ハヤテのごとく!~another combat butler~   作:バロックス(駄犬

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プリンは皿にのせて食べるか。 それともカップに入れたまま食べるか。 ・・・正直どんでもいい。






第23話~不幸の度合いは人それぞれ~

「コラァ! 私を離しなさぁぁぁい!!」

 

船の上で起きたバカ騒ぎは三千院家、愛沢の優秀な使用人たちによって治められたかに見えた。

 

だが状況は一変。 テロリストたちの一人が煙幕を使い人質にマユミが取られてしまった。

 

「お前ら、近づいたらこの小娘の命はねぇぞ!!」

 

男はがっちりと腕をマユミの首にまわし、身動きが出来ないようにしている。 さらには懐からナイフを取り出してマユミの首元に近付けた。

 

「むぅ・・・卑怯な」

 

クラウスが眉をひそめる。流石の使用人たちもこれでは身動きができない。下手に動けばマユミの命が危ない。

完全に裏をかかれた。 失策だ。

 

「こら! 人質にはこいつがなると言っていたではないか!! はやくマユミを離すのだ!!」

 

「だからその話まだ続いてたんかい! 」

 

指さすナギに隣の咲夜は猛然と突っ込む。

 

「お前らほんとに緊張感ない奴らだな」

 

「「お前にいわれたくない!!」」

 

テルのつぶやきを見逃さず、ナギと咲夜は二人で突っ込んだ。

 

「ぐぬぬぬぬ・・・・」

 

マユミを人質に取っていた男が心底苛立っているようだ。 まったくもって緊張感の欠片もない状況に歯をかみしめる。

 

「お前らァァァ! この小娘がどうなってもいいかって聞いてんだろうがァァ!」

 

ついに耐えきれなくなった男が一同に向けて叫んだ。 テルはうーんと唸ると素っ気なく

 

「え? いいんじゃね別に? キャラもここらで減らして人数合わせみたいなかんじでいいじゃん?」

 

「あなたを海の藻屑にしてやろうかしら!!」

 

テルの一言にマユミが額に青筋を浮かべて叫んだ。

 

「くそ! 無事に助けたいんだったら、綾崎 ハヤテを連れてこいってんだ!!」

 

「なんでハヤテなんだよ・・・・」

 

「おそらくあれから暫くたって知れ渡ってる頃やろうからな・・・・」

 

「知れ渡ってるって・・・何が?」

 

テルの問いに咲夜が説明をものを言わせず15秒で説明した。

 

「なるほど。 あいつ狙われてんのか・・・・」

 

「ま、不幸にまみれるのはあいつの専売特許だからな・・・」

 

ナギが隣でうんうんと頷く。

 

「あいつを倒すためなら手段は問わないといわれている!!」

 

「手段は問わない? 誰に?」

 

「え? そりゃうちのボスに・・・・」

 

テルの誘導尋問にまんまとひっかかって男は喋ってしまった。

 

「おいおい、証拠一つにすべて自白とはな・・・・」

 

「まったくや。 今時火サスでもなかなかあらへんで?」

 

ナギと咲夜の言葉に男は言葉を詰まらせてしまう。 しかしそれを振り払うかのように男はナイフを振り回した。

 

「うわっ! 危ないじゃないの!!」

 

マユミが驚いた表情で身をよじる。 男はさらに興奮状態が続いている。 あまりにも危険な状態だ。

クラウス達やナギ達も固唾をのんで見守るしかないと思われた。

 

「あー、あーテロリスト君、早くそいつを離した方が身のためだ」

 

しかしこの状況で不意にもなりふりを構わない男がいることをお忘れなく、テルだ。

 

「お前、言ってたとが分からないのか?いうことを聞かないならこいつの命は・・・」

 

ギラリと刃物をちらつかせテルを睨みつける。 しかしマユミは特に恐怖を覚えたような表情はない。それはテルにも分かっていたことだ。

 

テルは頭を掻きながら続ける。

 

「いや、ほんとに考え直した方がいいって」

 

だからなんだと言わんばかりの勢いだった男だったが、ここでテルの背後からゆっくりと何かが現れる。

 

ゆっくりと動き出したもの・・・それはシュトロハイムだった。

 

「・・・・」

 

身長が2メートルにも達するかもしれないほどの巨漢は、まっすぐにマユミへと近づいていく。

 

