ハヤテのごとく!~another combat butler~   作:バロックス(駄犬

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 新年明けて一話しか作れないとは、まったくお笑いだ。


第124話~その面(ツラ)を叩きに行く~

 誰しもが、頭のどこかで疑念と言うものを抱いて生きている。綾崎ハヤテも今日この遊園地内で小さな疑念を持つ者の一人だ。

 

 

・・・さて、ヒナギクさんをちゃんとリードできているだろうか。

 

 

 別に他意があったという訳ではないこのイベント。 生徒会の三人組の提案から始まった二人っきりの遊園地来訪。 目的は、ヒナギクの機嫌を直してもらうためにあるのだ。 数々の無礼というものを積み重ねてきた自分に責任がある。それにちゃんと対応してこそ一流の執事というもの。

 

 

「大宇宙山、水しぶき山・・・・とにかく高いところはNGだからなぁ」

 

 

 桂ヒナギクは高所恐怖症だ。それはいまだに解決していない完璧生徒会長である彼女の唯一の弱点である。だがそれを差し引いても彼女は強い。 武力、知力にとってもその気高さを失わない。 ソレを見て誰もが憧れるのは当然だ。

 

 

「ハヤテくん・・・」

 

「え・・・・?」

 

 

 隣でオレンジジュースを飲んでいたはずのヒナギクがこちらの服を掴んでいたことに気付いて、ハヤテは現実へと戻ってくる。 オレンジジュースの入ったカップに挿してあるストローを咥えているヒナギクの顔は周囲を警戒しながらこちらを見た。

 

 

「なんか、変な感じがしない・・・・?」

 

 

 変な感じ、とは。ハヤテが首を傾げて考えてみる。 この遊園地にてただの執事である自分と白皇学院の生徒会長という釣り合わない二人組がいるというこの状況の事を言っているのか。

 

 

「たしかに、なんとなくそんな感じが・・・・」

 

 

「でしょ」

 

 

こくん、と頷いて見せるヒナギクに対してハヤテはの心境は複雑だ。 やはりこちらの考えがどうやら当たっていたようで彼女も自分とのデートに不満を持っていたのなら、それを口に出されたのは内心ではショックである。

 

 

・・・やはりヒナギクさんは僕の事をキラッて・・・・・。

 

 

 暗い考えに顔を背けようとした時だ。

 

「正宗が反応してるわ・・・・この遊園地内、私たちの知らない所で何かが起きてるって」

 

 

「何か・・・?」

 

 

 いつのまにかヒナギクの右手に握られていた正宗が小さく震えているのがハヤテの目には見て取れた。つまり、ヒナギクが感じていた先ほどの台詞の真意は、別にこちらと一緒にいることに対しての不満ではなかったのだと知りハヤテは安堵する。

 

 

「どうしたの、安心してるような顔して?」

 

「い、いえ・・・なんでもないですよ」

 

「そ、そう・・・・・」

 

 小さく笑って見せ、今度はヒナギクが顔を逸らしていた。 別に変な顔をしていたわけではないのに、ちょっと頬を赤らめた理由はなぜだろうか、とハヤテが思考する間もなくヒナギクが再びこちらと向かい合う。

 

「とにかく! こういったときは伊澄さん関連の妖怪的なものよ! 本当は伊澄さんが居ればいいけど、彼女が最近学校に来てないからここは私達で解決しなきゃ」

 

 

確かに、最近伊澄は学校へ顔を出してないことをハヤテ達は知っていた。しかし、神出鬼没の彼女の事だからうっかりカンボジアまで迷子になっているか、この遊園地に迷子になっているかどちらかだ。

 

 

・・・あれ? どっちも迷子のケース?

