ハヤテのごとく!~another combat butler~   作:バロックス(駄犬

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 遅れた理由を君だけに教えるよyyyyyyyyyyおしえねぇぇぇぇぇぇぇよ!!!
 燃え尽きてた火が死にかけてた魂がまた蘇りましたよ。 不定期更新になってしまいましたので昔からの読者さんにはご迷惑をおかけしました。リハビリもかねての投稿なので内容は粗末かもしれませんが、それでも読んでいただければ嬉しい限りです。



第140話~終わりの始まり~②

善立 テルは非常に困惑している。

 

突然だが、親睦を深めるには? というテーマでここは皆さんに問いたいと思う。 ある者は答えるのだ

ーーーー遊ぶ。

 

たしかに、休日や空いた時間を利用して外で遊んだり、ゲームなどすることは親睦を深めるにはもってこいである。

 

ーーー食事をする。

たしかに、学校の昼休みなら弁当のおかずを交換したり、女子ならカフェに行ったり、男子なら夏は焼肉、冬はコタツの上で鍋を食べる....これは一般的では無いかもしれないが。

 

まぁ長い前置きはこれくらいにして、今は白皇学院の昼休み、湖が見える穴場とも呼べるカフェテーブルでは2人の少女が向かい合うようにして座っている。

「とても良い...紅茶ですね、黒羽さん」

 

「.....ええ、同じ意見ですよ、伊澄さん」

 

鷺ノ宮 伊澄と黒羽舞夜がお昼ご飯を一緒に食べているのである。驚くことに、サシで。

 

一般人からすれば特に何も問題はないだろう。 白皇の女子生徒がカフェのテーブルを囲って食事をするなど、この学校では日常茶飯事であり、見慣れた光景である。

 

だが、特別な事情をテルは知っている。 黒羽が記憶をなくす前ーーー、つまりまだ敵対していた頃、伊澄と黒羽は死闘を繰り広げた間柄だった。 一度目は伊澄が体調不良から敗北を喫したが、テルの知らぬ間に伊澄はリベンジしたらしく、その時は伊澄が勝利したらしい。

 

が、その後に記憶を無くして川で流れていたのを発見したテルが屋敷まで運んでいる途中で伊澄と鉢合わせしたのだが、伊澄は黒羽に襲いかかろうとした。

 

もう全力で。それこそ、アレは確実に人を殺る気マンマンであった。記憶を失い、ほぼ無抵抗な状態の彼女をそこまでする必要はないと止めたが、伊澄の方は納得していないようで、それからというもの、校内でこの二人が会う時などは監視をするようにしていた。

 

・・・・近くのゴミ箱とか天井に隠れて監視してきた甲斐があったというもんだ。

 

我ながら自分を褒めたいと思っている。勿論、その後は一部生徒からの報告でヒナギクに政宗によるヒテンミツルギスタイルをお見舞いされることになっていたのだが。

 

兎に角、現状は何が起きても可笑しくない。下手に黒羽が口を滑らし、得意の煽りを発動するならば、包丁持った伊澄が刺し殺しに来るかもしれない。

 

何故かそんなイメージが浮かんだ矢先である。

 

「ちなみに、どうして私と昼ご飯を食べようと誘ったのですか? 伊澄さん」

 

気まずい雰囲気の中、テルより先に核心を突くセリフを放ったのは黒羽だった。

 

 

 

「なにか含みを感じる言い方ですが・・・・・」

 

「例えば、この紅茶、ひそかに毒でも仕込んでいるのでは」

 

「そんな暗殺しませんよ!」

 

伊澄としてはこの上なく遺憾である。 そのような言われ、確かに身に覚えがあったかもしれないが、以前の自分とは違う。 たしかに以前の自分は彼女に対して、敵意を、または嫉妬と殺意を抱いていた。 だが、その憎しみをぶつけても自分の大切な者が傷ついてしまうということに伊澄は気づかされる。

 

 

 

―――――誰にかに教わったというそんな違和感を感じながら。

 

「ただ、私はこうしてあなたとお茶をしたかっただけです」

 

「ほう? この殺され系ヒロインの私と?」

 

 最後の意味を理解しかねるが、伊澄として嘘偽りなく、ただ黒羽とお昼を一緒にしたかっただけなのだ。

 

 

伊澄は思い出す。これまでの自分の彼女に対する行いを。冷静となった今、私怨にとらわれて彼女に対しては過度にアクションを起こしていたと。 

 

いつかわからないが、伊澄はどこかで彼女に救われ、何かを頼まれた気がしたのだ。 まったくもって記憶にはないのだが。頭のどこかでそんな思いを巡らせる。

 

思いを巡らせ、考え抜いた結果、相手を全く知らないまま一方的に敵意をぶつけるのはあまりにもフェアではない、そう思ったのだ。もちろん、そんなことを正直に話すことは絶対にしたくないので―――――

 

 

「テル様がしっかりと仕事しているかちゃんと把握したかったので」

 

「あれ、俺にとばっちりが来てる?」

 

