ハヤテのごとく!~another combat butler~   作:バロックス(駄犬

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マラソンが終わり、次は原作にあった執事クエストのお話です。 ほとんどテルsideで進んでいくのですが、原作にあったハヤテとシスターのお話はカットです。 質問や意見はいつでもお待ちしています。


第29話~執事クエスト、その執事アホにつき~

マラソン大会後日―---。

 

 

「ぬおりゃああああああああ!!」

 

三千院家邸にて、一人の男の雄叫びが響きわたる。

 

 

「ヒッ!」

 

物語は冒頭部分に相応しくない様な破壊音から始まる。 ここは執事長のクラウスの部屋。

その部屋は今はとんでもない光景に見舞われていた。

 

執事長の机に一本の竹ぼうきが貫通して突き刺さっている。 それを見て、クラウスが身を震わせていた。

 

「オイオイオイオイ、俺は聞ぃてねぇぜ。 いつの間にハヤテがクビになったなんてよぉ」

 

目を覚ましたテルが最初に聞いたこと、既にハヤテが屋敷から出て行ったという情報だった。

突然だっただけにテルはそれを聞くや否や箒をもって、クラウスの所へ・・・といった感じ。

 

「ち、違うんだ善立!!」

 

「なぁにが違うってぇ・・・・?」

 

堂々と執事長の机に立ち、ドスを利かせた声でテルは言う。

 

「テルくん落ち着いてください!!」

 

マリアが離れた場所で沈めるように促すが

 

「このとんでもねぇ不景気の中で、アイツが一人でやっていけるってのはまず無理だ。 目的達成できなかったら『君もういらんよ』と言われたサラリーマンの気持ちがテメェには分かるかァァァァ!!」

 

「善立!落ち着いてくれ!! イヤ、マジで!!」

 

「世の中不景気三昧の社会人たちの怒りを、俺がお前にぶつけてやる!!」

 

「いやもうソレ八つ当たりの何物でもないからな!!」

 

クラウスのツッコミも構わず、テルは突き刺さっている竹ぼうきを引っこ抜くと執事長に一撃を食らわそうという執事最大の暴挙にでる。

 

ガツンッ!!

 

しかしその暴挙はマリアのカナヅチの投擲により止められた。

 

「ま、マリアさん・・・カナヅチの使い方を間違えてますよ?」

 

頭部に見事クリーンヒットしたか流石に痛がるテル。

 

「人の話をよく聞いていないからですよ? もう一発、あげましょうか?」

 

「いや、もう、勘弁してください・・・」

 

笑顔でカナヅチを構えるマリアを見て、もう抵抗する気はないといったテルだ。

 

「テルくん、まだハヤテくんはクビなっていませんよ?」

 

「え?」

 

その一言に、ようやくテルは耳を傾けて動きを止めた。

 

「だから、もう三日もたってるんですよ? マラソン大会から・・・」

 

「マジすか?」

 

テルは髪の毛をクエスチョンマークに変えて何がなんだか分からない状態だ。

 

掻い摘んで説明、実はテルは気絶した後、見事に三日間は眠っていたのだ。 船の事故の怪我がまだ完治していない状態での無理な運動。 これが原因だというのは言うまでもない。

 

その三日間の間にも当然のように物語は進んでいく訳で、ハヤテは執事復帰を目指して「執事とらのあな」に出かけている。

 

「なるほど、要は再教育センターに送り出されたようなもんですね」

 

「まぁそんな感じですね・・・・」

 

「んで、ナギが居ないのはそれですか?」

 

「はい。 何でも急に執事とらのあなに行くと言い出して早一日。 一緒に今居ると思うんですよね」

 

「なるほど・・・・」

 

ふむ、といった感じでテルはゆっくりと部屋から出て行こうとするが・・・・

 

「待ちなさい」

 

ガシッとテルの首を掴むのはもちろんマリアだ。

 

「あの、マリアさん、ちょっ・・・痛いッス」

 