 

 

「さぁハヤテくん! 行くわよ!」

 

 

「わ、ちょっと待ってくださいよヒナギクさん!!」

 

 

 猛然とダッシュで走り出したヒナギクをハヤテは追いかける。 ヒナギクの正義感の強さに押されて止む無しだが、正宗などが関連していることからあながち間違いではないのかもしれない。

 

 

・・・たしかにどこかおかしいような。

 

 

 ふと周囲を見回しても、どこも変わらない。 ただの遊園地、客も建物もどこか怪しいといったものは見当たらない。 だがその裏、自分の目には見えない場所からピリピリと微弱ながらも電気のようなものが自分の肌に感じられる。 注意していなければ気づかないレベルであるが。

 

 

―――何かがある。 

 

そう感じたハヤテは確信も持てないが、その疑念を頼りにヒナギクの後を追うのであった。

 

 

 

 

 

 

ちなみに、数分後に正宗という木刀を片手にもって走るヒナギクが警備員に拘束されかけのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「白銀が・・・未来の俺?」

 

 

「せや」

 

 

 咲夜の口から放たれたその言葉に全員が耳を疑った。 白銀拓斗とは仮の名で、本当の名前は善立テル。 

 

「未来からやってきたアイツは何かしら目的があってテルを亡き者にしようとしてるらしい」

 

「どこの某弓兵の英霊だよ!」

 

 

というか、と木原が頭を掻く。

 

 

「見た目変わりすぎねェ?」

 

「たしかに」

 

「筋肉モリモリ、マッチョマンの変態だ」

 

 

自分で言っていて恥ずかしくないのかテル、と誰もが思ったのは内緒だ。 どこぞの大佐ほどではないが、体格がデカくなったのは驚きである。

 

「あの死んだ魚の目が・・・」

 

キリッとしたものに。

 

「変哲もない黒い髪の毛が・・・」

 

ミステリアスを匂わせる白髪に。

 

「未来の俺は相当修行でも積んだのだろう・・・・山籠もりとか百人組手でもしたんじゃないか?」

 

「いや、山籠もりだけで済むレベルの変化じゃないだろう・・・・もはや別人のレベルやで」

 

 

 咲夜も一番最初にその正体を知った時は正直信じられなかった。 信憑性もまったくもって薄い。 だがそれを信じてしまうのは、伊澄の家で彼が放った一言。

 

 

――――頼む伊澄、咲夜・・・・ちょっとだけ俺に力を貸してくんね?

 

 

あの時の口調は、白銀拓斗ではなく善立テルの面影が確かにあった。 その一言が彼を善立テルだと言わしめる理由である。

 

 

 

「・・・目的ってなんなんだろうな。 ってテルどうしたよ?」

 

 

 木原の隣で座っていたテルがいつのまにか立ち上がっている。 

 

「こういうのは、本人に聞くのが一番だ」

 

執事服についた砂を払い、ポケットに手を突っ込んで小さな黒い棒を引きずり出す。

 

 

「行くんやな。 白銀のところに・・・」

 

 

 咲夜はある程度察しているとはいえ、テルに白銀の場所には行って欲しくはないというのが咲夜の意見だ。 なにせ、相手は伊澄を上回る力を持っている。

 

 伊澄の秘術、八葉の力をもってしても彼を打ち破ることはできなかった。 一瞬にて謎の魔法のような能力まで身に着けていてこの剣士馬鹿がどういった経緯で魔法使いになってしまったのかは全く持って謎である。

 

だが、そんな得体のしれない相手であってもテルは行くのだろう。 いや、いかざるを得ないのだろう。 なぜなら、あの男が、白銀拓斗が善立テルならばこの状況を作り出している人物がが自分なら、この相対は決して避けられない物だからだ。

 

 

「あのバカが変な考え持ってたらお前がぶちのめしてこいっ! テル!」

 

 景気よく笑って咲夜は言う。 対してテルは平成仮面ライダーばりのサムズアップだ。

 

「木原、咲夜を頼むぞ」

 

鉄パイプを目いっぱいまで伸ばし、振り返らずそう告げたテルはゆっくりと前へ歩き出した。 木原もそれを止めることなく、

 

「まかせろよ、この戦闘のプロに。 これでようやく暴れられる」

 

 

 

指の関節をポキポキと鳴らすのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・アイツの狙い、か。

 

 

木原と咲夜たちから分かれたテルの心境は複雑だ。未来の自分が、何故かこの過去にやってきている。 そして自分を殺そうとしている。

 

 