「マリアさんからも一応、学校内でのテル様の仕事っぷりを気にされていたので」

 

「どこまで信用がないんだ俺は!!」

 

くそう! と肩を落とすテルをよそに、黒羽はふむふむ、と頷いた。そして普段通り起伏のない表情で言うのだ。

 

「お見せしますか?」

 

「見せる?」

 

ええ、と黒羽はそういうとまだ淹れたての紅茶を受け皿といっしょに手に取り、

 

「テル、そこに跪きなさい」

 

「ファッ!?」

 

「いいからいいから」

 

まるで豚を見つめるかのような瞳で完全にキャラを作ってる黒羽の威圧感に押されたテルが黒羽の真横、その腰辺りの付近まで身を屈めるとテルの頭に先ほど手に取っていたカップを静かに置いた。

 

「黒羽さん、なにしてんの」

 

「テル、その姿勢から中身を零さないように立ち上がりなさい」

 

 

 何がなんだかわからないといった表情のテルは零さないように立ち上がる。そして黒羽から次のオーダーがよこされた。

 

「次はそのままY字バランスです。 さん、ハイ」

 

「何させる気だァァァ!!」

 

「その後は盆傘持って毬でも転がしながら水平バランスでもやってもらいますから」

 

俺は執事なのか大道芸人なのかどっちだ。と問いたくなったテルであった。

 

「な、なんて・・・」

 

その光景を見た伊澄、拳を震わせて言う――――。もちろん、心の中でだ。

 

――――羨ましいことをッッ。

 

自身の想い人であるテルをああもこう無碍にも扱うことができる、それが黒羽舞夜の特権。 もし入れ替わりが出来るのなら、この女を八葉の力を持ってその席を手に入れたいほどであった。

 

 

――――毎日、あの人の隣に居れたなら・・・・。

 

 

 先ほどのような、他愛のないことで盛り上がったりすることが出来れば、自分はどんなに幸せだろうか。黒羽から良いように扱われているテルは一見怒って呆れているように見えるが、その反面どこか慣れて、楽しそうにしているのだろうな、そんな日々をこの人は毎日過ごせているのだろうなと考えただけで、伊澄の胸は少しだけキュッと締め付けられるような痛みがあった。

 

 

 その様子を見て、ある程度は察していたのか黒羽がテルをいつのまにか手にしていた盆傘でつつくのをやめ、

 

「さて、捨て犬のような瞳をして今にも泣きだしそうな伊澄さんにちょっとした提案をします」

 

言うのだ。

 

 

「この時間だけ、テルをお貸ししましょう。 一時間くらいかもしれませんが、だいたい350円くらいで」

 

「俺を新作のDVDみたいな金額で売り出すな」

 

「お手軽に誰でも扱えます」

 

「なおのこと酷い!!」

 

 そのやり取りを余所に、伊澄の顔は戸惑いを隠せない。

 

「な、なぜ・・・そのような」

 

 黒羽はこちらを一瞥して、口を開く。

 

「・・・・・気まぐれ、です。ただの」

 

明らかな謎の間があったことに違和感しか感じない伊澄であるが、その本心は量ることが出来なかった。

 

でも、と黒羽は立ち上がって呟く。

 

「その代わり、”約束”は忘れないでください、果たしてください」

 

”約束”・・・・その単語を聞いて、脳裏を駆け巡る何かがあった伊澄。だが、それはすぐにでも靄がかかったようにかき消され、意識の奥底へと追いやられていった。

 

 

「信頼していますからね、伊澄さん」

 

小さく笑みを浮かべた黒羽はその場を後にする。 数メートル離れたところで一旦立ち止まると、こちらを振り返り、

 

「ちなみにテル、伊澄さんに手を出したら白皇学院の校舎、時計塔の前面、男女トイレの隅隅までも赤文字でロリコン変態執事テルと書かれたビラを貼りつけてやりますから」

 

「俺の人権はどこ行ったよ!?」

 

「知らないのですか? そんなモノ、毎日パンの耳サイズに千切ってそこら辺の蟻に運ばせてあげましたよ。 もうほとんどありません」

 

と、黒羽はいつもの冷めた表情でさらりと毒を吐くと、息をついて二人に人差し指を向けて言うのだ。

 

 

「テル、貴方は伊澄さんの指示以外では動いてはいけませんからね、絶対に、絶対にだ」

 

 何故最後は絶対を誇張するのか、良くわからないテルだったが、考えただけ無駄だろうと、頭を掻いた。

こうして、テルの絶対特権を手にした征服者・伊澄と服従者・テルがその場に残ったのである。

 

 

 

 




 年単位の執筆遅れでの最新話更新となってしまいました。 ここまで読んでくださってありがとうございます。 なんとか更新したい思いで構想を続けてきたのですが、実行に移せず、でもなんとか時間をかけてでも更新したくて仕上げたつもりです。 内容は物足りないもしれませんが少しだけ時間をかけてしまうかもしれませんがこれからも、そして今年もよろしくお願いします。

ここ数年の活動報告もしておこうと思います。 詳しくは活動報告まで。

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