「まずはダメにしてしまったクラウスさんの机を片付けてください・・・」

 

「いや、その前に・・・このままだとヤバいんじゃないですか・・・・って」

 

「何がですか?」

 

「なんかこのままだと咽喉切断とかに、なりそう・・・です」

 

「ついでに肋骨も開放性骨折にしましょうか?」

 

その笑顔は今までで一番恐ろしかったという。

 

その光景を見ていたクラウスはある疑問を抱いていた。

 

(アレ・・・私はクラウス、執事長。 でも部下の執事にキレられてるのにそのハウスメイドに頭が上がらない・・・え?私執事長なのに?)

 

クラウスはこの上なく自身の扱いを嘆いたそうな。

 

 

 

 

取り敢えず、片付けが終わった後にテルはその足を白皇学院に向けていた。 

マラソン大会から数日あけてとのこともある。 もうあの時の盛り上がりは微塵も残っていなかった。

 

テルがマリアに命じたこと。 まず、執事とらのあなに赴き、ハヤテ達の様子を見てくる、と言った所だ。

 

しかし、学院に来たところで何もないわけだが。

 

「イヤこれは別にハヤテ達が帰ってくるまで白皇で時間を使うとか、そんなことを考えている訳ではないよテルさんは」

 

明らかに、本音が発せられていたのは言うまでもない。

 

「おや、三千院家の執事くんではないか?」

 

「ん?」

 

突如の声にテルは耳を疑う。 振り返るとそこには

 

「どうしてしまったのか執事くん。 気絶してから三日目だぞ、大丈夫か?」

 

凛としたその顔、黒髪。 テルには全く覚えがない。

 

「誰?」

 

「体に良いものはちゃんと摂取しているんだろうな執事くん。 そうだな骨を丈夫にしろ。 そうすれば粗方の不祥事には耐えれる肉体になる」

 

「いや、アンタ誰?」

 

「む? 顔色がよくないな、目もどちらかと言えば死んでいる。 これはビタミンが足りていないと見た」

 

「オイコラ、悪口だろ? 明らかに悪口だろ?」

 

もはや止まることのないエンドレス。 それを打ち破ったのは相手だ。

 

「というか、君はだれだ?」

 

「オオオオオオィ!! 明らかに知ってるように話しかけてたよなァ!? それで今更他人ぶるなよ!!」

 

「あまり怒るでない、ストレスが溜まっているな。 カルシウムだ、カルシウムを尚更とるんだ。 そうすれば万事うまくいく」

 

「話を聞いてくれぇぇぇぇ!! 話が進まないんだヨォォォ!!」

 

んでもって。

 

「まぁ冗談はよしとして、私は奈津美 唯子だ。 君じゃないもう一人との執事も知っている者さ」

 

「最初からそんな感じで話してくれよ・・・・」

 

若干疲れ気味のテルはげんなりとため息をついた。 それを見て、唯子が口を開く。

 

「まぁそういうなテルくん、ハヤテくんの情報なら私は知っているぞ?」

 

「・・・・マジで?」

 

テルのその反応を見てか、唯子もにやりと笑った。 そして続ける。

 

「執事とらのあなは知っているな?」

 

「まぁ・・・・」

 

屋敷で聞いた単語を再びここでリピートし、テルは頷く。

 

「どうやらハヤテくんは『執事クエスト』にて最終試験を受けるらしいが、その仲間集めをしている真っ最中らしい・・・・」

 

「まさかそれはあの四人でパーティを組んでダンジョンを進んでいくというトルネコも真っ青な伝説的な・・・」

 

「流石は三千院家の執事くん・・・なかなかの推理力」

 

唯子はそのまま続ける。

 

「その試験だが、何やらおかしな噂が流れていて・・・・」

 

「おかしな噂?」

 

「ああ。 何か、過去にとらのあなは確かに存在していた・・・が、もう既に存在していないらしい」

 

「あ!? なんでだよ」

 