・・・・心当たりは。

 

 

 ある。 咲夜たちは知らないのは無理もないが、咲夜邸に執事研修で白銀と対話した時だ。

 

 

――――黒羽が死ぬことになる。

 

 

 

 黒羽の死。 それが白銀拓斗、未来の善立 テルが未来で目にした真実。その死を未然に防ぐために彼がこの時代にやってきているという考えは何となく予想がつく。

だが、なぜ、どうして自分が死ななければならないのか、理解が出来なかった。

 

 

この時代の善立テルが死ぬことによって、黒羽舞夜の死を回避できるというのはいったいどういうことだろうか。 考えることは難しい、それくらいなら気を紛らわす事を含めて、体を動かした方がいい。 他にも問いただしたい事がいくつもある。なぜ、彼は・・・自分はああなってしまったのか。

 

 

「一体どうして・・・・・」

 

 

見た目が変わるのはいい。 声も、仕草も、口調も、だがどこか心が諦めたようにいる理由はなんだ。 恐らくこの時代のテルは知る必要がある。

 

 

諦めない事が自身のポリシーだ。 一度交わした約束は何がなんでも必ず守る。 安請け合いはあまりしない。自身を育てた神崎百合子の剣術から学んだ己の意志を貫き通すこと。 彼女が死んだ後も、記憶を失った後でも、それを手放したことはなかった。だが、未来のテルは違う。 己の道しるべとも呼ぶべきその心を手放した、まるで別人。

 

 

・・・一発二発じゃきかねぇぞ。 多分タコ殴りだ。

 

 

『ダァオッ』

 

 テルの行く手を阻むかのように現れる異形の怪物達。 顔面が花のように開き、牙とナイフのような腕を携えた彼らは一斉にテルへと向かってきた。 凶器がこちらの体を狙っているのは容易に分かる。彼らはこちらの命を狩る事しか頭にない、いわば獣のような存在。

 

 

・・・・・お前はそっちにいるのか。

 

 

 目の前の怪物たちはここを通さんとばかりに溢れ出してきた。その光景を見て直感的にテルは感じ取る。 この方角に白銀拓斗がいるのだと。

 

 

『アアアアッ!!』

 

 

正面に一体目を見据えると距離数メートルまで迫る怪物の刃がテルを襲う。 もちろん、それを態と食らう程テルは馬鹿ではない。

 

「邪魔ァ」

 

刃が首を掻き切らんとするその変則的な動きに動じることなく、鉄パイプで叩き伏せていく。 怪物たちの力が常人の腕力ではないことをその鉄パイプから伝わる痺れから確かめながら、テルの足はそのまま止まることなく怪物たちの目の前まで迫るとその無防備な首根を掴み、

 

「邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔ァァァァアア!!!」

 

 

 怪物が叫ぶまもなくその体を地面へと叩き伏せると隙も与えず後ろで構えている怪物の群れに視線を移して狂人のような笑みを浮かべて突進していく。 悪鬼の集団を物ともせず駆け抜けていくその姿はまるで嵐の如く、彼は目的地を目指すのだ。

 

 

 

 

 

 

「む・・・・・」

 

 

 遊園地の中央地点にある噴水の縁石に腰掛けている白銀が不意に目を細めた。 自身と魔力で繋がっている部下の交信がぷつりと切れたからだ。

 

「咲夜の霊圧が・・・・・消えた?」

 

 いや、これは咲夜であって咲夜のものではない。咲夜の肉体を借りて乗り移っていた者の霊が消え去ったのだろう。この遊園地にいる異形の怪物たちは白銀の魔力によって生み出されているものだが、咲夜と伊澄には特別に自身の魔力で生成した人格をそれぞれ定着させている。 こうすることで彼女たちを操ることは勿論異常事態を察知した時には魔力が切れるなどしてこちらにその有無を知らせるように細工をしておいたのだ。

 

 その魔力が消えたということは、

 

「やはりこの程度では倒されないか、善立 テル」

 

 結界内でテルが暴れているのは確認済み、ならばこちらが放った刺客程度では彼を死に追いやることなどはできないだろう。

 