その瞳はまるで鷹のように鋭く、気高く。

 

まさに狩るものの目をしている。

 

咲夜はさっきと打って変わったシュトロハイムに戸惑っていた。 さっきまでは陽気な温厚の執事が、今はまるで眼光を赤くしたザクのモノアイのようにギラつかせている。

 

「お、おい!お前・・・」

 

咄嗟に我に返った男だが途中で言葉を詰まらせた。 その畏怖をも覚えさせてしまう威圧感に、男は言葉を失ったのである。 

 

鷹のような瞳がマユミから男へと変わる。 その瞬間、背中がゾッと凍りつき、あまり寒くはないのに、汗はだらだらと流れているのに歯がガチガチと震え始めた。

 

「・・・・・」

 

無言のままシュトロハイムは近づいていく。 手袋をした右腕に力が入る。力を込めた右の拳は測定不能の握力によりさらに肥大化したように見えた。

 

「お・・・おま・・・いま・・こいつが・・どうなる・・・・か」

 

男がようやく発した声はおそらく遠くのテルたちには聞こえないくらいのものだ。 完全に恐怖で言葉が発せられていない。 ガチガチと震えているのは口だけではない。 ナイフをもっている手も小刻みに震え始めた。

 

本来なら人質をとっているこちらが有利のはずだと男が思っていた。 しかいどうだろうか、シュトロハイムは静かに静かに呟く。

 

「やってみろ」

 

その一言はもはや警告に近い。

 

シュトロハイムはゆっくりと拳を、突き出すためにテイクバックをとる。

 

より深く、より強く、より破壊力を生み出すために。

 

 

彼の、シュトロハイムの左腕はある事件を境に全く動かなくなってしまっている。 

 

片腕だけの執事が主を守れるだろうか? 難しいだろう。

 

だがシュトロハイムは自身の決意、友との約束のために何が何でもマユミを守るために片腕だけでも守ることを考えた。

 

それがこの右腕だ。

 

「・・・・ッッッ!!」

 

男は黙ってシュトロハイムの一挙一動を震えながら見ることしかできなかった。 やがてテイクバックがとまり、ピタリとシュトロハイムの動きが止まる。

 

タメは終わった。

 

 

実戦空手の父。 大山倍達はかつてこう述べている・・・・

 

 

『体重×スピード×握力=破壊力』!!

絶対破壊の方程式!!

 

突き出された拳が男の顔にピンポイントに突き刺さる。 若干、ねじりを加えた拳にそって男も回転方向に捻じれ、弾丸のような回転をしながら壁に叩きつけられた。

 

ドガッっという破壊音。 壁はもう機能を果たしてらず巨大な穴が開けられていた。

 

「威力は抑えました。 死んではいませんよ」

 

拳を自身の息でふうと払うとマユミに駆け寄り、膝をついてかがみこんだ。

 

「お怪我はありませんかお嬢様?」

 

 まるで父親のような心配のし方でマユミの体に傷などがないかチェックする。 何事もなかったかのように確認するとシュトロハイムはため息をついた。

 

「まったく、日野寺の頭首が人質にとられるとはまったくもって不用心です」

 

今度は叱るようにマユミに言う。 はたから見れば完全に父親だ。

 

「不用心ではないわ。 だってあなたが助けに来てくれるもの」

 

マユミはそれに対して屈託のない笑顔で返す。シュトロハイムはまたため息をついた。

 

「やはり大変ですな執事というのは・・・・」

 

「あなたが自分で選んだ道でしょ?」

 

別の意味で頭を垂れるシュトロハイムにマユミはくすくすと笑った。

 

「えらい仲のいことだなオイ」

 

「ホンマやな、親子みたいでええけどウチなら絶対反抗期迎えられへんで?あの姿をみてまうと・・・」

 

咲夜にとってのシュトロハイムの印象は先ほどで大きく変わってしまったようだ。

 

「取り敢えず、あいつ等縛り上げて吐かせるだけ吐かせるか……」

 

 

「なら頼むぞ」

 

ナギの言葉に頷くとテルは倒れているテロリストに走っていった。

 

 

その後、事態が収まった為に甲板のテル達はテロリスト達を縛り上げていた。

 

 

「まったく世話かけさせる奴らだな……」

 

シュトロハイムが一層にきつめに縛り上げている。

 

「イタタタタ! お前ら、余り調子にのるんじゃないぞ」

 

テロリストの一人が反抗的な声を上げた。

 

「ああ? 今どっちがお前らの主導権握ってんのか分かってんのか?」

 

「テル殿、悪役のセリフがお似合いですな」

 

シュトロハイムが陽気に笑った。 先ほどの怒りモードはすっかり無くなっている。

 

(くくく……完全に油断しているな、まだ最後の手段が残ってるんだ!)

