぜ!!」

 

その背後から砂埃に紛れてテルが現れる。 これは完全に隙をつけた。相手はまだ気づかないでいる。

 

これで終わらせる。 そう決めて鉄パイプを振り下ろした・・・だが。

 

ガチンッ。

 

と、金属同士の衝突による鈍い音が響く。 

 

「な・・・ッ」

 

鉄パイプは少女に触れられることなく防がれていた。 両肩から生えた黒い腕によって、鉄パイプは防がれていたのだ。

 

これにはテルも唖然とせざるを得ない。 相手はこちらにまったく気づいていない状態でガードをしたのだから。

 

「・・・・・」

 

その一瞬の隙を少女は好機だと感じたのか、黒い刃物をさらに変形させる。 

 今度は黒い剣。 しかし、武士の使う刀とは比べ物にならない長さだ。 西洋でいう長剣の類だろう。

 

少女は片足を軸に、まるでコマのような体を捻りながらしながら不向きざまに真横に長剣を振るった。

 

「やべ・・・」

 

反射的に体を鉄パイプでガードしたまま後方に

飛び退く・・・だが。

 

バキンッと聞きなれない音がした。 それは自分の右手にあるパイプが発した音である。

 

鉄パイプが真っ二つに折られていた。

 

まともに鉄パイプで受けたのが原因か、テルの体がまるで紙のように吹き飛ぶ。 地面に転がったテルは頭を押さえながら上半身だけを起こして体制を立て直そうとした・・・・その時。

 

バシュッ。 

 

何かが自分の体から勢いよく吹き出す。 最初はまったく分からなかったが血だ。 それはまるで噴水のごとく飛び散り、地面には真っ赤な血がべっとり。 

 

胸から一閃させられた傷は思ったより深く、そこからは物凄い勢いで血がドクドクと流れていた。

 

心臓が波打つたびに血の出る量が変わる。 それを見ていたテルは青ざめた表情をしていた。

 

「オイオイ・・・これマジヤベェって・・・・!!!」

 

恐らく、この瞬間が最大の好きだったであろう。 こともあろうに、テルは少女が眼前に迫るまで気づいていなかった。 

 翼を広げて地面から動けないテルのすぐ上で黒い長剣を構える姿が目に入った。

 

当然、反応することも叶わなかった。

 

ズブッ。 といテルの腹部に長剣が深々と突き刺さった。それは体の肉の影響を全く受けないくらい滑るように体を貫き、地面にも突き刺さる。

 

ズドンっと衝撃が体を駆け巡ったとき、テルは盛大に口内からは血を吐き出した。、その少女にもその血がかかる。 

しかしべちゃ、と顔についても少女は血をふき取るどころか、その無表情を崩すことはなかった。 

 

全てを吸い込んでしまいそうな空色の瞳を持つ少女はこの時は死神と呼ぶに相応しい。

 

 

地面に縫い付けられるように動けなくなったその姿は串刺しという言葉がピッタリなぐらい、残酷な絵図だった。

 

「あ、ああ・・・」

 

咲夜が目をそらす中、伊澄が肩を震わせる。 そして変わり果てた自分の大切な人の姿を見て神社に悲痛な叫びが響いた。






後書き
実は敵の少女の動きとかはABの天使を参考にしてたり・・・

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