唯子の発言にテルは目を丸くした。 唯子はきょとんとした顔で

 

「そりゃ、執事ってあんまり居ないからだろ?」

 

と言い放つのだった。

 

「んで、君がこの話を知らないということは、当然、外部からの情報をシャットアウトされているハヤテくん達も知らないわけだ」

 

確かに、とテルは思う。 この不審な動きを、マリアやクラウスたちが知らないはずがない。 あの二人が気づかないとなると

 

「まるで何か誘い込まれたかのよう・・・・な」

 

唯子の一言にテルが反応する。 

 

罠。そんな言葉が頭を過った。

 

「これはもしかすると・・・・」

 

「うむ、大事なのは間違いない。 既にハヤテくん達はパーティも決まっていて、もうクエストの試験に向かったそうだ」

 

「遅かったか・・・・」

 

「そこで・・・・だ」

 

唯子がこの時を待っていたかのように笑みを浮かべる。

 

「当然、君も行こうと考えているわけだ」

 

「まぁ、罠だとわかっていようがいまいが、様子を見て来いと言われているからな」

 

先ほどその職務を放っておいた人間とは思えない。

 

「その罠だが、敢えてその罠にかかってみないか?」

 

唯子の意味不明な言葉に、テルはん?と唸る。

 

「その罠を打ち破るんだよ。 中から直接入って堂々とな」

 

「アンタも来る気なのか?」

 

「無論、そのつもりでいる。 その方が私的には面白いからな」

 

まるでこの出来事を楽しんでいるかのようだ。 まるで動じていない。 気ままに動くマイペース、楽天家とはこのことか。

 

「どうなっても知らねぇぞ?」

 

テルは当然のことのように言う。 三千院家を罠にはめる。それは殺しの類の人間側が絡んでくるはずだ。 怪我しに行くようなものだ。

 

「大丈夫だ。 こちらも集めるのだよ。 エ○ンの戦士たちを・・・」

 

こうして仲間集めが始まったのだった。

 

 

 

 

「・・・・んで? 私のところに来たと・・・」

 

「その通りだ会長」

 

テルたちは生徒会室に直行した。

 

何故か、理由は簡単である。 その強さだ。

 

ヒナギクはもはや初期の状態からでもバトルマスターにつき、果ては勇者の職業に就くこと間違いなしの能力をもつこの人物を、仲間にしないわけではない。

 

「まぁ、バーサーカーも真っ青のその戦力が欲しいというわけだ」

 

「それはどういう意味かしら」

 

ヒナギクが額に青筋を浮かべている。

 

「でもまぁ事情はわかったわ・・・」

 

しかしここで、テルも一つの疑問が浮かぶ。 ハヤテもヒナギクの戦力はのどから手が出るほど欲しいはずだ。同じ行動をしたのではなかったのではないかと。

 

「でも吊り橋一つも渡れない私が力になるかしら?」

 

ヒナギクの言葉にテルが顔をしかめる。

 

「だって大変なんでしょ? それなのに……」

 

「あの、会長さま?」

 

改まってしまうのはヒナギクの目だ。

 

笑っている、笑っているのだけれど……

 

「吊り橋一つ渡れない女よ?」

 

――なるほど、ハヤテがコイツをスカウト出来なかった理由が分かった。 でも俺なんかしたっけ?

 

 

どこまでその話で押すのか。

 

「ねぇ………」

 

(恐エェェェェッ!! やべーよ、なんでこんなに怒ってるんだよ!)