 

 

男は縛られた手に隠していた握って隠せるぐらいの物を取り出し、スイッチを…………

 

 

押した。

 

 

その瞬間、耳の鼓膜が震える程の爆音が発生した。

 

「うおっ!? なんだ!?」

 

爆発とともにテルはバランスを崩して床を転がる。 船全体が揺れているのだ。バランスが崩れて当然だろう。

 

「爆弾が仕掛けられていたのか!?」

 

「やっぱりデザインがアレやったからかな~」

 

「んな事いってる場合か!? 」

 

頭に手をやる咲夜にナギが叫んだ。

 

爆発が数回続いていた事が振動で分かることから恐らく複数の爆弾が最初から仕掛けられていたのだ。

 

 

ちなみに仕掛けた張本人は後にすぐ爆発が起きたので巻き込まれて気絶中。

 

 

「おいサク! ハヤテや伊澄は見つかっているのか!?」

 

ナギが口にしているのは勿論この場にはいないハヤテと伊澄の事だ。

 

咲夜は首を申し訳なさそうに横に振った。

 

「あかんな……急いで回収しないと危ないで?」

 

咲夜も焦りを感じてはいた。 爆発直後の事なのでまだ船が沈むとは分からないが

 

 

「問題はハヤテよりも伊澄か……」

 

「まぁそれもあるがどっちもどっちだろ、この場合……」

 

テルが顎に手をやるとナギが冷静に返した。

 

 

使用人たちも救命ボートに客達を乗せたりと大慌てだ。

 

 

「ふむ。 私達も人名救助に進んで手伝いますか……マユミお嬢さまは早めにボートへ」

 

シュトロハイムも崩れていたバランスを整える。

 

「私にもなにか手伝える事はないかしら?」

 

マユミはシュトロハイムの言葉を無視してナギや咲夜と向き合っていた。

 

「お、お嬢さま!? 危ないですから早くボートに……」

 

 

「アナタなに言ってるの!?」

 

慌てるシュトロハイムにマユミは若干怒り混じらせて返す。

 

 

「人の命が掛かってるの! 目の前の人達を助けれないで日野寺家が復活できるか!!」

「なんや、やけに熱心な子やないかい……」

 

「サク、あいつはそういう奴だ……」

 

ナギの言葉になるほどなと頷くとポンと手のひらを叩いた。

 

「まぁそう言わずにな、執事の言う事はちゃんと聞かんとな?」

 

「あなたに言われる事は……」

 

マユミはムッとした顔になるが咲夜は笑いながら続けた。

 

「アンタの心配しとるんよ。ウチらもあの執事もな」

 

と、咲夜はシュトロハイムに目をやった。

 

「……分かったわよ」

 

マユミは少しばかり考えて、渋々咲夜の言う事を承諾した。

 

咲夜はニコッと笑みを浮かべてマユミの頭を撫でた。

 

「うんうん。この上なくエラい子やないか、ナギにも見習ってもらいたいものやな~」

 

 

陽気に笑っているとマユミは直ぐに咲夜の手を払ってボートに走っていった。

 

「シュトロハイム、怪我人がいるかもしれないわ。 ウチの医療スタッフを支給回しなさい」

 

「御意」

 

シュトロハイムはそう頷くとマユミの後ろをついて行った。

 

 

「上手く操ったな……」

 

「こう見えても家ではお姉ちゃんなんや。下の子の面倒は得意やで?」

 

 

テルの言葉に咲夜はえっへんと言った顔で言った。

 

 

「テル君、ちょっと……」

 

「アレ? マリアさん?」

 

今までどこにいたのか分からなかったマリアがいきなりテルを呼び出した。

 

 

「マリアさん、どうしたんですか? 今までどこに……」

 

「そんな事よりテル君、ハヤテ君と伊澄さんが居ないのは知ってますね?」

 

「はい、さっき聞きました」

 

