ハヤテのごとく!~another combat butler~   作:バロックス(駄犬

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 勢いがノッテ来たので投稿じゃい。
壮絶な、そして唐突な展開。


第142話~終わりの始まり~④

―――――少年は知るだろう。告げられた真実が残酷なものであったことに。

   全ては決められていたレールの如く、取り決められていたということを。

 

 

―――――避けられない運命、それを変える為に足掻いた男の前に立ちはだかるソレはあまりにも強大すぎたと。 

 

 

 

 

 

 

~終わりの始まり~④

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・居なくなる、だと? どういう意味だ、黒羽」

 

「・・・・」

 

 ギャグ寄りだった雰囲気が黒羽の一言で一変する。

 正直、後悔している。彼に、この自身の今後の事を話すことを。

 

 

 洗いざらい、この時を境に、黒羽はテルに向けて、言うのだ。

 

 

「私・・・・記憶が戻りました」

 

「・・・」

 

 何も答えない、いや、答えられないのだろう。

 恐らく、これはテル自身も予けんしていたことだ。

 

 

 

 過去のテル、白銀拓斗によって黒羽の記憶が徐々に蘇る魔法をかけて貰っていた。

 その魔法の効果は彼がこの世界から姿を消しても継続して力を発揮しており、黒羽が夢を見る際には、蘇った記憶が、その日の夢として現れる。

 

 かつて異形の力をその身に宿し、目的のためには手段を厭わなかった自分自身の姿。

 

 

 三千院家に敵対し、これまで世話をしてくれた人々に刃を向け、テルに関しては大怪我を負わせるほどの罪を犯した。

 

 

 だから、黒羽は今こそ理解できる。なぜ、伊澄が今日これまで自分自身にあれほどの敵意を向けていたのか。

 だれだって、好きな相手が目の前で串刺しにされる、その元凶がともに暮らしているとなれば、堪ったものではない。 

 

「私自身が生まれた意味も―――。 今まで、何をしてきたとか、これから何が起きるのか―――」

 

 夢の時間のような、そんな感じだった。これまでの、屋敷での生活、白皇学院での生活。

 

 

 空虚だった自分が得た、日常。 気兼ねなく談笑に付き合ってくれる友人たち。

 その全てが、徐々に崩れていくのをここ最近、黒羽自身は感じていたのだ。

 

 

 自身が持っていた力全てをこの場で出すことは、今は出来ない。 だが、このまま放っておけば、また自分は目的の為に行動し始めるだろう。

 これまで愛おしいと感じていた人々を、またその手に懸ける行為など、もう黒羽自身はやりたくない。

 

 

――――考えた故に彼女はテルに言う。

 

(だからこそ、彼に委ねる――――)

 

 

 今の自分は、能力を仕える、果たすべき使命がある、ということしか理解できていない。 

 その異形の力を行使することは出来ない。 今のこの状態しかないのである。

 

「お願いします」

 

 

 生殺与奪も含めた、黒羽舞夜はその全てをテルに委ねたのだ。

 

 

「決めてください・・・テル。 私が、私でいられる内に」

 

 時間が経てば、世界の変革が始まる事を黒羽は理解している。 だが、まだ本格的に始まってはいない。

 テルの覚悟を、黒羽は受け入れるつもりだった。

 

 

「なぁ―――――」

 

 

テルが重々しく、口を開いた。

 

 

 

 

 

 

「お前がここから勝手に居なくなってしまう、それはお前の勝手だろう・・・・だがそうなった場合、

誰が一番慌てると思う?」

 

「・・・・・」

 

「クラウスさんだ。 屋敷の使用人全体の管理を任されている人だし、あの人は新人が辞めたのは執事長である自分の責任だと負い目を感じて、まるでメインキャラの如くストーリーにやたら絡んでくるだろう。

でも今のアイツじゃ、読者にほとんど忘れ去られている上に原作のコミックの26巻以降でやっと喋り始める程度だ。 

そうなれば、読者が寄ってたかって作者を責める」

 

 

どこのスタークだ。 と内心で突っ込む黒羽を余所に、テルは続ける。

 

「次に・・・・お前が居なくなって困る人間がいる・・・誰だと思う」

 

「マリ――――」

 

「俺だ。 お前が居なくなったとなったら、お前の世話係を任されている俺は負い目を感じて、一生マリアさんとナギから家畜を見るような視線を送られ続ける毎日を送る事になる。