 

その瞬間、唯子がテルの襟首を掴みヒナギクに背をむけるように引っ張りよせた。

 

「時にテルくん、ヒナギクくんに何か怒られるような事をしたのか?」

 

「知らん、まったくもって……」

 

「じーっ……」

 

 

ひそひそ話を眺めるヒナギク。

 

「こえーよ、なんであんなオオカミみてぇな目になってるの? やべーよ、狩られちまうよ、ジ〇オウガも真っ青だよ。俺なんかした?なんかしたのか俺、というかもう一人の・・・俺・・」

 

「ヒナギクくんの心の傷みたいなものに触れたとか、襲ってしまったとか?男はオオカミだというし……」

 

「いや、俺はアイツを襲うなら確実に重火器が必要だと思う。 後、オオカミは多分、俺じゃなくてアッチだろ色んな意味で」

 

 

「コソコソ話してんじゃねぇーよ」

 

 

え? と唯子とテルは耳を、自身の聴覚を疑い、ヒナギクが声を不良のごときドスのある声を利かせているのを確かに聞いた。。

「ゴホン・・・冗談よ」

 

((これだッッッ!!!))

 

二人は目を合わせ、ある作戦を思いつく。

 

「ヒナギクくん!!」

 

「ひゃ、ちょ! 唯子さん!」

 

咳払いしたヒナギクに唯子が涙を滝のように流しながら抱きついた。

 

「冗談でも止してくれェェェ! 君はありのままの君でいいんだ! 君は大〇 涼子ではなく、桂 ヒナギクだろう!!」

 

「冗談ですって唯子さん……」

 

「いや、冗談じゃ済ませられないかもしれないぜ?」

 

そう言うのはテルだ。

 

「簡単な話だ。 これはギャップ効果によく似ている……」

 

テルは頭を掻きながら続けた。

 

「本来の人格が定着している人間が、突然別人のような振る舞いをする……しかしそれは不思議な事じゃない……が」

 

少しばかり間を置いた。

 

 

「確実にパターンある反応を見せる人間がいる……ある者はギャップ萌し、ある者はその人間の裏の人格を知る……」

 

「一般生徒ならあまり気にはしない……が君は生徒会長だ。 トップの人間が与える影響は計り知れない――」

 

ニヤリと唯子とテルはお互いに浮かべた。

 

「どうする、作者が感想ボックスを開けた瞬間、今回のお前の言動に対して抗議の感想がやって来るかもしれないんだぜ?」

 

 

「そ、そんな……私ってそんなに影響力あったなんて……」

 

 

((自覚無かったのかよ、人気投票連続1位……))

 

「まぁ、我々に協力してくれれば忘れよう。 水に流そう。 記憶喪失にもなろう。だが――」

 

唯子は腕を組ながら続けた。

 

「協力しなかった場合、君の知人、家族、果ては一般人に明かそう! ヒナギクくんは泣く子も黙るオオカミさんだという事を!!」

 

「ちょっと、それは脅迫ですよ!!」

 

ヒナギクが抗議の声をあげるが、唯子とテルの物凄い悪い顔に言葉を詰まらせる。

 

(ダメだ……この2人には何言ってもダメな気がする……)

 

 

そう結論づけたヒナギクだった。

 

「よし、急いでハヤテくんの所に行くぞ。 彼のクビが掛かってるからな」

 

 

「え?クビ?」

 

 

その言葉を聞いて、キョトンとしたのはヒナギクだった。

 

 

「アレ? あんまり事情を聞いてない?」

 

テルの言葉にヒナギクは戸惑った感じで頷く。

 

 

―事情説明。

 

 

「そうだったの……」

 

まさかここまで大事に話が進んでいるとは知らなかったヒナギク。

だから先ほど、自分を頼ってきた理由に気付いた。

 

「困ってるなら素直に困ってるって言えばいいのに……」

 

む~と瞳を吊り上げるヒナギクはそう呟いた。

 

「なんだヒナギクくん? 彼が気になるのか?」

 

「ゆ、唯子さん! 違いますって!」

 

「あ~、やはり君は素直じゃない! 素直じゃないなァァァ!!だがそれがイイ!!」

 

唯子は顔をニヤニヤさせてヒナギクに後ろからもたれかかるように抱きつく。

なんだコレ。

 

 

「オーイ、もう行こうぜ?」

 

テルは溜め息をつきながら呟いた。


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