・・・・・咲夜が解放されたとなれば、こちらの正体も奴に知られていることになるだろう。

 

 今ここに居る男、白銀拓斗が未来の善立テルであるということ。己自身が過去の自分を殺そうとしていることを。 その真実を知り、過去の己が何を想うのか見物であるが今はその余裕はあまりない。今の咲夜との交信が途絶えた事で、真実を知ったテルがこちらを血眼になって探すはずだ。

 

 

 

――――その時こそ、決着をつける。

 

 

 懐から取り出したのは禍々しい紋様が走る黒い一本の棒。 自身にとっても思い入れのある武器がここまで変貌を遂げたのはいつからだっただろうか。

 

 

 

 

――――命が尽きるその日まで、君には永遠の呪いを授けよう・・・・・黒曜の祝福を。

 

 

 そうだ。あの日だった。 

 

 世界の果てとも呼べる場所で、尽きることのない時、現世の理から隔絶された黄金の花畑が一面に覆われたその場所で、自身は永遠の呪いを受けた。それはどんな強力な霊媒師、巫女の力を持って解呪することができなかった破滅の呪い。どこかのゲームのように呪いを受けたこの武器は自身から離れることなく今日この日まで共にあり続けた。

 

 

・・・・・この世界に来ることができたのは最後のチャンスだ。 何もかも『なかったこと』にして本来、『あるべき流れ』でこの世界は進まなければならない。

 

 だがその本来あるはずの流れを自分が変えてしまった。 自分の不都合なものはすべて捻じ曲げてその通りにしようとする我儘だった。 それが招いた悲劇を彼は知っている。

 

 

「さぁ来い、今日この場所で『善立 テル』は死ぬのだ。 何もかも終わらせてやる」

 

 空を見上げれば赤い月が。 頬には寒いそよ風が吹いて、白銀拓斗を嗤っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ・・・・・早く首を斬らなくちゃ」

 

 

 表の世界。 遊園地の人気のない場所では今まさに悲劇のワンシーンが生まれようとしていた。

鷺ノ宮伊澄が見据える先には大の字に倒れ伏した一人の少女、黒羽舞夜の姿。 腹部に突き刺さった包丁を目線に納めた伊澄がゆっくりと倒れている黒羽に近づいていく。

 

 

・・・・・どこかの悪の帝王が言っていたように、『気絶しているフリ』をしているかもしれません。 以前全力で相対した時も、私は倒した気でいたがために彼女を生きながらえさせるチャンスを与えてしまった。

 

 

 悔やまれる己の甘さ。 だが、今の伊澄にはその甘さはない。 流石に首を切断されれば、理不尽な生命体でも死んではくれるだろう。 

 

・・・・・いいことを思いつきました。 この首を観覧車に乗せるというのはどうでしょう。

 

 観覧車の客席に首がぽつんと置いてある、そんなグロテスクな光景を浮かべて、シュールだ、と笑みを浮かべた伊澄。 とうとう黒羽に突き刺さっている包丁を引き抜き手にとって振り上げる。

狙うは憎き敵の首。 力任せに振り下ろして、それでもだめならノコギリでも使うべきか、そんな事を考えていた時だった。

 

 

 

「あれ? なんで―――――」

 

 その時、伊澄の持っている包丁に違和感。  それは少女の腹部に柄まで突き刺さったはずの包丁に『血が全くついていない』という事実。

 

「―――――おのれっ!!」

 

 慌てて視線を黒羽へと戻した瞬間、薄らと開眼したその眼。 黒羽の意識の覚醒に伊澄の対応が遅れてしまった。

 

・・・・・まだ生きてたか!