「そうですか……何かが起きる前に早く二人を探してきてくれませんか? 時間もあまり無いので……」

 

「時間?」

 

時間という言葉にテルが反応する。 マリアはそれに答えるように続けた。

 

「犯人がわざわざパニックにさせるためだけに爆弾を仕掛けたりはしません。 多分沈ませるのが目的かと……数は5から6…しかもC4なので……」

 

「要するに船が沈むから早く二人を連れてこいと?」

 

「理解が早くて助かりますわ♪」

 

マリアは笑顔で返すとスッと踵を返した。

 

「ついでに相手のボスの方を捕まえてきてくれれば文句は無いのですが……」

 

 

「いや、直接犯人達のボスが現地にいるとは限らないでしょ……」

 

テルが頭を掻きながら返すが最終的にはそのボスを捕まえなくてはならない。 テルは唸って承諾した。

 

 

「じゃあ行ってきます……」

 

「行ってらっしゃーい♪」

 

まるで我が子を見送るようなワンカット。 テルは走りながら船内へと駆けて行く。

 

 

 

 

 

ゴゴゴ……

 

船内の中でもかなり下の方にある広い場所が地震のような唸りを上げている。

 

「痛たたた……なんだ…? 急に爆発なんて…」

 

爆発によって吹き飛ばされたハヤテが瓦礫の中から這い出てきた。

 

「まさかやっぱ氷山に当たった? この船デザインがアレだから何かあったら……」

 

瓦礫を押しのけてながら歩いていたハヤテはある異変に気付く。

 

「アレ? なんか海水が真っ赤に見える……」

 

何故か視界が真っ赤になっていたので目を擦ってみると、腕には夥しい程の血が……

 

 

「うあ!!なんだこりゃ!? いっぱい血が出てるよ!!」

 

(いやいや落ち着け落ち着け……どーせいつものように次の行では何もないようになる! 実際なんともないッ!!)

 

自身に自己暗示を掛けるハヤテはその場でヒンドゥースクワット開始。 体の丈夫さをアピール。

 

 

しかし……

 

「ばふっ!!」

 

当たり前の事だが出血が酷くなった。

 

 

「だ――!! そんな冗談言ってる場合じゃないよ!! と…!! とにかく止血しなきゃ!!」

 

 

慌ててハヤテは辺りを見渡すが周りには使えるような物は一つもない。

 

ハヤテはパニック状態を緩和するために落ち着いて状況を整理する。

 

爆弾の数や種類、仕掛けた意図などをどこからか学んだか分からない知識をフル使い、考察した結果は沈没だ。

 

「凍てつくようなこの1月末の海に……」

 

身を震わす程の寒気が襲ってくる。 出血状態で水の中に入るとは自殺行為もいいとこだ。

 

 

(とにかくどんどん水が入ってきてる…お嬢さまが心配だ。上に戻ろう。 幸い後ろが階段で良かったよ)

 

ハヤテは真後ろにある階段に足を掛ける。

 

(危ない所だったな……)

 

どんぶらこ。

 

(この出血でこんな冷たい水に入る事になったら…ホント…)

 

どんぶらこ。

 

「死んじゃ――」

 

どんぶらこ。 その言葉が繰り返される後方に目を向けると水で溢れている場所に箱に乗った伊澄が流れてきた。

 

 

「………」

 

「………」

 

 

ハヤテは状況を理解するのにワンテンポ置いた。

 

「で――!! 伊澄さん!? な!! なんでこんな所に!?」

 

 

「それは……」

 

「聞くまでもなく迷子ですね!? てか大丈夫ですか!?」

理由を聞くだけ愚問だと考えられる。 今は木材の箱の上に居て浮いているがいつ沈むか分からないこの状況で危険は避けたい。

 

「待っててください!! 今すぐに助けを――!!」

 

と伊澄の所に向かおうとした時、体が急に止まった。 体が危険信号を放っている。

 

「…………」

 

ハヤテが止まったのは目の前に広がる海水だ。

 

 

この辺りの冬の水温は三度だそうです。

 

出血で体温が下がってる時に冷たい水に浸かると死ぬそうです。

 

 

 

 

「ぜぇ…ぜぇ……」

 

ナギ達のいる反対方向。 テルは勢い良く船内から外に繋がる扉を開けた。

 

 

「おーい、伊澄、ハヤテ―」

 

辺りに声を掛けるが当然返事はない。

 