そうなれば寄ってたかって白皇でヒナギクから正宗の物理的な”あくうせつだん”を食らう羽目になる俺がいるんだ・・・理不尽だと思わないか」

 

「はぁ・・・・」

 

 どこぞのライダーキャラの構文よろしく、真剣にそう言うテルに黒羽もため息をつく。 聞いた自分が馬鹿だったのではないか。

 

 

 だが、

 

 

「結局のところだ、黒羽」

 

 彼は黒羽の肩を掴んだ。

 

「お前が居て、やっとここは三千院家なんだって俺は思ってんだよ。

俺だけじゃない、それこそ、マリアさん、ハヤテ、ナギも・・・・お前に関わったいろんな人たちだって、もうお前が居ないここ(三千院家)は考えられねぇんだって思ってんだ。 白皇の生徒たちだって」

 

 

「あ・・・」

 

 黒羽の胸がきゅっと、締まった気がした。

 

「居なくなる? ふざけんなよ。 俺の決めた約束を速攻で破棄させようとする気か・・・・冗談じゃない」

 

 テルにとっては、未来の男との約束がある。

 

「俺はお前を守る―――――最後まで、だ。 それだけは絶対だ」

 

「―――-テ、ル」

 

 声が震える。上手く、彼の名前を言うことが出来ない。

 

 

「お前も分かってる筈だ。 お前は、どうしたい・・・・」

 

 

 いつかの高尾山のハイキングでも、似たような事を聞かれた気がしたのを、思い出した。

 誰か、周りに合わせて、他人に答えを求めるのではなく、自分自身で答えを出す大切さがあるのだ。

 

「―――-たい」

 

 振り絞って、その言葉と、意思を表す。

 

「いたい、よ・・・・」

 

 皆と。 ハヤテとマリアとナギと、ヒナギクや泉、美希、理沙、雪路、竜児と、そして―――――テルと。

 

「でももう少ししたら・・・・時間が経てば、みんな私を、忘れてしまいます」

 

「なんでそんな事がわかる」

 

「私の力がもとに戻ると同時に、この世界は書き換えられます・・・・それが、迎えの合図・・・」

 

 

 伊澄との大規模な戦闘後、黒羽の能力、”黒曜”は甚大なダメージを負った。 それこそ、長期的な復旧を余儀なくされるほどに。

 これまでの黒羽の能力は失ったのではなく、ただ力を取り戻すまで眠っていただけなのだ。

 

 記憶が戻ったと同時に、自動修復を修了し、その機能を覚醒させる。

 黒羽舞夜という人物がここにいたという記録全てを消去し、書き換える。

 

 

 

 それが、黒羽の持つ”黒曜”の自己防衛プログラムの一つ。

 

「許せんな・・・・誰だ――――」

 

 彼は歯を軋ませながら、黒羽に言う。

 

 

(お前をそんな顔にさせるクソ野郎はどこの誰だ)

 

 

 

 

 あの黒羽が、普段は感情を表に出さない彼女が涙を流している姿に、テルは怒りを覚える。

 彼女の大切な日常を脅かす存在、それは恐らく、常人ではないのであろう。

 

「教えろ・・・・そいつは――――迎えに来るヤツってのは」

 

 

 それでも、彼は黒羽を護る。そのための執事だ。

 

 

「私の――――――」

 

 次の言葉を紡ごうとした瞬間、黒羽の背後で蠢く影がある。

 

 

 

 テルは目を疑う。 まるで漫画に出てくるような黒い霧が立ち込め始めた。

 感じたのは、邪悪。 まるでこの世のすべての悪をテルは背筋に凍る物と同時に感じだ。

 

 

 黒い霧はあろうことか、一か所に集まり始める。 風もなく、不気味に宙を漂うそれはまるで意思があるかのように動き始めた。

 やがて、それは人のような姿を形成していく。

 

 

「――――-父です」

 

 地面に足を着けた、黒く、人の形をした異形の者を、黒羽は父と言った。

 

 

 

 

 

 

 

 




 ワンクッションを入れるかのごとく、短めな内容。 けど結構大事な場面。
はい、人外来ました。 

 なんでこんな大事な話をショートにした、言えッ!!

 次でラストにするからだァ! ミコノス編を始める為になァ!

自分では万丈構文を上手く使いこなすことが出来なかった・・・・だらしない作者で済まない・・・・・。

次回、どうあがいても絶望。

シリアスからギャグオチだろっておもわせて、からのコレ。

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