 

 急造な動作で再び包丁を黒羽に目がけて振り下ろす。 だが、『来ると分かっている攻撃』ただ黙ってやられる黒羽ではない。 予想できる攻撃は簡単だ。 躱すことも、掴むことも出来る。

 

「むっ・・・・」

 

「―――――!?」

 

 だが黒羽が選択したのは掴むことでもなければ躱すことでもない。 伊澄の細い手首を掴み、覆いかぶさる勢いを利用して真後ろに投げ飛ばす事だった。

 

「きゃっ!!」

 

 和服のままだったため空中での受け身や、地面への着地などできたものではない。 もろに背中を打ち付けて、ボールのように転がった。

 

「く・・・・こんなっ!!」

 

 だが投げ飛ばされた痛みよりも、伊澄は怒りによって立ち上がっていた。

 

 

「どうして私が生きているか、疑問のようで」

 

 

 服についている土を払っている黒羽へ、当たり前だ、と言わんばかりに睨みを利かせると同時に包丁を構えてみせる。 だが、今度はそれに動じることなく黒羽は腕が自身の服を少しだけまくって見せる。 その隙間から一冊の本が地面へと落ちた。

 

 

「ナギちゃんから頂いたジャンプが、私を守ってくれたのです」

 

「・・・・・・」

 

 全くお笑いだ、と伊澄は肩をすくめる。 腹部にジャンプを仕込んでいる女など一体どこにいるのだろうか。 伊澄は無表情のままで、

 

「どこまで私を馬鹿にするのでしょう」

 

 怒気の籠った台詞に黒羽も無表情だ。

 

「馬鹿にしているのはあなたの方です。 私も三千院家のメイドがそう簡単に殺されると思ったら、大間違いです――――そうですね」

 

 静かに両腕を前に出すようにファイティングポーズをとった黒羽は続けて言い放つ。

 

「骨の二、三本は覚悟してもらいましょう」

 

 その言い放った台詞には虚勢は全く持って感じられなかった。 相手を威圧して黙らせるブラフでも、逃げるために意識を逸らす口上ではない、純粋な破壊を目的とした殺意。

 

 まるで相手を断絶するために研ぎ澄まされた刃物。 伊澄は黒羽舞夜からそれを感じ取る。 その殺意に一瞬だが呑まれかけている。 恐れたというべきか、思わず自分の左足が一歩下がっていたのを見たゆえに理解できること。

 

 

「殺さなきゃ」

 

 もはや一刻の猶予も許されない。

 

「私が・・・・テル様を守らなきゃ」

 

 こんな危険な女がテルの傍にいることは許されない。 許されて良い筈がない。

大丈夫、妖怪退治はお手のものだ。 常日頃、己が繰り返してきたとするパターンの秘術をあの女にすべてぶちまければいい。冷酷無慈悲に、圧倒的力を持って。 

 

・・・・・速攻ッ!!

 

 伊澄は三枚の札を取り出して、黒羽舞夜に投げつけた。この札は妖怪など異形な者にしか効果が出ないが、今放った札には自身の霊力が練りこまれている。 特別性のこの札は相手に張り付けば、自身の任意のタイミングで爆発できる、いわば起爆札のようなものだ。

 

 妖怪はもちろん、生身の人間にも効果があり人間が食らえば骨折などまだ優しい、確実に四肢のどれかは吹き飛ぶ。

 

 数秒後には札が黒羽の体のどこか、もしくは地面に突き刺さり爆風で彼女を吹き飛ばせる、はずであった。

 

 

「たぁっ!!」

 

 

 風が吹いたかと思えば、それは剣閃。 瞬く間に伊澄の放った札はすべて両断されている。 まるで刃物で両断されたかのような状態だ。 否、それは比喩ではない。 まさしく刃物、といってもその得物は日本刀などではなく、木刀なのだが。

 

「・・・・・まったく」

 

起爆のタイミングも失い、効力を失った札が地面へと落ちることに動揺することなく、むしろ立て続けに起こる無駄な変化に呆れを感じたかのような伊澄の溜息。

 

 

 霊力を持った札を両断したその希有な木刀を自分は知っている。 もちろんだとも、それは自分が与えた物だ。その与えた相手でさえも。

 

 

「伊澄さん! これは一体どういうことッ!?」

 

 白皇学院生徒会長こと、桂ヒナギク・・・・その人物他ならない。 

 

 

 




 伊澄さんのヤンデレレベルが極まってきた・・・だが限度いっぱいまで行くっ! どちからかが破滅するまで・・・・倍プッシュだ。

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