「オイオイ、このままじゃ冗談抜きでディカプリオの最期みたくなっちまうっつーのに」

 

 

息を整えてテルは呟くが焦りは見える。

 

「アイツらどっちも憑いてそうだからな……」

 

 

憑いていると言っても伊澄には幸運の女神がハヤテには死神が憑いていると言ったほうが確実だ。

 

 

「俺には一体どんな女神が憑いているっていう話だが、まぁいいか……」

 

自分に憑いているのはなんなんだと議論をしようと考えていたがそんな隙はない。 再び船内に引き返そうとしたその時だった。

 

 

テルの目に謎の光景が飛び込んできた。

 

「………」

 

「もぐもぐ…」

 

テルの目に映っているのは一人船の料理だったフライドチキンを食べている女性だった。

 

しかし注目するべきは服装だろうか。 紺色の上から下が繋がっている、さらに首から十字架を下げており、端から見てもその姿はシスターらしい。

 

 

(なんでこんな所にシスターが……避難出来なかったのか?)

 

こんな状況だ。 避難に遅れてしまったと考えるのが普通だろう。 テルは声を掛けた。

 

「そこのアンタ、飯食ってる場合じゃねぇぞ、早く避難しろ」

 

「もぐもぐ……」

 

「あのぅ……」

 

「もぐもぐ……」

 

「もしもしィィィッッ!!」

 

「む……」

 

大声にようやく気付いたのかシスターは食べていたフライドチキンを飲み込む。

 

 

「どちら様で?」

 

「それはこっちの話だァァァ!!」

 

まるで今まで居なかったようにシスターは自分の世界に没頭していたらしい。

 

 

「よほど食べるのが好きなのかよ。ならいっその事ファミレスにでも行ってお子様ランチを注文したらどうだ?」

 

シスターは持っていたティッシュで口元を拭くと

 

「あんなチャラついたオカズに興味はありません。 どちらかと言えば、私はお金の方が大好きです」

 

「ぶっちゃけやがった……物欲にまみれたシスターだな」

 

肩を落としたテルだが気を取り直す。

 

 

「向こうで三千院家やらの使用人達が避難させてるからアンタも早く乗った方がいいぜ?」

 

 

「三千院家?」

 

シスターはその言葉に反応する。

 

「……その服から貴方は三千院家の執事と見受けられますが?」

 

「まぁそうだな。 一応三千院家の執事だけど?」

 

テルの言葉に、シスターはくくくと口元で笑みを浮かべる。

 

「もう一人の執事さんはどうしたんですか?」

 

「ん? ハヤテの事か? 今は迷子らしいが……なんだよ、お前もハヤテ追っかけ組か?」

 

「まさか……でも、いいんですかね?」

 

 

「何が?」

 

先程とは変わってる雰囲気のシスターにテルも眉をひそめた。そしてシスターは言う。

 

 

「今頃は海の藻屑になってるかも知れませんよ? 私達が仕掛けた爆弾で」

 

「ッッッ!!?」

 

一瞬だけ、思考が停止した。 そして数秒の思考の後、ある結論に達する。

 

「あんたがテロリスト達を手配した犯人か!」

 

シスターは笑みを浮かべた。

 

「バルトさんも上手く爆弾を設置したんですね。 流石と言っておきましょう……」

 

「アンタを先にお縄につかせる事が今は最優先事項だな……縄という単語に他意はないけど……」

 

またしてもシスターは笑う。 次に向けられた顔は凄まじい殺気を放った笑顔だった。

 

 

「元々、正体が明らかになったところで貴方を逃がすわけにはいきませんよ……」

 

 

ア〇デルセン顔負けの笑みを浮かべるシスターはどこからかトンファーを取り出した。 棒にはトゲトゲが付いている。

 

 

「うわ、エグいの持ってんな、シスターの癖に……」

 

「今すぐあなたを天に召しましょう……」

 

トンファーが音を立てながら回転し始める。

 

 

シスターは振り回しながら突っ込んでくる。

 

 

執事はこの状況に苛立ちを込めた舌打ちをした。

 




テルとシスター。 ハヤテとナギ。 違う場所で迎えるそれぞれの危機・・・ってまぁ聞こえはいいですがシスターとテルの話は無理やりねじ込んだ感じです。 だからあまり内容が薄いかもしれませんがご勘弁を。

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